2016.8.15

宇宙探索 RPG 『The Long Journey Home』 の世界

作成 Stu Horvath

この一連の記事シリーズはエピックのアンリアル エンジン 4 の寛大なスポンサーシップによって実現しました。毎月、Unreal Dev Grant (アンリアル デブグランツ、開発支援プログラム) の賞金受賞者を紹介します。エピックは我々にインタビュー対象を紹介してくれますが、最終版の記事へのフィードバックや、記事の承認には関っていません。

何年か前に、私はオハイオからニューヨークに向かう機内にいました。JFK 空港の北東から吹く強風のために、着陸を阻まれていました。パイロットは全力を尽くし、何回か着陸を試みました。あるときは、滑走路上から 6 メートルまで迫りほとんど着陸しそうになりましたが、強風が飛行機を揺らし、危険を感じるレベルになったのであきらめました。すべて無駄になってしまいました。時が過ぎていきます。燃料も減っていきます。

ロング アイランドより先の方が嵐がひどいにも関わらず、管制塔はプロビデンスにある T. F. グリーン空港に着陸するように指示しました。この空港は設計に工夫をこらして、嵐の危険を低減しているのでしょう。何の問題もなく着陸できましたから。

しかし、着陸後は大混乱でした。空港は事実上閉鎖されていて、100 名ほどの乗客をサポートするスタッフはおらず、我々は次にどうなるかがわからない状態でした。今晩、別のフライトがあるだろうか?ホテル バウチャーは?航空会社は、レンタル料を補償してくれるだろうか?列車はあるか?バスはどうだろう?

こうしたケースに遭遇した場合、人の反応は 2 種類に分かれます。苛立ちを鎮めるために叫ぶ人、そして黙りこくって自分の中で怒りに向き合い対処する人がいます。それがたとえホテルという仮住まいであっても、家に帰りたいという欲求は強く、その気持ちを抑えこむのは危険です。

状況が収拾つかなくなったときにどうなるか見たくなかったので、レンタカーのハブまで歩くのには不可能な距離と思われた距離を歩きました。そこで、後で悔しい思いをしたものの航空会社からのバウチャーなしで中型セダンを借りて、雨が降る夜道を運転しました。

渋滞もなくうまくいけば、プロビデンスからニューヨーク市まで 3 時間半ほどのドライブです。強風があり、雨が降りつける I-95 沿いに運転し、ハンドルをとられながら 4 時間半かかりました。当初のフライトで予定していたよりも 3 時間長くかかりました。

もちろん、モンスターのようなものと戦ったわけではありません。私の敵は、時間であり、家にいないということは変えられない事実であり、そんなにイライラしたり絶望はしません。町から 1,600 キロではなく 160 キロ離れて立ち往生しているからです。これが、『The Odyssey』 が時代を問わない名作である理由です。誰もが共感できるからです。

今回紹介する 『The Long Journey Home』 が呼び起こそうとしているのはこうした感情です。文字通りタイトルが表していますよね。壮大な宇宙探索 RPG であり、人類初の高速移動実験に失敗した後、銀河系の裏側から 4 名の様々な分野の専門家を帰還させる必要があります。ゲームをするたびに探索する新しい銀河、エイリアンに遭遇したり危険に直面しますが、ゲームの核となるのは家路に着くことです。

『The Long Journey Home』 は、ギリシャの叙事詩とストラテジー ゲーム『Star Control』 に夢中な小規模のチーム、Daedalic Studio West が現在制作に取り組んでいます。グループの中心メンバーは、Daedalic Studio West の共同設立者でありクリエイティブ ディレクターである Andreas Suika 氏、共同設立者でありテクニカル ディレクターの Dirk Steenpaß 氏、ライターである Richard Cobbett 氏、そしてコンポーザーである Kai Rosenkranz 氏です。Andreas 氏が 『The Long Journey Home』の第四四半期のリリースに向けて作業を進める忙しいスケジュールを縫って、このゲームの制作について語ってくださいました。

ホメーロスによるギリシャの叙事詩 『オデュッセイア』 にふれずして、『The Long Journey Home』 は語れないと思いますがどうでしょう? この叙事詩とゲームは相互に関わりがありますか? 叙事詩がゲームのデザイン上の決定とテーマにどのように影響を与えたかについてご説明いただけますか?

Andreas 氏 :『オデュッセイア』 は我々のライターのお気に入りの物語のひとつであり、この種のあらゆる物語は、この作品から大きな影響を受けています。恐ろしいモンスターや新しい冒険について知りたいという聞き手の思いと、家と家族に対する主人公の深い思いという対照的な二つのものをベースにした叙事詩です。乗組員のせりふ、性格、スキルを通してこうしたものを理解し、誰もが感じたことのあるホームシックの感覚を伝えたいと思います。これは単に宇宙船を地球に戻すだけのストーリーではありません。4 名に関するものであり、そして彼らを家に帰らせるストーリーです。良い船長ではなかったオデュッセウスよりも、プレイヤーがうまく乗組員を生きて帰らせることができればいいんですが。

我々の作品では、例えば 『Star Trek:Voyager』 のようにアドベンチャーを求めて惑星に立ち寄ったりはしません。しかし、様々なエイリアンの種族には出くわします。銀河系は彼らのテリトリーであり、家でもあります。プレイヤーを喜んで助けるエイリアンもいれば、やっつけたいと思うエイリアンもいます。また、人間をもてあそんで楽しむ者もいます。エイリアンとどのように向き合うかが、彼らと協力する大きな部分を占めます。

『オデュッセイア』から取り入れたのは、ダメージの概念です。宇宙船や乗組員はこのミッションや危険にさらされることについての準備ができていません。単に宇宙系に飛び込むと、宇宙船がダメージを受けます。常にテクノロジーが身の回りでは壊れつつあります。乗組員が死ねば二度と戻ってきませんし、誰も彼らの代わりにはなりません。オデュッセウスがヒーローとして優れているのは、最も強いギリシア人というわけではなく、非常に狡猾であったということです。賢かったのです。だから家に帰れたんです。小さな探査船が海賊、人に付けこむ者、自然災害などに襲われます。ですからプレイヤーも賢くなければ、長くは生き残れません。

帰郷というゲームの発想に心惹かれます。ゲームの多くは、外に向かって動きます。「家」から始まり、周囲の未知の領域をゆっくりと探索 (支配) します。『Long Journey Home』は明らかにこれとは異なります。探索はしますが副次的なもので、帰還がメインです。そもそも宇宙で迷子になるということは他の場所にくらべて本質的に危険度が高くなります。こうした違いはデザイン レベルの決定にどのような影響を及ぼしましたか?哲学的レベルはどうでしょう?

Andreas 氏 :非常に異なります。見知らぬ乗組員たちと共に、エイリアンがいる銀河系の真っただ中に入っていきます。クエストを行い、取引し、秘宝を探索し、友好関係を結ぶことができます。出来る限りプレイヤーに自由を与えています。例えば、RPG のクエストでよくあることですが、エイリアンを故郷の星に向けて通行させることに同意する場合、方向転換したり、エイリアンを奴隷商人に売ることを止めはしません。別の種族用の食肉として売ったりもあります。もちろん、結果に影響しますが、いつでも自分で決定できます。あなたが責任者なのですから。自分のための旅なんです。

クエストはオブジェクト中心であるためこうしたことを行うことが可能であり、オブジェクトには複数の用途があります。考古学者、Siobhan の手には石盤があり、古い寺院への道筋を示しているかもしれません。グループ内の言語学者である Miri は、古代の言語を教えてくれます。乗組員が誰であるか、誰と出会うか、見つけたものの用途が何であるか気づくことでゲームのあらゆる面が変わってきます。

『The Long Journey Home』 にはかなり多様なゲーム スタイルがあるようですね。それらをご紹介いただけますか? インタラクションの仕方はどうでしょう?

Andreas 氏 :非常にすっきりした簡単にアプローチできるスタイルに重点を置きました。宇宙探索は、トップダウン パースペクティブから行われる一方で、惑星探索は古い月面着陸のようなサイドオン ビューになっています。銀河系を探索し、エイリアンに遭遇し、資源や古代の遺跡を探索することで、かなりの時間を費やします。

エイリアンに遭遇したら、ハンディー翻訳機 「TRANSCOM」 を使います。見つけた物や種族について語ったり、見つけたものを与えたり、見せたりして、新たな機会などについて話してもらえるか見てみます。エキサイティングなのは、動作が言葉よりも多くを語るということです。エイリアンの一部は、プレイヤーがシールドと武器を手にとると攻撃してきます。信頼できないんですね。あなたが攻撃しなければ他の人が攻撃します。彼らが弱いとは考えないでください。彼らの特異な行動を学び、何が彼らを動かすかを知ることがうまくやっていくコツです。あばくべき秘密が沢山あります。

大きなバッタのような種族もいます。Wolphax と呼んでいます。彼らは故郷の星では、弱い草食動物でしたが、生存して宇宙に飛び出す知恵をたまたま持っていました。宇宙船やプラズマ銃を持っていれば、誰もどれくらい肉体的に強いかは気にしません。初めて遭遇すると、軽いスパーリングで友好的な戦いを求めてきます。それで、奇妙な新しいエイリアンの力を推し量ろうとします。第一印象を良くして宇宙船へのダメージを受けるリスクを負いますか? それとも彼らを拒絶しますか? これは沢山ある決めるべきことのほんの一例です。

このゲームは何かにインスパイアされましたか? 他のゲームや、書籍、映画などの他のメディアから影響を受けていますか?

Andreas 氏 :山ほどあります。『Farscape』 から非常に大きな影響を受けました。特に、宇宙を特徴的な面白い場所にする事に関して影響を受けました。多くのサイエンス フィクションはあまり面白みがなく、ユーモアもありません。そういうものは作りたくありません。エイリアンに遭遇し、クエストを行い、ジョークを言い合い、反目し、パニックに陥り、昔のクエストの思い出に浸るような乗組員の一員になることを楽しんでもらいたいと思います。旅をしながらアドベンチャーを共有したり、自分で体験したりしながら乗組員が家族同様になります。『Farscape』 は楽しい宇宙を表す最適な例ですが、実際にどこかの場所であるかのような感覚を十分に与えるものです。そうなるといいんですが。私たちはそうした宇宙が大好きだから。

さて、今度は何の話をしましょうか? PC ゲームの 『Star Control II』、その前世代の 『Starflight』 から最もインスピレーションを受けました。それ以外にあげるときりがありません。『Firefly』 から始まり、控え目に言って 『Lexx』、 『Stargate SG-1』、 『Voyager、Red Dwarf』、最近では 『The Martian』 や 『The Expanse』、そして 『Mass Effect』、『FTL』 などのゲームがあります。また、Douglas Adams や Jack Vance などが書いた欧州のSF 小説も多数あります。この話なら何時間でも続けられますよ。チーム全員が sci-fi オタクなんです。大好きだからこそ、自分たちの宇宙にうまく取り込むことができたら、それでプレイしたいと思います。『スタートレック』などの番組から、1985 年の 『Psi-5 Trading Company』 以降使われていない格好いいシステムまであらゆるものがあります。

プロシージャルに生成される宇宙と、複雑なモラルのジレンマに対するニーズとの間でどのようにバランスをとっていますか? この 2 つは、両極端のもののように思えます。この点に関してどのような課題に取り組んで、この 2 つをどのようにうまく機能させましたか?

Andreas 氏 :我々の宇宙は純粋にプロシージャルに生成されたコンテンツを適切に混在させるようにデザインされました。こうしたコンテンツには、星、惑星、発掘する場所、遺跡などがあります。クエストなどの手書きのコンテンツやエイリアンとのインタラクションもあります。銀河系毎に、プレイヤーに 10 名中、4 名だけが与えられます。4 つのエイリアンの帝国 (いくつかの比較的小さな文明) もあります。その結果、クエストのディレクターが生成するものと、自らが下した決定結果が混在したものが得られます。例えば、ある惑星で貴重な秘宝を見つけたら、もともとの所有者がやってきて返せと迫ってくるかもしれません。秘宝を見つけていないと嘘をつきますか? それとも返しますか? これはプロシージャルに生成されるものに対するモラルの決定例です。

クエストや他の記述されたセクションで具体的な要求があります。他の乗組員を助ける代わりに一人の乗組員を要求するエイリアンの奴隷商人は、首の周りにショックを与える首輪を巻かせて、叫ばせ、服従させます。海賊と協力して、他の宇宙船を待ち伏せたりもします。困っている宇宙船を助けるか、彼らから搾取するかを決めます。

具体例としては、乗組員の一人で元宇宙飛行士の Kirsten が最後のミッションで乗船を求められますが、不治の癌を患っています。銀河系の逆側の地球では、科学者たちがこうした病気を簡単に直すことができますが、どんな代償を払うことになるのでしょうか?

銀河系にはたくさんのものがあります。誰かを乗せてあげるなら、断って、奴隷商人に売って利益を得ることができます。あるいは、他の宇宙船が表れて、エイリアンの引き渡しを求めるかもしれません。約束を守りますか? それとも戦いを回避するために彼らをあきらめますか? あなたが下す決定が結果を招き、その多くに対して乗組員が多くのことを言いたがるでしょうが、流れ星のように移り変わるものに対してモラルを追跡し続けません。プレイヤーの裁量で、どのように線引きし、善意がどこで絶望的な現実主義にとってかわるか、最終的に帰還することの価値をどのように考えるかを見るのを楽しみにしています。

『The Long Journey Home』 が目指すものは何ですか?

Andreas 氏 :このゲームを 『Star Control II』 の登場以来、プレイしたいと感じるゲームにしたいと思います。最新の技術を活かして、緊張感とローグライクなリプレイ性を加えることで、ゲームを繰り返しても新たな発見がいっぱいのものにしたいと思います。プレイヤーに宇宙船だけでなく、探索し、習熟するのに十分な時間がかかる宇宙も与えます。Sci-Fi ジャンルの集大成ともいえる究極の宇宙アドベンチャーです。

もちろん、作品が沢山売れると嬉しいです!

アンリアルを使って 『The Long Journey Home』 のようなゲームを制作するメリット、デメリットはありますか?

Andreas 氏 :当然、両方ありますが、全体としてはメリットのほうがデメリットをはるかに上回っています。

アンリアル エンジンを選んだ主な理由としては、エピックのオープン性に対する哲学が挙げられます。このプロジェクトを始めるにあたり、宇宙飛行の惑星重力やプロシージャルに生成される銀河、星雲、恒星系、惑星のような簡単にはできないことをやろうとしていました。独自のエンジンを記述すればいいと一瞬血迷った考えを持ったことがありました。我々のプログラマーたちはかつてエンジンを開発したことがあり、自分たちのような規模のチームがやると悪夢になることは十分にわかっていました。アンリアル エンジンは、熟練技術者によって強固な基盤に作られています。我々は自分たちの作業に集中することができ、限界を押し上げることができました。また、アンリアルのコミュニティとエピックのサポートの両方を得ることができて大変助かりました。

Unreal Dev Grant をもらった経緯は?

Andreas 氏 :エピックが Malmo で開催された Nordic Games Conference のブースに参加しないかと誘ってくれた直後に、Unreal Dev Grant 受賞の知らせを受けて驚きました。いくつかのカンファレンスでプロシージャルな生成と宇宙を生き生きとしたものにすることに関して話をしていたからかなと思っています。あるカンファレンスに、一人のアンリアル エバンゲリストがいました。話の後に二人で会って、彼は私が見せたものを気に入ってくれたようでした。我々が申請したときには、このゲームは開発のかなり早い段階にありました。GDC と PAX East の両方でポジティブなマスコミ報道があったのも良かったんだと思います。

Unreal Dev Grant は制作にどのような影響を及ぼしましたか?受賞しなければ不可能だったようなことを 『The Long Journey Home』 でできるようになりましたか?

Andreas 氏 :はい。小さなチームなので受賞の影響は大きいです。受賞によって主にテストを担当するスタッフを増員できました。ゲームは多くのランダムなエレメントと共にプロシージャルに生成されるため、どうしてもテストが多くなります。実に沢山です。幸い、テストだけでなく社内コミュニケーション、プロジェクト管理、およびビルド パイプラインの改善の業務も手伝ってくれる人材が見つかりました。つまり、かなりのプレッシャーが軽減し、睡眠時間も少し増えて、ゲームの仕上げに力を注ぐことができました。エピックが我々の作品を気に入ってくれてとても嬉しかったです。彼らが提供するサポートにも非常に感謝しています!

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