スポットライト
2025年4月24日

実写スタジオが SF 映画 Babiru の制作をオール CG に移行

BabiruMocapSecond Tomorrow Studiosアニメーションプリビズ映画&テレビ機能
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Second Tomorrow Studiosは、モントリオールを拠点とする映画・テレビ向けの SF 制作会社です。創設者兼ディレクターの Nguyen-Anh Nguyen 氏が率いる Second Tomorrow は、TEMPLE、HYPERLIGHT、THE AKIRA PROJECT といった、特殊効果を多用した多くの実写プロジェクトを手掛けてきました。
人類滅亡後に、ロボットだけが生き続けるとしたら、どのような世界になるのか?これは、Second Tomorrow Studios の最新プロジェクト Babiru が投げかける問いです。
 
Babiru の予告編制作にあたり、Second Tomorrow Studios は Epic MegaGrants を活用し、実写から Unreal Engine を使用したオール CG での制作に切り替えました。脚本家の Philip Gelatt 氏 (Love、Death + Robots、Secret Level) とタッグを組み、大胆で圧倒的なビジュアルを誇るこの予告編は、長編映画の概念実証の役割を果たす作品です。Nguyen 氏は、Babiru 全編も Unreal Engine を使用して制作する予定です。

Nguyen 氏に Babiru について、そしてこの作品が映画制作の今後にとってどのような意味を持つのかお話しを伺いました。
Babiru を制作することになったきっかけを教えてください。

Babiru は、もともと私個人の情熱から始まったプロジェクトでした。というのも、Babiru の世界観を作り上げた 2 人のコンセプト アーティスト、Nivanh Chantara 氏と Frederic Rambaud 氏の素晴らしいコンセプト アートに、かねてより深い感銘を受けていたからです。 

10 年近くを費やして制作された彼らの作品は、没入感の高い SF ストーリーの可能性に満ちた、心に深く刻まれる、奥深い世界を表現していました。私は彼らにこのアイデアを映画化するよう説得し、しばらくの間、さまざまな形で実写化プロジェクトとして提案しました。しかし、プロジェクトがあまりにも壮大すぎるため何度か断られ、この規模のプロジェクトを従来の方法で実現することは不可能だとすぐに悟りました。 

私は、実写の場合に必要となるような妥協をすることなく、このプロジェクトを実現できる可能性のあるソリューションとして Unreal Engine を検討し、MegaGrants に応募しました。 

Epic Games からの回答は、パンデミック発生直後に届きました。世界が封鎖された間も、世界中の人材でチームを結成し、リモート ワークで作業を続けることができました。リモート ワークは、意図せずもたらされた幸運な作業環境でした。当時、私たち全員が切望していたクリエイティブな表現の場が実現したのですから。 

MegaGrants の助成金のおかげで、世界クラスのアーティストとコラボレーションすることができ、実現可能な内容が広がりました。当時、目指していた品質レベルは実験的な領域に踏み込んでいましたが、Unreal Engine の存在があったからこそ、大きな夢を描くことができたのです。
Characters in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
Babiru の最も印象的な点の 1 つは、その豊かなビジュアル スタイルですが、このスタイルはどこから生まれたのでしょうか?

Babiru のコンセプトを練っていたとき、私は City of God と District 9 を融合したような作品を思い描いていました。 私はこの映画を、ざらざらして、太陽が降り注ぎ、生々しい作品にしたかったのです。たとえるなら、文明全体の崩壊が重なり、崩れつつあるブラジルのファヴェーラを思わせる作品です。

Babiru の主要なビジュアル テーマは、コントラストです。具体的には、朽ち果てて錆びついた環境と輝くネオンのテクノロジー、広大で廃墟となった世界と AI の主人公たちの親密なサバイバル ストーリーの対比です。 

このビジュアルを構築するうえで、Unreal Engine は重要な役割を果たしました。リアルタイム ライティングと Lumen を活用して、光と影を動的に調整し、サイバーパンク風の Babiru の外観を特徴づける光と闇の相互作用を巧みに作り出すことができました。優れたカメラ システムも、シネマティックな構図を迅速に作成、調整するうえで役立ち、本作のビジュアル ストーリーテリングをさらに強化することができました。
Robot with teeth in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
貴社のこれまでの作品はすべて実写の俳優による作品ですが、全編 CG キャラクターで作品を制作するのはとても大きな変化だったのではないでしょうか?

おっしゃるとおりです。最初は、Beyond Capture Vancouver のモーション キャプチャ環境で、モントリオールからリモートで俳優に指示をするのが大変でした。ですが、その後は物理的なセットや俳優のスケジュールなどに左右されることなく、動き、タイミング、さらにはカメラワークまで、クリエイティブなコントロールを完全に行えるようになりました。撮影したアニメーションは、後日、追加撮影日をスケジュールする手間をかけることなく、シーンに合わせて修正、再利用することができました。予算と時間に制約がありましたので、これは非常に助かりました。 

Unreal Engine のリアルタイム レンダリングとアニメーション ツールのおかげで、このプロセスをシームレスに進めることができました。ほぼ完成したシーンを確認し、演技のイテレーションを迅速に行い、ライティングをオンザフライで調整し、長い生成時間を待つことなくエンジン内で構図を調整することができました。また、より分散型のワークフローも可能になり、世界中のアーティストが同じシーンの複数のショットに同時に並行して取り組むことができました。
Characters explore Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
メインのレンダリング エンジンとして Unreal Engine を選択した理由を教えてください。

私は幼少時代からゲームに親しんできました。10 代の頃、Unreal Engine の初期ビルド Quake をプレイしていたことをよく覚えています。シネマティックなビデオ ゲームのカットシーン (Wing Commander や Call of Duty など) には、いつも「全編こんな感じの映画を見てみたいな」と思わせる魅力がありました。

以前のプロジェクトで従来のレンダリング エンジンを使用していた経験から、それらは習得のハードルが非常に高く、リアルタイムの結果が得られないことを知っていました。ミスを修正したり、細かなディテールを調整したりするだけでも、複雑なシーンの場合には数時間、時には数日に及ぶレンダリング作業が必要になることもありました。 

Unreal Engine はリアルタイム ワークフローを提供し、ショットを瞬時に視覚化して、調整することができました。これは従来の CG パイプラインでは不可能なことでした。テクスチャ、ライティング、アニメーションが完全に適用されたシーンをリアルタイムで操作できるため、クリエイティブな意思決定をはるかに迅速に行うことができました。また、コスト効率にも優れており、従来のプリレンダリング アニメーションで行うとはるかに高いコストがかかるレベルのビジュアル忠実度を実現できました。

特に私が素晴らしいと感じたのは、Unreal がほぼオールインワンのソリューションを提供していることです。プレビズ、アニメーション、ライティング、ショットの取り込み、そして最終ピクセルまで、すべてを同じソフトウェアで処理することができます。 

Babiru の制作を始めた当時、それは非常に画期的なことでした。私は常に新しい技術を試し、限界に挑戦しながら、それを通じて従来の手法では実現が難しい創造的なアイデアを形にしていくことに魅力を感じてきました。
Cityscape in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
このプロジェクトで最も役立った Unreal Engine の機能について教えてください。

プロジェクトの開始時には Unreal Engine 4.27 を使用していましたが、Unreal Engine 5 がリリースされた際には、プロジェクトに何か問題が発生するのではないかと不安でアップグレードをためらっていました。しかし、アップグレードしてみると大きな変化がありました! 

Unreal Engine 5 のいくつかの機能は、Babiru にとって画期的なものでした。Lumen グローバル イルミネーションのおかげで、リアルな動的ライティングを実現でき、映画の雰囲気を高め、真に迫る、没入感溢れる視覚体験を生み出すことができました。

Nanite 仮想ジオメトリでは、Ronin161 に所属する友人と Xavier Albert が作成したきわめて詳細度の高い環境を、パフォーマンスを損なうことなく利用できるようになりました。これは、Babiru の複雑な人類滅亡後の世界を制作するうえできわめて重要でした。 

リアルタイム レンダリングにより、構図、ライティング、アニメーションを瞬時に細かく調整できるようになり、クリエイティブ プロセスがよりスムーズかつ効率的になりました。 

最後に、シーケンサーが提供するエンジン内の強力な編集およびシネマティック ツールセットを利用することで、従来のオフライン レンダリングに頼ることなく、ショットのレイアウトやペース調整を行うことができました。ロンドンを拠点とするバーチャル カメラ オペレーターの Dane Armour 氏との作業は、制作したシーンを新たな視点で捉える発見があり、とても楽しかったです。 

これらのツールは、プロジェクトのビジュアル品質を向上させただけでなく、制作におけるアジリティとコスト効率を維持するうえでも役立ちました。
Character in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
Unreal Engine 以外に、パイプラインで重要な役割を果たしたソフトウェアはありますか?

アセットを Unreal Engine に取り込んでリアルタイム レンダリングを行う前は、主にキャラクター モデリング、リギング、リターゲティング、アニメーションを行うために Maya を使用しました。

当スタジオのポストプロダクション部門 CineGround Media では、Blackmagic の DaVinci Resolve と Fusion を使用しました。これらはカラー グレーディング、最終的な VFX、合成で重要な役割を果たし、Unreal Engine でのレンダリングがすべて完了した後、作品の外観を調整し、Unreal Engine のレンダリングに従来の映画のようなビジュアルを加えることができました。

アニメーションの調整には Unreal Engine と Maya を何度も切り替えて行うことができたため、パイプラインはある程度反復的でした。Resolve を使用することで、柔軟性を維持しながら最終的なビジュアルを細かく調整することができました。
Robot with sparks in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
現在、Babiru には何人のアーティストが携わっていらっしゃるのですか?

Babiru には、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなど、約 50 名のアーティストが参加しました。私は約 6 か月を費やしてオンラインで見つけることができる最高のアーティストを集め、まさにグローバルなコラボレーションを実現することができました。その後、Mathematic Studios と Ronin161 のきわめて才能豊かなメンバーが加わり、プロジェクトの完成に大きく貢献してくれました。

Unreal Engine のリアルタイム ワークフローにより、アーティストはレンダリングを待つことなく即座に更新内容を確認できるため、リモート コラボレーションを非常にスムーズに行えました。また、バージョン管理には Perforce を使用し、複数のタイムゾーンにまたがるアセットを効率的に管理できました。Unreal の共有プロジェクト ファイル内で作業できるため、非同期で作業しているときもチームの緊密な連携を維持することができました。

主なコミュニケーション ハブとして Discord を使用し、アセットの共有には Dropbox、進捗状況の確認には frame.io を使用しました。まるでモントリオールで運営されているミニスタジオのような感覚でしたね。今日では、適切なツール、共通のビジョン、そしてインターネット接続があれば、大きなことを達成できるということを証明できたと思います。
Debris in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
Babiru の開発状況ですが、現在はどのような状況ですか?

16 分間の映画を制作しましたが、現在は、Babiru の世界観を紹介する予告編を概念実証として公開しています。次のステップは、これを他の出資者や映画スタジオにプレゼンテーションして、Babiru を長編映画に拡張するための追加資金を確保することです。 

概念実証によって、この世界のビジュアルとストーリーの実現可能性が実証されました。私たちは、この世界をより大きな規模で実現するために、積極的にパートナーを探しています。
Destruction in Babiru.
Courtesy of Second Tomorrow Studios
Unreal Engine は、今後の映画制作にどのように貢献していくとお考えですか?

Unreal Engine は、アニメーション映画の制作方法を本当の意味で変革しつつあります。Unreal Engine によって、イテレーションの迅速化、リアルタイムでのクリエイティブな意思決定、そして従来のパイプラインでは不可能だった世界中のアーティストとの分散型のコラボレーションが可能になりました。 

完全に実現されたリアルタイム環境で作業できるため、映画制作者はレンダリングを待つことなく、ストーリーテリングやビジュアル デザインに集中できます。Unreal Engine のおかげで、従来の方法では夢にも思わなかったショットを制作することができました。このテクノロジーがなければ Babiru は実現できなかったでしょう。このテクノロジーは、インディーズ制作においても大規模制作においても、ゲーム チェンジャーになると確信しています。 

私たちは今、テクノロジーによって新世代のクリエイターたちが数年前には考えられなかったことを実行し、新しいハイブリッド形式でのストーリーテリングを探求できる段階にいるのです。

Unreal Engine のインストール方法

ダウンロード方法

ランチャーをダウンロードする

Unreal Editor をインストールして実行する前に、Epic Games Launcher をダウンロードしてインストールする必要があります。

Epic Games Launcher をインストールする

ダウンロードして、インストールしたら、Epic Games Launcher を開いて、Epic Games アカウントを作成するか、ログインします。

サポートを受けるか、手順 1 でダウンロードした Epic Games Launcher を再起動します。

Unreal Engine をインストールする

ログインしたら、Unreal Engine タブに移動し、インストール ボタンをクリックしてください。最新バージョンのダウンロードが始まります。

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