VR はサンディエゴ コミコンで何年かにわたり、20 万人を超えるポップ カルチャー ファンを沸かせています。ハリウッド映画のスタジオとテレビ ネットワークがこうした非常に影響力を持つ人々に新しい方法で関わるようになってきたからです。
2016 年のこのイベントで、注目を集めた VR 体験のひとつとして FX Networks が手がけたものがあります。この 『American Horror Story Fear VR Experience』 は、FX、体験デザイン エージェンシーの North Kingdom、ソフトウェア企業の Groove Jones によって制作されました。アンリアル エンジン 4 (UE4) の技術を採用して制作されています。
9 月 14 日に行われた『American Horror Story』 のシーズン プレミアのサポートを受けて、FX はSan Diego Convention Center のすぐ隣にある Hilton Bayfront Park グラウンドに大きな黒い倉庫を建てました。金属製の不気味な建物内に入ると、グループ単位の入場者が明るく照らされた未来の研究所に案内されます。そこには光沢のあるベッドが 4 つあります、それぞれ、手術用ブランケットをかけられ、HTC Vive ヘッドセットにつながれます。
5 分間の VR で、受賞歴のあるこのドラマの過去のシーズンと関連する様々な恐怖を体験します。話は呪いの館の中の地下の通路から始まります。標本が入っている瓶や手術道具でいっぱいです。1 つめの恐怖は、解剖した体や死体の一部などの医療的な恐怖が中心となります。2 つめの恐怖は、閉所恐怖症によるものです。精神病院で白い服を着た修道女がプレイヤーを死体凍結器に閉じ込めます。3 つめの恐怖は、魔女がプレイヤーを火あぶりの柱に貼り付けて生きながらにして燃やします。4 つめの恐怖はドラマに登場するグロテスクなピエロ、 Twisty に対するものです。ピエロはプレイヤーを縛り付けて鋭い武器を投げつけます。最終章は死への恐怖です。ドラマの呪われた館を舞台に、プレイヤーは手押し車に載せられ通路を進み、、エレベーターの昇降路に投げ出されます。
「UE4 は我々にとって馴染みのあるものでした」と Groove Jones のリード デベロッパーである Matt Miller 氏は言います。彼は以前、Borderlands と Aliens のゲームを制作した Gearbox Software でアンリアル エンジンを使った経験があります。
「UE4 はすぐに簡単に使えるため、迅速にプロトタイピングすることができました」と Miller 氏は説明します。「これはホラーというジャンルでは重要です。制作時に、特に少しずつ作っている場合、うまく機能しません。プロトタイピングし、イタレーションして様々なものの間を進んで、うまく機能するもの、しないものを確認します。
North Kingdom の Executive Creative Director であり、パートナーである Daniel Ilic 氏によると 『American Horror Story』 は、シーズンを追うごとに物語と美しさに磨きがかかってきたドラマだとのことです。チームはこうしたことを念頭に、ドラマの世界観を反映する体験を作り、オーディエンスを夢中にさせたいと考えました。
「現実とフィクションの区切りを曖昧にするために、説得力のある見た目と感覚を備えたものを作ることが重要でした。これにより、オーディエンスは親密な体験をすることができるのです」と Ilic 氏は言います。
彼は、コミコンでこの VR を体験する人々をずっと見ていました。そのリアクションは驚くべきものだったそうです。実際、倉庫の外側から叫び声が聞こえるグループもいました。縮こまって隠れようとする人もいました。
この VR は受け身の体験ですが、Miller 氏によれば自身のビデオ ゲーム制作の経験によってこのホラーは生き生きとしたものになったとのことです。
「VR 技術には未開拓の領域があります。ですから、シーン、プレイヤー、視点をどのように動かすことができるか、プレイヤーが VR でインタラクションする場合にどのような点に注意すべきかなどを模索中です」と Miller 氏は説明します。「ユーザー体験の観点から、VR を体験する人がどのように見るか、どのように彼らの注意を引くか、体験の流れをどのように方向づけるかなどを考えることも役立ちます。」
VR でプレイヤーを恐怖に導くひとつの方法としてサウンドの利用があります。
「制作の中でサウンドは大きな部分を占めます。サウンドを組み込むと、かなり違います。ポジショナル サウンドを用いてヘッドトラッキングを利用し、様々な方向から音が聞こえるようにして、部屋を見回すようにさせることが非常に重要でした。
このプロジェクトの制作中に、エピック ゲームズは VR エディタをリリースしました。プロジェクトの締切には間に合いませんでしたが、Groove Jones はこの技術を今後利用することに意欲を持っています。
「ずっと関心をもっていました。将来のプロジェクトで使うことを楽しみにしています」と Miller 氏は言います。「VR の体験は他とは違います。社内では、ヘッドセットを外した状態ではテストしないというルールを決めました。ヘッドセットの装着時には物事が違って見えるからです。実際に、ステレオスコピックな深度と空間感覚を感じます。コンピュータ画面で適切に見えても、ヘッドセットを装着するとスケールが正しくなかったり、ライティングをオフにできる場合もあります。VR 内で操作し、迅速にイタレーションすることが重要です。」
こうしたやり方で、さらに恐ろしい VR 体験を作ることができるでしょう。サンディエゴでの 『American Horror Story Fear VR Experience』 に対するリアクションを考えると、さらに凄いものになりそうです。