画像提供: Greylock Games Studio

Severed Steel 開発者インタビュー:SUPERHOTHotline Miami から着想を得て、ほぼ一人で開発した経緯を語る

Brian Crecente

Matthew Larrabee 氏はインディーのゲーム デベロッパーで、Unreal Engine を使用しています。彼の会社である Greylock Games Studio は、2021 年 9 月に最初のゲーム Severed Steel をリリースしました。
Greylock Games の最初のタイトルである Severed Steel では、巨大で正体不明の企業への復讐を誓った片腕の主人公である Steel をプレイヤーが操作します。このゲームは現在、Steam で「非常に好評」という評価を得ており、ネオンを背景にした舞台に Max PayneSUPERHOT などのタイトルの素晴らしい要素と Hotline Miami の不条理さを織り交ぜています。
そして、空間が無限にねじれる仕様により、エンドツーエンドでのバレットタイムと壁走りを実現しています。つまり、スタント、壁走り、移動を続けている限り、プレイヤーがダメージを受けることはありません。

デベロッパーの Matthew Larrabee 氏に、ゲーム開発に至るまでの経緯、Severed Steel のデザインを作成する際のアイデアや影響を受けたもの、そしてゲームの将来の方向性について話を伺いました。
 

ゲーム開発に興味を持ったきっかけを教えて下さい。
 
Matthew Larrabee 氏:
興味を持ったきっかけは、おそらく Half-Life のシーンの MOD ですね。中学生の頃、新しい MOD を試すのが大好きで、Half-Life の SDK も少しいじったことがあります。当時の私にはゲーム開発を行えるような注意力や忍耐力、そしてスキルがありませんでしたが、それでも以後はずっと頭の片隅でゲーム開発のことを考えていました。しかし、20 代半ばに、公立学校で初級レベルの仕事に就くことになり、その後、何度か昇進して最終的には 6 年生に対してゲーム開発を教えることになりました。そうした経験から、数年前から「実際に市場性のあるゲームを作れるのではないか」と思うようになりました。
 
Severed Steel は Larrabee さんの最初のゲームです。単独で開発しようと思った理由は何ですか?
 
Larrabee 氏:
Severed Steel は、私が「本当の意味」で最初に作ったゲームです。というのは、 このゲームの前に、ソロ開発初心者にとっては少し大変であるオープンワールド RPG を作ろうとしていたからです。そして、実は Severed Steel をほぼ一人で開発しようと思った明確な理由はありません。元々、私は一人で何かをするのが好きな性格です。なので、このゲームも自然と一人で開発することになりました。そうは言っても、手伝ってくれた人もいます。彼らがいなければ、Severed Steel の開発は不可能だったでしょう。
画像提供: Greylock Games Studio
Greylock Studio は、どんなゲームを開発している企業として知られるようになりたいと思っていますか?
 
Larrabee 氏:
プレイヤーの知性と時間を尊重する独自のメカニズムを備えた魅力的な一人称アクションゲームを作る企業として、知られるようになりたいと思っています。
 
Severed Steel で、自分が良いと思うポイントを教えて下さい。
 
Larrabee 氏:
バレットタイムや多くのパーティクル エフェクト、そして SWAT の装備を身につけた怒っている敵がクールだと感じています。
 
片腕の主人公が登場するゲームを作ろうと思ったきっかけは何ですか?また、ゲームで片腕のキャラクターを適切に表現するのに工夫した点を教えて下さい。 
 
Larrabee 氏:
片腕の主人公を出すというアイデアは、弾薬と武器のリロード メカニズムをどのようにするのかを考えていたときに思いついたものです。2 年ほど前のことなので具体的には覚えていないのですが、キャラクターが片腕であるということをリスペクトした形で表現することが重要だと考えていました。最終的には、アクセシビリティ オプションを駆使して、片腕しかないプレイヤーでも問題なくゲームをプレイできるように努めました。
画像提供: Greylock Games Studio
ゲームの背後にある物語について教えて下さい。また、その物語とゲームの仕組みはどのようにつながっていますか?
 
Larrabee 氏:
これは、主人公が復讐を行う物語です。主人公の Steel (スティール) は、Edensys (エデンシス) という会社で長年働いていましたが、仕事で怪我をしてしまいました。そして、Edensys は怪我をした彼女をもう価値がないと判断して捨てることにしました。こうしたバックストーリーにより、プレイヤーは戦っている場所に対する思い入れが強くなります。また、短いカットシーンもありますが、これは激しいペースでアクションが進む中でのちょっとした休憩として機能しています。戦う場所は、Edensys の地下から始まり、工場、カフェテリア、トンネルなどさまざまな場所で展開されていきます。最終的には幹部がいる場所である、美術館、華やかな庭園、大理石のタイル張りの会議室などが戦場となります。
 
Severed Steel には、Max PayneSUPERHOTHotline Miami などの古典的なゲームへのオマージュが感じられる要素があります。Severed Steel の全体的な外観について、こうしたゲームからどのような影響を受けましたか?
 
Larrabee 氏:
Severed Steel は、私が過去 30 年間に出会った最もクールなアクション ゲームのマッシュアップと言えます。挙げられた 3 つのゲームからだけでなく、他にも FEARHalf-Life の MOD The Specialists などからも受けています。最終的に、一人プレイの FPS ゲームに夢中になっているときに感じるフロー状態のような、特定の感覚を生み出せるように試行錯誤しました。
 
ゲームの楽しいメカニズムのいくつかについて、もう少し掘り下げさせて下さい。バレットタイムのアクロバットと、積極的なアクションにより発生するエンゲージメントで防弾状態を維持するというシステムを組み合わせたのはなぜですか?
 
Larrabee 氏:
FPS ゲームをプレイするとき、ダメージを受けたくないな、と私はいつも思っていました。視野が狭いことと当たり判定が不明なことから、良い設計の FPS ゲームでさえ、開発者が恣意的にダメージを与えているのではないかと感じることもあります。Severed Steel のスタント システムでは、障害物の後ろに隠れるだけでなく、スタントを連鎖させることで、どんな場所にいてもダメージを軽減したり防いだりすることが可能です、戦略的には敵に向かって移動することが安全な行動となるため、非常に積極的なプレイが可能となります。
画像提供: Greylock Games Studio
ゲームの美学を形作るものは何ですか?また、その美学を実現するのに Unreal Engine がどのように役立ちましたか?
 
Larrabee 氏:
Unreal Engine の「PBR」および エミッシブ マテリアル」とコンストレイントを組み合わせたボクセルを使用することで、Severed Steel の外観が改善されました。このゲームで使用しているボクセルのサイズは 20cm なので、ディテールの細かいジオメトリの場合、解像度がそれほど得られません。しかし、さまざまな視覚スタイルを試してみたところ、マテリアルとライティングを適切に設定すれば平らなサーフェスでも非常に面白い外観になることがわかりました。ワールドのテクスチャの大部分は Quixel ものを用いています。また、アルベド マップ、法線マップ、およびメタリック、AO、ラフネス、エミッシブの情報を含むパックされたテクスチャも使用しています。他には、滑らかで光沢のある外観にするため、ほとんどのマテリアルのラフネス値を下げています。レベル デザインの読みやすさを向上させるため、単純なエミッシブ ボクセルを使用して、棚、エッジ、その他の気になったポイントを強調するといったことも行っています。
 
ワールドを完全に破壊可能にするため、静的ライトは使っていません。実際、プロジェクト全体で無効になっています。各レベル固有の雰囲気は、スカイライトをすべてのレベルに設置して環境光を照らし、スタティック キューブマップを交換してレベルごとに LUT をポストプロセスすることで実現しています。くわえて、通常一つのレベルで 100 を超える多くのスポット ライトを使用していますが、パフォーマンスを維持するためにライトの半径をどのくらいにするのかについて試行錯誤を行いました。スポット ライトを使用すると、マテリアルを本当にきれいに表現できます。角度のはっきりしたスポット ライトで、メタリック、ラフネス、法線マップのすべてのディテールがポップな印象になり、シーン全体が面白いものになります。
 
ゲームを進めていくと、一部のレベルでは、ひたすら走って敵を撃つというよりかは、難解なパズルを組み立てるように色々戦略的に進めていくこともできます。これは意図的にそうしたのですか?また、このような違うステージはどのように作りましたか?
 
Larrabee 氏:
最初から意図的に作りました。そしてこれは、プレイ中のスローモーションの量によって可能になりました。プレイヤーがいつでも好きなときに時間を遅くできるようにすることで、神経を使うことなく一息ついて 1、2 歩先を考えられるようにしています。戦術的にパズルを組むように戦闘を進めていくというアイデアは、SUPERHOT から大きな影響を受けました。
画像提供: Greylock Games Studio
アームキャノンのアイデアはどこから来たのですか?そして、これによりレベルや他のメカニズムのデザインがどのように変わりましたか?
 
Larrabee 氏:
アームキャノンのアイデアは、「ボクセル環境の可能性を十分に理解していない」と気付いたときに思いつきました。当時、ボクセルの破壊は、銃を撃ったり、爆発性の武器を使用したりすることのみで可能でしたが、「ボクセルに対する操作を一連のゲームプレイの中心にできるツールがプレイヤーにあれば面白くなるのではないか」と考えたのです。その結果、アームキャノンが誕生しました。
 
ゲームを作成する際に苦労したことで、ここで話しておきたいものはありますか?
 
Larrabee 氏:
先ほど少し説明しましたが、最初、動的ライティングのみでの作成がとても大変でした。シャドウを消した状態でもゲームの見栄えを良くしたかったので、視覚的には壁からの光のにじみの発生が問題となっていました。 
 
この問題を解決するための最初のブレークスルーは、スカイライトによる内部スペースの照射でした。スカイライトでスタティックなアンビエント キューブマップを使用するときれいにスペースを照らせることや、レベルごとにキューブマップを交換することで簡単に雰囲気を変更できることがわかりました。また、キューブマップはラフネスの低いサーフェスにも表示されますが、これもスカイライトの視覚的な側面での利点と言えます。
 
2 番目のブレークスルーは、シャドウなしの動的なスポット ライトを多くレンダリングする場合は、エンジンが非常に効率的に動作することがわかったときでした。これは、半径が 1,000 未満の場合に特に有効でした。スカイライトはマテリアルの豊かなディテールを引き出せませんが、スポットライトはそれが可能です。私が考えた部屋のライティングを作成するワークフローというのは、まず 1 つのライトを設置して、それの最適な半径、明るさ、色温度を見つけることから始まります。次に、alt + transform でそのライトを部屋全体のグリッドパターンにコピーします。そして、ライトの配置と角度を慎重に設定すると、他の部屋へのにじみを最小限に抑えることができます。
画像提供: Greylock Games Studio
Severed Steel の発売後はどんなことを計画していますか?
 
Larrabee 氏:
新しい、いろいろな面白いコンテンツのリリースを計画しています。レベル、武器、ゲームモードの追加、レベルエディタの更新などです。今ネタバレはしませんが、きっと皆さん楽しんでくれると思います。
 
Xbox Series X および PlayStation 5 の次世代の機能はゲームにどのような影響を与えましたか?
 
Larrabee 氏:
Severed Steel の次世代コンソール バージョンはまだ開発中であるため、まだ決定的なことは何も言えません。しかし、レイ トレーシングと触覚フィードバックでもっとおもしろくなるかもしれません。
画像提供: Greylock Games Studio
Unreal Engine 5 のリリースで最も楽しみにしていることは何ですか?
 
Larrabee 氏:
ボクセルを使用して以来、それなしでの開発が想像できなくなりました。なので、「Lumen」などの新しい動的ライティング技術が楽しみです。
 
Greylock Studio と Severed Steel の詳細はどこで確認できますか?
 
Larrabee 氏:
私に関することと ゲーム については、Twitter か、Discord サーバーで Severed Steel をご確認ください。

    今すぐ Unreal Engine を入手しましょう!

    Unreal Engine は、世界で最もオープンで高度な制作ツールです。
    あらゆる機能とソース コード アクセスを完備している Unreal Engine を使用すれば、すぐに制作を開始できます。