画像提供:Reply Game Studios

Soulstice のダーク ファンタジーを支える Unreal Engine

Reply Game Studios のゲーム及びクリエイティブ ディレクターである Fabio Pagetti 氏は1999年からゲーム業界で働いています。複数のプラットフォームで、様々な規模のプロジェクトに関わってきました。グラフィック アーティストとしてキャリアを始め、アート ディレクターになりました。やがて、興味と野望に導かれ、ゲームデザイナーとなることを選びました。Reply Game Studios に参加し、2012年からクリエイティブ ディレクターとして働いています。
イタリアを拠点とするデベロッパー Reply Game Studios は、日本のダーク ファンタジーの傑作である三浦建太郎氏のベルセルク、八木教広氏の CLAYMORE などから着想を得て、極めてスタイリッシュな独自のアクション ゲームで 2018 年の初めに AA ゲームの開発へと飛躍を遂げました。

BayonettaDevil May CryNier: Automata などの作品を目指したチームが作り上げたのが Soulstice です。これは、Briar と Lute という 2 人の姉妹 (1 人は生きていて 1 人は魂) のストーリーを中心として展開されるゲームであり、2 人はレイスによって破壊された都市の奪還を目指し、世界に秩序を取り戻そうとします。

チームが Unreal Engine を活用した Soulstice のユニークなゲーム メカニックのアイデアに至った経緯、パンデミックの期間のスタジオの成長、および Epic MegaGrant を受賞したことがチームの意欲やモチベーションにどのような影響を及ぼしたかについて、同スタジオのゲームおよびクリエイティブ ディレクターである Fabio Pagetti 氏に話をうかがいました。
 

Reply Game Studios は、設立から約 10 年が経ちましたね。当初は Forge Reply として始まり、現在は Reply Game Studios となっています。設立からのこの期間、最初はモバイルに集中されていましたが、その後 VR や AA ゲームへと拡大されました。この成長と進化の 10 年間で、チームが学んだのはどのようなことでしょうか?また、学んだことのうち、どのようなことが制作に活かされていますか?

Fabio Pagetti 氏 (Reply Game Studios、ゲームおよびクリエイティブ ディレクター):チームになって活動を始めたのは 2011 年です。当時のゲーム業界はまだ、特定の障壁の影響、特にコンソール プラットフォームに対するテクノロジーとアクセスの点で大きく影響を受けていました。当時のイタリアのエコシステムの状況もまったく異なっていました。私たちのチームは、長期的な目標を持って組織されましたが、有機的な成長が必要であり、徐々に拡大に向けた取り組みを進めていく必要がありました。当スタジオの最初のゲームである Joe Dever’s Lone Wolf のリリース後、2013 年~ 2014 年あたりに、私たちは Unreal Engine へと切り替えることを決定しました。Unreal Engine はチームの中で最も経験を持つメンバーが過去に利用していたのです。当スタジオの長期的な目標は、スタジオの進化を加速し、AA シーンへの足掛かりを確立できるステージに向かっていくことでした。最初のステップとして私たちが取り組んだのは Theseus でした。これは、フラットスクリーン向けの構想でしたが、VR のアドベンチャーに方針を変更しました。そして 2018 年は私たちにとって新たなスタートとなった年でした。Soulstice は当スタジオの最大のプロジェクトであり、その規模は桁違いのものになるとすぐに判明したからです。

どのようにして Soulstice の着想を得たのでしょうか?また、その着想からゲームはどのように進化しましたか?

Pagetti 氏:
VR ゲーム Theseus の後は、フラット スクリーンのゲームに戻りたいと思っていました。また、制作的な観点と商業的な観点の両方から、適切な形式によってこれを実現するつもりでした。Theseus はユニークな構成で制作されたアドベンチャー作品でしたが、それとは異なるアプローチを採用し、さらに柔軟かつモジュール式の制作に向かっていく必要があるとわかっていました。ジャンルの観点では、アクション/スタイリッシュ分野は他の分野よりも競合が多くないと気づいていました。制作面で優れた価値のある AA ゲームを開発できると感じていたため、このジャンルの傑作である BayonettaDevil May Cry、さらには Nier: Automata などの類似作品を、適切なバランスを取りながら目指そうと考えていました。さらに、チームはこのジャンルのゲーム テストに向けたスキル活用に熱心でした。2 人のキャラクターという設定は、すでに確立されたジャンルの中で、独自性や魅力があり、うまく成立する作品となるよう、刺激を加えるために私が試したアイデアです。
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1 人は生きていて 1 人は魂だけになった Briar と Lute という 2 人の姉妹はダイナミックで、ゲームにおいて大きな役割を果たしています。メカニックの背後にあるこのコンセプトは、どのようにして生まれたのでしょうか?また、このコンセプトによってどのようなゲームプレイに仕上がりましたか?

Pagetti 氏:
私はあるビジョンを持っていました。それは、強力なシングル プレイヤーの戦闘でありながら、2 つの異なるキャラクターの共存で成り立つ体験を実現するというものです。このビジョンをデザイン チームと共有し、一緒になってビジョンの洗練作業に取り組み、積み重ねを行うことで、基本的なゲームプレイの原則を確立したのです。2 人の主人公がバトルフィールドで継続的に強力するというコンセプトは、特定の敵を弱体化させる赤と青のフィールドとともに、プリプロダクションの極めて初期段階だったこの頃に生まれたものです。2 人の女性を主人公にし、姉妹にするという具体的なアイデアも、この段階で形になっていました。2 人の姉妹にすることで、大きな困難も一緒に克服し、どのようなことでも互いの絆を大切にするという、魅力的なストーリーを展開できるとも感じていました。

ゲームのタイトルによるところなのか、「ソウルライク」な作品を期待する人も存在します。こうしたことは、初期の頃から認識されていたのでしょうか?また、そのような混乱が起こる可能性について、何らかの対処を行われていたのでしょうか?

Pagetti 氏:
タイトルについてはさまざまなものを検討しましたが、このゲームの世界の歴史において重要なイベント、「Solstice of Souls」にちなんでこのアイデアにしました … これは何らかの形でタイトルに含めたいと思っていたものでもあります。ソウルライクな作品ジャンルについては、あまり考えることなくこの名前にするよう進めていました。数秒でもゲームプレイを見れば、どのような体験ができるかを認識してもらえると確信していたからです。一方で、ここ数年でハック アンド スラッシュ ゲームはあまり出ておらず、ちょうど「ソウルライクな」というゲーム用語はますます広く使われるようになっています。そのため、ゲームの発表時に一部で混乱が生じたのは事実ですが、当スタジオが直接 Soulstice の詳細を説明したことでこれは明確になりました。

2 人のキャラクターを同時にコントロールしながら、ゲームを親しみやすくダイナミックなものに感じてもらえるようにする上で、その複雑さのバランスはどのように取りましたか?

Pagetti 氏:
ゴーストのキャラクターである Lute は、実際には近くでプレイヤーを助け、圧倒的かつスムーズなシングル プレイヤー体験を提供します。周囲の敵や、群れになってやってくる敵にプレイヤーが常に対応する、自由なフローの戦闘ゲームからこの着想を得ました。私たちは、こうしたカウンターの管理を別々のキャラクターで行うことに決めて、群れのコントロールや設定範囲への攻撃など、さらなる機能を追加したのです。プレイヤーが独自にペースや目標を設定し、フローの混乱でスピードが落ちたり中断されたりすることなく Soulstice のバトルフィールドの中心になることができるように、このようなアプローチを取りました。
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時間の経過によってアンロックやアップグレードが可能になる武器の種類については、どのようなアイデアから生まれたのですか?

Pagetti 氏:
Briar には特徴的な武器というだけでなく、Ashen Knight に所属していることを明確にする武器を持たせたいと考えていました。武器の機能には 2 つあり、剣としてすばやく攻撃を与えるもの (Ashen Vindicator) とウォーハンマーとして重い打撃を行うもの (Ashen Enforcer) があります。しかし、他の武器も操れるようにしたいと思っていました。これによって、敵との戦闘の設計と同期しながら行う、2 つのプロセスが生まれることになりました。いくつかの武器は、特定の敵を念頭に置いてストレートな (ただし、効果的な) じゃんけんのグーチョキパーのような関係を想定して開発しました。Tearing Penance (ムチ) は、弱い敵の群れに襲われているとき以外は利用できます。一方で、Hand of Retribution (こてと盾を組み合わせたもの) は特定の場合に効果を発揮します。これは、ゲーム内の特定の敵には破壊可能な鎧を装備させたいと思っていたからです。また、Hallowed Hunter (弓) は、特に飛ぶ敵に効果を発揮する、などといった具合にできています。常に目指していたのは、各武器にアンロック可能な一連のコンボを用意することです。しかし、習熟によるシステムを追加し、選択したターゲットに対してさらに効果的になったり、一般的な機能がより多彩になるようにもしました。

ゲームのストーリーは、ダーク ファンタジーとして説得力のあるものになっていますね。Soulstice のストーリーや設定の参考にした、ビデオ ゲーム、映画、その他のフィクションなどはあるでしょうか?

Pagetti 氏:
設定とストーリーに関して言えば、Soulstice は、日本のダーク ファンタジーの傑作、特に三浦建太郎氏のベルセルク、八木教広氏の CLAYMORE から明らかな影響を受けています。しかし、このゲームをそうした漫画やアニメのコピーにするつもりはなく、トリビュートとして制作しています。特に、私たちは欧州人でありイタリア人なので、ゲーム開発では何事にも独自のタッチを加えるようにしました。
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設定についてですが、ゲームには非常にすばらしい背景、レベル設計、ライティングが盛り込まれています。Soulstice のビジュアルを実現するため、Unreal Engine はどのように役立ちましたか?

Pagetti 氏:
Unreal Engine は、Soulstice に取り組む上でチーム全体にとって非常に役立ちました。本当に魅力的な機能を実現するだけでなく、パフォーマンスも確保できます。チームの (すばらしい) アーティストの作品というだけでなく、デザイナがプロトタイプ作成で自律的なレベルのブロックアウトのために自由に使えるツールを得られました。さらに、実装したいと思っていた特定のメカニックをゲームに実装できたのです。

ゲームの敵やキャラクターのデザインも、非常に魅力的です。Unreal を活用することで初期のコンセプトがどのように膨らみましたか?また、そうしたデザインが時間とともにどのように進化したかを簡単に教えていただけますか?

Pagetti 氏:
Soulstice には、さまざまなタイプとクラスの敵がいます。堕落した人間が出てきますが、これは Chaos、Wraith (青色の敵)、および Possessed (赤い敵) の汚染された手に触れられたものです。この 3 つの敵についてはプリプロダクション段階の初期に考案され、それぞれに関連するメカニックは即座に明確にすべく、またビジュアル的にも魅力的になるよう取り組みました。さらに、都市イルデンの上空に開いた裂け目に近寄ると、不吉で奇妙なことが起こります。私たちにとっては、このような異世界の感覚をプレイヤーに届けられることが重要であり、これはプロダクション パイプライン全体で一貫したものとなっています。このプロセスは、デザイナとコンセプト アーティストの自由な会話から始まりました。その後、キャラクター アーティスト、アニメーター、VFX アーティストなど、全員がそれぞれ各クリーチャーに独自の要素を加える機会 (およびツール) が提供されました。
画像提供:Reply Game Studios
このゲームで使われているエントロピー、コバルト、クリスタル、ラプチャーは、ゲームにまったく新しい要素を加えています。これらのしくみと相互作用について紹介していただけますか?

Pagetti 氏:
さまざまなタイプの敵、特に Wraith と Possessed の話をしたところで実はすでにヒントが出ていました。これらのクラスは、Lute が繰り出すことができるフィールド (青い Evocation フィールドと赤い Banishment フィールド) にも関連しています。単純ではありますが、適切なフィールドの影響下にないと、これらの敵は傷つくことがありません。それぞれの敵に対して適切なフィールドを繰り出す必要があります。これは、とても単純なようでありながら、さまざまなクリーチャーが混ざると状況はかなり厳しくなります。さらに、ほとんどの Possessed は倒されると自身に憑依している Wraith を放ちますが、時間制限内にこれらの Wraith を倒さないと、元の Possessed が復活してしまいます。こうした戦闘のメカニックが固まってから、私たちはこのメカニックを探索のフェーズやボスとの戦闘などでも常時有効にすることを決定しました。

ボスとの戦闘時にゲームで使われる三人称視点は、このゲームのあらゆるメカニックをうまく 1 つにまとめています。Soulstice でこのような状況を実現する上では、どのような課題を克服する必要がありましたか?

Pagetti 氏:
ボスとの戦闘は、ハック アンド スラッシュで魅力的な体験を提供する上で重要です。また、この点で私たちはプレイヤーの期待に応えたい (可能であれば期待以上を実現したい) と思っていました。そこで、ボスがそれぞれ特定の課題を与え、その課題それぞれに専用のメカニックとビジュアルが伴うようにしました。Steam のデモに登場する Arrowhead がその最適な例で、特別な攻撃や異なるフェーズなどが含まれています。しかもこれは、このゲームの最初のボスとの戦闘にすぎません。

ゲームには 5 つの難易度レベルが用意されています。これらを切り替えることで、このタイトルは具体的にどのように変化しますか?

Pagetti 氏:
5 つの難易度レベルが利用可能ですが、ゲーム内で最初のプレイから利用できるのは 3 つです。レベルによって、敵が耐えられるダメージの量、敵が持っている体力の量などが決まりますが、要素は他にもあります。ゲームを「Knight」(ハード) でクリアすると、次の難易度レベルである「Chimera」がアンロックされ、同様にしてその次は最後の「Transcended」がアンロックされます。「Chimera」と「Transcended」では、それぞれの敵のウェーブの構成も変化し、攻略がはるかに難しい課題が与えられます。ただし、幸いなことに、ゲームの再開時には進捗状況が新しいプレイに引き継がれるようになっています。
画像提供:Reply Game Studios
Epic MegaGrant を受賞したことは、スタジオや Soulstice の設計にどのような影響を及ぼしましたか?

Pagetti 氏:
MegaGrant は、Soulstice を発表する前に受賞したのですが、受賞時は外部からフィードバックを収集するのが困難な状況でした。結果として、物質的なサポートをいただくのみにとどまらず、MegaGrant は皆さんに作品の価値に気づき、認知していただく機会となりました。可能な最高のゲームを開発するため、最善を尽くそうという私たちのモチベーションにつながっています。

スタジオで克服した具体的な課題として、紹介していただけるものはありますか?

Pagetti 氏:
2018 年の初めに Soulstice の制作に着手したとき、チームのメンバーはたった 13 人でした。成長し、ビジョンを実現できるチームへと育てていく必要があるとわかっていたので、採用活動には大いに力を入れて取り組みました。同時に、スタジオ全体ではプリプロダクションと適切なワークフローを確立する必要もありました。同じ年の年末までにプロトタイプを作成したいとも思っていましたが、それを何とか 10 月末までに実現することができました。これは大きな課題でした。というのも、その最初のステップによって、プロジェクト全体の命運が決まるからです。ただし、課題はそれだけではありませんでした。その途中にも、対処が必要な他の課題が多数ありました。なぜなら、ゲームはどのようなものも、個々の仕事を一緒にまとめ上げる大変な作業だからです。新しいジャンルを取り扱い、チームで過去に扱ったことのある規模よりもはるかに大きい規模のプロジェクトであれば、これはなおさらです。その後はパンデミックに見舞われましたが、当スタジオはかろうじて進む道から逸れることなく、嵐に耐え、昨年は無事にまた一緒に働けるようになりました。それでもなお、開発プロセスの大詰めに進むにつれ、さらなる課題が私たちを待ち受けています。本当に終わりがありませんが、これこそがゲーム開発の苦労と楽しみの両方を生み出していると思っています。
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Unreal Engine 5 に関するお考えをお聞かせください。また、Unreal Engine 5 によって今後のゲーム プロジェクトでどのようなことが実現できると思われますか?最も楽しみにされている具体的なテクノロジーはありますか?

Pagetti 氏:
タイミングの関係で、Soulstice には Unreal 4.27 を利用しましたが、次回のプロジェクトではぜひ Unreal Engine 5 で作業を開始したいと思っています。ゲームの作業もほぼ完了し、チームでは新しいテクノロジーの運用や実験を行っています。学習し、習得すべきことはたくさん出てくると思いますが、具体的に機能を取り上げるのであれば、特に Lumen を楽しみにしています。Soulstice では、ライティングとポストプロダクションで優れた成果を上げることができました。また、新しいバージョンの Unreal Engine を制作に活用できるのが楽しみでなりません。

インタビューのお時間をいただきありがとうございます。Reply Game Studios と Soulstice の詳細については、どこで確認できますか?

Pagetti 氏:
Soulstice は、9 月 20 日に PlayStation 5、Xbox Series X|S、および PC でリリースされます。詳細については、ゲームの公式 Web サイト (soulsticegame.com) で確認できます。また、TwitterInstagramFacebook でスタジオをフォローしてください。お読みいただき、ありがとうございました。Soulstice のすべてを楽しんでいただければと思います。

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