ピラミッドの中の大空間については、Nigel と Thom が「How to Disappear Completely」、「Pyramid Song」、「You and Whose Army」の 3 曲をフィーチャーした部屋にしたいと希望していました。私たちがデザインした部屋は巨大で、六角形をベースにしていたので、Nigel は 6 ポイントのサラウンドで曲をリミックスすることを思いついたのです。このアプローチは、効果てきめんでした。プレイヤーが空間を動き回ることで、曲のさまざまな要素が聞こえてくるのです。このアプローチが成功したことで、このアプローチを他の楽曲や空間にも拡張することができました。たとえば、ピラミッドの中にある「Treefingers」などに適用しています。この曲にはマルチトラック音源がなかったのですが、Nigel が他の要素を使用してサラウンドでミキシングすることができました。
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[namethemachine]、プロデューサー、Matthew Davis 氏:最初のブリーフィングでは、「爆発した楽曲」という概念を聞かされました。つまり、レコードとフロアの両方にたくさんの素材があり、すべてを構成要素に分解して特定の方法で配置することは、その素材に宿る精神を忠実に表現するだけでなく、体験を構築するために不可欠であるということです。
Sean Evans 氏:私たちは、伝統的な美術館のようなライティングではなく、長い間忘れ去られていた神社をイメージしたライティングを追求しました。このイメージは、伝統的なライティング、プロジェクション、照らし出されたサーフェスを組み合わせることで、実現することができました。このプロジェクション技術は私たちのチームが開発したもので、びっくりするほど高価なものではなく、1 つの部屋の中で膨大な数のサーフェスに使用することができます。とても効果的なんですよ。ライトティングされたアートワークにも効果的です。暗い廊下を歩いていて、アートが道しるべになっているのは素晴らしい演出です。
Carlos Garcias [Arbitrarily Good Productions、シニア テクニカルアーティスト] が行ったもう 1 つのカスタム ライティングは、ビデオ スクリーンに光を投射させるというものでした。これは、The Televisions の部屋や Pixel Warehouse でご覧いただけます。大きなスクリーンがシーンをダイナミックに照らし出します。
Chelsea Hash 氏:Unreal Engine による壮大なプロトタイプのプリビジュアライゼーションとグレーボックス テストは、Radiohead のクリエイティブ グループと密に連携を取りながら Sean が開発しました。これらを活用したことで、きわめて有名な空間の環境をさらに洗練させる作業を、制作のかなり早い段階で確信を持って開始できるプロセスを設定することができたのです。壮大な抽象的空間と伝統的な空間とのバランスとペースを把握することで、技術的な問題を内容で解決することができました。長い廊下は、落書き用のキャンバスになったり、エフェクト用に暗くしたり、音楽や人で満たしたりすることができました。これは、プレイヤーに特定の感情を想起してもらうことができるように、ツールキットのすべてのツールを駆使して、コンクリートの倉庫から進化させて、徐々に外皮で覆ったり、隠された状態にしたり、混雑した状況にしたり、孤立させた状態にしたりしました。
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特定の感情を呼び起こし、空間を変化させるために、色はどのように使用されたのでしょうか?
Sean Evans 氏:Chelsea と私は、非常に意図的に色を視覚的な道しるべとして使用しました。部屋ごとに配色が異なるため、プレイヤーは、自分の現在地を認識し、徐々に慣れていきます。これは、ライティングとも連動しています。この展覧会全体に、ごく初期の段階からこういった思考プロセスが組み込まれており、すべてのスキームがペース配分され、マッピングされています。
それぞれの部屋は、どのようなものから着想を得たのでしょうか?
Sean Evans 氏:すべての部屋に、抽象的なものであってもテーマがあります。先ほどもお話しましたが、全体的なマップは迷宮、およびバベルの図書館に関する 絵 や文章の影響を受けています。六角形はこの図書館からヒントを得ています。バベルの図書館は、同じ大きさの六角形の部屋だけで構成され、各部屋をつなぐ廊下もない架空の空間です。長い廊下が必要でしたので、その考えにはあまりこだわりませんでした。
部屋の大部分は、その部屋を彩るアートワークを中心にデザインされています。これらのアートワークは、Thom、Dan、Christine Jones が手がけたキュレーションに基づいています。ピラミッドに入る前の 1 階の部屋は、物理的に存在し得る空間だと感じてもらえるようなデザインになっています。ピラミッドの中に入ると、この空間はより空っぽで、存在し得ない空間に感じられるように意図されています。
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Ghost Chamber のように、開発が進むにつれて変異していく部屋もあります。これは、この部屋の最初の概念実証デモのバージョンですが、この部屋は大幅に変更されました。Thom のロボット ボイスのコーラスやゴーストのアニメーションを加えることで、部屋に命が吹き込まれたのです。また、The Paper Chamber のように、原画を忠実に再現した部屋もあります。スケッチブックのページや走り書き、歌詞のシートなど、大量のアートが登場します。基本的には、壁も床も天井もすべて紙で覆てしまおうとしました。同じようなことを、The Televisions の部屋でも考えました。短編ビデオを大量に再生するので、古いテレビやビデオデッキを床から天井まで積み上げました。Paper Chamber と The Televisions は、あわせ鏡のようなものです。
Chelsea Hash 氏:まず、Radiohead の素材カタログにある共通のテーマとキャラクター表現に基づいたブリーフを作成しました。次に、チームは、アニメーション、レンダリング、リアクションを実験的に組み合わせて開発を進め、多数のキャラクターがその空間の状況を反映できるようにしました。重要だったのは、プレイヤーがランダムでなく、豊かなバリエーションを感じることができることでした。
Arbitrarily Good Productions、アソシエイト プロデューサー、Devon Chapman 氏:このプロジェクトでのキャラクター制作は、非常に手探りを積み重ねたプロセスでした。目標は、当時の Thom と Dan のクリエイティブなエネルギーを、この新しい抽象的な環境にフィットする要素に変換することでした。スケッチからインスピレーションを得て、そういった要素が 3D でも納得のいくものとなり、プレイヤーの感情を刺激できる方法を見つけようとしました。Radiohead の棒人間、クマ、ミノタウロスなど、新しいけれども、ファンにはおなじみのキャラクターが登場します。
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この展覧会では、特に森への小道と「How to Disappear Completely」シーケンスで、優れたパーティクル ワークがありますね。このパーティクル ワークの制作プロセスについてお聞かせください。
Sean Evans 氏:このパーティクル ワークを実現する方法について構想はあったのですが、私は Niagara には精通しているわけではありません。Unreal 外で別のパーティクル システムを使用して機能させることはできましたが、エンジンでパーティクルを飛散させる方法についてはまったく分かりませんでした。最終的に、作成したパーティクル システムの静止画を LIDAR データとしてインポートする方法を見つけて、インポートしたものを Unreal で使用して Chelsea と Niagara に精通したスタッフにペーシングとスケーリングを見せました。