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BRON Digital の Fables がリアルタイムのアニメーションでこれまでにないレベルのクリエイティビティを実現

バンクーバーに拠点を置く BRON Studios は、実写とアニメーションでの「映像制作者ファースト」の姿勢を掲げて、2010 年に創業しました。これまでに、ジョーカースキャンダルフェンスなど、アカデミー賞を受賞した複数のプロジェクトに関与してきました。パンデミックに伴い安全性に関する規制が定められたことを受けて、2020 年初頭にはライブ プロダクションが一時停滞しましたが、BRON Studios のアニメーション アーティストは安定して仕事を続けています。BRON Studios の 1 部門である BRON Digital は、ビバリーヒルズ オフィスを本拠地としています。2020 年 7 月に正式に立ち上げられたこの部門は、バーチャル プロダクション技術を使ったアニメーション制作に重点的に取り組んでいます。そのワークフローの中心となっているのが Unreal Engine です。

業界のベテランである EVP の Jason Chen 氏がトップを務める BRON Digital は、その初めてのプロジェクトとなるアニメーション シリーズ、Fables を制作中です。これは、ウサギとカメ三匹の子豚オオカミ少年など、由緒ある古典的な物語をあらためて伝える作品です。今回のビデオ スポットライトでは、Chen 氏と BRON Studios の共同創業者兼 CEO、Aaron L. Gilbert 氏にお話を伺いました。Fables の制作においてリアルタイムのワークフローを取り入れたことでもたらされた多くのメリットについて聞いています。
 

Gilbert 氏は次のように述べています。「多様なストーリーを効率的に伝えられるようになりたいと考えたので、Unreal の使用を検討し始めました。今回のパイプラインでは、迅速かつ効率的に制作を進めることができました。また、仮想的なパイプラインで、自宅から働くことができました」

Fables は 8 つのエピソードで構成されます。各エピソードはまったく異なる世界が舞台で、エピソード間でセットやキャラクターは一切再利用されません。
効率を向上させるために、チームは「Little Hamilton」と呼ばれる仮想的な世界を作りました。この世界は複数のエリアに分かれていて、チームのメンバーが見て回れるようになっています。Chen 氏は次のように述べています。「共通のバックロット (撮影所のそばにある野外撮影用の場所) を作っているようなものです。たとえば Little Hamilton にはウサギ向けのベジタリアン料理を出すビストロがあります。撮影はしていませんが、背景にはあります。次のシーズンで使うこともできます」

チームでは、効率の向上に感謝していますが、アニメーションの開発に Unreal Engine を使用する主な動機となっているのはアイデアについてのイテレーションをリアルタイムで行えることです。これによって、これまでにないレベルのクリエイティビティを実現できています。Gilbert 氏は次のように述べています。「たとえば、Jason がテキスト メッセージで、これを見てくれるかな、と言ってきて、その 4 分後に、これはどうだろう、1 時間後にも、これはどうだろうと言ってきます。今までアニメーションでこのような経験をしたことはありません」
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ロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミ、メキシコシティ、ニュージーランド、オーストラリアにおよぶチームは、2020 年 3 月に北米で COVID-19 が流行したときには、リモートでのコミュニケーションの仕組みをすでに整えてありました。VFX スーパーバイザーとして BRON の実写プロジェクトに取り組んだことがあった Chen 氏が Gilbert 氏に Unreal Engine を紹介し、BRON がアニメーション コンテンツを作成するためのツールとして Unreal Engine を使うことを提案しました。Gilbert 氏はこの提案に喜びました。

実写の映像を制作するには、スタッフ全員が一か所に集まる必要がありますが、アニメーションのプロジェクトにはそのような制約はありません。ディレクター、アニメーター、ライティング アーティスト、VFX アーティスト全員が別の場所にいることもできます。しかし、一人ひとりがリモートで働いていると、作業の共有が難しくなります。ストーリーについてのセッションやアニメーションのレビューから生じるコラボレーションのエネルギーをアーティストが失ってしまいます。

Unreal Engine をハブとして使えば、チーム メンバーが更新をリアルタイムで確認し、ビデオ チャットを使って変更についてすぐその場で話し合うことができ、全員が 1 つの部屋にいるのとほとんど同じような感覚になります。Chen 氏は次のように述べています。「エフェクト、ライティング、モデリングなどを担当するアーティストの全員が毎日話し合っています。常に連絡を取り合い、スプーンをスプーンらしく見せるにはどうすればいいか、髪をより有機的にするにはどうすればいいかなど、個々の問題について最適な解決策を見つけようとしています。ワークフローとプロセスの全体を通じて、全員が定期的にコミュニケーションを取り、互いにフィードバックを提供することで、高品質を実現しています」
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リアルタイム アニメーションへの移行から得られた別のメリットとして、もともと実写を担当していた BRON のスタッフの多くが迅速にトレーニングを受け、Unreal Engine で仕事をデジタル化できた点が挙げられます。その結果、Fables のチームは、アート ディレクション、ライティング、特殊効果など、映像制作のさまざまな面で豊富な経験を持つ人材を活用できました。それと同時に、それらの人材は新しいスキルを身に付け、パンデミックの期間中にも働き続けることができました。

「おかげで実写のスタッフを活用できました。今では威圧的な感じを与えることなく参加できるようになっています。ビデオ チャットを使って、リアルタイムでクリエイティブな意思決定を行えるようになっています」と Chen 氏は述べています。

Unreal Engine は、スピーディなイテレーションによってクリエイティビティを伸ばすことができるだけでなく、かつてないレベルの効率を実現することもできます。「1 日で 125 以上のカメラ セットアップを済ませることができます」と Chen 氏は述べています。

これまで述べたメリットに加えて、Gilbert 氏は、Unreal Engine によって複数のメディアへの展開が促進されると考えています。すでに手の内にあるアセットから、ゲーム化や商品化などの機会が生じます。「そうした機会を活かし、補助的なものを比較的すばやく作成できる能力は、以前では得られなかったものです」と Gilbert 氏は述べています。

Chen 氏によると、Little Hamilton を作成する際には、Fables がいつかほかのメディアの基盤となる可能性を考慮していました。世界がゲーム エンジン内にすでに構築されているため、たとえばゲームへの移行は、従来のパイプラインを使っていた場合と比べればごく容易です。
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Chen 氏は次のように述べています。「このエクスペリエンスを発展させて、息の長いものにしたいと考えています。画面で見られるエピソードは 1 つ 30 分ですが、数時間、数日、数か月、数年にわたって楽しまれる、インタラクティブなエクスペリエンス、あるいはバーチャルなテーマ パークのようなものにしたいと思っています。最終的に望んでいるものが包括的な資産なのであれば、Unreal Engine はその真価を発揮できます」

これまで述べてきたメリットがあることから、BRON Digital に Unreal Engine が適していることは明白です。「映像制作者を中心にするという点において、Unreal を超えるエンジンはないと思います」と Chen 氏は述べています。

Gilbert 氏もその意見に同意しています。「Unreal Engine 内で利用できるものだけと比べても、太刀打ちできるものはほかにありませんでした。今でもありません。制約があるとすれば、それは自分たちの創造力だけです。これは楽しいことです」

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