「スプリット・フィクション」は、想像力を刺激する協力型アドベンチャー ゲームを制作することで定評のあるスタジオ、Hazelight が Unreal Engine で開発した最新のタイトルです。
Unreal Engine 5 で制作されたこの最新リリースでは、驚くほどクリエイティブな新たなコンセプトが実現されています。「Zoe と Mio という 2 人の作家が、自分たちの作品からインスピレーションを得た仮想ワールドへと引き込まれていく」というものです。ゲームの特徴としては、 Mio は SF ストーリー、Zoe はファンタジーに特化した作家であり、ほぼ無制限のクリエイティビティを発揮したゲームプレイが可能であることが挙げられます。
このプロジェクトの詳細について、ゲーム ディレクターの Josef Fares 氏とリード プログラマーの Jonas Mauritzsson 氏にインタビューを行いました。「スプリット・フィクション」の多彩なゲームプレイ体験の開発方法から、Fares 氏の映画業界でのキャリアがゲームのストーリーにどのような影響を与えたのかまで、詳しく話を伺いました。
今日はお時間をいただき、ありがとうございます。「スプリット・フィクション」のストーリーは、Hazelight の他の作品のように、非常に興味深いものとなっています。このような説得力のあるストーリーは、どのように思いついたのですか?
ゲーム ディレクター Josef Fares 氏:他と同じですね。というのは、私たちが作るゲームには、常にメイン テーマがあるのです。「Brothers: A Tale of Two Sons」は悲哀、「A Way Out」は信頼、「It Takes Two」は協力がテーマでした。「スプリット・フィクション」のときも、いろいろ考えました。ただ、「友情」というキーワードがいつも頭から離れませんでした。そして、「人は実際のところ、どのように友情を築き始めるのか」、「もしそれがまったくの赤の他人同士だったらどうなのか」について考え始めました。そういったことに大いに興味がわいたのです。それが、「スプリット・フィクション」におけるストーリーの最初のアイデアのきっかけとなりました。
「SF とファンタジーの世界を融合する」というアイデアは、ずっと中核となるコンセプトの一部だったのでしょうか?
Fares 氏:そうです。それが最初に思い浮かんだ中核となるコンセプトでした。ゲームプレイとストーリーの両方の観点から、これら 2 つの世界が同じゲーム内で絡み合えば、新鮮でユニークなものになると思いました。
主人公の Mio と Zoe は個性的な性格をしています。 こうした性格は、どのように考えましたか?そして、彼女らにどのように息を吹き込みましたか?
Fares 氏:自分の思い描くものについては、自分がよく分かるものです。創作プロセスのかなり早い段階から、Mio と Zoe をまったく異なる性格にしたいと思っていました。そして、それぞれの性格が違った形で輝くようにしたいと思っていました。そのため、テキストを書く際は、伝えたいストーリーに重点を置きすぎず、伝えたい理由を念頭に置くようにしました。
たとえば、バックパックに荷物を入れて運ぶ際は、それが重かったり、多すぎたりすることがあると思います。しかし、そうした荷物をともに分け合える人物がいたり、そうした人物を見つけられたりしたら、素晴らしいと思いませんか?一緒に笑ったり泣いたりできる人、何があってもあなたを支えてくれる人がいたら?こうしたキャラクターを作りたかったのです。そして、それができたと思っています。
このゲームの基礎的な部分として、ゲームプレイの自由度があります。プレイヤーが遭遇するシナリオに関して、どれを入れるべきか、その取捨選択が大変ではありませんでしたか?
Fares 氏:Hazelight では、これまでの経験を踏まえて、どのシナリオとゲームプレイ デザインを削除し、何を残すかの判断が皆上手くなっています。私たちにとっての課題は、アイデアを考案してプロトタイプを作ることではなく、プレイヤーが体験して心地よく新鮮な感覚を得られるレベルまで、これらのメカニズムを磨き上げられるかどうかでした。さまざまな種類のゲームを作ってきたため、実際のところ、他のものと比べて、仕上げに必要となる作業の見積もりがより困難だったのです。しかし繰り返しになりますが、チームとして協力して意思決定を行うことに関しては、皆上手くなっています。
Hazelight は画期的なゲームプレイと協力プレイのゲームを作るスタジオで知られています。しかし、ビジュアル スタイルと雰囲気はプロジェクトごとに異なります。「スプリット・フィクション」のビジュアルについては、最初から念頭に置いていたものですか?それとも、プロジェクト開始後に次第に現在の形に変化したのでしょうか?
Fares 氏:このゲームのビジュアルは、最初からほぼ決まっていました。「このシミュレーションに閉じ込められた 2 人の女性主人公が、SF の世界とファンタジーの世界を行き来する」というコンセプトですね。しかし、ゲーム開発ではよくあることですが、多くのことが変化します。このゲームのビジュアル スタイルも同様でした。私たちはスタジオ内で、「さまざまなことや自分自身の限界に挑戦したい」と常に考えています。何が言いたいのかというと、以前のゲームと比べて間違いなく視覚的に進歩している、ということです。
映画監督としてのキャリアは、ゲームのストーリーを作り上げていく上でどのように役立ちましたか?
Fares 氏:ゲームと映画は異なるメディアで、その経験も異なった形を意図しているということを理解するのが大切だと思っています。たとえば、映画は受動的なメディアである一方で、ゲームはインタラクティブなものです。したがって、ペースが異なるのです。映画ではペースを完全に制御できます。しかし、ゲームではそれができません。映画では、プレイヤーは一時停止したり、休憩したり、何か他のことを始めたりできます。ゲームではプレイヤーをコントロールできません。業界全体として、ゲームの脚本の書き方についてはまだ改善の余地があると思っています。
素晴らしいストーリーや夢中になれるような世界観を創り出せるスタジオは、世の中に確かに存在します。たとえば、Naughty Dog ですね。少なくとも脚本に関しては、彼らは業界のはるか先にいると思います。
「スプリット・フィクション」を開発する際、他のゲーム、本、映画からインスピレーションを得ましたか?
Fares 氏:正直に言うと、具体的に影響を受けた作品はありません。チームが実際にプレイし、周囲に刺激を与えることの方が重要だと思っています。もちろん、私たち自身のゲームでは多くのゲームに敬意を払っています。ただ、それは単に私たちがビデオ ゲームを愛しているからです。誰もがアイデアを出せる、とてもオープンでクリエイティブなスタジオなのです。皆、いい意味で変わっているのだと思います。
Unreal Engine 5 がこのプロジェクトに適していた理由を教えてください。
リード プログラマー Jonas Mauritzsson 氏:拡張とシッピングが可能なエンジンであることが重要だったためです。Hazelight でのゲーム開発は、ペースが非常に早く、多くの変更が行われます。したがって、安定した基盤を持つエンジンが必要でした。
当社のアーティストにとっては、エンジンにすぐに使えるワークフローが用意されていることがメリットでした。また、業界で広く使用されているエンジンという点もプラスです。あらゆる分野における新しいチーム メンバーの採用や、アウトソーシング パートナーとの連携がしやすいためです。
分割画面の協力プレイ エクスペリエンスを作成する際は、技術的な課題に直面しましたか? もしそうなら、どのように対処しましたか?
Mauritzsson 氏:ネットワーキングには、いつも頭を悩ませています。他のプレイヤーの画面も見える場合、通常のショートカットの多くが使えなくなります。したがって、まずはさまざまなゲームプレイ システムをネットワーク化するための優れた基盤を構築することにしました。主な目標は、リモート プレイヤーができるだけ目障りにならないようにスムーズに複製できるようにすることでした。
そしてもちろん、両方のプレイヤーのビューを同時にレンダリングする必要があることから、グラフィックス面が常に課題となる上、制限も厳しくなります。クリエイティブな解決策を見つけるには、テクノロジー部門とアート部門での良いコミュニケーションが必要となります。
プレイヤーに SF とファンタジーの両方の世界を表現するには、多様なビジュアルを実現する必要があったと思います。その際、技術的な課題はありましたか?
Mauritzsson 氏:「It Takes Two」のさまざまなビジュアルを活用して、新しいゲーム制作の準備を整えました。技術的な観点からは、大量のコンテンツの作成を容易にすることに重点を置きました。