2019年6月13日
Booz Allen Hamilton がミッション クリティカルなトレーニングとシミュレーションに UE4 を活用
しかし、過去数年で、純粋なコンサルティング会社からテクノロジー ソリューションを提供する企業へと変化して、カスタムのトレーシングなどの分野でクライアントのニーズに応えるようになりました。Booz Allen Hamilton は、従来のマニュアルに加えてリアルタイムのシミュレーションを使ったデジタル コンテンツを作成するようになり、トレーニングのエクスペリエンスを強化しています。
時間が経つなかで、Booz Allen Hamilton は、リアルタイム テクノロジーを牽引しているゲーム開発業界が、シミュレーション業界よりも速くイノベーションを起こしていることに気付きました。そして、仮想現実や拡張現実など、ゲーム開発業界で急速に発展しているスキルとテクノロジーを自社のトレーニング ソリューションに活用する可能性を見出しました。

Booz Allen Hamilton の VR/AR のエキスパートであり、配置される兵士向けのイマーシブなトレーニング アプリケーションの開発に取り組んでいる Derald Wise 氏は、次のように述べています。「ここ 2、3 年で、ゲーム開発チームを設立して、それがゲーム スタジオへと変化しました。AAA ゲームの業界で一般的な慣習の多くを取り入れ始めています」
現在、Booz Allen Hamilton は、ワシントン州、テキサス州、ノース カロライナ州、ワシントン D.C. にスタジオを構えています。すべてのスタジオは、ゲーム プラットフォーム、ゲーム エンジン、3D ソフトウェアの機能を融合させることに重点的に取り組んでいます。また、交換されるまで最長で 15 年利用される、古くからあるシステムとも連携する必要があります。
その結果、チームは独自のシステムを含めて多様なテクノロジーに触れることになり、柔軟性が要求されるようになっています。そのことが、可能なら Unreal Engine を選ぶようにしている理由の 1 つとなっています。Unreal Engine は、オープン ソースの C++ アーキテクチャを採用しているため、デベロッパーをプロジェクトに参加させて規模を拡大することができます。また、最先端のソリューションを使う複数のチームの共通言語として機能します。Unreal Engine のプラットフォームでは、すばやいイテレーションが可能であり、サポートが必要なレガシー システムとも連携できます。
「課題となっているのは、最先端のテクノロジーを使うことだけではありません。国防総省のポートフォリオにまだ存在し続ける、古いゲーム エンジンやテクノロジーを利用してコンテンツを提供できる柔軟性も必要です」と Wise 氏は述べています。
フライト シミュレーターから歩兵のトレーニングまで:高度なディテールへの需要の高まり
軍事市場でトレーニングにシミュレーションを取り入れた最初期の例として最もよく知られているもののなかに、フライト シミュレーターがあります。軍隊での飛行機の実機を使ったトレーニングは、コストが高く、非常に危険であるためです。また、当時、ハードウェアとソフトウェアのテクノロジーのコストに見合う高価な投資と言えるのは航空機だけであったという事情もありました。機体の調達にシミュレーターが含まれることも珍しくありませんでした。一方、歩兵や衛生兵の地上トレーニングなどについては、シミュレーションによるトレーニングのコストが高すぎたうえ、個々の兵士のトレーニングにゲーム環境を利用するという考えがまだ受け入れられていませんでした。

「FPS やゲーム プラットフォームなどはシミュレーションとは見なされず、避けられていました。まさにゲーム、子どもが遊ぶもの、あるいは兵士が兵舎で遊ぶものとして見られていて、トレーニングのツールとは考えられていませんでした。2010 年代になってようやく、ゲーム エンジンやビデオ ゲームをツールとして利用するという考えが広まってきたようです」と Wise 氏は述べています。
また、次のように付け加えています。「コストが下がることも待っていました。コストが下がれば、多くのデベロッパーが利用できるようになり、顧客基盤も大きくなります。最新のゲーム エンジンの機能を目にした人たちが、そのテクノロジーを利用できる場所を見つけ始めました。戦術的あるいは戦略的なレベルでシミュレーションを作成するという実用的なユースケースがある組織が顧客の多くを占めています」
既製のエンジンである Unreal Engine と、HTC Vive や Oculus などの手頃なハードウェアが登場したことで、障壁が取り除かれました。しかし、こうした新しいプラットフォームでは、シミュレーションには詳細なディテールを反映したビジュアルが求められるようになりました。
フライト トレーニングでは、上空数千フィートを飛行するパイロットが、大都市、川、山脈、特徴的な地形を見て、大きな地形のなかでの自分の位置を把握します。この場合は、低解像度のモデルでも十分です。しかし、地上での歩兵のトレーニング用にシミュレーションを作成する場合、リアリズムとディテールがずっと重要になります。「モノクロの粗いグラフィックではなく、草の葉まで描画されている必要があります」と Wise 氏は述べています。
このディテールへのニーズが、歩兵向けのシミュレーションに Unreal Engine が使われる理由の 1 つです。Wise 氏は次のように述べています。「従来、軍事向けのシミュレーションには、ビデオ ゲームに期待されるようなディテールやイマーシブなエクスペリエンスはありませんでした。Unreal Engine が作り出すディテールに富んだビジュアルが重要であるのは、作戦環境で兵士が現実の世界を歩き回るときには、あらゆるディテールが情報源となるからです。それらの情報は、状況認識に役立つというだけでなく、意思決定にも利用されます。特に生死に関わるような判断においてはディテールが重要です。VR 環境でリアルなビジュアルを作成できることにはプロダクション面で高い価値があり、非常に重要なのです」

降下指揮官向けの VR トレーニング:危険要因の追加と制約の排除
Booz Allen Hamilton が軍事分野で Unreal Engine を使ったプロジェクトの初期のものに、新しい降下指揮官 (jumpmaster) 向けに安全面について教育する VR トレーニングがありました。降下指揮官とは、空挺部隊のパラシュート部隊に所属するエキスパートです。兵士を訓練して航空機から安全に飛び立てるようにすることと、降下作戦を監督することの責任を負います。
「降下指揮官は、地形を観察し、航空機についての知識を持ち、高ストレスの狭い環境でパラシュート部隊の隊員と装備について把握する必要があります」と Wise 氏は述べています。
トレーニングの重要な部分は実際に行われますが、そこでは安全面と予算から制約が生じます。現実のミッションに備えるうえでは万全なトレーニングとは言えません。これも、仮想的なトレーニングが効果的な領域です。

「仮想環境では、危険要因を追加したり、制約を取り除いたりすることができます。トレーニングを通じて、個人がどう反応するかを見て、リスクあるいは潜在的な問題点を特定し、必要に応じて調整できます」
車輪の再発明の回避:既製のソリューションのメリット
Wise 氏によると、シミュレーション業界全体で、独自のプラットフォームから既製のソリューションへの移行が進んでいます。Wise 氏は次のように述べています。「プロダクションでの高度なビジュアルと高いフレーム レート効率が求められています。最新のゲーム エンジンを使えばそれを実現できます。シミュレーション業界の企業は、ビジネス モデルについて再考しています。そして、UE4 のようなゲーム エンジンを利用できるのに、独自のゲーム エンジンに費用をかけることが理に適っているのだろうかと、自らに問いかけています。Unreal Engine は成果と品質について実績があり、デベロッパーにも接触しやすくなります。そして、新しいゲーム エンジンの開発ではなく、コンテンツの作成とソリューションの提供に集中できます」
「独自のゲーム エンジンを使う場合、そのエコシステムを構築するために大量のリソースが必要であり、それに加えて、シミュレーションや機能の作成が必要になります。一方で、既製のソリューションのライセンスを受けてワークフローに組み込むという選択肢もあります。車輪を再発明するか、ソリューションの提供に注力するかの違いがあります」
ブループリント:デベロッパーにとっての使いやすさ
Wise 氏は、Unreal Engine の導入が進んでいる主な要因の 1 つに、その使いやすさを挙げています。たとえば、ビジュアル スクリプト言語、ブループリントは、プログラミングに馴染みのない人間にとっての学習手段となります。これは Wise 氏自身が経験したことでもあります。「これまで C++ のようなプログラミング言語に触れたことのない人に、プログラミングの構文について教えるのはとても難しく、おじけづかせてしまう場合もあります。ブループリントはすべてをコンテナ化します。関数やアクションが表示され、それらのノードをつなげてみて、何がうまくいって、何がうまくいかないか確かめることができます」と Wise 氏は述べています。
「すぐ開発に取りかかることができます。原因と結果、つまりプログラミング言語内で決定されたことの関係を見て、選択したものが自分が必要としていたものと違った場合は、元に戻すことができます。プログラマーとしてトレーニングを受けたことがなかった人でも、まずノードについて理解し、それからもう少し理解を深めれば、スクリプト パッケージがどう構成されているかわかります。プログラミング言語を逆向きに学習していくようなものです」
Wise 氏は、最新のゲーム エンジンの導入は、業界にとって「大きなパラダイム シフト」であると述べています。「コスト、使いやすさ、ゲーム エンジンについて学校で教育を受けた労働力、これらが重なり合った結果だと考えています。全体的に教育水準が上がり、ゲーム エンジンを利用する能力が高まっています。その影響は伝統的な学校にもおよびつつあります。Unreal Engine のような最新のゲーム エンジンを使えば、プログラマーを雇い、規模を拡大することが、ずっと簡単になります」と Wise 氏は述べています。
目に見えるものを超えて
Booz Allen Hamilton では、Unreal Engine を物理環境のシミュレーション以外にも利用しています。空気中を伝達する目に見えない有害物、たとえば化学的粒子、生物学的粒子、放射性粒子が移動する様子のビジュアライゼーションにも Unreal Engine が使われています。このビジュアライゼーションによって、医療トレーニングや、壊滅的な損害をもたらすイベントへの対応のトレーニングが強化されることが期待されています。Unreal Engine を使えば、重力、風向き、大気圧、温度など、ほかにも現実世界のさまざまな面を再現できます。
「Unreal Engine を使えば、電波が伝わる様子など、目に見えないもののビジュアライゼーションが可能になります。電波の動きと、さまざまな環境や物質への反応を見ることができます。これまでは理解が難しかった概念や理論について、学生がよりよく理解できるようになるでしょう」と Wise 氏は述べています。
また、Booz Allen Hamilton では、地下空間のモデルを作成しました。地下空間では、大規模な建造物であっても、閉ざされたトンネル網であっても、移動するうえで視界、音、光、コミュニケーションが重要です。

「さまざまな形で Unreal を利用できます。ビジュアルを美しくすることはもちろん、目に見えない各種のデータについて理解するためにも使えます。それは、建造物の設計、トレーニング、環境とのインタラクションなど、あらゆることに影響します」
と Wise 氏は述べ、将来に期待を寄せています。「UE4 のようなゲーム エンジンは、現実の物理を再現するニーズがある多くの業界で、基本的な試験台となっていくでしょう。仮想的な風洞あるいは真空状態での宇宙船の設計、仮想的な都市を案内する人工知能のテストなど、あらゆることに利用できます。そうしたことの多くがすでに始まっていますが、ゲーム エンジンの導入は、まもなくすべての業界に影響するでしょう。仮想環境に物理法則を適用する能力によって、これまで利用できなかったデータを利用できるようになり、迅速な研究開発が可能になります」
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