Brothers: A Tale of Two Sons Remastered で Unreal Engine 5 の採用が成果をもたらした理由

Brian Crecente

2024年3月15日
Avantgarden Games は、ミランに本拠地を置くイタリアのスタジオで、Digital Bros Group が全額出資する子会社です。
創造性と情熱を示し、Murasaki Baby Last Day of June などの高い評価や受賞歴のある作品の制作元でもある Ovosonico から進化した同スタジオは、Josef Fares 氏による最初の傑作となった作品のリメイク版の開発に取り組んでいます。​
Avantgarden の比較的小規模なチームがゲーム デザインの傑作と考える Brothers: A Tale of Two Sons のリメイク版の制作を開始するにあたって、Unreal Engine 5 を利用するという選択肢は早期アクセス版にもかかわらず容易に決定できるものでした。

同スタジオが持つ時間とリソースによって最先端の視覚的に優れたゲームを制作するには、このエンジンを利用することが唯一の手段であるとチームは感じていました。また、この時点ではまだリリースされていなかった Nanite と Lumen が作品に大きな変革をもたらすと確信していました。

そしてそれは、現実のものとなります。

この 2 つの強力なツールは期待どおりに提供されることとなり、開発において極めて大きな影響を与えました。

ミランに本拠地を置く同スタジオがリマスターに携わることになった経緯、原作にそれほどの影響力を見出した理由、Unreal Engine 5 が制作に役立った点について、Avantgarden のゲーム ディレクターを務める Luca Simonotti 氏と、リード ゲーム プログラマーを務める Emanuele Russo 氏に話を伺いました。
Avantgarden がスタジオとして組織された経緯と、その制作における目標を教えていただけますか?

Avantgarden ゲーム ディレクター、Luca Simonotti 氏:
Avantgarden は、業界のベテランと Ovosonico の元チーム メンバーで構成されたゲーム開発スタジオです。Digital Bros が 2020 年に Ovosonico を完全に買収し、それを Avantgarden にリブランディングしました。
このスタジオが目指すのは、高品質の作品によって成長することです。必ずしも長く続く作品や AAA カテゴリである必要はありません。主な目標は、品質と物語の両方において、小さくても独自の傑作を制作することです。同世代のゲーマーと将来のゲーマーの両方に、長く続く影響を与えられればと考えています。
 
Avantgarden では、このリメイク版の制作にどのように取り組みましたか?

Simonotti 氏:
最初にお伝えしたいのは、この魅力的な作品のリメイク版に取り組めるのは Avantgarden のチームにとって、特別なことであると同時に重大な責任も伴ったということです。この決定は、Josef Fares 氏の BAFTA を受賞した傑作の 10 周年を祝い、独自のアップデートされたバージョンの開発を通して元の作品を再度体験してほしいという情熱によって実現しました。最初のゲームのリリースから何年も経過しているのにもかかわらず、原作のユニークさは当時のままです。歴史を作ったゲームに新たな命を与える作業には細やかなアプローチが求められ、元の作品のクリエイターのビジョンを尊重し、尊敬し、深いつながりを作る必要がありました。各シーンの本質について継続的に疑問を持ち、感情的に共感していただける作品を目指しました。当スタジオの目標は、クリエイターが心に描いたあらゆる感情をさらに強化し、増幅させることでした。ゲーム自体の魅力が引き続き発揮され、生まれ変わった新たな形でさらに影響力を増すようにすることです。
Courtesy of Avantgarden Games
元の作品である Brothers: A tale of Two Sons は、プレイヤーにどのような影響を与えたと考えていますか?

Simonotti 氏:
Brothers: A Tale of Two Sons は、その感情豊かな物語とユニークなゲームプレイのメカニックで、プレイヤーに持続的な影響を及ぼしました。2 人の兄弟による魅力的なストーリーは、2 人のキャラクターをプレイヤーが同時にコントロールするという革新的な方法と組み合わさり、記憶に残るゲーム体験を生み出しています。キャラクターと、ゲームを通してキャラクターが直面する状況の感情的なつながりによって、その体験の没入感を深いものにしています。さらに、比類のないアート ディレクション、印象的なサウンドトラック、ゲーム ワールドの設計は、ユニークな雰囲気を作り出しています。こうした要素は、ゲーム業界におけるこのゲームのオリジナリティをハイライトすることに役立ち、プロットだけでなく、プレイヤーの体験全体の感情に没入感を与えています。最後に、Brothers: A Tale of Two Sons は、言語による従来の方法を使用することなく、ゲームプレイやビジュアルを通じて感情を伝える点が評価されています。これによって、ビデオ ゲームで新しい物語を生み出す可能性が開かれ、プレイヤーからの新たな期待が寄せられるようになりました。
 
Brothers: A Tale of Two Sons のリメイク版の制作を決定するに至った理由を教えてください。

Simonotti 氏:
主な目標は、元の作品の体験を称え、維持し、過去の技術的な制限を克服して、元の作品のアイデアを鮮明に強調することでした。元のゲームのリリースから 10 年を超える時間が経過していますが、Brothers による感情豊かな物語は、新しいプレイヤーには新たに見つけていただき、ゲームをすでに知っているプレイヤーには再度プレイしていただくのに値するものであるとチームでは考えています。このリメイク版で行った改善は、ビジュアルのディテールやフェイシャル アニメーションから、オーケストラによってレコーディングしたサウンドトラックのリマスタリングにまで及び、元のゲームの限界を超えることを目指して、全体的な体験をさらに深みのある魅力的なものにしています。 
 
このリメイク作品で変更したいと思った主な内容を教えていただけますか?

Simonotti 氏:
当スタジオにとって、Brothers: A Tale of Two Sons Remake は、単なるゲームではなく、プレイヤーが体験する感情の旅であると考えています。だからこそ、当スタジオの主なフォーカスはゲームの表現を向上し、コントロールを洗練し、すべてのアニメーションを徹底的に見直すことでした。表現の向上については、すべてのシーンをやり直し、新しいシーケンスを導入し、メカニックや謎解きにわずかな変更を加え、あらゆるレベルでインタラクションを追加するために時間を割きました。Avantgarden のチームでは、兄弟の旅のすべてのステージを一から再構築し、Unreal Engine 5 の機能を徹底的に活用しました。最新テクノロジーのおかげで、元の作品の体験は独自のものに進化し、以前は実現不可能だった表現力を備えるようになりました。独自の「シングルプレイヤーで協力する」コントロールはそのままに維持しながら、フレンドが 2 人の兄弟を別々にコントロールするオプションも追加することで、ゲームプレイをさらに魅力的なものにしています。
Courtesy of Avantgarden Games
このリメイク作品の開発に、Unreal Engine 5 を利用することに決めた理由を教えてください。

Avantgarden リード ゲーム プログラマー、Emanuele Russo 氏:
UE5 を選んだのには、複数の理由があります。最初の理由は、プロジェクトのミッションに関連しています。このリメイク作品では、最先端のテクノロジーによるビジュアル品質を達成することを目指していました。いわゆる「Triple-I」でなくてはならなかったのです。与えられた時間とリソースでは、UE5 が唯一の選択肢でした。

もう 1 つの理由は、チームが Unreal テクノロジーのスキルをすでに持っていたことです。メンバーの多くは、ゲームのシッピングや UE で何年も作業した経験をすでに持っていました。最後の理由は、元の Brothers が Unreal 3 で制作されていたことです。これは UE5 を選択する動機につながりました。 
 
このプロジェクトのチームの規模と、そのチームのサイズで実現したかった目標に対し、Unreal Engine 5 はどのように役立ちましたか?

Russo 氏:
社内のチームは 6 人のプログラマーを含む、約 20 人のメンバーで構成されています。UE5 は、多数のツールやフレームワークを活用した開発をサポートしています。そのため、ゲームプレイや視覚的品質に全面的に集中することができ、何かを一から作り直す必要はありませんでした。Brothers の体験では、アニメーションとカットシーンが果たす役割は大きく、それを踏まえると、このゲームにはアニメーション フレームワークとレベル シーケンサーが不可欠でした。最後に、充実したスケーラビリティ システムを活用することで、コンソールも含めたさまざまなハードウェアで優れたパフォーマンスを実現することができました。 
 
Lumen によるリアル タイムのグローバル イルミネーションはこのリメイク作品の制作にどのような影響を及ぼし、最終的な成果はどのようなものでしたか?

Russo 氏:
Lumen による影響は極めて大きいものでした。これに関しては、社内でも長期間にわたって議論を重ねました。最も重要だったのは、「シッピングの時期に成熟した機能となるのか?」や、「パフォーマンスの面で利用に耐えうるものなのか?」、「ゲームのアート ディレクションに合っているか?」といった点です。

UE5 が早期アクセスの段階で開発を開始し、Epic のロードマップを信じて取り組んできましたが、今ではその直観は正しかったと言えます。Lumen を採用したゲームのシッピングを行うことができ、パフォーマンス要件も実現できました。アート ディレクションの観点では、ゲームのビジュアルを大幅にリアルな方向にシフトしましたが、元のゲームが持つおとぎ話のような雰囲気をなくしたくはありませんでした。Lumen でこれを実現することは簡単でなかったため、カットシーンに手を加えてビジュアルが美しくなるよう制作しましたが、これはエンジン内でテストを繰り返し、撮影技術の経験を積んだ成果です。
Courtesy of Avantgarden Games
このリメイク作品の制作に Nanite テクノロジーをどのように活用し、どのような成果が得られましたか?

Russo 氏:
Nanite は、特にチームのサイズを考慮すると大いに役立ちました。アーティストはアセットの複雑さに引き続き注意する必要があるものの、Nanite はプロダクションと統合パイプラインを加速させる役割を果たしています。その成果はさらに優れたものとなり、バックグラウンドからフォアグラウンドまでの全体的な詳細度が均質になりました。
 
このリメイク作品において、テクノロジーは制作にどれほど重要でしたか?

Russo 氏:
ゲーム制作にとってテクノロジーは常に重要です。結局のところ、ゲームはソフトウェアだからです。Brothers の場合、Unreal 3 で制作されている点を生かし、ゲームのソース コードとエンジンを利用できました。UE3 と UE5 にツールを実装することで、両者の間をつなぐ架け橋を作り、元の作品のアセットやスクリプトのほとんどを UE5 に移行することができました。これがアーティストやアニメーターに役立つ確かな技術的基礎や視覚的なブロックアウトとなり、レベル デザインやアニメーションの点で元のゲームに対して忠実さを維持することができ、品質も向上しました。
 
Lumen と Nanite を利用したことで、プレイヤーによるこのリメイク作品の認識にどのような影響があると思いますか?

Russo 氏:
プレイヤーの認識にどのような影響があるか、正確にはわかりませんが、Lumen と Nanite に私たちのアセットやチューニングを組み合わせて利用したことで、リアルな感覚や視覚的な複雑さが向上したと考えています。
Courtesy of Avantgarden Games
このリメイク作品での Unreal Engine 5 の利用方法について、他にお話しいただけることはありますか?

Russo 氏:
Unreal Engine 5 は、ツールやテクノロジーの点で小規模なチームに多くを与えてくれます。これによって市場投入までの時間が短縮され、高い品質水準を達成する可能性が得られます。しかし、これは極めて奥深く、複雑なツールでもあります。それだけに、目標を達成するために必要なスキル、経験、努力を重ねれば、それが報われるときが来るでしょう。私たちは、自分たちで得た成果を誇りに思います。
 
ありがとうございました。 Avantgarden や Brothers: A Tale of Two Sons Remake について、もっと詳しく知りたい読者は何を見ればよいでしょうか?

Simonotti 氏:
今後の作品や、Brothers の最新情報については、ゲームの Web サイト当スタジオの Web サイト、および linkedIn をご覧ください。

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