Image courtesy of Warner Bros.

アクシオ! Unreal Engine よ、来い:ニューヨークのハリー・ポッター VR エクスペリエンスのメイキング

想像してみてください。朝目覚めたら、ホグワーツから手紙が届いていたとしたらどうでしょうか。それからまもなく、普通の暮らしを離れ、魔法をかけたり、箒に乗ったり、たくさんの魔法動物に出会ったりすることになるでしょう。

考えてみるとわくわくしますが、1 つだけ問題がありました。それは、魔法をかけることができる杖や飛ぶために役立つ箒は、まだ世界のどこでも見つかっていないということでした。ですが、その事情が変わろうとしています。

ニューヨークのハリー・ポッター ストアでは、2 つの VR エクスペリエンスを通じて誰でも魔法を使う気分を体感できます。ホグワーツからの手紙は必要ありません。
 
Image courtesy of Warner Brothers

アイデアのひらめき

これらのエクスペリエンスの制作を依頼されたスタジオ、Wevr のチームの旅路は、以前に作った VR プロジェクトがきっかけで始まりました。それらの VR プロジェクトはサンダンス映画祭とトライベッカ映画祭で紹介され、Warner Bros. の注意を引くことになりました。

Wevr のクリエイティブ ディレクターで、ハリー・ポッター エクスペリエンスの共同ディレクターを務めた Luis Blackaller 氏は次のように述べています。「Warner Bros. から、いくつかの VR の取り組みについてクリエイティブ面で開発に参加するよう依頼がありました。弊社の CEO、Neville Spiteri がインタラクティブなデモを作ることを決めました。そのデモを見せたところ、すぐに納得してもらえて、ハリー・ポッター フランチャイズのために 2 つのインタラクティブ VR ストーリーを新たに作ることになりました。私たちが目標としたのは、ハリー・ポッターの世界への入り口を作ることでした。そこではオーディエンスはホグワーツの生徒へと姿を変え、自ら魔法を試すことができます」
Image courtesy of Warner Brothers
インタラクティブ エクスペリエンスはどちらも書籍と映画を元にしており、手の込んだ作りになっているため、すべての瞬間が後付けではなく原作に忠実なものとして感じられます。最初のエクスペリエンス、Chaos at Hogwarts では、まずキングス・クロス駅のレプリカで待機させられます。キャラクターのアバターを選択し、VR のギア (声で起動し、呪文ごとに異なるパターンで振動する杖を含む) を身にまとったら、キングス・クロス駅のレプリカがバーチャルの 9 と 4 分の 3 番線に姿を変えます。そこでホグワーツ特急を追いかけますが、乗り損なってしまいます。幸い、ドビーが現れて、ホグワーツへと導いてくれます。ホグワーツでは、城を探検し、ピクシーやドラゴンなど、さまざまなものと出会いながら魔法をかけます。何よりすばらしいのは、エクスペリエンスに複数のエンディングが用意されていることです。クリーチャーを倒せるかどうかは、自分たちのグループがどれほどうまく魔法を使えるかにかかっています。

もう 1 つのエクスペリエンス、Wizards Take Flight では、参加者には箒が渡されます。この箒は、書籍や映画で生徒たちがしていたのと同様に、左右に傾けることで操作できます。このエクスペリエンスでは、ロンドンを通り抜けてハグリッド宛ての小包を届け、死喰い人からハグリッドを守ります。そうやって VR を経験すると同時に、ロンドンの気候を模した物理的なステージでは、仮想的な世界と完璧にタイミングを合わせて小雨が降ったり風が吹いたりします。
Image courtesy of Warner Brothers
Wevr の共同創業者で、ハリー・ポッター エクスペリエンスで共同ディレクターを務めた Anthony Batt 氏は次のように述べています。「詳細の整合性をとること、ファンの望みを叶えること、面白いインタラクティブなストーリーを作ることの間でバランスをとる必要がありました。ビジュアル面では映画を規範としました。大半のデジタル アセットをゼロから再現しました。ロンドンのテムズ川周辺の地域、階段や話す肖像画などの環境、死喰い人、ドビー、ハグリッドなどのクリーチャーなどのアセットを作成しました。ファンはこれらのキャラクターに馴染みがあるとわかっていたので、できるだけ生きているかのように感じられるようにしたいと思いました。最終的には、ドビーとハグリッドが発した言葉すべてのデータベースまで作り、キャラクターの設定に忠実になるようにしました」
Image courtesy of Warner Brothers

ひとつまみの Unreal Engine

広い範囲にわたって詳細に再現されたキャラクターと複数人がリアルタイムで体験できるインタラクティブなストーリーを作るために、Wevr は最初から Unreal Engine を使用しました。「このプロジェクトには Unreal Engine のあらゆる要素が関わり、さらにそれ以上のものが必要になりました」と Blackaller 氏は述べています。チームでは、まず、詳細な間取り図、写真、映画からの映像に基づくすべてのセットのレイアウト モデルが VR でどう機能するかテストするために Unreal Engine を使いました。

Blackaller 氏は次のように述べています。「Unreal Engine の柔軟な実行環境のおかげで、スケールなどの要素についてアイデアをプロトタイプにし、それから迅速にイテレーションすることができました。レイアウトの大半ができあがってからリアリティを加え始めました。すべてのマテリアルとテクスチャをエンジン内で再現し、同時にパフォーマンスを向上させるために最適化を行いました。マルチプレイヤー VR のセットアップではパフォーマンスの要件が非常に厳しいものになっていました。セットのすべての部分が生き生きと感じられるようにすることが重要でした。位置を反映したインタラクティブなサウンド デザイン、動的なライトとシャドウ、雲、霧、火、水などのほかの要素を組み合わせてそれを実現しました」
プロジェクトのアニメーションも開発の早期、レイアウトの段階で Unreal Engine へと移行されました。キャラクターが着たホグワーツのローブが風に揺れる様子や、ドラゴンの咆哮など、クリエイティブ面での判断はいずれも VR のウォークスルーを使って確認されました。こうすることで、チームはすべてのシーンのテンポとアクションのブロッキングについて検討できたほか、ステージ上でリアルタイムに重要な調整を加えることができました。

「ストーリーのあるインタラクティブなエクスペリエンスで、6 人の参加者がそれぞれ自由に動き回ることができ、10 分ほどでエクスペリエンスを完了できるようにする必要がありました。この場合、6 人のプレイヤー全員の視点を考慮してステージを最も効果的に活用できるようにするために、シーケンスの多数のバリエーションを探れることが非常に重要でした」と Blackaller 氏は述べています。

「そのために、Unreal Engine の強力な Live Link 機能を使った独自のライブ モーション キャプチャ システムを開発し、俳優を使ったキャプチャ セッションを開始しました。身体のキャプチャには XsensRokoko、顔のキャプチャには iPhone を使いました。テイクが決まったら、アニメーション チームがパフォーマンスを脚色しました。最終的にはキャラクターによる映画レベルの演技とインタラクティブの機能が効果的に組み合わされ、人間のプレイヤー全員が室内のどこにいてもキャラクターとリアルなアイ コンタクトをとれるようになりました」
Image courtesy of Warner Brothers

少量のインタラクティビティ

Wevr のチームは Unreal Engine によってアートとアニメーション全体だけでなく 2 つの VR エクスペリエンスのための一連のインタラクティブなシステムも開発しました。魔法をかけるためのシステム、箒のフライト シミュレーター、Dreamscape Immersive と共同で開発した総合的な触覚フィードバック システムなどがこれにあたります。

「マルチプレイヤー VR に特有の課題は、プレイヤーと物理的な物体を仮想空間内の対応するものと同期させることです。各システムがすべての瞬間でフレームが一致している必要があります。そうでないと、仮想空間内のある場所に物体があるとプレイヤーが感じるときに、物理的な空間では別の場所にあることになってしまいます」と Batt 氏は述べています。イリュージョンを成立させるには、リアルタイムの演出が必要です。参加者の動きを人工的に感じられないような形で伝えつつ、参加者がストーリーへと完全に没入し続けられるようにします。

Wizards Take Flight のフライト シミュレーターでは、ガイドを伴う飛行システムを作り、参加者が 3 次元のトラックから出ないように制約をかけました。また、インテリジェントな戦闘システムにより、死喰い人をスポーンさせ続けてプレイヤーを攻撃させる際に、プレイヤーの飛行と戦闘の能力に応じてレベルを変化させるようにしました。つまり、プレイヤーがアクティブであればあるほど戦闘が激しいものになります。
Image courtesy of Warner Brothers
Chaos at Hogwarts のエクスペリエンスでは、移動の際のリダイレクトのシステムで同様のイリュージョンを生み出しました。現実の世界では、プレイヤーは小さな四角形のステージの回りを円を描くように歩きます。一方 VR 内では、Unreal Engine が演出を行い、プレイヤーが部屋から部屋へと移動するなかで、周辺の城をシームレスに変形させ、城の新しいセクションを瞬時に隠したり読み込んだりします。

Blackaller 氏は次のように述べています。「キャラクターのリアルなアニメーション、布のシミュレーション、フライト システムなど、このプロジェクトのために私たちがしたことほとんどすべてが Unreal Engine の機能から直接的なメリットを受けました。Unreal Engine を活用する VR やその他のスクリーン ベースのインタラクティブ メディアは、テーマ パークから小売まで、すべてを変革することになるでしょう。オーディエンスは、自分たちが愛するストーリー、世界、キャラクターをただ眺めるのではなく、それらと有意義な関わりを持つことができるようになります。この変化の最前線に立つことができてわくわくしています。水準をさらに高めていきたいと思っています」

Wizards Take FlightChaos at Hogwarts は現在 Harry Potter New York で開催中です。これらのすばらしいエクスペリエンスの制作についてより詳しく知るには、Wevr のハリー・ポッターのページをご覧ください。

    今すぐ Unreal Engine を入手しましょう。

    世界で最もオープンで高度な制作ツールを手に入れましょう。
    Unreal Engine は、すべての機能がすぐに使える状態で、すべてのソース コードにアクセスできます。