Executive Producer Ridley Scott と Director Robert Stormberg のチームがタッグを組んで、Scott のアカデミー賞受賞映画作品「The Martian」の VR 化を実現しました。20 分長のインタラクティブな体験にジェット機エンジンのごとく活力をもたらしてくれたのは、エピック ゲームズのアンリアル エンジン 4 の技術だったと語ってくれました。
「The Martian の物語を伝えるためには、知り得る限り最も高速なゲームエンジンを用いてのみ実現が可能でした。それがエピックのアンリアル エンジン 4 です」と Stromberg は語ります。「シネマティクスなストーリーテリングを実現するために必要なツールでした。」
Facebook の Oculus Rift、Sony の PlayStation VR、ハリウッドで群を抜いている VR 機材 HTC Vive で The Martian VR Experience をお楽しみ頂けます。ナラティブとインタラクティブのミニゲームを組み合わせた本作品は、火星を探検して地球に戻るマット ワトニーの冒険を追うだけでなく、マット デイモンのような宇宙服を身に付けたユーザーにファーストパーソン視点のアクションを取らせる仕組みになっています。
「ビデオゲームは年々レベルアップしています」と説明してくれるのは Stromberg 氏。「いくつかのフィールドを融合させた本作品のような体験は、VR では初めての試みでした。」
本作品では、ユーザーはローバーで火星の赤土の上を駆け巡り、ヘルメス号に向かって脱出用ポッドを操縦し、さらにはワットニーが作ったプチガーデンでジャガイモとバーチャル バスケットボールまで行います。数々の受賞歴を誇る有名映画のセットを元に作成した背景が 360 度ひろがります。そして下を向けば、ワトニーの腕と脚が見えます。
本作品は、Fox Innovation Lab が 20th Century Fox、RSA Films、そして Stromberg 氏の The VR Company (VRC) と共同で開発しました。
「VR は、まだ誰もが作成方法を見つけようと競い合っている最前線です」と Stormberg は言います。「我々は、たとえばサウンドなら Q-Deparment、ハンド コントロールであれば Heavy Iron Studios、3 分間のトレイラーの制作は MPC VR というように、いろいろな企業と関わっています。適切な企業と専門知識を正しい順序で積み上げて、映画制作過程と同じように、大規模なチームを 1 つにまとめていくのです。」
ゲーム デベロッパー Heavy Iron Studios (Epic Mickey 2) は、Oculus と Vive のプロトタイプ ハンド コントローラーを用いて、開発に 4 ヶ月を費やし、その結果、ワールドの中でユーザーが自分の腕と間違えるほどの没入感を得る腕をテクスチャで完成させたのです。
Fox Home Entertainment Worldwide の President、Mike Dunn 氏は、VR での映画制作は通常の映画とは言語が異なるため非常に興味深いと語っています。
「VR でオーディエンスに一連の感情を味わってもらうには、視覚および聴覚のヒントを様々な大きさと形で用意しておく必要があります」と Dunn は言います。「DTS と協力してオブジェクト ベースのサウンドを試してみました。すると、VR のレベルが格段に進化しました。」
アンリアル エンジン 4 の用途はゲーム エンジンですが、ハリウッドでは娯楽産業やそれ以外の分野でも様々な分野で活躍しており、新しい混合型の体験づくりの門戸を開いています。
「ビデオゲームは映画よりも実際的だと思います」と Dunn は話します。「Martian はプレイしながら直接的な感情が呼び起こされるので、全体的に実際的な体験ゲームになっています。ゲームではゲームプレイに感情移入が可能なので、我々はゲームと映画の境界線を曖昧にして、映画と VR を双方向で体験できるようにしました。
Stromberg 氏によると、The Martian VR Experience はゲームを考慮して作成されたわけではなく、プロジェクトでそのように展開したそうです。
「マーク ワトニーと同じ体験をしていることを強調するために、インタラクティブなエレメントをどこかで取り入れたかったのです」と Stromberg 氏は言います。「最初は 3 つ入れましたが、結果 5 つで落ち着きました。」
今年 1 月にラスベガスで開催された Consumer Electronics Show では、VR 体験デビューを飾り、HTC Vive 向け D-Box ランブルシートが大絶賛されました。映画の中のローバーを実際に Martian のランドスケープを横切って Ares IV ロケットまで操る、見事なまでの没入感を、アンリアル エンジン 4 が実現しました。ユーザーが Vive コントローラーのトリガーを放してローバーのスティック状のグリップを緩めると、ビークルの減速感を出すためにシートが下がります。もちろん、このようなファンシーな技術がなくても、VR 体験でユーザーは映画の世界にどっぷりつかることができます。
"Best Art Direction" 賞を 2 回 (Avatar, Alice in Wonderland) 受賞している Stromberg 氏は、VR 技術はビデオゲームとハリウッド産業で大躍進を遂げると予想しています。
「Avatar の制作を開始した時、その 10 年前は不可能だったことをしていました。ところが 5 年後、映画が完成する頃には技術の急速が目覚ましく、やり直しを余儀なくされた事が何度かありました」と Stromberg は当時を振り返ります。「VR 技術と消費者の双方がとても良い状態にある今こそ、成功に向けたアクションを取る時なのです。」
アンリアル エンジン 4 の技術は、新たな VR の波を後押しするエンジンの 1 つとなっています。
「VR は、車輪はあるのに使い方が分からず混沌としている時に、ようやく発明された超高速で走る車のようなものです」と Stromberg 氏は例えます。「その車こそがアンリアル エンジン技術でした。すべての演算技術、表示用ハードウェア、ハンド コントローラーを兼ね揃えた技術は存在していませんでした。」
この体験プロジェクトに初めて参加したことで、Stromberg 氏は今後の VR プロジェクトに対する熱意が高まったといいます。主要な写真撮影を終わると、The Martian VR Experience の指揮を取りに行きました。ディズニー映画の Maleficent (マレフィセント) のディレクターは、VR シネマティックス制作の次の段階は、参加者ではなく観客として完全な体験ができる作品だと言います。
「ナラティブな物語を作成したいです。リアルな状況とアクタによる感情的な物語が、舞台の演劇のように自分の目の前で展開されるのを観るのです」とStromberg 氏は説明してくれました。「次はそういうプロジェクトにしたいですね。将来的には、ゲーム エンジン プロジェクトに加えて、360 度全面パノラマ体験向けにステージングしたプロジェクトにも挑戦したいです。」