画像提供:Image & Form Games

SteamWorld シリーズのデベロッパーが Unreal を活用し、自社初の 3D ゲーム The Gunk を制作

Brian Crecente

Ulf Hartelius 氏は、 The Gunk のゲーム ディレクターです。Image & FormSteamWorld Dig 以降の制作を行い、 SteamWorld シリーズのゲーム設計やプログラミングなどのあらゆる作業に取り組んできました。
まもなくリリースされるアクションアドベンチャー ゲーム The Gunk は、自然保護に取り組む現代社会をメタファーとして表した作品ですが、人気を博したゲーム SteamWorld でその名を知らしめた開発チームにとっては躍進のチャンスをかけたゲームでもあります。

ゲーム内でプレイヤーは資源採掘を行う Rani を操り、パートナーと協力して「Gunk」と呼ばれるスライムのような寄生生物を惑星から除去していきます。

ゲーム制作のきっかけ、同スタジオが手がけた前作 SteamWorld のタイトルから制作に至った経緯、12 月にリリースされるこの新しいアドベンチャー作品にプレイヤーが期待できることについて、ゲーム ディレクターである Ulf Hartelius 氏から話を伺いました。
 

The Gunk のアイデアはどのようにして生まれたのですか?

The Gunk ゲーム ディレクター、Ulf Hartelius 氏:
初期のプロトタイプとして、プレースホルダーにしていたテクノロジーやアートがあったのですが、そこから取り組みを始め、これが The Gunk のテクノロジーに結びつきました。この最初のプロトタイプでできるのはわずかな移動のみで、無限に広がるジャングルに灰色の霧が立ち込めている、というものでした。バキュームで霧を吸い込むことで、その下にあるレベルが現れます。これを出発点として拡張と実験を継続的に行っていったわけですが、これにはワールド内の探検や発見を可能な限り楽しいものにする、という大前提がありました。

その最初のプロトタイプとなるアイデアから、ゲームはどのように進化しましたか?

Hartelius 氏:
最初のプロトタイプを作成してから、ゲーム内では相互に関連する大きな移行がいくつか発生しました。ゲームでは当初、カメラ制御機能のない、 Diablo に似たトップダウン ビューを使用していました。しかし、探検こそがこのゲームの重要な部分であると認識してからは、プレイヤーがこの世界に本当に親しみを持てるようにカメラをさらに近くに移動し、サードパーソンの視点に変更しました。この変更により、The Gunk では単純な地面の高さマップを使用し続けることができなくなり、完全な 3D にしなければならなくなりました。The Gunk の魅力となっている、品質を常に向上させる独自のレイマーチング テクノロジーを実装するために懸命な取り組みを始めたのはこの頃です。
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SteamWorld シリーズでの取り組みは、 The Gunk の設計上の意思決定やコンセプトにどのような影響を与えましたか?

Hartelius 氏:
影響は大きなものでした。以前から引き継いでいる要素はありますし、 SteamWorld の制作からは今に至るまで多くのことを学んできました。完全に新しい設定や、新しいジャンル、完全な 3D であるといった点はあるものの、純粋なゲーム設計の観点では、従来適切だった要素を今回も採用している部分が多数あります。プレイヤーの時間を重視する点やプレイヤーのスキル レベルにかかわらずゲームを確実に楽しめるようにすることなどがその例でしょう。初期のゲームから繰り返し採用している設計上の工夫は他にもあります。SteamWorld Dig 2 で試験的に導入した複数のリソースからアップグレードを行うシステムなどがこれにあたります。

ゲームの背景や主人公 Rani と友達の Beck の関係などについて、その他にお話しいただけることはありますか?

Hartelius 氏:
ゲームの背景についてはかなり作り込んでいますが、そもそもあまり強調しておらず、ゲームに直接関係する設定以外では表に出していません。プレイヤーが操作する内容の方にフォーカスしています。しかし、もう一方の Rani と Beck の関係については、間違いなくゲームの中心となる部分であり、かなり情熱を注いでいます。2 人は資源を求めて銀河系を探索する宇宙の採掘者であり、資源を売って生計を立てています。もともと欠点もある、実在しそうなキャラクターとして感じていただきたいと思っています。また、2 人が無線で絶え間なく交わす会話は、多くのゲーム テスターによって間違いなくハイライトの 1 つだと言われています。

3D グラフィックスを前面に打ち出し、チームで大規模なゲームを作ることに決定した理由を教えていただけますか?

Hartelius 氏:
当スタジオでは長期にわたって (約 10 年間も) 2D の SteamWorld のゲーム シリーズに取り組んできましたが、そこから躍進を図りたいと考えていました。このシリーズの時期には多数の魅力的なアイデアが生まれ、それらは行動に移せば実現できたのですが、最終的に思い切って 3D へと移行することになりました。そしてようやく、そうしたアイデアをこのゲームで活かすことができるようになったのです。たとえば、植物が再生するというコンセプトは数年前にまったく別のゲームのためにプロトタイプを作成していました。しかし、このゲームでもプレイヤーが探検できるかなり大きなワールドが必要だと気づいたため、これまでの自分たちの限界を超えたいという誘惑に勝つことができませんでした。

そのような 2D から 3D への移行において、Unreal Engine はどのように役立ちましたか?

Hartelius 氏:
大いに役立ちました。Unreal Engine がなければ、このゲームは完成しなかったでしょう。あらかじめ搭載されているあらゆる機能が使えるだけでなく、The Gunk を適切に動作させるにはレンダリング パイプラインに関するさまざまなが作業ができることが不可欠でした。マーケットプレイス のいくつかのプラグインを使用することで、他の方法であれば完全に不可能なことも実現できました。自動リップシンクや優れた IK などがその例です。
画像提供:Image & Form Games
The Gunk のストーリーやメカニズムには、現代の環境保護をめぐる懸念が表されているように思います。これは、意図的な選択の結果なのでしょうか?また、こういった懸念は、ゲームにどのように反映されているのでしょうか?

Hartelius 氏:
はい。これは最初から極めて意図的なものでした。実世界で今起きている気候変動の危機を訴えるゲームにしたいと思っていましたが、具体的な問題を示すのでなく、SF の設定において全般的な方向性を作るようなものにしたいと考えていました。中心となるのはあくまで冒険のストーリーなので、誰もが楽しめるものでなければなりません。それでいて、短期的にも長期的にも、環境への関わり方についてこのゲームがディスカッションにつながればと思っています。

The Gunk のメカニズムやデザインの面で影響を与えたアイデアとしては、どのような芸術作品がありますか?

Hartelius 氏:
当スタジオの Tobias Nilsson は、80 年代のデザインが大好きなので、全面的にそれが表れています。AlienNausicaäThe AbyssMoebius 、など、この時代のあらゆる影響が反映されていますが、より現代のアーティストである Goro Fujita や Geoffrey Ernault などの影響もあります。

The Gunk では、Unreal Engine をどのように活用されましたか?また、具体的なテクノロジーとしてゲーム制作に活用されたものを教えてください。

Hartelius 氏:
UE ではあらゆるテクノロジーをすべて利用しました。もし新たな取り組みを実現する上で利用したものを 1 つだけ選ぶ必要があるなら、それは マテリアル エディタ でしょう。以前の作品で使用していたシェーダーは、手作業で記述した GLSL だったので、当然のこととして数も多くなく、ましてやアーティストによって記述されたものは存在しませんでした。マテリアル エディタを導入したことで、特にマテリアル インスタンスについては複雑さを維持しながらも柔軟性を得ることができたので、非常に感動しています。
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The Gunk は、 Windows PC、 Xbox One、Xbox Series X/S でリリースされますね。Xbox Series コンソールの次世代機能はゲームの形成にどのように役立ちましたか?

Hartelius 氏:
Xbox Series X/S は、作業を進める上で非常に優れたコンソールでした。非常に高性能で制作のビジョンを実現できるだけでなく、作業が容易にできて柔軟性も備えているからです。たとえば、自動プロファイリングを実行するビルドを設定し、各 Xbox の新しいビルドを継続的に行うようにしました。それを事前定義したテスト セットに組み込むと同時に、パフォーマンスを確認するためのデータやグラフを収集しました。
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次世代ハードウェアと Unreal Engine の長期的な可能性について、Image & Form Games の皆さんが最も期待していることは何ですか?

Hartelius 氏:
次世代コンソールによる超高速のロード時間と Unreal Engine 5 の Nanite を組み合わせれば、かつてないほど大規模かつ詳細なゲームの世界を実現できるでしょう。Unreal Engine 5 の Lumen などのツールも、日々の作業の迅速化や効率化に役立ちそうなので利用するのが楽しみです。

The Gunk の成果は、今後の SteamWorld 作品にどのような影響を及ぼすと思いますか?

Hartelius 氏:
このゲームは新しい課題の連続だったので、非常に多くのことを学びました。そのようにして学んだことは、今後どのようなゲームを制作することになっても間違いなく役立つと思っています。また、Unreal Engine での経験は、2D でも 3D でも、今後のゲームで採用すべきテクノロジーを判断する上で役立ちました。

貴重なお話をありがとうございました。The Gunk の詳細については、どこで確認できますか?

Hartelius 氏:
当スタジオの サイトTwitter をぜひチェックしてください。また、あの伝説的な Mark Hamill 氏がホストを務め、まもなく開催される Thunderful World イベントThe Gunk の出展にもご期待ください。

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