2016年7月11日

UE4 で制作されたテーマパーク アトラクション、『Mass Effect: New Earth』のご紹介

作成 John Gaudiosi

長年、ビデオ ゲームの世界を生き生きとしたものにしてきたアンリアル エンジン 4 (UE4) は、現在、 Cedar Fair Entertainment などのテーマパーク企業で使われています。カリフォルニアの Great America は初のビデオ ゲームをテーマにしたアトラクションをオープンしました。これは、パブリッシャーの Electronics Arts、デベロッパーの BioWare、プレビズ技術の会社、Halon Entertainment、およびハリウッドのエンターテイメント企業、3D Live のパートナーシップによって実現しました。

『Mass Effect:New Earth』 は、BioWare のヒット作である Sci-Fi ビデオ ゲーム シリーズに新たな歴史を刻みました。このアトラクションはリリース予定の 『Mass Effect:Andromeda』 ゲームではなく、オリジナルの 『Mass Effect』 三部作の設定になっています。

Cedar Fair Entertainment Company の Strategic Growth 部門で Corporate Vice President を務める Christian Dieckmann 氏によると、観客はゲーム シリーズの伝説の宇宙船「ノルマンディー号」に乗って、遠距離移動を可能にするマスリレイを使って問題を抱える惑星、Terra Nova へと冒険の旅に出ます。 

『Mass Effect』 三部作はアンリアル エンジン 3 (UE3) を使用して制作されましたが、このテーマパークの新しい 4D シアター アトラクションは、UE4 を使って制作されています。このアトラクションは80 席のシアターでカスタムメイドの 60 フィート 3D LED スクリーンを特徴とします。 

3D Live の共同設立者兼 CEO の Nathan Huber 氏によると、シアターはまるでノルマンディ号の中にいるかのような感覚を与えてくれるとのことです。これは、エア噴射、水、におい、足をつつく、首をくすぐる、振動、ドライアイスなどの機能を備えたモーション シートの効果によるものです。あらゆる角度からの五感の刺激は、80 チャンネルの周囲のサラウンド サウンド アレイでさらに効果を増します。

「UE4 で 3D LED 技術を強化し、それを near-form の波形スピーカーを備えた最新のサウンド技術と組み合せて、誰でも隠れたマイクロ スピーカー アレイを持ち、個々のサウンドが各耳に伝わるようにします」と Huber 氏は説明します。「こうしたツールをこのアトラクションに取り入れたのは非常に野心的なことだったといえます。」

さらに、同氏によると巨大な 3D LED スクリーンは極めて明るいため、観客はディズニーのアトラクション、『スター ツアーズ』などで使われるような他のどのプロジェクション システムよりも深度を感じてフォトリアルな体験をすることができるとのことです。

Halon Entertainment の Lead Engine Technical Designer である Jason Choi 氏によると、コンピューター向けに作られた原作のストーリーラインを大画面に作り直すことは、ゲームのアート面でのスタイルに匹敵したものを作るという大きな挑戦でした。実際に、Mass Effects のアセットをそのまま使えなかったからです。

「ゲーム用に作られていたため、このアトラクションの巨大な 3D LED スクリーンで必要とされるものよりも低解像度でした」と Choi 氏は説明します。「従って、BioWare が UE3 ベースのゲームで以前制作したアセットを使って、実質上再利用して UE4 で解像度を高めました。」

このチームはアトラクションのストーリーラインに関して BioWare と協力して作業しましたが、大画面のアドベンチャーの 4K ビジュアルは、エピックゲームズの技術なくしては実現できなかったことでしょう。

「UE4 を使うと、リアルタイム レンダリングができます」と Choi 氏。「4K では両目でのレンダリングの所用時間は 1 フレームで 3 秒から 4 秒です。これと比較して Maya、Arnold、または VRay を使ってオフラインでレンダリングする場合、ライティング、シェーダー、ジオメトリのポリカウントに関してこうしたビジュアルにするために片目で 1 フレームあたり数時間かかります。ここでは、60 fps で行っています。」

Choi 氏によれば、UE4 は現在利用可能なものの中で最高レベルのゲーム エンジンであり、リアルタイム レンダラであるとのことです。実際に、最後の仕上げをする前でも、作品の見栄えはそのままで非常に素晴らしいものでした。 

「UE4 を使うと、Maya、 3DSMax などから数か月かけてレンダリングする必要なく、標準的なビデオ ゲームの品質を超えたものを作ることができました。」「UE4 が優れているのは、美麗なグラフィックスを迅速に作成できることです。わずか数時間で目をみはるようなものを制作できます。 アニメーションのインポートとモデルの取り込みは、非常に短時間でできるプロセスです。非常に反復性が高いため、アニメーターがショットを微調整すると、素早く実装できます。文字通り、ボタンを一回クリックするだけです。

アトラクション全体は1 年以内で着想から建築そしてオープンまでこぎつけました。Dieckmann 氏は、技術が進歩すればエキサイティングなアトラクションの新カテゴリや、観客の体験を向上させる他の方法が実現すると考えています。

「我々の戦略は、デジタル エンターテイメントの世界にスケール感を持ち込むことです」と Dieckmann 氏。「日常生活よりも大きなものでなくてはなりません。リビングルームでできることではありません。」

Choi 氏は、将来のアトラクションには改善の余地があることを認めています。この 『Mass Effect』 のアトラクションでさえ、アンリアル エンジンのお蔭で将来的に更新を加えて拡張することができます。

「『Mass Effect』 アトラクションに対して行った作業は、リアルタイムとは程遠いものでしたが、同じプラットフォームでビルドされ、将来のアトラクション、シネマティックス、仮想現実の体験を作るための基礎になることでしょう。

Dieckmann 氏によれば、3D LED スクリーン、VR、AR (拡張現実) などの新しいイマーシブな (没入型) 技術を使って、Cedar Fair Entertainment は、精巧でコストのかかる物理的なセットを作る必要なく、観客を全く新しい世界に連れて行くことができるとのことです。 

「コンテンツは動的で時間の経過に伴い変化するか、各観客に対して適応することができます」と Dieckmann 氏は説明します。「EA のような電子ゲーム会社は、Sci - Fi、ファンタジー、ホラーなど多岐にわたるジャンルのヒットシリーズを持っています。これらを新しいアトラクションのベースにすることができます。」

Cedar Fair では UE4 を使って、Carowinds テーマ パークに EA の別のシリーズのアトラクションを作りました。Plants vs. Zombies Garden Warfare:3Z Arena では、ライトガンで大きなスクリーンの 4D コンセプトにインタラクティビティを加えました。これは、Alterface of the Americas が、Cedar Fair と EA が所有する PopCap と共にデザインしました。