画像提供:Deep Silver Fishlabs

宇宙戦闘ゲーム Chorus の開発を Unreal がサポート

Brian Crecente
12 月にリリースされた宇宙戦闘ゲーム Chorus は、伝承に基づくミステリーと手に汗握る激しい戦闘を繰り広げながら、宇宙を横断する壮大な旅を体験できます。VG247 は、本作を「今年最後の素晴らしいサプライズ」と評価し、 GamesRadar は、Chorus は、「Star Wars の秀逸な戦闘シーンを想起させる作品」と評価しています。

デベロッパーの Deep Silver Fishlabs に、ヒット作、モバイル スペース フライト シミュレーション シリーズ Galaxy on Fire の制作から、Windows PC、PlayStation 4、PlayStation 5、Stadia、Luna、Xbox One、Xbox Series X/S でのまったく新しいタイプの宇宙ゲームの制作へと大きく舵を切った経緯についてお話を伺いました。また、新たな制作を行うきっかけとなったインスピレーションや、Unreal Engine を活用して新しいコンセプトをどのように具現化していったかについてもお話しいただきました。
 

Marek Berka 氏

Marek Berka 氏は、豊富経験を誇るビデオ ゲームのクリエイティブ ディレクターです。過去 20 年以上にわたり、多くの開発サイクルを通じて、あらゆる形式や規模のビデオ ゲーム プロジェクトを率いてきました。複数のゲーム プロジェクトで、コンセプトからポストプロダクションまでリーダーとして統括し、その他多くのプロジェクトにも携わってきました。Berka 氏は、オリジナルで有意義なビデオ ゲームを通じて、人間の感情や世界の文化を共有し、称えることを使命と考えています。Madfinger、Exient、Vatra、2K をはじめとする多くの企業で経験を積み、現在は、Deep Silver Fishlabs のスタジオ クリエイティブ ディレクターを務めています。

Tobias Severin 氏

Tobias Severin 氏は、この業界のベテランで、InnoGames や Gameforge をはじめとするさまざまな企業に勤務し、幅広い経験を誇ります。現在は、Deep Silver Fishlabs の開発ディレクターとして、複数のプラットフォームでの開発とゲーム体験を統括し、常に全精力を傾けてプロダクションの限界に挑戦しています。Severin 氏の興味と経験は、ゲーム開発におけるあらゆる技術分野に及んでいます。サーフィンしているとき以外は、ビデオ ゲームの素晴らしさを多くの人に伝えることを目指し、活動しています。

Chorus のアイデアは何をきっかけに思いついたのでしょうか?
 
Deep Silver Fishlabs、クリエイティブ ディレクター、Marek Berka 氏:オリジナルのアイデアは、当スタジオが誇る Galaxy on Fire ゲームのレガシーに関連して得たものです。同時に、コンソール市場への移行を念頭に置いて、最初の構想が練られました。ただ、設定を考えていくうちに、ゲームプレイの手法を根本的に変える必要があることと、本作では本当の意味で私たちならではの表現を見出さなければならないことに気づきました。そのときに、Chorus の最初の形ができあがったのです。
 
最初のコンセプトから、どのようにして現在の形になっていったのでしょうか?
 
Berka 氏:ゲーム開発サイクルには、必ず進化が伴います。私たちは、優れたプレイとフィーリング、そして納得のいくオーディオ ビジュアルを提供できる作品を制作しようと考えていました。自分たちが誇れる構想を形作ることができたので、チームの全員がその実現にむけて尽力しました。
 
特に、ゲームの核となるハイペースのゲームプレイと、ミステリアスな「スペース マジック」を興味深い方法で組み合わせることに、かなり早い段階で焦点を絞っていました。この組み合わせが適切に設定され、納得のいくものになったときに、自分たちが目指している内容について理解できたので、その方向に着実に進んでいきました。
 
画像提供:Deep Silver Fishlabs
Deep Silver Fishlabs は、モバイル ゲーム、特にモバイル ゲームの傑作 Galaxy on Fire で有名ですね。前作の Galaxy on Fire は、Chorus の制作にどのような影響を及ぼしたのでしょうか?
 
Berka 氏:Chorus では、Galaxy on Fire のレガシーを活用しています。インスピレーションという点では、過去のフライト モデルやゲームの一般的な構造から得た多くの教訓があり、それを確実な基盤として使用しました。
 
Unreal でゲームを開発しようと思った理由をお聞かせください。
 
Berka 氏:実用性と品質の観点から、Unreal を使用して開発することにしました。私たちは、Unreal Engine と、美しい要素を直感的に作り出すことができる Unreal Engine の環境を大変気に入っていたのです。当スタジオの優れたエンジニアリング チームが、Unreal Engine の充実した最新鋭の技術を駆使することで、美しく洗練されたゲームを 4K 解像度で 60 fps で実行するという最も意欲的な目標の 1 つを達成することができたと確信しています。
 
クロスプラットフォーム ゲームに移行する際にはどういった課題に直面したのでしょうか?また Unreal Engine はその課題の解決にどのように役立ったでしょうか?
 
Deep Silver Fishlabs、開発ディレクター、Tobias Severin 氏:Unreal などのエンジンは、ゲームを幅広いプラットフォームに展開するうえで大変役立ちます。通常、プラットフォーム ホルダーの技術要件の多くに、すでに対応されているからです。これは、広く使用されているプラットフォームで特に当てはまります。最新世代のコンソールや PC に関しても、Epic チームがきわめて早い段階からサポートを提供してくれました。また、 でソース コード にアクセスできるので、問題を自分たちで修正したり、異なる UE バージョンのホット フィックスを適用したりできるのも非常に役立ちました。
ナラと知覚を持つ戦闘機フォーセイクンのストーリーは、どこから着想を得たのでしょうか?
 
Berka 氏:必要だったのは、暗い過去を持つダーク ヒーロー、つまり、目の前の使命をやり遂げようとする、強い意思を持つ人物が必要でした。具体的に着想を得たものや、参考にしたものは特にありません。一般的には、人間性の暗い部分と向き合い、受け入れ、その過程で自らを癒していくというのが、最も近いかもしれません。
 
フォーセイクンはこのテーマと密接に関係しており、同時に、宇宙空間でナラの信頼できる相棒となる存在を検討していました。バック ストーリーの一部にスピリチュアルな要素が含まれているため、AI 駆動の相棒と組み合わせることで興味深い状況が生みだされ、そういった状況に新たな視点をもたらすことができました。
 
本作の特徴は、豊かで新しい宇宙を舞台にした奥深いストーリーだと思います。ナラとフォーセイクンのストーリーだけでなく、このストーリーの舞台となる架空の宇宙の歴史を、プレイヤーはどのように紐解いていくのでしょうか?
 
Berka 氏:探索はゲームの一部分ですが、すべての探索が必須であるわけではありません。プレイヤーの皆さんには、自由に歩き回って興味のある場所を探索してもらいたいですね。自由に探索していると、サイド ミッションやサイド ストーリーが見つかるのですが、どれも、ゲーム ワールドとその場所のバックストーリーが融合されたものになっています。
 
ディテールに関心のあるプレイヤーはサイド ミッションやサイド ストーリー見つけられると思いますが、あまりディテールに関心のないアクション重視のプレイヤーもいらっしゃると思います。そういったプレイヤー向けには、星や小惑星の間に本作ならではのレアな報酬を隠しています。たとえば、Rites of Powers のアップグレードのほとんどはメイン ストーリーには組み込まれていませんし、最も興味深い装備でもありません。
画像提供:Deep Silver Fishlabs
ゲーム制作の際に苦労したことで、ここで話しておきたいものはありますか?
 
Severin 氏:すべてのプレイヤーに最高のゲーム体験を提供したいと考えていましたので、古いハードウェアでも十分に動作するだけでなく、最新マシンのメリットも活用できるゲームにしたいと考えました。Unreal Engine は、ハードウェアに応じてビジュアル品質を調整できる多くのオプションを備えています。Epic チームは、「フォートナイト」から多くのことを学び、それをすべての開発者が活用できるようにしてきたのだと思います。たとえば、私たちがよく使用する、動的な画面解像度などの機能ですね。
 
私たちは、自動化されたパフォーマンス テストとトラッキングに重点的に投資を行い、プロダクションの後期段階を短縮しました。
 
技術的な課題以外にも、チームがこれほどのレベルの品質のカットシーンを制作したのは初めてで、公開されたトレーラーにはかなり大きな期待が寄せられました。パンデミックの最中でのシネマティックスの最終調整は、困難を極めました。声優が移動できなかったり、転職の際に隔離が必要であったりしました。そのうえ、チームはホーム オフィスで膨大な量のデータを処理する必要がありました。ですが、最終的には、この少人数のチームがアウトソーシング パートナーとともに本作を完成させることができました。非常に誇りに思っています。
 
宇宙戦闘ビデオ ゲームには、Star Wars のような初期の作品から Wing CommanderSubSpace などの 90 年代に多くの人に支持されたゲーム、Eve:ValkyrieEverspace のような最近の作品まで、長く複雑な歴史がありますね。このような歴史の中で、どのようなアプローチや要素を取り入れてゲームを制作されているのでしょうか?
 
Berka 氏:これからお話するいくつかの点は、宇宙戦闘ゲームというジャンルに限ったものではありませんし、重要性が低いというわけでもありません。このジャンルで Chorus ならではの表現を模索する際、私たちは何度も検討と試行錯誤を重ねました。最終的に、PrivateerFreelancer などのタイトルから得た教訓は、リアルな空間とゲーム ワールドでした。何もない空間や美しい景色はどんなゲームに存在しますが、ワールドの構築方法、バックストーリーの伝え方、派閥の紹介や使用方法などは、没入感を高めるのに非常に有効です。
    
また、最近の傾向として、シミュレーションや巨大な一般的な空間が好まれますが、その大きさゆえに奥行が不足している印象を受けることも少なくありません。こういった状況を変えたいと考えました。一つ一つの場所に心を込めて、手作りのパーツを配置することで、プレイヤーが見ていない場所でも、その場所の状況がパーツ自体からわかるようにしたかったのです。
画像提供:Deep Silver Fishlabs
さまざまな宇宙戦闘タイトルがありますが、Chorus はどのように差別化を図っているのでしょうか?
 
Berka 氏Chorus は宇宙戦闘シューティング ゲームで、ハイペースの手に汗握るゲームプレイを提供することを目的としています。スピードとスリル溢れる操縦に重点を置いており、シミュレーションに特化したタイトルとは一線を画しています。また、宇宙をスペースオペラスタイルで表現しているため、多くのサウンドやエフェクトをふんだんに盛り込んでいます。これは、あえて盛り込んでいます。真空の原理を理解していないからではありません。フォーセイクンほどの超ハイテクスペースシップには、宇宙空間のどんなセンサー刺激も音声入力に変換するインターフェースが必ず搭載されていると考えたからです。なぜこういった環境にしたのかというと、プレイヤーが自分がパイロットであるという意識を保つのに役立つからです。これは、Star Wars から明確なインスピレーションを得ました。
    
もう 1 つの重要な要素は、ストーリーとナレーションです。ストーリー主導の大作を意図してはいませんが、ミッション間に合理的で美しい外観の一貫した環境をふんだんに作りこむことで、ナラの行動の理由、フォーセイクンがなぜこういった高度なスペースシップであるのか、彼らがどのように進化しているのか、そして、ナラの力の源泉を解き明かすための謎の手掛かりについて説明しています。この手法が私たちが考える面白さであり、プレイヤーの皆さんも面白いと思っていただけるとと考えています。
 
Unreal Engine の機能の中で、本作の実現に特に役立った機能はありますか?
 
Severin 氏:私たちは、 レベル ストリーミングワールド コンポジション を多用しました。これらを使用したことで、非常に緻密でディテールに富んだ環境の壮大なワールドを作り出すことができました。これは、宇宙戦闘ゲームとしては、かなりユニークだと思いますよ。
 
Deep Silver Fishlabs では PS5 および Xbox Series のどの技術的進歩を Chorus に取り入れましたか?また、それらをどのように活用していますか?
 
Severin 氏:まず、高性能のプロセッサーにより、解像度、フレーム レート、ロード時間が向上しましたね。Chorus のようなセミオープンワールドのアクションゲームは、そのメリットを大いに享受しています。一度でも 60fps でプレイしたら、以前の環境には戻れなくなるでしょう。また、本作は UHD テレビ画面でも優れたビジュアルを提供します。
 
他にも、追加された CPU の性能を活用できるように物理的なデブリ フィールドを導入しましたし、レイトレーシングへの対応も完了しました。詳しくは、数か月以内にお伝えできると思います。
 
Unreal Engine 5 の今後の進化についてどう思いますか?また、将来のゲームで Unreal Engine 5 を使う可能性はありますか?
 
Severin 氏:当スタジオのチームは Unreal Engine 5 に非常に期待しています。現在、プロトタイプで使ってみていますが、最初の使用結果が得られるのが待ちきれません。
 
Chorus はセミオープン ワールド ゲームなので、ワールド パーティショニングと新しいワークフローのメリットを活用できると思います。
 
また、もちろん、LumenNanite は、ゲーム開発全般にとって画期的な機能ですね。Chorus では、ベイク済みのグローバル ライトと動的ライティングを併用しました。完全なリアルタイム ワークフローを実現できることは、非常に魅力的です。
画像提供:Deep Silver Fishlabs
他に何か付け加えることはございますか?
 
Berka 氏:宇宙戦闘シューティング ゲームのファン、ビデオ ゲーム通、単に好奇心のあるゲーマーなど、どんなプレイヤーも、Chorus に夢中になるでしょう。ストーリーに惹き込まれ、ゲームプレイ、サウンドトラック、グラフィックに圧倒される体験が得られます。是非、Chorus をプレイしてみてください。
 
Deep Silver Fishlabs と Chorus に関する詳しい情報は、どこで確認できるでしょうか?
 
Severin 氏Chorus の詳細については、 ChorusTheGame.com をご覧ください。また、twitter.com/ChorusTheGame で最新情報をご覧いただけます。Fishlabs および当スタジオの取り組みの詳細を知る最も簡単な方法は、Fishlabs とつながることです。Fishlabs とつながるには、 TwitterLinkedInInstagram をフォロー/登録していただくか、当スタジオの Web サイト をご覧ください。また、当スタジオのメンバーの多くが、世界各地のゲーム イベントやカンファレンスに頻繁にも参加しています!当スタジオのメンバーは、さまざまな方とさまざまなトピックについてお話しするのが好きなので、是非お気軽にお声がけください。

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