このプロジェクトの詳細について、ドラゴンクエストXI のディレクターである内川毅氏に、スクウェア・エニックスのチームがどのようにアンリアル エンジン 4 を使ってこの大作を生み出したのか、お話を伺いました。
ドラゴンクエストXI では、ある宿命を負い、追われる身にある主人公が冒険の旅に出発し、ロトゼタシアの幻想的な世界を進みます。その途中で、さまざまなキャラクターと出会い、手を貸してもらうことになります。このゲームの印象的なビジュアルを実現するため、スクウェア・エニックスは UE4 を活用しました。キャラクター デザインは、ドラゴンボールの作者として知られる名高いアーティスト、鳥山明氏が手がけています。この組み合わせから生まれたキャラクターは、セルシェーディングが施され、すみずみまで念入りに、愛情を込めて作り上げられたかのようで、敵の手先でさえ非常に魅力的です。
世界観を統一するため、スクウェア・エニックスでは複数の部署の複数のチームが継続的に集まり、デザインのイテレーションを行いました。内川氏は次のように述べています。「最終的なビジュアルに到達するのにかなりの時間がかかりましたが、鳥山明さんによるキャラクターとリアルな背景を融合するという目標に向けて力を合わせました。キャラクター チーム、背景チーム。技術チームが集まり、壊してはまた作り、を繰り返しました。そして最終的に、この特徴的なスタイルのビジュアルを作ることができました」

暗く荒涼とした最近の RPG と比べ、ドラゴンクエストXI は、明るく生気にあふれ、色彩に富んだ世界観を作り出しています。このスタイルを表現するため、スクウェア・エニックスは Enlighten を使い、力強い動的なライティング ソリューションを実現しました。昨年ドラゴンクエストXI が日本で発売されたときに称賛を浴びた水のエフェクトも、スクウェア・エニックスのテクニカル アーティストが特に注意を払ったところでした。また、微妙な被写体深度エフェクトにより、映画のような雰囲気も生み出しています。

新たな冒険
シリーズ 11 作目にして、ナンバリング タイトルとしては初めて、独自ではないエンジンが使われました。スクウェア・エニックスがアンリアル エンジン 4 を選んだ理由の 1 つは、高度なグラフィックにおける実績でした。また、長年にわたり、多様なプラットフォームで安定して動作してきた点も評価されました。ドラゴンクエストXI の場合はこの点が特に重要でした。ドラゴンクエストXI は、PC、PS4 でリリースされ、PS4 Pro 用に最適化され、Nintendo Switch でのリリースが予定されています。
アンリアル エンジン 4 がもたらす大きなメリットとして、迅速なイテレーションが挙げられます。これは、どのようなゲームの開発にも極めて重要な要素です。「UE4 のエディタで速いペースで変更を加えることができた点が、マップのデザインを修正するときに大いに役に立ちました」と内川氏は言います。さらに「方向性を決めるときに、違いをすぐに確認できたため、開発の効率が大きく向上しました」と加えます。
この迅速なイテレーションは、スクウェア・エニックスによるこの大規模なゲームの開発に貢献しました。ドラゴンクエストXI の幻想的な世界は、海岸、洞窟、町などに広がっているだけでなく、これまでのドラゴンクエストにはなかったジャンプ機能により、垂直方向への探索の要素も加わっています。UE4 では、レベル デザイナーが、環境のプロトタイプを新たに作成したら、すぐにフィードバックを受け取れます。「エディタで形状を編集したら、すぐにテストできました。このため、テスト プレイ中に地形で迷った場合は、修正を行い、翌日のビルドに変更点を反映できました」と内川氏は述べています。また、スクウェア・エニックスでは、ゲームに昼夜のサイクルを取り入れたいと考えていましたが、これは非常に簡単に実現でき、エンジン内で数値を調整するだけで時間を変更できました。

世界をさらに生き生きとしたものにするため、英語圏のプレイヤー向けにはセリフを徹底的にローカライズし、一流の声優に協力を依頼しました。それがアクセントとなり、プレイヤーがゲームに入り込めるようになっています。欧米向けのリリースの品質を高めるため、口の動きのアニメーションもやり直しました。アニメーションに関しては、UE4 ネイティブのカットシーンとエフェクトのツールを使用して、多くのシネマティクスが作られました。ドラゴンクエストの作曲家として有名なすぎやまこういち氏が手がけた、MIDI での交響曲の音楽も演出に一役買っています。
最後までやり抜く
世界観、キャラクター デザイン、グラフィックにこれほどまでに情熱を注いだ原動力の 1 つは、プレイヤー全員にゲームを最後までやり抜いて欲しいという気持ちでした。昨今はゲームを最後までやり抜くプレイヤーが少ないことに加え、ドラゴンクエストXI は中身が濃いことを考慮すると、これは決してたやすいことではありません。
この目標を達成するため、スクウェア・エニックスは、ドラゴンクエストの生みの親である堀井雄二氏のゲーム デザイン 3 か条に従いました。それは、「わかりやすさ」、「温かさ」、そして「ワクワクする冒険」を体験してもらうことです。内川氏は、この 3 か条をドラゴンクエストXI にあてはめて考えました。「ストーリーについては、その展開において、プレイヤーにうれしい驚きをもたらすことを目指しました。探検については、プレイヤーが本道からはずれないようにしましたが、寄り道をしたくなった場合のために、満足してもらえるようなご褒美を用意しました。戦闘については、プレイヤーが疲れきることなく、前に進んでいる感覚が得られるようにすることが目標でした」内川氏は加えて、エンディングには全身全霊を込めたと言います。「必然的にここはベストを尽くす部分です。ですから、みなさんに最後までプレイして欲しいと思っています」

ドラゴンクエストXI は大規模なゲームであったため、開発において、スクウェア・エニックスはメモリ管理とロード時間に関連するパフォーマンスの問題に直面しました。そこで、エピック ゲームズとともにエンジンを微調整し、ガーベジ コレクションを改善しました。内川氏によると「こうした改善点は最新バージョンの UE4 に組み込まれています」。こうした取り組みの成果として、ドラゴンクエストXI は動作が安定しているだけでなく、ロード時間が短くなっています。4K の解像度をサポートし、描画距離が長く、目に見える範囲はしっかりと表現されています。
シリーズ 30 周年という記念の年にリリースされたドラゴンクエストXI では、内川氏によると「新鮮だけど懐かしくもある、美しく新しい始まり」を作り出すことを目指しました。内川氏は、これまでの伝統を受け継ぐターン制バトルでシリーズの本質をとらえつつ、シリーズのベテランにも初めてのプレイヤーにも楽しんでもらえるよう調整し、また最先端のグラフィックを取り入れたいと考えました。「誰でも、ドラゴンクエストらしさということを知らなかった人でも、楽しいと思ってもらえるゲームを作りたいと思いました」と内川氏は述べています。欧米でのリリース時に絶賛を受けたことを考えると、その努力は確かに報われたようです。ドラゴンクエストXI の詳細については、DQ11.com をご覧ください。
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