2020年1月17日
Halon Entertainment がリアルタイム ツールをビジネスの中心として活用
Halon はもともとプリビジュアライゼーションの制作会社として出発しました。その DNA にはバーチャル プロダクションが刻み込まれています。その経験から、Halon は Unreal Engine をビジネスの中心に据えて、大きな影響が生じています。Halon Entertainment の創業者であり、会長を務めている Daniel Gregoire 氏は、次のように述べています。「Unreal Engine のおかげで、より良いビジュアライゼーションを作れるようになったというだけでなく、さまざまな業界の仕事をできるようにもなりました。以前であれば考えもしなかったであろうプロジェクトを引き受けるようになっています」
リアルタイム ワークフローでクリエイティビティの障壁を排除
Halon が創業した 2003 年以降、視覚的なメディアに対するオーディエンスの期待は大幅に高まってきました。その期待に応えるために、視覚的なストーリーテリングのためのツールとアイデアは高度なものになる必要がありました。クリエイティブな作業においてどのような手段をとるかを決めるにあたって、リアルタイム ツールを利用すると、映像制作プロセスの部門間でアイデアを効果的に伝えることができます。「成果物を改善すればするほど、財政面での判断を下すスタジオの幹部まで、そのビジョンを伝えやすくなりました」と Gregoire 氏は述べています。
クリエイティブ上の意思決定を事前に行うと、成果が高品質になり、支出を抑えることができます。映画や VFX のショットは年々複雑なものになり、それに合わせてコストも上昇しています。そういった状況下で、予算を確約する前に最終的な成果物について計画し、視覚化するために、プリビジュアライゼーションを活用することが増えています。

Gregoire 氏は次のように述べています。「プリビジュアライゼーションでは、アイデアをできるだけ早く画面上に表現して、ディレクターが見て、コメントして、イテレーションできるようにすることが常に重視されてきました。ずっと課題となってきたのは、ツールが作業の妨げにならないようにして、イメージをできるだけ早く、できるだけ効果的に作成することです」
画面へとただちにレンダリングできることによって、チームは思考のスピードのままに意思決定を行うことができます。インスピレーションを得られるさまざまなカメラ アングルやキャラクターの配置を探ることができます。「リアルタイムで作業することが重要なのは、まさにその点です」と Gregoire 氏は述べています。

リアルタイム テクノロジーを中心とするスタジオ
プロジェクトの範囲が広がり、チームが大規模になったことを受けて、Halon は、チーム間でリソースを効果的に移動させるには、リアルタイム テクノロジーがパイプラインの中心になり、全員がリアルタイム テクノロジーを使うことになると判断しました。これは理に適った考えでした。Halon は多様なサービスを提供していますが、プリビジュアライゼーションのためのパイプラインは、ゲームのシネマティックス向けのパイプラインとそれほど違いがないからです。Halon の CEO、Chris Ferriter 氏は次のように述べています。「パフォーマンス キャプチャを利用したり、バーチャルなカメラを使ったり、同じことをする傾向があります」
今では、Halon のアーティスト全員が Unreal Engine のジェネラリストとなっています。そのおかげで、Halon は以前よりもずっと幅広いプロジェクトに取り組めるようになりました。「Unreal Engine の利用について、すべてのプロジェクトで標準化を行いました。その結果、以前であれば提供できそうになかった、いくつものサービスを新規事業とすることができました」と Ferriter 氏は述べています。

Gregoire 氏もそれに同意しています。「ロケーション ベース エンターテイメント、デジタル ヒューマン、ほかにもあらゆることを視野に入れています」
ゲームのシネマティックスのスピーディな制作
ゲームのシネマティックスとトレーラーは、Halon の業務において多くの割合を占めています。Halon はそのすべてでリアルタイム テクノロジーを使い、プロジェクトの期間を短縮しています。Gregoire 氏は次のように述べています。「ディレクターとしては、画面での表示を、すぐに自分の望む形で確認したいものです。ボーダーランズ3 では、極めて複雑なセットアップやショットを完成させて、すべてのアイデアを 1 つのものにまとめることができました。実際その中に立って、実行して、判断を下すことができました」
Halon は今でもプリビジュアライゼーションの仕事を多く請け負っています。多くの場合は救援要請を受けてのもので、クリエイティブの方向性を改める必要性があれば、映画制作を軌道に戻す手伝いをします。アクアマンはその一例です。「映画の第 3 幕のために新しいビジョンを考案するための時間は、ごくわずかしかありませんでした」と Gregoire 氏は述べています。
映画のクライマックスでは、2 つの巨大な軍勢が決戦に臨みます。数千のキャラクターが集まり、水中のエフェクトが必要で、爆発を効率的に描写する必要がありました。Halon のプリビジュアライゼーション スーパーバイザー、Ryan McCoy 氏は次のように述べています。「従来のツールではうまくいきそうにありませんでした。シーケンス全体を通じて、数千隻の船があり、水を動かす数十万頭の水生生物がいて、さまざまなレベルの暗闇の上にモーション ブラーを適用し、光線もあります。そして、これらすべてがリアルタイムで計算されます」

時間があまりなかったため、Halon が行った作業は直接編集に回され、カットに取り込まれる予定となっていて、忠実度の高いイテレーションを提供することが不可欠でした。「観客を興醒めさせないように、高い水準を目指す必要がありました」と McCoy 氏は述べています。また、時間の制限もあったため、可能なかぎり最も高速で効果的なワークフローが必要でした。「壮観な光景を効率良くまとめるために、Unreal Engine のパワーが必要でした」と Gregoire 氏は述べています。
完成品レベルのピッチビジュアライゼーションとプリビジュアライゼーション
Unreal Engine は、Halon がプリビジュアライゼーションとピッチビジュアライゼーションのために使う主要なツールとなりました。ビジュアルの忠実度が高く、映像制作者やクリエーターに説得力のあるマテリアルを提供できます。これは、壮大なコンセプトを売り込んだり、優れたアイデアの実現に向けて動き出したりするために役立ちます。「私たちの成果物のビジュアルの品質がずっと向上したので、スタジオの幹部に見せたときには、最終的な成果物の一部を見ているのだと考えるようです」と Gregoire 氏は述べています。SF アドベンチャー映画、アド・アストラのために Halon が行った仕事がその一例です。Ferriter 氏は次のように述べています。「とても面白いものができあがりました。空間内では多くのことが起きていて、ハード ライティングやハード サーフェスが使われています。できあがったプリビジュアライゼーションはほとんどフォトリアルと言っていいもので、最終的な画面でのライティングがどのようなものになるかをよく表していました」

映画、MEG ザ・モンスターのプリビジュアライゼーションとポストビジュアライゼーションでは、チームは、普通はゲームのワークフローで使われる機能を試しました。Gregoire 氏は次のように述べています。「Unreal Engine を使った特別なこととして、敵のキャラクター向けの AI システムを取り入れました。これは、ほとんどの人がビデオ ゲーム向けに使うものです。Ryan McCoy 率いるチームは、その AI システムを使ってシナリオを作成することができました。サメがビーチを泳いでいくと、キャラクターが自動的に避けていくというものです」
従来のワークフローであれば、アニメーションの作業に何日もかかり、1 人あるいは複数人のアーティストによるアクション指導が必要だったでしょう。「こうした高度なシステムを使うことで、以前であれば考えもしなかったような凄いことができるようになりました」と Gregoire 氏は述べています。
一方 McCoy 氏は、Unreal Engine を使って調査や実験を行い、Unreal Engine は単に美しいピクセルをレンダリングするという以上のものであると認識しました。「Unreal Engine は、単なるレンダリング エンジンではありません。万能ナイフのようなものです」
映像制作におけるリアルタイムの今後
Gregoire 氏は、リアルタイムのツールが映像制作において果たす役割は、今後数年で重要なものになっていくと考えていて、「大きな影響、劇的な変化があるでしょう」と述べています。
Halon のチームにとっては、高速なイテレーションによってクリエイティブな作業の自由に行えるようになり、大きな変化が生じています。Gregoire 氏は次のように述べています。「以前は、バーチャルなカメラで撮影するときは、ショットを撮影して、保存して、ベイクして、おそらく翌日には見られるだろうという感じでした。変更を加える必要があるときには、クリエイティブな作業を行ってからその結果を実際に見られるまで、1 日かあるいはもう少しかかりました」
Halon は、リアルタイム テクノロジーにコミットした結果、ショットへの変更を即時に確認できるようになりました。「気にいらないところがあれば変更できますし、気にいったのであればそこで止めて次に移ることができます。私の時間もクルーの時間も、ずっと効率的に使えるようになりました」と Gregoire 氏は述べています。
できあがる成果物は非常に高水準で、ただアイデアを伝えるだけでなく、それ以上のことに利用できます。Gregoire 氏は次のように述べています。「Unreal Engine は、ビジュアルの品質を簡単に引き上げてくれました。ビジュアル面で非常に見応えのある成果物を作り出すことができ、見た人は最終的なものと見分けが付かないこともあります。そのおかげで、長編映画、テレビ番組、コマーシャルなどの最終的な映像を Unreal Engine で作成しやすい立場になっています」
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