2016 Game Developers Conference (GDC) はエピック ゲームズにとって、アンリアル エンジンの大幅な拡張だけでなく、新しい画期的な技術を示すまたとない機会となりました。リアルタイム レンダリング、モバイルと VR のプラットフォーム、自動車の設計、宇宙探検などを含む主要エリアの革新についての 様々な発表 がありました。
今年の GDC は一段と広範囲で多様性に満ちたものでした。大規模、小規模のデベロッパーが交流し、様々な分野のリーダーから刺激を受け学んでいました。
GDC は参加者に多くのものを与えましたが、誰もがサンフランシスコまで足を運べるわけではないことをエピックは理解しています。ですから、デベロッパー間の障壁を取り除く取り組みの一環として、年一回開催の第二回 Post-GDC Briefing を今年はロンドンの Ace Hotel で開催しました。この会のねらいは、GDC の最前線に立っていた何名かが先導役となり、GDC で明らかになった最新のトレンドと開発について真剣に話し合い、地域の開発コミュニティと深くかかわることです。
私はエピック ゲームズの European Territory Manager としてディスカッションの進行役を務め、Wellcome Trust の Broadcast, Games and Film Manager である Iain Dodgeon 氏、White Paper Games の共同創始者である Pete Bottomley 氏、 Ninja Theory の Product Development Manager である Dominic Matthews 氏が話に加わってくれました。
革新と協力
最初に口火を切ったのは Dom と私で、Ninja Theory とエピック ゲームズとの協力関係について紹介しました。この協力関係は後に GDC で喝采を浴びた Hellblade:Senua’s Sacrifice のリアルタイム パフォーマンス キャプチャにつながりました。まもし見逃してしまったのなら、こちらが女優の Melina Juergens によるライブ パフォーマンスをアンリアル エンジンでストリーミングし、同時進行でリアルタイムでレンダリングしたものです。あっけにとられる観客の目の前でゲームの主人公はスクリーン上で感情表現し、それがアニメートされたのです。
これはゲームにとって重大なことでしたが、こうした技術がもたらすものは計り知れません。実際にキャラクターのインタラクティブ エンターテイメントの世界を優に超えて、様々なメディアからキャラクターをアニメートすることから、リアルな感情をそのまま伝えることまでできます。さらに、Pete はアンリアル エンジンの無料化とそのコミュニティの協力体制によって、誰でもこの先進技術を利用できるようになったと指摘しています。
小規模チームが扱えるプロジェクトの範囲がついに広がりました。例えば、White Paper Games はわずか 8 名のチームですが、アンリアル コミュニティから大勢のサポートがあるため、多数の人々が問題解決に取り組むことを意味します。その結果はただちに共有されてイタレーションが迅速に行われます。小規模チームではかつては達成困難であったあらゆるテクニックと技術にアクセスして、利用することができます。これにより開発プロセスは合理化され、デベロッパーの基盤が広がります。
GDC でこうした技術をビデオ ゲームに適用することに焦点をあてたからといって、他の可能性がないわけではありません。Unreal Enterprise のローンチの成功が新たな可能性を示しています。
Unreal Enterprise の Director である Simon Jones が、数々の信じられないようなプロジェクトの詳細を紹介しました。例えば、NASA では VR で宇宙飛行士をトレーニングするために国際宇宙ステーション (ISS) のレプリカを作成し、低重力トレーニングにともなう多くの現実的な問題を克服しています。
これ以外の進行中の Unreal Enterprise の例としては、企業向けの Toyota Showroom と Hammerhead VR の イマーシブな世界 があります。アンリアル エンジンを使った開発のこうしたエキサイティングな側面は、まだ始まったばかりで、アーティスト、デザイナー、プログラマー、エンジニアが情熱を傾けることができる全く新しいエコシステムを実現するでしょう。
創造性に妥協なし
Dom によれば、過去の GDC では大規模 AAA 企業、無料プレイ ゲーム (free-to-play (F2P) )、モバイル市場向けが大きな部分を占めていたが、今年は、コンソールでのタイトルのリリースを目指す小規模チームが再び台頭してきたとのことです。これには多くの理由があります。ハードメーカーがオープン性を高めたこと、デジタル配信が容易になったことなどが考えられますが、開発コミュニティ内での協力態勢が強化されたことも大きな役割を果たしています。
新たに登場するゲームも多様性を増しています。新しいツールや、ブループリント を協力して作成し、問題に対してクリエイティブな解決策を示してくださったアンリアル コミュニティの皆様に感謝します。コストはかつてないほど低くなりました。こうしたことから、プロジェクトを正当化するために高額なセールスを求められるプレッシャーが減り、アイデアを自由に試す機会も増えます。パブリッシャーは、ニッチなアイデアや Hellblade で扱ったメンタルヘルスなどのタブーなテーマに投資したがらないかもしれません。しかし、協力体制の強化は、コンテンツ制作における従来の障壁が音をたてて崩れつつあることを意味しています。
自分のビジョンに妥協することなく情熱を傾けられるプロジェクトに取り組むということは素晴らしいことです。もちろん、こうした分野の進歩は、デベロッパーにとって非常に重要ですが、他に GDC で誰もが口にしていたトピックがあります。それは、仮想現実 (VR) です。
仮想を現実にする
VR は昨年の GDC でも大きな部分を占めていましたが、今年は初めてコンシューマー向けヘッドセットを実際に利用できるようになりました。従って、今回の説明の Q&A コーナーでは、かなりの質問がこの新しいメディアをいかに最大限活用するかに集中したのは当然のことです。
Pete によれば、VR についての話に耳を傾けるだけで各自の創造力が刺激されるが、デザイン上の「やるべきこと、やってはいけないこと」に気付くためには、開発キットを手にするのが一番とのことです。うまく機能するもの、機能しないものを実際に体験するということは信じられないくらい直観的なものです。VR を体験したことがない人に説明しようとするのと同じで、他のやりかたを追及しても多くの場合無駄になります。
だからこそ、GDC 2016 でのアンリアル エンジンの VR エディタのリリースがとても重要だったんです。このツールは GitHub で入手可能であり (バイナリ ツールになります)、デベロッパーは VR の中にいながら VR を制作することができます。これはアンリアル エンジンはもとより、他でもこれまで不可能だったことです。このレベルの没入感は開発プロセスにただちに影響を与え、エンド ユーザーに体験してもらいたかったことをデザイナーがリアルタイムで体験できます。
こうした直観性がいかに重要であるかを Iain がさらに語ってくれました。簡単にわかりやすくすることで臨場感が保たれるとのことです。プレイヤーが VR 内でアイテムをどのように扱うかについて戸惑ったら、それが気になって没入感が台無しになります。動きの問題に対処するために多くのデベロッパーはテレキネティック パワーの (手を触れずに物を動かす) の仕組みを試していますが良い結果が出ています。これは多方面で終わりのない作業があり、一般的なものになるまで時間がかかりそうなことを考えると救いになります。
ゲームの先をいく
VR が利用しやすくなる恩恵を受けるのはコンシューマーだけではないと Pete は指摘しています。レベル デザイナーとして VR 環境内に入り、スケール感覚をつかむことによるポテンシャルはすごいものです。
相当数のゲーム以外の開発チームがこのイベントに出席しました。長年にわたり、VR のポテンシャルにはほぼ限界がないと聞いてきましたが、バーチャル ミュージアム制作を計画している人と、ビッグ データに VR を適用することを考えて、プロジェクトをエンジニアリングする人が集まるのは素晴らしいことです。ゲームはあらゆる仮想現実の始まりにすぎないことは明らかであり、我々の身の周りのものが VR によっていつどのように影響を受けるかを見るのは非常に喜ばしいことです。
普及に向けて
ほとんどのデベロッパーは感動を与える素晴らしいコンテンツを作ることに注力していますが、開発コミュニティ内で現在感じているワクワク感をコンシューマーに伝えることに重点を置くとよいと Dom は言います。一般の方々に VR を体験してもらい、理解してもらうことがハードウェア メーカーにとっての課題です。
駅やスーパーマーケットで Google Cardboard を配ることから、Gear VR のようなポータブルなデバイスによって利用しやすくすることまで多くの提案がありました。
White Paper Games のようなスタジオは、PSVR の作品をリリースすると当然注目を集めますが、口コミや YouTube の動画が VR ムーブメントを促進するというのは周知のことです。
一方、デベロッパーは VR を進化させ、プレイヤーにとってエキサイティングな体験を生み出すことに力を入れなければなりません。既に存在しているものを VR で扱うのではなく、VR によってのみ可能なことを考えるべきだと Iain は述べています。
一年前にアンリアル エンジン 4 の無料化を発表して以来、150 万人以上のデベロッパーがアンリアル コミュニティに参加しています。これだけの人が関わっているため、今回の Post-GDC Briefing のようなイベントが果たす役割がますます大きくなっています。
アンリアル コミュニティは拡大を続けており、その技術も絶えず進化しています。新しいキャリアの道筋や成功を収めるチャンスの道が開かれています。ゲーム、VR、エンタープライズなどの世界に影響を及ぼす活気に満ちたエコシステムになっています。もちろん、デベロッパー同士のコラボレーションを促進するために、さらにグローバルなイベントをいつどこでも可能であれば開催したいと思います。