2019年7月18日
現代のインディー ゲームへの愛が詰まった Travis Strikes Again
概ね 13 人のコア チームによって開発された Travis Strikes Again は、小さなスタジオによる傑作からインスピレーションを得た作品で、インディー ゲームに宛てたラブ レターのように感じられます。グラスホッパー・マニファクチュアはこの作品をどう作り出したのか、(SUDA51 という名前でも有名な) 須田剛一氏にお話を伺いました。著名なディレクターである須田氏は、ゲームの第 4 の壁を破るようなユーモアに自身のそのときのムードがどう影響するかを説明してくれました。また、どのインディー ゲームがこのプロジェクトのインスピレーションとなったかについてや、トラヴィス・タッチダウンが主役を務めるゲームに複数のジャンルを詰め込み、これまでのノーモア★ヒーローズとはまったく異なるカメラの視点や感覚を扱うことについても触れています。 本日はお時間をいただきありがとうございます。Travis Strikes Again を楽しむには、これまでのノーモア★ヒーローズの 2 作品をプレイしておくことが大切でしょうか?
いいえ。プレイヤーのみなさんが心配する必要はありません。ノーモア★ヒーローズとノーモア★ヒーローズ2 をプレイしていない方でも、Travis Strikes Again を存分にお楽しみいただけます。
Travis Strikes Again の大部分はトップダウンのアイソメトリック ビューとなっていて、これまでの 3 人称視点とは異なっていますね。何をきっかけにしてこの新しい方向性をとることになったのですか?
たくさんのインディー ゲームやインディー クリエイターから影響を受けました。大規模な製品にするのではなく、ゲームの規模やスタジオの雰囲気を、スーパー ファミコンや PlayStation 1 向けにゲームを作っていたころのようなものにしたいと思ったのです。ほかにも、オフィシャルなナンバリング タイトルとは違ったことを試してみたいという気持ちもあったので、Travis Strikes Again ではアーケード スタイルのトップダウン ビューを採用しました。
Travis Strikes Again では、トラヴィスがゲーム機に吸い込まれて、そのなかでさまざまなミニゲームに挑むというユニークなコンセプトを取り入れていますね。この設定のインスピレーションとなったのは何ですか?
リリースされなかったゲーム機、デス ドライブのローンチ タイトルの世界をトラヴィスが泳ぎ回るような感覚になるようにデザインして、仕様が徐々にまとまっていきました。トップダウン ビューについては、ゲームをプレイするなかで世界を行き来するとき、どう切り替えるかをよく考えました。そうするうちに、ゲーマーであるトラヴィスが、ゲーム内ゲームの冒険のためにゲームの世界にクロスオーバーするというアイデアが出てきました。
このゲームは、内省的で皮肉っぽく、しばしば第 4 の壁を破ってくるようなおもしろい会話が称賛を集めています。Travis Strikes Again の執筆のプロセスとストーリーの制作について、詳しく教えていただけますか?
普段は、家に帰って、入浴して、いくつか好きなテレビ番組を観てから、夜遅く、くつろいだ状態で、世間が寝静まったころ、PC の電源を入れて、好きな音楽をかけながら執筆に入っていきます。プロットにぴったり沿ったシナリオを思いつくこともあれば、元々予定していたのとはまったく異なるストーリーに行き着いてしまうこともあります。私が書くものはすべて、そのときのムードや気持ちに大きく左右されます。
レトロ調のミニゲームがいくつもある Travis Strikes Again は、特にたくさんのインディー ゲームのシャツをコレクションできるようなところが、90 年代やインディー ゲームへのラブ レターのように感じられます。このゲームに最も大きな影響を与えた作品は何ですか?
ホットライン・マイアミですね。Dennaton Games の人たちは友人でもありますし、私が最も尊敬するゲーム クリエイターの 2 人でもあります。彼らに会ってから、インディー ゲームにとても興味を持つようになりました。彼らはたくさんの刺激を与えてくれています。
トラヴィスが戦ったり、ジャンプしたり、レースしたり、パズルを解いたりするさまざまなミニゲームがありますね。ゲームに取り入れるゲームプレイの仕組みとジャンルをどうやって決めたのですか?
一部には、予算とスケジュールのバランスがあります。また、決定する前にスタッフに何度も相談しました。グラスホッパーの開発チームは、私が要求した難しいことやほとんど不可能なことを実現したり実装したりするうえで、すばらしい仕事をしてくれました。
スタジオにはとてつもない量のエネルギーがあり、それはチームのハードワークの結晶と言えるものです。スタッフが成し遂げたことには本当に感謝しています。
Travis Strikes Again では、わかりやすい戦闘システムに加えて、ゲームを進めるなかで獲得できるスキルによって深みを与えられる、隠れたレイヤーがあります。この戦闘システムを設計したアプローチについて教えていただけますか?
メインの戦闘のループは、リード プログラマーの弘中徹が中心となって開発し、ゲーム デザインの設計の中心となったのは山﨑廉でした。私の役割は、プレイヤーがゲームの世界になるべく早く没入できるようにする、リズムを作ることでした。プレイヤーの立場になって、ボタンの配置、機能の追加、エフェクトの巧みさなどについて、問題の解決や調整に努めました。没入感の妨げとなり得るものについては何でも解決しようとしました。
ボス戦はとても独創的ですね。ボスによっては複数のフェーズがあり、プレイヤーにアプローチの再考を促す場合もあります。ボス戦の開発に関するデザイン哲学について教えていただけますか?
大半はリード プログラマーの弘中徹の手によるものです。ボス戦の世界チャンピオンのようなものですね。私たちのオフィス周辺では「Hironakasm」という言葉を使っています。弘中によって生み出された、ボス戦の精巧に計算された美は、プログラミングに詰め込まれています。
フェーズの切り換えについては、そうせずにはいられなかったということです。
ゲームの開発チームの規模はどのくらいだったのですか?
グラスホッパー・マニファクチュア社内では 13 人ほどで、アートのアセットやアニメーションなど、作業の一部は外注しました。作曲や各ゲーム内ゲームのオープニング ムービーなども、さまざまな社外の人たちの手によるものです。
ゲーム開発時の最大の課題は何でしたか?
新しいハードウェアであった Switch 向けに開発したということです。Switch の特徴やコンソール固有の機能がユニークなゲームプレイの一部に役立ったと感じています。
御社のなかでは、UE4 のツールや機能で、特にお気に入りのものはありますか?
メッシュの LOD 生成機能はとても便利でした。メッシュをインポートしたあとに複数のレベルの LOD をすぐに作成でき、さまざまなパフォーマンス レベルをチェックできるので、時間を大幅に節約できました。
ビジュアル スクリプティング システムであるブループリントを何らかの形で使用しましたか?
汎用レベル デザインの構成、敵の配置、イベント シーンの構成など、いくつかのことに使用しました。
UE4 のソース コードにアクセスできるということは役に立ちましたか?
ソース コードに直接手を加えることができたので、UE4 にない機能を追加したり、新しいバージョンで取り入れられた機能やバグ フィックスを自分たちが使っていた古いバージョンに取り込んだりすることができました。
ノーモア★ヒーローズのファンに、ほかに何か伝えたいことはありますか?
Travis Strikes Again は、ノーモア★ヒーローズ シリーズの 10 周年と、グラスホッパー マニファクチュアの創業 20 周年を記念した作品です。ファンのみなさんへの感謝のメッセージとして、多くのサプライズやコラボレーションを取り入れています。
同時に、グラスホッパーの第 3 次の体制を代表するチームを集め、Travis Strikes Again の開発を通じて、新しい時代に必要となるチームのエネルギーを溜めることができました。私たちにとって大きなマイルストーンとなるゲームであると同時に、次の時代に向けた分岐点でもあります。
あらためて、本日はお時間をいただきありがとうございました。Travis Strikes Again: No More Heroes の詳細情報はどこで確認できますか?
https://tsanmh.com/ をご覧ください。