「スペース シミュレーション」という言葉は無造作に口にされることが多いですが、Starfighter Inc. はシミュレーションを慎重に扱っている数少ないゲームです。科学の難しさや科学の厳格さが周りの力に与える影響を正確に伝えようとするほど、ハード サイエンスに重点を置いているわけではありません。
Starfighter Inc. は、気を抜く事ができない戦術ゲームの Counter-Strike と World of Warships の中間あたりの対戦型ゲームを目指しています。ところが、その開発では、吐き気と非常に難しい方程式が生み出されました。
宇宙での計算
そもそもゲームには、デザイナーが物理に任せることができるポイントがあります。GTA V では、ラグドールがキックした時などにパンチが NPC としっかり結合します。しかし、Starfighter Inc. はすべてを物理に任せました。
「このゲームでは、ほとんどの宇宙船はレベルにスポーンされた時だけ方向と位置が固定されます」と説明してくれるのは Lead Programmer の Noah Brewster 氏です。「その後は完全に物理システムが制御します。」
宇宙船はその瞬間からニュートンの法則に委ねられ、大宇宙の法則に従うのです。つまり、摩擦で減速することは絶対にありません。停止したい時は、エンジンを逆噴射させます。逆向きの推力に影響を与えるのが、宇宙船のコンポーネント、つまり適度な密度、降伏応力、熱容量を持つ火薬庫と燃料タンクの物理プロパティです。
Impeller Studios はアンリアル エンジン 4 のソースコードを使って実生活の熱力学を実装するため、熱は重要です。これらの物理プロパティは、ビデオゲームで シュテファン=ボルツマンの法則 をシミュレーションするために選び抜かれたグループに属しています。
科学原理に関心があれば、計算はどこまで可能なのかという疑問を抱きます。
「エンジニアリング コンサルタントが考え出したものは、定期的に実行すればどんな CPU もだめにしてしまう常識外れの方程式でした」と Creative Director で『Crysis』の元リードデザイナーを務めた Jack Mamais 氏は解説します。「熱伝播や流体ダイナミクスをネットワーク ゲームで実行したり、スーパーコンピューター以外のすべてのマシンで適度なフレームレートを維持しようとは思っていません。」
漠然としたアイデアを複雑な方法でシミュレートするのではなく、具体的な形でそれらを表現することが解決策でした。
「その 1 つに、プレイヤーがレーザーを照射されると溶融マテリアルが生成され、それが船の中を滑って広がるというアイデアがありましたが、実現は不可能でした」と Mamis 氏は言います。「ごまかすことはできます。そばにあるエレメントは熱のダメージを受けます。ですが、船外を滑って動く溶融マテリアルはシミュレートしません。」
「ゲームプレイは常にリアリズムに優先します」と Lead Technical Artist の Berg 氏は付け加えます。
乗り物酔い対策
Starfighter Inc. には見えないシステムがたくさん実装されているので、いまや潜在的な可能性は Impeller の予想以上に拡大してます。
「小惑星の周りをスリングショットしたり、普段では考えられないような乗り物の動かし方をしたり、プレイヤーがゲームの物理をいろいろ駆使しているのを見るのは楽しいです」と Brewster 氏は言います。「私は Kerbal Space Program をかなりプレイしているので、宇宙船を進行方向に向かないようにすることには慣れています。ところが、これがマルチプレイヤー環境となると、逆向きに方向転換する人とか、邪魔をしてしまう人など様々で、プレイするのはもちろん、見るだけでもとても面白いです。」
スタジオではチームが、『スケーティング ムーブ』など非常に手の込んだ操作の仕上げ段階に入っています。『flip-and-burn into hangar』は、秒速 250 メートルで格納庫へ接近し、船を反転させたら逆噴射して、船を爆発させて停止させる方法です。
「船の修理が今すぐ必要でも、攻撃されている状態では秒速 25 メートルで格納庫に進むことはできません」と van den Berg 氏は言います。「制御のコツは時間と共に徐々に習得することができます。それが理解できると、操作と制約をもっと工夫してできるようになります。」
チームは、作用反作用ついて他の人よりも早く理解し始めているプレイヤーが何名がいることに気が付きました。「宇宙もののビデオを多く見ている人は、そうでない人に比べて曲がり方の習得が早いです」と Mamais 氏は言います。
現在 Impeller は、Starfighter Inc. の VR への対応と合わせて、乗り物酔い防止策に取り組んでいます。
「時々苦労しています。地球上の方向性に慣れている場合は特に大変です」と van den Berg 氏は言います。
方向感覚を失わないように、スタジオは明確な参照ポイントを UI に追加しました。極端な例では、摩擦のない Starfighter Inc. が突然衝突して風車のように回転し始めると、ゲームはフェードアウトして画面が真っ暗になります。
「パイロットが失神したのです」と van den Berg は説明します。「この現象が起こるたびにプレイヤーに乗り物酔いを起してもらいたくないのです。プレイ開始後 5 分で酔って吐き気をもよおすのではなく、確実に楽しめる体験を提供したいのです。我々はこの問題に今後も取り組んでいくつもりです。
Starfighter Inc. は PC 向けにリリース予定です。
編集注記: PCGamesN は、長く続いている Making It in Unreal シリーズのためにアンリアル エンジンで制作された素晴らしいゲームを選んでそのデベロッパーにインタビューしています。エピック ゲームズは編集プロセスに関与していません。