なかでも Insurgency: Sandstorm の特徴となっているのは、ディテールとリアリズムへの細心の注意です。New World Interactive は、武器、リロード、銃撃戦を極力リアルにしつつ、楽しいものにもするために、多くの時間とリソースを費やしました。Insurgency: Sandstorm は、PC 向けに先日リリースされ、コンソール向けには 2019 年のリリースが予定されています。このたび、史上最もリアルな FPS の 1 つとなった Insurgency: Sandstorm がどのように作り出されたのかについて、複数のチーム メンバーにお話を伺う機会をいただきました。
前作と比較したときに最も歴然とした改善点は、ゲームのグラフィックスでしょう。続編となるこの作品では、UE4 のグラフィックス性能を活用したモダンなビジュアルに刷新されています。New World Interactive のチームは次のように述べています。「物理ベースのレンダリングに移行したため、新しいツールとワークフローについて学習する必要がありましたが、以前の作品よりも忠実度を大幅に引き上げることができました」また、ゲームの設定を忠実に再現するための取り組みについては、「環境チームは、厳選した資料に基づいて入念に作業を行い、使い古されたパターンに陥ることなく、中東という舞台設定を定義する形状やスタイルを決定しました」と述べています。
ゲームをリアルでイマーシブなものにするために、New World Interactive は UE4 の強力なライティング システムを活用しました。「このゲームにおけるライトは、現実の光の性質に従ったものになっています。プリセットを利用して、さまざまな種類のライトをサポートしました。白熱電球、蛍光灯、ナトリウム灯、水銀灯、メタルハライド ランプ、LED、燃える木材専用のプリセットなどの種類があります。ライト メッシュのマテリアルを自動的に更新することで、色を合わせて、ライトの効率を反映します。効率が低いライトは、強く輝きますが、発熱が多く、実際にはあまり光を放つことができません。太陽によるグローバル ライトと環境光は、私たちが定めた特定の基準に従って環境内でバウンスします。こうすることで、どのマップでも一貫性のあるライティングが可能になり、十分なダイナミック レンジも得られるため、ビジュアルが高品質になるとともに、ゲームプレイのためにマップをさまざまな形で活用できるようになりました」
Insurgency: Sandstorm の素晴らしい視覚効果は、熾烈な銃撃戦へとプレイヤーを引き付けるうえで一役買っています。ゲームをイマーシブなものにしながら、ハリウッド映画のように大げさなものにはしない、というバランスをとっています。リード ゲーム デザイナー、Michael Tsarouhas 氏は次のように述べています。「視覚効果は、現実的なものでありながら、自分が戦場にいるということをプレイヤーに意識させるものにもしました」戦場にいるというイマーシブな感覚を強めるために行った工夫について、Tsarouhas 氏は次のように説明します。「たとえば、ハンド グレネードが爆発したとしましょう。すると現実のように煙が巻き起こります。ただし、効果を強めるために、一部の特徴が強調されます。プレイヤーは、自身の近くでハンド グレネードが爆発するたびに、榴弾の破片が燃えるように輝き、がれきの表面から塵が舞い上がり、炎が瞬間的に燃え上がる様子を目にすることになります」
グラフィックスだけでなく、オーディオの改善にも労力が注がれています。サウンド デザイナー兼エグゼクティブ プロデューサー、Mark Winter 氏は次のように述べています。「ミドルウェアである Wwise にインポートする前に、時間をかけて武器関連のオーディオ アセット自体を作り直して、リアルなものにしました。階層化した再生システムを作成して、距離、オクルージョン、場所、方向、空間化など、ゲーム内のイベントに応じて、個々の武器のレイヤーをリアルタイムでいくつでも変更できるようにしました」つまり、アサルト ライフルで言えば、それを狭い店の中でを発砲したときと、屋外で発砲したときとでは、聞こえる音が大きく異なるということです。
Insurgency: Sandstorm は、現代の中東における軍事紛争を舞台にしています。New World Interactive は、武器が設定を正確に反映したものになるようにしました。「プレイヤーが使用するすべての装備について、真に迫ったものを作るために、あらゆる努力を惜しまずに取り組む必要がありました」とチームは述べています。また、そのために行った調査については次のように述べています。「まず、可能なかぎり資料を集めて、武器をデザインするところから始めました。部品の 1 つ 1 つについて、ときにはバネに至るまで、写真とビデオを用意しました。バレル、チャンバー、ボルトなど、銃の内部の部品レベルでモデルを作成しました」また、New World Interactive は、物理ベースのレンダリングを利用して、銃のオイル、グリース、汚れなどのディテールを正確に再現しました。
ディテールを追求した New World Interactive は、ゲーム内の武器が、現在の中東という設定に沿ったものになるようにしました。「リサーチを行い、正規軍と現地の民兵、両方の兵士にインタビューを行いました。ゲーム内の紛争はフィクションですが、現実味のあるものにしたいと考えました。そこで、現代の内乱に関わる両方の勢力でどのような武器が使われているのか、知る必要がありました。調査の結果は驚くべきものでした。武器には新しいものから古いものまであり、製造年が数十年も離れたものが使われていたのです」Security と Insurgent、ゲームに登場する両勢力は異なる武器を利用します。耳のいいプレイヤーであれば、発砲音だけで敵と味方を識別できるでしょう。
戦闘をリアルなものにするために、New World Interactive は画期的なリロードの仕組みを取り入れました。Tsarouhas 氏は次のように説明しています。「たとえば、弾薬を 30 発装填できるマガジンを使用する武器を持っているとしましょう。20 発撃ってからリロードして、使っていたマガジンをベストに戻したとすると、弾薬は 10 発残っていて、後でまた使うことができるはずです。そして、後でリロードしてそのマガジンを装着すれば、実際に 10 発の弾薬を撃つことができるようになっているのです。これはほとんどの FPS ゲームとは異なります。ほとんどのゲームでは、合計で 30 発以上の弾薬が残っていれば、リロードするたびに、30 発装填されたマガジンが現れるのです。まるで胸のあたりに弾薬を組み合わせる魔法のプールがあって、そこから毎回ぴったり 30 発ずつ取り出せるかのようになっています」
この仕組みによって、エクスペリエンスはさらにリアルで奥深いものになっています。Tsarouhas 氏は次のように述べています。「プレイヤーは大量の弾薬を運ぶときにその重量に気を配る必要がある (銃弾を発射してマガジンを捨てれば重量を減らすことができる) だけでなく、それぞれのマガジンの銃弾数、リロードしたときに銃に入ってくる銃弾数を把握する必要があります。また、残りの銃弾を犠牲にしてでも速くリロードしたい場合、あるいは単にマガジンが空になった場合は、マガジンを捨てて、いわゆる『スピード リロード』を行うこともできます」HUD の表示で、各マガジンの残弾数がだいたいはわかるようになっていますが、非現実的にならないように、正確な残弾数はわかりません。とはいえ、慎重なプレイヤーであれば、撃った回数を数えておくことでこの問題を回避できます。この要素は、ゲームのリアリズムと奥深さの相乗効果を強めています。
Insurgency: Sandstorm では、ADS の仕組みにも工夫が凝らされています。大半の FPS では、銃のスコープを覗き込むと視野全体でズームインしますが、このゲームでは、『ピクチャー イン ピクチャー』と呼ぶスコープ機能によって、現実と同様に、視野のうちスコープの部分だけが拡大されます。この機能を使うとグラフィックスの負荷が若干高くなるので、プレイヤーはオプションからこの機能を無効にできますが、性能が問題にならなければ、この機能を使うことでグラフィックスが一層イマーシブなものになります。
リアルであることと銃撃戦を楽しいものにすることの間でバランスをとっている Insurgency: Sandstorm では、新しいハイブリッド弾道システムを導入しました。これは、銃弾の貫通、減速、重力に影響します。プログラマー兼テクニカル デザイナーの Stephen Swires 氏は次のように述べています。「このシステムは、主に、一定のサブステップで実行される小規模なライン トレースから成っていて、正確性と一貫性を保証します。銃弾は空中を進むうちにリアルに減速して落下し、素材の種類や厚さによっては貫通します。これらの影響から、ダメージが軽減されたり、射撃が防がれたり、外れたりします」また、近距離での戦闘がスピーディで致命的なものになるように、銃弾の発射直後の 100 ミリ秒については、ヒットスキャンに似た効果を適用しています。
新しい広大なレベルには、この弾道システムが適しています。この点について、リード レベル デザイナーの Jeroen Van Werkhoven 氏は次のように述べています。「マップが以前の作品よりもずっと大きく、ずっとディテールに富んだものになっています。たとえば、市街地のマップの 1 つ、Precinct は、前作のマップの 2 倍以上の広さがあります」レベルのサイズが大きくなると、パフォーマンスの懸念も増します。しかし、Werkhoven 氏は、「UE4 はパフォーマンスの問題を管理するうえで役に立っています。多様な環境を作り出し、それぞれに独特な設定とプレイスタイルを持たせることができるようになりました」と述べています。
Werkhoven 氏によると、UE4 のおかげで、マップを作成するうえで、チームはイテレーションをスピーディに行い、作業を効果的に進めることができるようになりました。「レベルを複数のサブレベルに分割して、複数のレベル デザイナーが同時に作業できるようにしています。レベルについてのイテレーションと変更を簡単に行えるようになりました。以前であれば数週間かかっていたようなレイアウトの大規模な調整も、はるかにスピーディにできるようになっています」
レベルをデザインするなかで、New World Interactive は、ドアへのアプローチについて戦術的な奥深さを付け加えました。Tsarouhas 氏は次のように述べています。「建物に入る際には、ドアのことを考える必要があります。プレイヤーは、ドアの向こうを覗き込むか、押すか引くかして開けるか、完全に破壊するか、蹴破るかを選ぶことができます」
プレイヤーによる環境内の移動をリアルにするために、Insurgency: Sandstorm では、新しい跳躍の仕組みが導入されています。「私たちが以前に制作したゲームでは、ジャンプがどこかアーケード ゲームのようなものになっていて、追求しているテーマやゲームプレイに合っていませんでした。Insurgency: Sandstorm の跳躍システムはそれを変えようとしたものです。また、マップを移動するうえでは、ジャンプはあまり柔軟な方法ではありませんでした。キャラクターは高くジャンプすることしかできず、それで高いところに登っていけるようになっていました。Insurgency: Sandstorm では、低い跳躍と高い跳躍、2 種類の跳躍が可能です。低い跳躍は、腰ほどの高さの物体を乗り越えるときに使います。また、跳躍中にサイトを使わずに射撃できます。これは、敵に向かって撃ち続けたり、緊急時に近距離でキルしたりするために便利です。高い跳躍は、胸ほどの高さの物体を乗り越えるときに使います」とチームは説明しています。高い跳躍を活用することで、見晴らしのきく場所に行くことができますが、現実を反映した欠点として、登っている間には武器が一時的に使えなくなります。
マップが前作より明らかに広くなったため、Insurgency: Sandstorm では車輌が追加されました。New World Interactive のチームは、ゲームの中心となるのが接近戦であることには変わりないと言いつつも、広い地形が舞台となったことを受けて、次のように述べています。「一部のゲーム モードでは、車輌を使ってプレイヤーが迅速に目的地に進めるようにすることが理に適っていました」車輌を追加したことによるメリットはほかにもありました。「車輌は防御のための道具として有効です。車輌の後部に搭載されたマシンガンには、前面に装甲板が付いているので、うまく配置すれば、その一帯のプレイヤーの動きを封じることができます。また、目標地点の建物の壁を突き破って、中にいるプレイヤーをはねることもできます。爆薬を持っていないと対処が非常に難しい相手です」
New World Interactive は、外国に住みリモートで働くフリーランサーを含む、わずか 36 人のメンバーで構成されるチームで、多くの仕組みを取り入れ、イノベーションを起こすことができました。チームの規模を考えると、これは印象的な成果であると言えます。New World Interactive では、熱心に粘り強く働いたということに加えて、UE4 への移行がこの成果に貢献したと評価しています。創業者兼 CEO の Jeremy Blum 氏は次のように述べています。「Source をエンジンとして使用していたときの最大の課題の 1 つは、そのツールセットでした。たとえば、マップのコンパイルやユーザーインターフェイスについてのイテレーションに長い時間がかかっていました。UE4 では、それらの点を含めて、ゲーム開発のさまざまな面がやりやすくなりました。UE4 は新しいエンジンで、ゼロから学習する必要があることはわかっていましたが、UE4 で開発するほうがずっと楽しく、チームにとって効率的であるということもわかっていました」
New World Interactive は UE4 を非常に高く評価しています。Blum 氏は次のように述べています。「どれだけビジュアルを強化できるか、また機能セットを拡張できるかがわかりました。それに加えて、ワークフロー関連のメリットがチームの日常的な業務をやりやすくしたこともとても重要でした。継続的にアップデートされて改善されていくエンジンを使用するのはとてもいいものです」
New World Interactive は、UE4 のツールのなかでも、ビジュアル スクリプティング言語であるブループリントが特に役に立ったと強調しています。プロジェクト マネージャーの Jeremy Faucomprez 氏は次のように述べています。「ブループリントによって、新機能のプロトタイプ作成とイテレーションを直感的に行うことができました。ブループリントはエンジン全体に広く対応しているので、外見を処理するシステム、UMG を使用する UI ウィジェット、破壊可能なプロップのシステム、ベースとなるキャラクターのアクタなど、ゲームのあらゆる重要な面で、ある程度ブループリントを利用できるようになっていて、デザイナーやテクニカル アーティストが調整やイテレーションを簡単に行うことができました」
ブループリントは、ゲームの新しいキャラクター カスタマイズ機能にも役立ちました。Faucomprez 氏は次のように述べています。「外見のカスタマイズ システムは、イテレーションを重ねて設計しました。仕組みと見た目の概要は決めていましたが、UE4 のブループリント システムなしでは、技術的に実装するのは非常に難しかったでしょう。テクニカル アーティストは、プログラミングの作業量を最小限に抑えて、アートを実装し、外見とバリエーションを扱う堅牢なシステムを作成できました。外見とバリエーションを組み合わせる基本的なコード インフラストラクチャができたら、メッシュの選択、マテリアルの選択、モーフ ターゲット、動的マテリアル インスタンスの全システムをブループリントで作成できました。テクニカル アーティストが外見を処理するシステムの設計に従ってイテレーションを行い、実装するうえで、ブループリント システムは大きく役立ちました。できあがったシステムは柔軟性に優れていて、ぎりぎりのタイミングで調整を加えたり、新しい外見を追加したりするのが非常に簡単になっています」
Insurgency: Sandstorm は PC 向けにリリース済みで、PlayStation 4 と Xbox One 向けに来年リリースされる予定です。New World Interactive は、前作 Insurgency に対して、無料の追加コンテンツを大量にリリースしました。同様に、新しいマップ、武器、モード、音声、mod のサポート、新しい仕組みが追加されることを期待してよさそうです。
このゲームの詳細については、Insurgency-Sandstorm.com にアクセスするか、Twitter、Facebook、Instagram でゲームのアカウントをフォローしてください。New World Interactive でのキャリアに関心がある方は、NewWorldInteractive.com をご覧ください。
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