2016年8月1日

アンリアル エンジン 4 が海洋保全活動をテーマにした VR で採用

作成 John Gaudiosi

Adrian Grenier 氏は、HBO テレビシリーズ Entourage (アントラージュ オレたちのハリウッド) で、ニューヨークからハリウッドへ移り住んだ結束の固い 4 人組の中心人物ヴィンス・チェイス役を演じています。しかし実生活では、The Lonely Whale Foundation という組織を中心に活動する環境アクティビストでもあります。

ドキュメンタリー映画「52:The Search for the Loneliest Whale in the World (世界一孤独なクジラ探して)」が制作されると、Grenier は海洋汚染の発生に関係している世界の指導者および一般の消費者達とのつながりを深めるために、仮想現実という新たな媒体への挑戦を決めました。そこで、HTC Vive 向けの Cry Out The Lonely Whale Experience を制作するために、エピック ゲームズのアンリアル エンジン 4 を採用している AMD、Dell、3D Live Entertainment と連携しました。

「海洋汚染はいろいろありますが、日々クジラを追い詰めている最も深刻な問題は海洋騒音です。10年前の倍になり、クジラの交信システムを狂わせています」と Grenier は説明します。「クジラは超音波を発信して、暗い海の中を移動し、仲間同士でコミュニケーションをとっています。商業船舶の往来、軍事施設、油田開発が原因で、10 万個分の航空機エンジンに匹敵するレベルの不快な騒音が発生しています。この騒音のために魚や野生動物はすぐに死んでしまう場合もありますが、不安になって、迷子になったり混乱してしまう場合もあります。例えば、座礁するクジラが増えています。問題は深刻化しているのに、ほとんど知られていません。」

Cry Out は国連パリの地球温暖化防止会議の会場から、オースティンの南東まで南に旅をする仮想現実体験です。ユーザーは潜水艦に乗って深海へ潜り、そこで海洋騒音が原因で他のクジラと交信ができない孤独な鯨 「52」と遭遇します。(52 は、通常のクジラたちが使う周波数ではない 52 ヘルツでしか歌うことができません)水中へ潜る感触をレプリケートし、ユーザーが自分の脚の間を魚が泳いでいるかのように感じさせるために、HTC Vive に最先端のテーマパーク モーション シートを組み合わせました。

プロジェクトのリード デベロッパー Justin Molinari 氏によると、「Cry Out は、長編映画に匹敵するモデリングとアニメーションを触知エフェクトとリアルな動きと組み合わせた高度な 4D VR 体験」であり、「イマーシブな動きを体験させるなら、視覚的にもモーションおよび 4D エフェクトと同じくらい興奮してもらいたいのです。その点、アンリアルのグラフィックスは無敵です。」

Molinari はテクノロジストの観点から、3D Live Entertainment は没入感の今後はゲーム エンジンにかかっていることを信じて疑わないと付け加えました。 

「VR を使うと、リアルタイム レンダリングとプレレンダリングされた 360 度動画を表示させることで、エンドユーザーの体験はイマーシブになります」と Molinari は言います。「このような体験を作成するには、ゲーム エンジンを使う方法がベストです。シーケンスのスクリプト処理、エフェクト作成ツール、十分な最適化機能を備えたレンダリング技術を提供してくれるビデオ ゲーム エンジンは VR の理想です。ゲームだとやや保守的で強すぎる体験になってしまう部分も、VR で表現すると全体的に自然な感じに収めることができます。」 

3D Live Entertainment の創設者 Nathan Huber 氏によると、ほとんどのユーザーは自分達の前に広がる世界が 360 度動画で撮影したものだと思いこみ、ゲーム エンジン上で体験が操作されていることにすら気が付かないそうです。

さらに重要なことは、ユーザーを深海まで連れていって隠された美の世界を直接見せることです。そして Grenier はこの技術を使って 52 を伝えることで、人々の意識が高まることを願っています。

「人間は目の前にあるものを無視することはできません」と Grenier は言います。「そうであるなら、人間は五感によって世界とつながっていることになります。データで情報を受け取って、処理するので、この体験を通じて問題に関心をもってもらえることを期待しています。」

Cry Freedom プロジェクトは、構想づくりから完成まで 3 ヶ月を要しました。Molinari によると、アンリアル エンジン 4 はイタレーション速度が非常に速いので、たくさんの事を試せるということです。 

「通常アーティストはエンジニアに頼り、それが大きな負担になりますが、我々はアーティストがブループリント ビジュアル スクリプティング システムとマテリアル エディタを使って異なる方法でシーンの感触とエフェクトを試すことができるようにしました」と Molinari は説明します。「他の制作プラットフォームでは問題なくできていても、これだけの範囲およびビジュアルとなるとこの方法以外は思い浮かびませんでした。」

Molinari のチームは長編映画レベルの VR モデルを使っており、かなり複雑なスケルタルメッシュが必要だそうです。アンリアルは、パフォーマンスを下げずにそのような処理も可能にします。 

「もうひとつアンリアルの素晴らしい点は、見事に最適化された動的ライティングです」と Molinari は付け加えました。「アンリアルの VR インテグレーションは他に類を見ないほどシンプルです。アンリアル エンジン 4 は VR 開発用のプラグアンドプレイです。」

Grenier は仮想現実を用いたことに肯定的ではあるものの、アンリアル エンジン 4 のようなビデオゲーム技術が実際どれほど貢献したかは、あまり把握できていませんでした。

「私が初めてプレイしたビデオゲームは一作目の Grand Theft Auto なので、ゲーム経験はかなり乏しいのです。そんな私でも、これだけのことを実現してくれた技術にはただ驚くばかりです」と Grenier は語ります。「この先のことを考えると、少し不安になります。人々が現実世界に出向いてくれる時はくるのでしょうか。シューティングゲームやファンタジー系のポケモンゲーム以上に人々を夢中にさせて、現実世界で日々の暮らしの問題に深く関与したい気持ちにできたら、素晴らしいと思います。」

Cry Freedom が、法律家にも一般市民にも良い意味での変化を起こすことを願いながら、世界ツアーを続けます。有害なペットボトルの購入をやめてエコバックを使用するといったシンプルなことが、海洋をクジラや野生動植物の健全な住処にするために大きな役割を果たします。