Image courtesy of Rooster Teeth

マシニマの戦闘から前衛的なアニメーションまで: Rooster Teeth のリアルタイム ワークフロー

Rob DiFiglia
Pixar による初の全編コンピュータ アニメーションの長編映画『トイ・ストーリー』のリリースによってデジタルアニメーション産業が登場してから25年以上が経ちました。

当時、コンピュータ技術を使用してこれほどのクオリティを実現することは、大手スタジオ以外には不可能な夢だと思われていました。その後、何年にもわたり、最高品質の映像を実現するためにアニメーション パイプラインを構築するには、依然として非常に多くの費用がかかりました。

しかしビデオゲーム業界の爆発的な成長により、この状況は一変しました。より多くのツールが民主化されたことにより、若いクリエイティブな才能が大手スタジオに依存することなく、自分たちのストーリーを語る方法を見つけられるようになりました。
 

「それが私にとっては最もエキサイティングなことです。私の考えでは、それは競争の場がリセットされるようなものです」と、 Rooster Teeth のアニメーション共同責任者である Sean Hinz 氏は述べています。「私が楽しんでいるコンテンツや、Unreal がクリエイティブなビジョナリーの活動を後押ししているあらゆる方法を考えると、ビデオゲームと同様アニメーションの未来に期待せずにはいられません」

Rooster Teeth のように、強い DIY 精神を持ち、草の根の活動を行ってきた制作会社にとっては、これは長年待ち望まれていた展開であり、また、彼らが当初から手にしていたものでもあります。

リアルタイム技術が創造性を民主化

Rooster Teeth はファン主導、コミュニティ構築型のエンターテイメント会社です。現在では、ワールドクラスのアニメーションスタジオに加えて、放送と実写制作機能を備えていますが、そもそもは、スペア ベッドルームという質素な設えから会社は始まりました。

Rooster Teeth は、まさにここから、世界中で熱狂的なファンを生み出すきっかけとなったコミックSFマシニマのウェブシリーズ、 Red vs. Blue (RvB) を生み出したのです。
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マシニマとは、ビデオゲームのコンテンツとゲームエンジンを使用して、ゲームの映像を使ったストーリーを作成する DIY 映像制作の一種です。RvB は、ミリタリーSFのファースト パーソン シューティング ゲーム Halo シリーズの コンピュータ グラフィックス を使用して、新しいビデオコンテンツを制作しました。

Rooster Teeth は、このシリーズがカルト的な人気を獲得し、その成功をもとに、現在最も人気のある洋画アニメシリーズである RWBY などのオリジナルコンテンツを制作してきました。

Rooster Teeth は、ビデオゲームの世界からスタートしたスタジオにふさわしく、コンテンツの制作に Unreal Engine を採用することが多くなりました。この技術のオープンでアクセスしやすい性質は、Rooster Teeth のスタジオ設立当初からのDIY 精神にぴったりマッチしています。
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アニメーションワークフローを解放する

Hinz 氏がニューメディアに携わるようになって10年ほどになります。 彼はインディーズ企業の ScrewAttack でニュースおよびイベントマネージャーとしてキャリアを開始し、ついにはアニメーションのプロデューサーに転身しました。

彼は、Rooster Teeth が実際に Unreal Engine を使い始めたのは、純粋に、人気のYouTubeチャンネル Death Battle 向けの3D格闘技のレンダリングソリューションとしてだったと説明します。

しかし、複数のプロジェクトで同じレンダリングファームを活用しようとしていたため、キューを共有するための実用的な方法が見つかりませんでした。「私たちの解決策は、リアルタイム レンダリング ソリューションを使って、そのプロセスを各アーティストのマシンに移すことでした」と Hinz 氏は述べています。

当初は3~4分の短いアニメーションとして始まったものが今では完全な12分のコンテンツになり、2Dキャラクター アニメーションの独立した3D背景になり、さらには、スタジオ独自のマシニマ プラットフォームの開発にさえ繋がりました。
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Rooster Teeth が Unreal Engine を深く知るにつれ、アニメーション制作の完全に新しい方法を見出しました。チームは主にAutodesk Maya を使用しており、リグはこれまでは社内で開発した独自のシステムを使ってセットアップされていました。彼らは基本的にUnreal Engine でスタティック メッシュを作成し、Mayaでキャラクターをアニメーション化してから、アニメーションデータをFBXとして Unreal Engine のビルトイン マルチ トラック エディタである シーケンサーでメッシュに適用しています。

「時間が経つにつれ、Unreal 向けにアセットを準備することで、より多くのコントロールが可能になることがわかりました。今後は、そのアプローチに合わせたリギングソリューションを使用する予定です」と Hinz 氏は説明します。「Maya から Unreal への基本的なワークフローに加えて、このエンジンの最も優れた点は、リアルタイムフィードバックへのアクセスと、変更が迅速に実装されることです。そのため、レビュー中にシーンのライティングを微調整する場合でも、複数のプロジェクトでアセットを共有する場合でも、Unreal は従来のアニメーション パイプラインよりも柔軟に対応することができます」と述べています。

同スタジオでは最近、この新しい Unreal Engine アニメーション パイプラインを代表的な作品の最新シリーズで試してみました。

Red vs. Blue: Zero でのリアルタイムワークフロー

Halo の世界を舞台にしたRvBは、終わりの見えない内戦に巻き込まれた2つの兵士チームを中心としていますが、彼らの冒険は時空を超えてRvBのシーズン18-Red vs. Blue: Zero—へと続きます。このシーズンでは、スタジオはこれまでとは少し違う方法を採用しました。

メインキャラクターたちはこれまで通り、Halo シリーズのモデルに基づく一方、このシーズンでは、Halo シリーズにはない環境や武器、モンスターなどが登場します。これらの追加モデルには、Paragon 社のモンスターデザイン、Ying Pei Games 社の武器やキャラクターモデルなど、 Unreal マーケットプレイスの無料アセットが使用されています。
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「Red vs. Blue シーズン18の制作に際して、Unreal Engine を使用した方法はいくつかあります」と Hinz 氏は語ります。「出発点は前述した Maya のワークフローでしたが、FBXを出力するのは手動でしたし、以前の Death Battle では1シーンに2人のキャラクターしか登場しませんでした」

現在では、ひとつのシーンに5~8個のユニークなメッシュが存在するため、エンジニアはすべてのアセットを個別のFBXファイルとしてパッケージ化し、シーケンサーに出力するツールを作成しました。

このチームは、より多くの時間をアニメーションに割くために、Unreal マーケットプレイス を活用して環境を構築し、パッケージ化された VFX アセットを調達しました。ライティング、レンダリング、合成のほとんどはエンジン内で行われました。
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Neon KonbiniHuman Beans

Rooster Teeth は、さまざまなスタイルのアニメーションをメインにしたショーにおいても、Unreal Engine を使用して新しい試みを行っています。その最新作が Neon Konbini と Human Beansです。

Neon Konbini は、RWBY Chibi のスケッチベースのコメディや、Rooster Teeth の新しい前衛的なアイデアを含む、さまざまなジャンルのストーリーテリングの手段となっています。
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Human Beans は監督である Joshua Kazemi 氏のアイデアから生まれました。この作品は、コーヒー豆が人間の世界に移住する物語で、彼は新しい仕事を見つけようと奮闘します。「私たちは、 “豆”のキャラクターが人間世界のリアリティと視覚的に衝突し、分断が深まる様子を示したかったため、すべてのキャラクターは Harmony でアニメーション化され、Unrealで作成した超現実的な環境に取り込まれました」と Hinz 氏は説明します。
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このチームは、もともと DBX という Death Battle の姉妹番組のアニメーションのためにこのルックを開発しいていたため、2シーズンに渡ってメディアミックスの経験を重ねてきました。DBXと Human Beans のルックは、The SpongeBob Movie や The Amazing World of Gumball のような、2Dと3Dのハイブリッド アニメーションのユニークなアプローチに多少なりとも影響を受けています。

チームは、Maya からアニメーションデータを取り込んでキャラクターを取り込むのと同様の方法を使用しています。しかし今回は、キャラクターのアニメーションは Harmony Toon Boom で行い、画像シーケンスを取り込んで、社内で開発したカスタム スプライト フリップ ブック ツールと組み合わせます。

そして、チームが開発したシェーダーマテリアルを組み合わせ、必要に応じて3D環境で光と影が相互作用できるようにしました。「こうして、2Dアニメーションのフレームを様々な複雑な空間に素早く実装することができます。また、必要に応じて手動で合成するとコストがかかる反射などのユニークなワールド インタラクションもキャストすることができます」と Hinz 氏は述べています。「すべてシーケンサーを使用して、エディトリアル用にレンダリングしています」
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Unreal Engineを使用したより高速、より自由なアニメーションプロセス

従来の CG パイプラインから Unreal Engine パイプラインに移行したことで大きく変わったことのひとつに、スケジュール、トラッキング、レビューと承認、リソースのロードなどのプロジェクト管理に対するアプローチがあります。

「何よりも、私たち自身がより柔軟に対応できるようになりました」と Hinz 氏は述べています。「従来のパイプラインでは、プロセスに多くの人が関わっていたため、バグやミスが発生するたびに、制作の流れに大きな混乱をきたすことがありました。Unreal Engine は、そのような要素を完全に取り除くことはありませんが、軽減することができました」と述べています。

これは、リアルタイム技術によって、何か問題が発生した場合に Rooster Teeth のチームはより簡単に軌道修正できるようになったからだと Hinz 氏は説明します。「また、リアルタイムにルックアップ開発を行うことができるため、正面から課題に取り組むことがより容易になりました。もちろん、パイプライン上のショットのトラッキング、レビューや承認のためのアセットの提出、一般的なワークフローなどは、依然として非常に標準化されたプロセスを使用しています。しかし、既存のツールを使ってより迅速にイテレーションすることができ、創造性に集中するようにしています」

Hinz 氏によると、Unreal Engine パイプラインへの移行に対する制作チームの反応は、ディレクター、プロデューサー、アーティスト、パイプラインTDを問わず、全般的に好意的なものでした。「すべての問題を即座に解決したわけではありませんが、これまでなら大きな課題となっていたコンテンツの制作が可能になりました。レンダリングファームに縛られることなく、個々のアーティストがローカルでコンテンツを制作できるようになったことや、マーケットプレイスのアセットにアクセスできるようになったこと、新しいことを試せるようになったことなど、Unreal Engine は我々のプロダクションを向上させるツールとなりました」と説明します。
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チームは、 ブループリント とノードベースの マテリアル システムも活用しています。「これらは、私たちのパイプラインを動かすのに非常に大きな役割を果たしています。ビジュアル ポストプロダクション チームは、シネマティック空間でデフォルトで合成やレンダリングのオプションを追加できるため、ムービーレンダリングキューの機能をとても喜んでいます。また、ショーのルックを洗練させ、コンテンツの多様性を高めるのに最適な Unreal プラグインやシェーダーも多数あります」と Hinz 氏は述べています。

クリエイターに公平な機会をもたらす

Rooster Teeth のストーリーは、ビデオゲーム技術が創造性の民主化に貢献していることを示す素晴らしい実例になります。従来型のマシニマ制作であれ、エンジンを直接操作することであれ、DIYコンテンツ制作者は、強力なツールと、25年前に「トイ・ストーリー」が初めてスクリーンに登場したときには想像もできなかったようなレベルの創造の自由を手に入れることができます。

さらに、 Unreal Engine 5 に搭載される新しいアニメーション ツールによって、これらの創造的な手段はさらに広がります。アニメーターになるにはエキサイティングな時代です。Pixarの作品に携わらなくても、自宅で、あたなのベッドルームで今日から始めることができるのです。

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