Courtesy of Purple Ray Studio

Epic の MegaJam での優勝が、UE5 を利用したプラットフォーマー Boti: Byteland Overclocked の制作を促すきっかけとなる

Brian Crecente
Kornelia "Nel" Błażyńska 氏は、Purple Ray Studio のアート ディレクター兼共同設立者であり、ライティング、3D モデリング、テクスチャリング、シェーダー作成の経験があります。ワルシャワ美術アカデミーで伝統的な芸術の基礎を学んだ Błażyńska 氏は、没入感があり、真実味のある様式化された世界を作ることに重点を置いています。現在彼女は、Purple Ray Studio の有能なアーティスト チームを率いて、同社初の独立プロジェクト Boti: Byteland Overclocked を実現させています。Błażyńska 氏はこれまでにいくつかの様式化されたタイトルを手がけましたが、最も有名なのは、リード アーティストを務めた Tate Multimedia のカオ・ザ・カンガルー (Kao the Kangaroo)でしょう。
BotiBoi の色鮮やかなアイデアは、2021 年の Epic MegaJam に向けたブレインストーミング セッション中に生まれました。5 人のチームは、コンピュータに対する子供のような見方を思い出していました。それは埃まみれの回路基板や圧着されたワイヤーというよりも、ミニチュア都市に似た電子作品でした。

トロンのようなコンピュータ観と、その年のテーマ「Running out of space」を組み合わせることで、システムがクラッシュする前にプレイヤーがソフトウェアを制御してファイルを集めようというシンプルなアーケード プラットフォーマーのアイデアが生まれました。

自分たちの作品が MegaJam で優勝したことをきっかけに、チームはインディー スタジオを設立し、楽しい小さなプロトタイプを本格的なゲームに変えることになりました。

今回は、Purple Ray Studio のアートディレクター兼共同設立者の Kornelia Błażyńska 氏に、ゲームジャムから本格的なリリースまでの道のり、Unreal Engine 5 がチームの作品に最適なエンジンとなった理由、そして Pixar 風のビデオ ゲーム Boti: Byteland Overclocked の内部構造について話を伺いました。
 

Purple Team はどのようにして結成され、最初のグループにはだれがいましたか?

Kornelia Błażyńska 氏 (Purple Ray Studio のアートディレクターで共同設立者):
当初の Purple Team には、私、Robert、Kuba、Łukasz、Marcin がいました。Robert と私は、ソーシャル メディアを閲覧しているときに MegaJam を見つけ、以前一緒にゲームジャムに参加したことがある Jakub に連絡を取ることにしました。私たちはそれぞれ異なるバックグラウンドを持っています。私は 3D/背景アーティスト、Jakub はプログラマー、Robert はレベル デザイナーです。そこで、他のスキルを持つ友人に参加してもらえないか相談したところ、Łukasz (ゲーム デザイナー) と Marcin (サウンド デザイナー) が参加することになりました。Unreal の使用経験はさまざまだったので、お互いに学び合いながら進めていきました。

2021 年 Epic MegaJam の参加作品の最初のコンセプトはどのようにして思いついたのですか?

Błażyńska 氏:
2021 年のコンテストのテーマは、「Running out of Space」でした。このテーマにどうアプローチするかをブレインストーミングしているとき、ふと、「running out of space」はディスク スペースのことでいいんじゃないかと思いつきました! 単純な話です。でも、それをどうやって視覚化し、ゲーム化すればいいのでしょう? 

子供の頃、パソコンやテレビ、ラジオなどの機器の中に小さな街があり、その中を小さなロボットが動いているようなイメージを持っていた人もいるのではないでしょうか。このコンセプトが話題になったとき、私たちはすぐにコンピュータのディスク領域を思いついたのです。そう、コンピュータの中のデータを小さなロボットが動かして管理しているんです。そして、そのような作業をするキャラクターがどのように見えるか、コンセプトをスケッチし始めたのが、Boti の最初のドラフトです。

これはテーマとしてはシンプルだけど良いアイデアだと全員が思ったので、私たちはゲームプレイを考え始めました。私たちは皆、子供の頃、シンプルで楽しい昔のプラットフォーム ゲームが好きだったので、子供の頃のインスピレーションを大切にしたいと思いました。そこで、ゲームの基本的なループの設計に取りかかりました。

通常の、プログレッションなどの昔ながらのプラットフォームはできなかったので、ディスクがオーバーランする前にプレイヤーができるだけ多くのファイルを集めなければならないアーケード風のモードを考えました。早く集めれば集めるほど、より長くプレイできるのです。1 週間で作成できるほどシンプルで、だれかが楽しんでプレイできるような楽しい作品に思えました。

Epic MegaJam は、あなたが参加した他のゲームジャムとどう違うのですか?

Błażyńska 氏:
先ほども述べたように、Robert、Jakub、そして私は以前に一緒にゲームジャムに参加したことがあり、他のチームメイトも以前にいくつかのゲームジャムに挑戦したことがありました。最初から気付いた最大の違いは、Epic MegaJam は The Rat Way Home (独特の雰囲気) や Reclaym The Kingdom (すばらしいアニメーション スタイル) などのすばらしいエントリーが数多くあることだったと思います。このような競争により、私たちは自分たちのゲームをさらに強化し、できる限り最高のものを提供するように頑張らなければならないと感じました。

2021 年の Epic MegaJam での優勝はスタジオとゲームにどのような影響を与えましたか?

Błażyńska 氏:
私たちにとって、それは独自のインディー開発スタジオを設立する旅に乗り出すというアイデアのきっかけでした。それにより、楽しくて認めてもらえるものを作れるという自信がつきました。チームとして、ジャム ゲームの結果はとても気に入りました。開発はとても楽しかったですし、それをさらに何かして、完全なゲームにしたいと考えていました。そこで、私たちは BotiBoi だったプロトタイプを現在の Boti: Byteland Overlocked に作り直し始めました。
Courtesy of Purple Ray Studio
チームはどのように現在の Purple Ray Studio に進化していったのでしょうか?

Błażyńska 氏:
スタジオの中心チームは MegaJam 以来変わっていませんが、プロジェクトをどうするかを計画していたときに、規模を拡大するための投資を求めることにしました。そして、ゲームジャムのプロトタイプが成功したことで、明らかにそれが楽になりました。私たちは以前一緒に仕事をしたことのある友人に声をかけ、スタジオと Boti のビジョンに共感してくれるチームを集めました。

ゲームは最初のゲームジャムへのエントリーから現在のものにどのように進化しましたか?

Błażyńska 氏:
私たちは全員、プロトタイプの出来にとても満足していて、それを完全なゲームとして完成させたいと思いました。私たちにとって、プロジェクトをより大きなものに発展させる際に、ゲームジャムに参加したときの精神を維持しつつ、より充実した体験を実現する多くの要素を加えることが重要でした。私たちは主要プロットのアイデアを思いつき、その後ストーリー デザイナーがキャンペーン向けの完全なストーリーラインに発展させました。アーケードのプロトタイプから離れるにつれて、プレイヤーがだれかと協力してゲーム体験を共有し、友達と楽しむことができれば、より楽しいゲームになるという結論に至りました。

今後のすべてのゲーム プロジェクトに Unreal Engine 5 を使用することにしたのはなぜですか?

Błażyńska 氏:
Unreal Engine 5 は、いくつかの理由から、私たちにとって最適なエンジンです。私たちにとって重要だったのは、UE4 に慣れているチームメイトが何人かいて、その経験が新しいバージョンのエンジンに簡単に移行できたことです。

私たちが利用したいと考えていた最も重要な技術面は、Lumen グローバル イルミネーションとリフレクション システムでした。私たちは、Lumen を初めて見たときから惚れ込んでしまいました。私たちのゲームの舞台はコンピュータに触発された環境なので、エミッシブ マテリアルやライトを使う機会がたくさんありました。
Courtesy of Purple Ray Studio
ウェブサイトでは、Unreal Engine 5 を使用する利点について述べています。特に、このエンジンがレイトレーシング技術をサポートしていることを際立った特徴として挙げていますね。Boti の開発にとって、その点はどのように重要なのでしょうか?

Błażyńska 氏:
私たちにとって、Lumen としてのソフトウェア レイ トレーシングは、UE4 に対する UE5 の最大の改善点です。Lumen は、ライトとエミッシブ マテリアルを使ってすばらしいビジュアルを作りますが、他の方法では非常に時間がかります (そして Lumen にはとうてい及ばない結果となります)。Lumen は、レイトレーシングを使用しない方法よりも、ゲーム世界をより現実的で真実味のあるものにします。より自然に見えるライティングは、現実世界のような錯覚を引き起こすために重要です。

Boti のコンピュータの世界は、ライト、ネオン、エミッシブ マテリアルで満たされています。Lumen のグローバル イルミネーションがなければ、もっとフラットに感じられ、明らかに印象が薄れてしまうでしょう。Lumen は、鮮やかでカラフルな環境を作ることができ、コンピュータ内の都市がどのように見えるかという私たちのビジョンを実現します。

Unreal Engine は、小規模チームによるビデオ ゲームの作成にどのように役立ちますか?

Błażyńska 氏:
Unreal Engine は、多数の機能と広範なシステムを備えた強力なツールですが、同時に、本当にだれでも理解し、学ぶことができます。すべてが揃っていて、ゲームやプロジェクトのベースとして既存のテンプレートを読み込むだけで、好きなように開発でき、まったく白紙の状態から始める必要がないということが、Unreal を最も使いやすいエンジンにしています。これは、すべてのメンバーが通常のゲーム開発者の役割を複数担っている小規模なチームにとってきわめて重要だと思います。さらに、入門レベルから高度なトピックまで、Unreal のほぼすべてに関する無料で利用できる優れたチュートリアルがたくさんあります。

Boti の物語の背景はどのようなものですか?

Błażyńska 氏:
Boti は、コンピュータ内にある私たちの世界、バイトランドのアップグレードとして新たにインストールされた超高度なデータ クーリエとしてゲームを開始します。Boti のタスク マネージャーであるカーネルが、システムをオーバークロックするとパフォーマンスの遅れを改善できる可能性があると話すと、Boti はインフォボットの仲間である Zero と One と共にメイン プロセッサーに向かい、良いと思う改造を行います。ところが、カーネルが行方不明になったのと同時に、システムは暴走し、恐ろしい不具合が発生し、平和だったバイトランドはバグやウイルスに悩まされるという未曾有の大災害が起こります。Boti と仲間たちは、コンピュータの問題を解決するためにバイトランドを巡る旅に出かけ、タスク マネージャーを見つけ、大災害の真相を突き止めることになるのです。

このゲームのためにインスピレーションを得た、特定の 3D プラットフォーマーはありましたか?

Błażyńska 氏:
もちろんです! ゲームプレイの観点から、リビッツ!ビッグ・アドベンチャー (Sackboy: A Great Adventure) がシングル プレイヤー モードと協力モードの両方でプレイ可能になるようどのようにアプローチしているか検討しました。画面に表示されているすべてのものを操作できる Astro's Playroom の世界のインタラクティビティの高さには驚かされました。また、私たちの環境が非常にインタラクティブであるというこの感覚、私たちのチームにとって達成可能な規模で生み出そうとしました。古いインスピレーションとしては、アリス イン ナイトメア (American McGee's Alice) シリーズ、特に アリス マッドネス リターンズ (Alice: Madness Returns) が挙げられます。これは、これまでの例と比べると意外なインスピレーションかもしれませんが、アリスのゲームでは、プレイヤーが常にキャラクターをコントロールし、世界をナビゲートする手応えを感じることができるのが気に入りました。

さらにもう 1 つ、ラチェット&クランク パラレル・トラブル (Ratchet & Clank: Rift Apart) を挙げたいと思います。この作品は、現実世界を作り出すためのすばらしいアプローチと、高品質のハード サーフェス環境要素を使用して、すばらしいビジュアルを作り出しています。
Courtesy of Purple Ray Studio
ゲーム内で音楽スライドと磁力はどのように機能し、それはプラットフォーマー ジャンルに何をもたらしますか?

Błażyńska 氏:
当初、スライド メカニックの初期バージョンを開発していたとき、古いプラットフォーマー ゲームからインスピレーションを得た通常のスライドを追加しようとしましたが、他の世界のインタラクティビティと比較すると、ちょっと味気ない感じがしました。そこで、アート チームがスライドをビジュアル化するためのさまざまな案を用意したところ、その中に ギターヒーロー (Guitar Hero) 的なものがありました。このシンプルなビジュアル アイデアは、プレイヤーが安全に移動するだけでなく、曲を演奏し、演奏に成功すると報酬が得られるというスライドに発展しました (プレイヤーは、スライドをマスターできなかった場合、再挑戦できるオプションがあります)。これらの曲は、通常のゲームプレイの流れから離れた心地良い休憩を与え、プレイヤーに魅力的なオーディオビジュアル フィードバックを提供し、とても満足のいくものです。

一方、磁力 (バイトランドでは「フッキング」と呼ばれる) は、シンプルな要素でゲーム内のパズルを構築するために作られたもので、わかりやすく、複数の使い方ができ、プレイヤーが磁力で簡単に接続できる要素を含む、理解しやすいメカニズムが必要でした。Boti が自分自身または他のオブジェクトを押し引きできるというアイデアは、多くのクールなゲームプレイ インタラクションができ、環境パズルやプラットフォーム化の課題に組み合わせることができます。

Boti に Unreal Engine を使用してドロップイン ドロップアウトの協力プレイを実装するのはどのくらいたいへんでしたか?

Błażyńska 氏:
Unreal Engine はデフォルトでマルチプレイヤーを処理できるように準備されていて、ゲーム開発のマルチプレイヤーに関するさまざまなソリューションがシステムにプリインストールされているため、協力プレイの実装に関する技術面はそれほど複雑ではありませんでした。より多くの作業を必要とする側面もありましたが、それは主にデザインの選択と、シングル プレイヤーと協力モードの両方で動作するキャンペーンなどの問題へのアプローチに関連するものでした。
Courtesy of Purple Ray Studio
ゲームのレベルはまだあまり見ていませんが、新旧のコンピュータやテクノロジーに触発されると言っていますね。それはどのようにゲームに反映されるのでしょうか?フロッピー ドライブや古い CRT スクリーンのようなものが、OLED モニターや SSD と隣り合わせになっているのを期待してもいいのでしょうか?

Błażyńska 氏:
私たちのバイオームは、メイン プロセッサー、マザーボード、RAM スティック、グラフィックカード、電源ユニットなど、現代のあらゆるコンピュータにある部品を基にしており、これらの部品からインスピレーションを得て、この世界の中に住むソフトウェア ボットからそれらがどのように見るかを奇抜に表現しています。この抽象的なアプローチと明るい雰囲気を求めるために、サイバネティックな木や草のそばに、コンデンサーや冷却ファンなどのコンポーネントからインスピレーションを得たコンポーネントがあります。Boti は、RAM の町の広場でニャーと鳴くネコボットや、冷却水の海の近くの砂浜を這うサイバークラブに遭遇することがあります。

このアプローチは、電子部品からインスピレーションを得た、生きたエコシステムのような感覚を持ちながら、ハードエッジなコンピューティングのインスピレーションと、私たちが作り出そうとした明るい雰囲気のバランスをとる、カラフルで鮮やかでエネルギッシュな世界を生み出すのに役立ったと思います。

自作 PC 文化はどの程度取り入れるのでしょうか?水冷や複雑な照明のようなものがあるのでしょうか、それともコンピュータの基本に関するものなのでしょうか?

Błażyńska 氏:
パーソナル コンピュータには、インスピレーションの元になる多くの歴史があります。私たちは、私たちの抽象的な世界に最も合うと思われる要素をいくつか選びました。この物語では、Boti は、オーバークロックの失敗、システムの再起動、特定の場所で発生した不具合の原因究明など、コンピュータが遭遇する典型的な問題を解決することを任務としています。その上で、Boti が直面する敵として、システムに群がる一般的なワーム、さまざまな場所に現れるバグ、不正なセキュリティ機能などを考えてみました。
Courtesy of Purple Ray Studio
明らかなコンピュータ部品以外に、マップの外観にはどのようなものからインスピレーションを受けたのでしょうか?

Błażyńska 氏:
環境にアプローチする方法を検討する際、バイトランドを半分真実味のある機能的な都市の世界にしたいと考えたので、コンピュータの部品と現実世界のさまざまな環境との類似性を描くことにしました。たとえば、プロセッサー エリアは様式化された工場設備のように設計されており、ワークボットが歩き回って仕事をしている様子、生産ラインが稼働している様子、荷物が送られてくる様子などが描かれています。一方、グラフィックス カードにあるレベルでは、都市空間からインスピレーションを得て、アミューズメント パークをイメージした要素を取り入れています。プレイヤーはサーカスを楽しんだり、ステージで大きなショーが始まるのを待っているシティボットに会ったりできます。

Boti、One、Zero のデザインはどうでしょう?ピクサーらしさが出ていますね。

Błażyńska 氏:
トリオについては、かわいくて親しみやすいというのが主な目的でした。さらに、このキャラクターはわかりやすくする必要があったので、シンプルで明確な形状をベースにしています。色も、バイオレット、イエロー、シアンの 3 色でシンプルにまとめました。また、主人公に手がないなど、シンプルな形にこだわることで、アニメーションの工程をシンプルにすることができ、これは、チームの規模を考えると必要なことでした。

ゲームジャム タイトルから本格的な発売リリースを目指す他のゲーム開発者にアドバイスをお願いします。

Błażyńska 氏:
これは難しい質問で、たくさんのことを列挙できますが、ゲームジャム プロジェクトの作業を続けたいと考えている人にできる最良のアドバイスは、自分のタイトルに何を求めているのかをよく考えることです。ゲームの見た目とプレイをどのようにしたいか、また目標を達成するためにどれくらいの時間と助けが必要かを計画することです。計画が適切であればあるほど、リリースまでの道のりがよりスムーズになります。

それから、時間を見積もるときは、どんなことでも必要だと思う時間を 2 倍にしてください。;) 本当に、必ず必要になります!

お時間を割いていただきありがとうございました。Purple Ray Studio と Boti についてもっと詳しく知るにはどうしたら良いですか?

Błażyńska 氏:
話を聞いていただき、ありがとうございました。私たちの最新情報を得る最良の方法は、定期的に投稿するようにしている私たちのソーシャル メディアを通してです。私たちの最新ニュースに興味がある人は、SteamFacebookTwitter、または Linkedin を見てください。

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