UE4 による Chess Ultra 制作の成果
2017年7月17日

UE4 による Chess Ultra 制作の成果

作成 Rob Williams, Lead Programmer, Ripstone Developments

私は、英国の Ripstone Developments でリード プログラマーを務めている Rob と申します。我々は昨年、Chess Ultra を制作するために集結しました。この作品は、チェスのビデオ ゲーム版としては現時点で可能な最高レベルのものだと思っています。制作チームは、プログラマー 3 名 (そのうち 1 名はインターンですが、とても優秀です) とフルタイムのアーティスト 2 名という非常に小規模なものです。ほとんどのメンバーは 『Forza Horizon 3』 や、『Driveclub』 といった美麗なビジュアルに力を入れたゲームを大きなチームで制作した経験があります。Chess Ultra でも同じようなアプローチをしたいと考えました。当然の流れとしてアンリアル エンジン 4 (UE4) を選び、コンセプト アートから始まり、VR と 4K サポートを含む 4 種類のプラットフォームでの同時サブミッションまで 10 か月を費やしました。

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UE4 を使うと、背景の迅速なプロトタイプが可能になり、最終製品に向けて品質を高く保ちながら必要なリソース量を最小限に抑えることができました。 Chess Ultra  では、ボードの光沢や、背景と木目のライティングなどすべてが高級な質感で詳細にレンダリングされており、チェスの駒の感触が味わえます。

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上の画像は、アンリアル エンジンがいかに素晴らしいものであるかを表しています。椅子、ランプ、絵は別として、シーン全体でタイル処理が可能なテクスチャのみを使用し、頂点ペイントしたアンビエント オクルージョン (以下のシェーダー) とアンリアル エンジンの優れたライティング システムを活かしています。全体として素晴らしいエフェクトになりました。

見てわかるようにリアリズムを重視していますが、幻想的なチェスの体験も大事にしました。 ‘Gomorrah’ 環境では荒涼とした地獄のような場所でプレイし、Fire and Brimstone (地獄の炎) では青白い炎が燃える駒でプレイします。VR では、魂を危険にさらしながら死神とチェスをすることもできます。

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アート ディレクターの Marco Maria Rossi と私は以前、大きな AAA チームで仕事をしたことがあります。そこでは毎日のように問題を最小限に抑えながらアートとデータを統合することに取り組んでいました。ですから、迅速にほぼリスクなしでイタレーションできることを嬉しく思います。ほぼダウンタイムがなく、品質を高めることに集中できるからです。

「我々くらいのチーム規模だと、選択した開発プラットフォームのツールに多くを頼ることになります」と Rossi は説明します。「主な要件は、安定性があり、パワフルで使いやすいというものです。アンリアル エンジンはその要件を十分に満たしており、それ以上のものを与えてくれます。制作中にアンリアル エンジンのアップデートが 3 回ありました。その結果、エピックによる一連の修正だけでなく、一段とパワフルなトーンマッパ、HDR サポート、完全に統合された LOD (Level of Detail) 生成ツールを活用することができました。最近加わったものの中では、マテリアル スキニング ノードがお気に入りです。Fire and Brimstone セットの Jade (ヒスイ) マテリアルに内部の視差効果を加えることができました。」

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我々にとって最大の課題のひとつは、Oculus Rift、 Vive、PlayStationVR の VR をサポートすることであり、それを成し遂げたことを誇りに思っています。このプロジェクトを立ち上げたときには、まだ業界全体が VR の開発について手さぐりで学んでいるところでした。実際のところ、今でもかなりそういう面があります。エピック ゲームズがサポートしてくださり、密接に連携して作業を進めました。サポートのほぼ初日からプロトタイプの背景をビルドし、プロジェクト全体を通して協力して取り組みました。UE4 の VR 統合は素晴らしいものです。この作品でクロス プラットフォームの安定性を示しました。ゲームプレイは常に一か所に固定されます (VR のフリー カメラの動き以外)。これにより、アンリアルエンジンの静的ライティング機能を最大限活用することができました。動くチェスの駒にはシャドウをキャストする動的ライトがひとつだけ必要です。アニメートした敵がいる場合は、シーンで 2 つ必要です。これは VR のパフォーマンスを最適に保つうえで不可欠であり、アンリアル エンジンはこうしたライティングをシーンの他の部分の静的ライティングとシームレスに統合しました。その結果、他のゲームでは無駄とみなされるようなレベルまで膨大な量のジオメトリとテクスチャのディテールを表現することができました。VR 内で長時間過ごすプレイヤーが近くでじっくり見ても説得力のある背景になりました。

UE4 について語るとき、ビジュアル面が注目されることが多いですが、ここではオーディオについて言及します。リアルさを追求する場合、サウンドは非常に重要です。当初、サードパーティのプラグインの使用を検討していたんですが、アンリアルの新機能を使ってオーディオのイタレーションをはるかに迅速に行うことができました。新しい HRTF モードは VR に欠かせないものです。単に適切な方向からサウンドを生成するだけではなくなったのです。サウンドの位置を正確にピンポイントで決めて、ある程度の長さを聴くと沢山の微妙な違いが感じられるようにします。

チェスは約 1500 年もの歴史があり、その競技人口は 6 億人を超えます。サッカーに続いて世界で 2 番めに人気のある競技です。弊社ではみんな夢中になっています。チェスが持つ素晴らしさを適切に表現したかったんですが、うまくいったと思います。エピック ゲームズのサポートと UE4 なしには、この作品を作れなかったと思います。