スポットライト

2025年5月22日

Civil Engine、交通計画における 3D ビジュアライゼーションの普及

Civil Engine

Civil Engineering

Beyond CAD の創業者 Sam Lytle 氏は、2010 年に土木工学の分野に足を踏み入れた直後から、3D ビジュアライゼーションに強い魅力を感じていました。彼はそれを「強力なコミュニケーション ツールになり得る」と捉え、現在でも「特に公共の資金や承認を必要とする土木工学プロジェクトにとって不可欠な要素」だと考えています。

しかし同時に、業界が抱えるいくつかの課題にも気づきました。中小規模のプロジェクトでは 3D ビジュアライゼーションの導入が現実的でなく、交通および土木工学業界に特化したソリューションを提供する企業もほとんど存在していなかったのです。

「交通分野における 3D ビジュアライゼーションは、長らく非常に高額でした。業界特化型のツールやエコシステムがなかったからです」と Lytle 氏は語ります。「従来は、1 億ドル規模以上の巨大プロジェクトでないと、パブリック ミーティングや報道向けの広報活動で 3D ビジュアライゼーションを導入するだけの合理性があるとは見なされませんでした」

こうした気づきをきっかけに、彼は 2020 年に Beyond CAD を設立しました。最初のプロダクトとして開発されたのが、Unreal Engine を基盤としたアプリケーション Beyond Typicals です。これは交通および土木インフラ分野の専門家のために設計されたツールで、モジュール式の街路設計アプローチを採用しています。舗装、車線、路面標示、フォリッジなどを素早く組み合わせて、道路の構成を柔軟にビジュアル化することができます。
1 年以上にわたる集中的な開発を経て、Beyond CAD は Unreal Engine をベースにした新たなアプリケーション Civil Engine をリリースしました。Civil Engine は、数週間かかっていた CAD 図面からの 3D ビジュアライゼーションを、わずか数時間で実現できるように設計されています。リアルなレンダリングとアニメーションにより、インフラ プロジェクトをこれまでになく手軽かつ迅速に可視化することが可能です。

このたび一般公開された Civil Engine により、Beyond CAD は「都市計画における視覚表現を、誰もが使える共通のコミュニケーション手段にする」という目標に、また一歩近づきました。 

「Beyond Typicals や Civil Engine のようなツールによって、こうしたプロジェクトにおける 3D ビジュアライゼーションのハードルが下がったことで、中規模や小規模なプロジェクトでも、複雑な計画内容をよりわかりやすく伝えることができるようになりました」と Lytle 氏は語ります。
Civil Engine user interface showing cross section of parking structure.
Courtesy of Beyond CAD inc.

Unreal Engine を中核に

Beyond Typicals と Civil Engine の両製品は、いずれも Unreal Engine を基盤に開発されています。「Unreal Engine が、開発における重い処理の多くを引き受けてくれるので、私たちのような小さなチームでも、本来なら実現不可能だった製品を構想し、開発できるのです」と Lytle 氏は語ります。Beyond CAD では、多くのアセットやマテリアルを Quixel Bridge や Fab マーケットプレイスから調達しています。また、大規模かつ複雑なシーンを可能にするために Nanite も活用しています。 

当初、Beyond CAD は独自のランチャーを使って製品を提供していました。しかし、Epic Games Launcher (EGL) 経由で配布する利点があまりに多かったことから、現在ではこれを主要な配布手段としています。「一部の AEC 業界のユーザーは、当初『ゲーム用ランチャー』を使うことに抵抗を感じていました。そのため、ZIP 形式での配布も行っています。しかし今では、多くのユーザーが EGL に移行しています。特にアップデート配信時など、EGL の方が安定しているためです」と Lytle 氏は説明します。

開発プロセスにおいて Lytle 氏が特に重宝しているのが、ブループリント ビジュアル スクリプティング システムです。コードは書けなくても、土木工学の専門知識を活かして、Beyond CAD の開発にしっかり関わることができるからです。

「私たちの製品が特別なのは、私自身が細部にまで徹底的にこだわって作っているからです」と彼は言います。「たとえば、マテリアルの質感や車両オプションの構成、3D アセット ライブラリ、サンプル プロジェクトなど、すべて私の構想がブループリントやデータ テーブルを通じて具体化されたものです」

「今でもコードは書けませんが、ブループリントのおかげで開発に直接関わることができています」
Civil Engine user interface organizing a parking structure.
Courtesy of Beyond CAD inc.

Unreal Engine を活用したカスタム 3D ビジュアライゼーション サービス

Beyond CAD は Unreal Engine を活用した製品開発で大きな成功を収めていますが、その経験と技術力を生かして、クライアント向けに 3D ビジュアライゼーションの受託サービスも提供しています。サービスの内容は多岐にわたります。特定の 3D モデルの作成から、大規模プロジェクト全体のビジュアライゼーションの請負まで対応可能です。 

こうしたプロジェクトにおいては Civil Engine を活用することが多いものの、Beyond CAD チームにはソフトウェア自体をクライアントのニーズに合わせてカスタマイズできる強みもあります。たとえば Lytle 氏によると、あるクライアントは特定の採石場用ダンプトラックを、可動部分も含めて再現する必要がありました。そのため Beyond CAD は、このダンプトラックをバックエンドで追加し、クライアントの要望に応えると同時に、Civil Engine の次期バージョンにもこのアセットを組み込むことができました。 

「『自身でドッグフードを食べよ (自社製品を自ら利用して改善し品質を高める)』という言葉があります。その言葉のとおり、実際にクライアント案件で自社ツールを使うことで、ソフトウェアの品質を確実に向上させることができます」と Lytle 氏は語ります。「クオリティが上がり、コストが下がる今、私たちは非常にユニークな立ち位置から、大きな価値を提供できていると感じています」
Civil Engine user interface aerial view of intersection.
Courtesy of Beyond CAD inc.

土木工学における 3D ビジュアライゼーションの未来

Beyond Typicals と Civil Engine は、業界内でも非常にユニークな存在であり、競合となるソフトウェアがほとんどないのが現状です。一見すると、これは確実な成功と普及を約束するように思えるかもしれません。しかし Lytle 氏は、「本当の競争相手は、業界が 3D ビジュアライゼーションにどれだけ投資しようとするかという意識の壁です」と語ります。 

Lytle 氏は、ビジュアライゼーション技術が小規模な案件でも当たり前に使われている建築業界と比較しながら、こう述べます。「私たちは、交通インフラ業界にも同じ変化を起こしたいと考えています。数年後には、3D ビジュアライゼーションは高額で外注する特別な作業ではなく、社内で行うのが当たり前になるような未来を目指しています」 

現在 Civil Engine はバージョン 1 に過ぎませんが、Beyond CAD は今後のバージョンアップに向けて大きな構想を描いています。将来的には、業界を根本から変えるような決定的なツールを作ることを目指しています。Lytle 氏が思い描く将来の Civil Engine は、ライティング、物理演算、環境、アセットといったような Unreal Engine が持つあらゆる機能だけでなく、AI などの最新技術も統合した、いわば「ファースト プリンシプル (第一原理)」的アプローチに基づくツールです。すべての要素に「知能」が備わっているような状態を想定しています。 

「たとえば、ユーザーは交通の動線を配置する必要すらありません。車両が自動で出現し、路面標示や標識を認識して自ら進むべきルートを理解するのです」と Lytle 氏は語ります。「道路の基本モデルも、これまでのように変更がきかないインポート データではなく、設計の進行に合わせて変化および進化する生きたアセットになるでしょう」
Civil Engine user interface building roads and traffic.
Courtesy of Beyond CAD inc.
Lytle 氏は、Beyond CAD の未来、そして Unreal Engine や Epic Games との継続的なパートナーシップに大きな期待を寄せています。この連携により、世界最大級のエンジニアリング企業との取引においても、一定の信頼性とブランド力を得られていると彼は語ります。 

Civil Engine をリリースしたことで、思いがけない反響もありました。それは「ゲーミフィケーションされたバージョン」への関心の高さです。Beyond CAD には、まるで都市育成ゲームやワールド ビルディング ゲームのような、リアルで満足感のあるエクスペリエンスを求める「プレイヤー予備軍」からのリクエストが殺到しています。 

Lytle 氏は、インフラの 3D ビジュアライゼーションがこれほど注目されていることを歓迎しつつも、15 年前から歩み続けてきた道を、少なくとも当面の間は変えるつもりはないといいます。「今は、本物のプロジェクトに取り組むプロフェッショナル向けに、最高の 3D ビジュアライゼーション製品を作ることに注力しています。とはいえ、いつかゲームの世界に踏み出す可能性がないとも言い切れません」と、Lytle 氏は語ります。

「何より素晴らしいのは、私たちのような小さなチームでも、Unreal Engine のようなテクノロジーを駆使して、業界を変えるようなソフトウェアを作り出せる時代に生きているということです。しかもそれが、何年、何十年もかけるのではなく、たった数週間や数か月で進化していくのです」

Unreal Engine のインストール方法

ダウンロード方法

ランチャーをダウンロードする

Unreal Editor をインストールして実行する前に、Epic Games Launcher をダウンロードしてインストールする必要があります。

Epic Games Launcher をインストールする

ダウンロードして、インストールしたら、Epic Games Launcher を開いて、Epic Games アカウントを作成するか、ログインします。

サポートを受けるか、手順 1 でダウンロードした Epic Games Launcher を再起動します。

Unreal Engine をインストールする

ログインしたら、Unreal Engine タブに移動し、インストール ボタンをクリックしてください。最新バージョンのダウンロードが始まります。

インストール方法を確認する

Unreal Editor for Fortnite をお探しですか?

Epic Games Launcher から Unreal Editor for Fortnite を起動して使ってみましょう。

UEFN をダウンロードする

業界の最新イノベーションの情報と無料アセットのお知らせを入手しましょう。

情報を提供することにより、Epic Games Store からのお知らせ、アンケート、特別オファーの受信に同意したものとみなされます。 プライバシーポリシー