皆さん、こんにちは! 私は Matt Worrell です。『Inua』 のプロデューサーです。『Inua』 は 14 名のデベロッパーと 1 名の契約サウンド クリエイターが 18 週間で制作したものです。これは、SMU Guildhall でアンリアル エンジン4 (UE4) を使って制作された初のゲームです。『Inua』 は非常に特殊なプロジェクトです。我々のクラスの総仕上げ的ゲームだからです。Guildhall で 1 年間学んだ後、12 名のクラスメート全員で初めて取り組んだゲームです。
『Inua』 はどんな作品ですか?
ファースト パーソンの 3D シングル プレイヤー アクション パズル ゲームです。プレイヤーは氷と炎を使って環境を操り、クリエイティブな方法で敵を利用し、古代の神殿を進んでいきます。プレイヤーは Kaya という役をつとめます。神聖な存在である自然の女神を崇拝する北の部族の一員です。女神は炎と氷のパワーを Kaya の仲間に与えます。しかし、この部族は女神から嫌われたため、Kaya は女神が与える試練を通して氷と炎のパワーを身に着けて、自然の女神が意図した均衡を取る方法を人々に示さなければなりません。
『Inua』 は 2016 年の GDC で Intel’s University Games Showcase で "Best Visuals" を受賞しました。このプロジェクトに取り組むのは実に楽しかったです。『Inua』の多くの素晴らしい機能の紹介と、開発中に直面した課題をどのように克服したかについてこれからチームのメンバーに語ってもらいます。
アート スタイル: 自然の力
はじめまして! 私は 『Inua』 のリード アーティストの Taylor Adele Smith です。このプロジェクトで才能豊かな 3 名のアーティストのチームを率いて共に作業できたことを誇りに思います。『Inua』 は初めから技術的にもコンセプト的にも野心的なゲームでした。アート チームは従来のファースト パーソン パズル ゲームの美しさを目指しながら、新しいレンダリング システムを持つ新しいエンジンで作業する必要がありました。
『Inua』 のプリプロダクション開始前に、アート担当はチームとしてリアリスティック アート スタイルにすることに決めました。これが UE4 の物理ベースのレンダリング システムを最大限活用する最適な方法だと思ったからです。『Inua』 はファースト パーソン パズル ゲームであることを考えて、アート担当は自然の力を表現するビジュアル面で圧倒的な美しさを持つリアリスティックな背景を作り出すことに注力しました。
自然の力
アート担当が 『Inua』 で非常に共感した中心部分は自然の力です。自然の力という表現は、ゲームの中で Kaya が達成する氷や炎の力だけでなく、自然自体がいかに力を持っているかも表しています。我々が作った物語の言い伝えでは Kaya の人々は自然の女神を崇拝するために神殿を建てました。そのため、崇拝の場にふさわしい環境を作りたいと思いました。
自然の力を念頭に、 『Inua』 の舞台をシンプルながら時を超越した過酷な山々に囲まれた神殿にしました。既にこうした設定が他の多くのパズル ゲームの背景とは一線を画すものになっています。しかし、多くのアドベンチャー ゲームで見られる石造りの神殿の背景で問題に出くわしました。これまでのゲームと同じようなものにしたくはありませんでした。ですから、どうしたら今までのものと全く違うものになるかを自問したのです。
単調な石造りの外観を変えて、Kaya のパワーという内容を踏まえて、神殿は氷と炎という 2 つのテーマを持つ部分に分けられました。氷のセクションにはオーロラの光、流れたり凍ったりする滝、青く輝く氷の天井が見えて、冷たい色合いが落ち着いた雰囲気を作り、プレイヤーをゲームに誘います。炎のセクションには溶岩がたまり、とてつもなく熱い溶岩の流れが壁から注ぎ出ていて、プレイヤーは漆黒の黒曜石の上を歩きます。暖色、暗色のこのエリアは原始的な雰囲気で恐ろしい緊張感が漂い、ゲームで待ち受ける困難を象徴しています。こうした自然要素の色合いによって背景をうまく照らし、神殿は神聖な雰囲気になります。
こうしたすべての背景コンポーネントが一緒になると、神殿は時の流れを超えた輝きを放ちます。Kaya は旅をしながら、炎と氷の能力を使って周囲のものを変えることができます。しかし、彼女は身の回りの世界の自然の壮大さに謙虚な気持ちを持っていました。一番いいところは、背景内のこうしたすべての要素が現実の異常現象に根差しているということです。
現実世界の例を使う
プリプロダクション中にチーム全体でミーティングの機会を持ち、参考として使えるGoogle の画像を検索して世界中の神聖な場所を探しました。ゲームの舞台として数多くの候補があがりましたが、アイスランドやアラスカなどの冬の光景と、アイルランドやスコットランドのような石がある力強い風景に範囲を絞りました。具体的な場所としては、エイヤフィヤトラヨークトル (アイスランド)、メンデンホールの洞窟 (アラスカ)、ジャイアンツ コーズウェー (アイルランド)、フィンガルの洞窟 (スコットランド) などが挙げられます。
おそらく最も特徴的な構造は、柱状の玄武岩が立ち並ぶ光景でしょう。粘土の高い溶岩の流れが垂直表面で時間の経過とともにゆっくりと冷却すると、ゲーム内で見られるように割れて多角形の柱になります。玄武岩の柱が有機的な幾何学形状という美的ビジョンだけでなく、それがどのように形成されるかというのが冬の火山環境を舞台にする我々のゲームの内容にマッチしました。
溶岩がどのように氷や雪に作用するかなどのリサーチを背景のあらゆるエリアに適用して現実に基づいた美しい背景を作りました。制作中には、背景の各要素について参考写真のリポジトリを作りました。玄武岩の柱、洞窟の岩の構造、青く光る氷、溶岩などの写真です。こうしたリポジトリを作ることで、アーティストはアセットを作り、背景を装飾するうえで現実世界の物を直接参考にすることができます。
自然の背景におけるパズル ゲームの課題
プロジェクト早期のイタレーションでは、レベルを構築する際にほぼ自然のアセットに頼っていました。神殿を完全に自然と融合したものにしたかったのです。この場合、背景から神殿を作り出すよりも良い方法があるでしょうか? これは理論上は優れたアイデアでしたが、レベル デザイン チームが作業を始めてみると、より剛健な構造を必要とする部屋やパズルを作りたくなりました。
玄武岩の一連の柱のようなジオメトリ構造やポリゴンのフロアは有機的な岩壁を細分化するには素晴らしいものですが、適切な経路を作るのが難しく、過度な使用と暗く面白みのないカラーパレットが原因で、魅力的な自然の構造物が単調なプロップになってしまいました。パズル ゲームでは移動が鍵となります。そのため、プレイヤーに経路をはっきりと示す必要がありました。同時に、視覚的手がかりを与えすぎることも避けたいと思いました。パズル ゲームではあらゆる視覚的刺激が手掛かりとして解釈されうるからです。
この点で、背景の神殿部分を手直ししました。すべての場所で自然のアセットを再利用する (プロセスでポリゴン カウントを増やす) のではなく、周囲の背景とは少し異なる石でできた簡素化した非常にジオメトリックな神殿アセット一式を作りました。このやり方でいくつかの問題を一度に解決しました。アートの追加や部屋のデザインが簡単になり、背景にわずかな視覚的中断を与えて、ゲーム全体を通してプレイヤーがクリティカル パスをたどることができるようにします。
神殿と背景アセットを完成させたら、自分たちが作ろうとしているもののロジックとコンテキストに合わせて背景を埋め始めました。レベルをアセットで満たすだけでなく、非常に説得力があるパズル環境を作るためには神殿はどのように建てられるのか、時が過ぎてどのように朽ちていくかということなど多くのことを自問しました。神殿をどのように巨大なパズルに構築するのでしょう? 非常に重要なことですが、人間が作った構造と、自然に形成された構造をどのように現実のもののように統合できるでしょうか? こうしたことを念頭に、魅力的なだけでなく、論理的にも違和感のないものになるように背景を構築し、ライティングし、色付けしました。
テクニカル アート: UE4 シェーダーを使った氷の背景
みなさん、私は David Gautier です。Inua の 3D 背景アーティストを担当しています。Inua の神秘的な氷の世界を作るために使った背景デザインの手法をいくつかご紹介します。
プロジェクトを進めるにあたり、プレイヤーの周囲に大きく凍った自然の世界を作り出したいと考えました。そのため、リアルな氷のマテリアルになるよう目指しました。Constant 3 Vector を使って必要としていた最初の色でフレネルを乗算し、次に濃い青色を加えました。これにより、グラデーションのあるアルベドとエミッシブな色になりました。これで明るめから暗めのコントラストができてマテリアル内の深度の錯覚が生まれます。最後にエミッシブにするために、その強度を乗算しました。サーフェスの詳細の残り部分は、法線、メタリック、ラフネスのマップから生成されます。
氷の鮮やかな青みを帯びた色と火山性の玄武岩の柱や岩の暗めの色がゲームの中でコントラストを生み出します。z- ファイティングやマテリアルのクラッシュを生じることなく多くのモデルをクロスオーバーさせ、ブレンドするような方法で背景モデルをデザインしました。そうすることでゲーム制作中の各アート アセットのユーザビリティが高まり、多くのモデルやマテリアルを忙しく作るのではなく、背景の仕上げに注力することができました。結局、このプロセスによって、プレイヤーが神殿のミステリーを探検しながら体験しインタラクションすることができる美麗な背景シーンを作ることができました。
パーティクルあふれる神殿
パーティクル エフェクトは 『Inua』 のビジュアル面において不可欠な部分です。Kaya の自然のパワーから、プレイヤーを神殿に導くスピリット トレイル (spirit trail) に至るまで、ゲーム内のあらゆる場所にパーティクルが存在します。UE4 のパーティクル エディタを使うと、デベロッパーは各パーティクルの詳細を分単位で制御することができます。また、多様なパーティクルを作る柔軟性もあります。こうしたパーティクルの種類には、神殿の壁に並ぶアニメートされた松明の炎のパーティクル、ゴーレム (Golem) が大きな石を突き破るといろいろな場所に飛び散る石のかけら、アクティベートされたスイッチからそれをトリガーしたオブジェクトに飛ぶ光線までいろいろあります。
プログラミング: ブループリントの多様性
こんにちは! 私は Trevor Youngblood です。『Inua』 のリード プログラマーです。『Inua』 の制作は、プログラマー 5 名で構成される我々のチームにとってユニークな挑戦になりました。それまで誰も UE4 を使ったことがなかったからです。幸いなことに、UE4 は習得しやすく、ビジョンを実現するために必要なツールはすべてそろっていました。
違和感のない感覚が得られるようにする
プレイヤーが 『Inua』 の世界に完全に浸ることができるように、基本的なプレイヤーの動きも含め、何もかも違和感がないようにしなければなりませんでした。これを実現するために、プレイヤーが行うことができる多くのアクションに対してリアルなカメラの動きを実装しました。Kaya がジャンプして着地する時、プレイヤーが浮いているという感覚を持たないようにカメラを下に向けるようにしました。彼女が火の玉を投げる時、パワフルさを感じられるようにしたいと思います。ですから、カメラを傾けて彼女が渾身の力をこめて投げていると感じられるようにしました。こうしたタイプの機能はゲームの雰囲気を良くするうえで非常に大きな役割を果たします。
UE4 のタイムライン機能を使うと、こうした複雑なカメラの動きをかなり簡単に実装することができました。タイムラインでは複数のカメラの動きを一度に再生させることもできます。例えば、Kaya が歩いて氷のビームを放つ前に両手を上げる姿勢になるときの頭を上下する動きなどがあります。このようにすることで Kaya の動きがあらゆる場面で自然なものになります。その結果、プレイヤーは 『Inua』 の世界を旅しながら、その世界に完全に没入した状態を保つことができます。
パフォーマンスの優先順位を付ける
『Inua』 の開発プロセスでは、一部の動的エフェクトのビジュアル (滝、流れる水、氷床) に対して、専らパフォーマンス上の理由から多くのイタレーションをしなければなりませんでした。こうしたエフェクトの最初のバージョンは、ビジュアル的に魅力的なものでしたが、我々のフレーム レートでは非常に大きな負荷がかかるものでした。UE4 に同梱されるコンテンツ サンプルのひとつを見つけるまで、しばらくの間、適切な妥協点を模索していました。このサンプル レベルには複数の異なる水のエフェクトが実装されていて我々が使っていたものよりもはるかに最適化されたものでした。自分たちのエフェクトをアンリアルのサンプル エフェクトに似せるように変更すると、パフォーマンスと美的クオリティとのバランスをとるのがずっと簡単になりました。
迫力ある岩のモンスターを作る
『Inua』 ではプレイヤーは、ゲーム内の多くの課題の中でパズルのピースとしての役割を果たす大きなゴーレムに出くわします。A.I. プログラマーの Laura Brothers は、ゴーレムに特定のエリアをパトロールさせ、刺激されるとプレイヤーを追いかけ、プレイヤーが十分に近づくと攻撃させるようにする作業を担当しました。UE4 のビルトインの AI 機能を使うと、レベル デザイナーがパズルで使うことができるゲーム内で機能するプロトタイプを迅速に作成することができました。ゴーレムはゲームのバグの原因の多くを占めていましたが、UE4 では問題発生源を信じられないくらい簡単に見つけて、すばやく解決することができます。
ゴーレムの主な目的は、障害となり、ゴーレムが近くにきたら素早く行動しなければ、とプレイヤーに感じさせることです。最初は、ゴーレムには我々が求めていた威嚇の要素がありませんでした。プレイヤーが彼を怖がらなかったのです。もっと恐ろしいものにするために、彼の大きさとパワーを強調することにしました。彼が一歩進むと、部屋全体が揺れて部屋に入る前にプレイヤーはその音に気付くのです。UE4 のアニメーション エディタを使うと、これはアニメーションの特定ポイントで発生する画面の揺れや足音などのイベントを作成するという非常に単純なプロセスになりました。彼の動きが十分に力強いものに感じられると、プレイヤーは彼が周囲にいると注意深くなり、その動きが緊迫感のあるものになります。

デザイン: プレイヤーに指示して誘導する
初めまして、Jason Leary です。『Inua』 のリード レベル デザイナーを務めています。このゲームのデザインは 『The Legend of Korra』や『Lichdom:Battlemage』 のような当初の戦略的な自然の力をベースにしたアクション ゲームの構想から最終的に 3D パズル ゲームになるまで長い道のりをたどりました。開発を通してゲームは絶えず進化を続けました。デザインし、インスピレーションを得て、イタレーションし、またデザインするというような具合です。
『Inua』 の開発はまさに反復型のデザイン プロセスの重要性を実証するものでした。以下のセクションでは、デザイン チームがどのように 3D パズル ゲーム制作の課題を克服したかについて説明します。さらに UE4 の反復型のデザイン プロセスがチームの目標を達成するうえでいかに役立ったかについても説明します。
プレイヤーにスキルを教えることと、楽しいゲームにすることのバランスを取る
『Inua』 のようなパズル ゲームを作る場合、デザイン チームは様々な固有の課題に直面します。デザイナーは他のゲーム同様にプレイヤーに新しいスキルを教えるだけでなく、プレイヤーがこうしたスキルをさらに一歩進んで使いこなすように仕向けなければなりません。デザイナーは絶えず進化する状況の中でプレイヤーが学んだことを使う必要がある面白いシナリオを作る必要があります。正しく行うと、このソリューションはプレイヤーに真の達成感を与えてくれます。これはプレイヤーがざっと見ただけではすぐに答えがわからないが、かといってプレイヤーをイライラさせたりつまらなくさせたりしない程度に、パズルが十分に複雑な場合にのみ可能なことです。パズルの課題が物理的に達成不可能なタスクではなく、プレイヤーが頭で考えてわかるパズルの課題であることが重要です。デザイン チームはこのバランスをとることが難しいとわかっていました。効率的に行う唯一の方法は、テストを繰り返し迅速にイタレーションすることです。こうした作業では、UE4 が非常に役立つことがわかりました。
UE4 のブループリント スクリプティング システムの威力と多様性によってこのパズル ゲームのアイデアを実現させました。当初考えていたよりもはるかに速くエンジン内で完全にスクリプティングされ、プレイ可能なものになりました。デザイナーがパズルの複雑度に応じて部屋に関する新しいアイデアを思い付くと、数日という単位ではなくわずか数時間で機能するプロトタイプをエンジンで作ることができました。このように所要時間が短いということは、二次元の紙の上でパズルを評価する代わりに、実際の三次元空間でパズルをプレイできることを意味します。その結果、開発チームはパズルがどのように機能するかの理解を深めて、さらに重要なこととしてどのようにプレイされるかを考えることができました。イタレーションがこのように迅速であったため、デザイン チームは多くの種類のパズルのプロトタイプを作り、パズルをプレイテストしてもらいました。我々のデザインでは実際にゲームに組み込んだ 1 種類のパズルに対して 5 種類程度のパズルのプロトタイプを作りました。つまり、チームは幅広く検討し、その中から最適なものを選ぶことができるのです。その結果、ゲーム全体で高品質なプレイヤー体験を維持し、知的能力が試されながらも非常に満足度が高いパズルにするというチームの目標を確実に達成できます。
全体的なゲームのデザインでそれ以外に使った主なテクニックは、新しいメカニクスをプレイヤーにいつどのように紹介するかを注意深く検討することです。早すぎる段階で過剰な数のメカニクスでプレイヤーを圧倒したくありませんでした。それで、ステップに基づいた進捗システムを導入しました。プレイヤーに我々のメカニクスのひとつを示し、比較的単純なパズルを解決するためにそれを使用できるようにします。同じメカニクスを利用してさらに難しいパズルに挑んでもらいます。このやり方にすると、次のメカニクスを紹介する前にプレイヤーはあるメカニクスを使い慣れて、それがワールドとどのようにインタラクションするかについても慣れます。
プレイヤーが炎のパワーと氷のパワーの両方を合わせて使ってパズルを解く必要があるゲームの終わりに近づくまで、より複雑なパズルで複数のメカニクスを合わせて使うことはありません。
視覚と聴覚の手がかり
プレイヤーの注意を向けることはあらゆるタイプのゲームで重要なことです。しかしパズル ゲームは、プレイヤーと効果的にコミュニケーションする仕組みがあるか否かで成否が決まります。他のどのジャンルよりも、パズル ゲームではプレイヤーとデザイナーの対話があります。デザイナーがプレイヤーに語りかけるすべてのステップ、すなわち耳元でささやく、誘導する、どこを見るべきか伝える、何をすべきか伝えるなど、コミュニケーションが最高にうまく機能すると、それはすべて自分のアイデアだとプレイヤーに思い込ませることができるのです。
プレイヤーと効果的にコミュニケーションするために、デザイン チームは視覚と聴覚の手がかりの両方を説得力のある方法で使用する必要があると認識していました。主なコミュニケーション手段のひとつとして、スピリット トレイル (spirit trail) という青く輝くオーブがあります。スピリット トレイルは重要な語りの目的を果たします。自然の女神の両面を表す氷と炎を表現します。しかし、同じくらい重要なゲームプレイの目的も果たします。プレイヤーの注意をパズルの次のステージに向けて、そのレベルを乗り越えさせます。プレイヤーがスイッチをアクティベートするか、パズルのピースを解くと、スピリット トレイルはアクティベートしたばかりのスイッチからクリティカル パスを通って次のステップに進みます。これでレベルの重要部分にプレイヤーの関心を向けるだけでなく、プレイヤーの達成を強化する視覚的報酬としての役割を果たします。このアイデアは開発の早い段階で浮かび、プレイヤー コミュニケーション戦略で重要な部分になりました。
『Inua』 のプレイヤー コミュニケーションでもうひとつ重要なものとして、パズル全体を解いたわけではないけど、パズルの重要なステージを解いたときにプレイヤーに知らせることがあります。こうしたマイルストーンの達成を伝えるうえで 『Inua』 のオーディオ デザインが重要な役割を果たしました。機械音と新しい神殿のピースのアクティベーションとをペアにして、プレイヤーの注意をひきました。プレイヤーの各エリアの進捗を反映した音楽を作りました。各パズルはベースとなる環境音のサウンドトラックで始まります。続いてプレイヤーがパズルの各ステージを解くと、効果音で勝利を知らせ、サウンドトラックに音楽のレイヤーを加えました。このインタラクティブな楽譜では、プレイヤーがパズルを進むと、音楽自体が豪華で複雑なものになります。プレイヤーがパズルをそろえていくと、サウンドトラックも美しくなり、パズルの解決方法を見つける正しい道筋をたどっていることをプレイヤーに知らせます。これは実に効果的なだけでなく、プレイヤーとコミュニケーションする繊細なやりかたです。結果としてやりがいが高まり、プレイヤーの達成感も大幅に向上しました。
『Inua』 の背景と制作秘話
早くからゲームの美麗な背景が非常に強力なアセットになるであろうことがわかっていました。そのため、デザイン チームはアーティストが作った美しい世界を探検してもらうためにプレイヤーに豊富な機会を与え意欲をかきたてることが何よりも重要であると考えました。時間に限りがある中で、プレイヤーに我々の豊かなバックストーリーを理解してもらいながら、これを行う最良の方法は収集アイテムを使うことでした。ゲームのテーマと物語に沿って、凝った装飾の壁画を描いた動物の皮にしました。壁画は古代の預言者が炎と氷を操る力をもつ自然の女神の生まれ変わりであると預言していたシャーマンの伝説を表しています。
ゲームの早い段階で、最初のいくつかの収集アイテムはわかりやすい状態であるか、収集しやすい状態になっています。プレイヤーが壁画の一部を集めると、それが画面に表示されてどの部分を見つけて、どの部分が欠けているかが簡単にわかります。これでプレイヤーは、収集アイテムがゲームの一部であり、各ピースが物語の別のレイヤーを明らかにすることがわかります。プレイヤーが神殿の奥深くに進むほど、壁画のピースを見つけて収集するのがどんどん難しくなります。難易度を増す形をとることで、デザイン チームは、大きな包括的なパズル デザインの中に小さなミニパズルを組み込むことができました。プレイテストの結果、こうしたやり方は神殿の隅々まで探検させ、時間をかけて私たちの物語と美しい背景を味わってもらうのに非常に効果的であることがわかりました。
まとめ
再び、Matt の出番です。『Inua』 の開発についての記事をお読みいただきありがとうございます。このプロジェクトに取り組むのは実に楽しく、チームが成し遂げたことに非常に誇りを持っています。パズル ゲームの制作にはいくつもの課題がありましたが、UE4 の素晴らしい機能のお陰で乗り越えることができました。
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