2017年5月16日

Xing: The Land Beyond の世界

作成 Stu Horvath

私は『Myst』 というゲームに夢中になりました。1993 年にこの作品が登場した当時、自分のコンピューターでかろうじて動く程度でしたが、はまらずにはいられませんでした。それまで目にしてきたものとは全く違っていたのです。多くの人々が超現実という言葉でこのゲームを表現していましたが、それは誤解につながるのではと思います。この島は幻想的ですが、土や木々があり、海に囲まれています。建物は多くの時代の建造物を参考にしていますが、石造りで重みがあります。

 『Myst』 は超現実ではありません。これまでゲームではあまり見られなかった手法を用いたミステリアスなゲームです。ゲームの世界と、その延長上にあるパズルはプレイヤーの望むものとは別に存在します。パズルはそれ自体の目的を持って存在しますが、侵入者であるプレイヤーに解いてもらいたいという感じではありません。謎めいた雰囲気が高まります。

 『Maze』(Christopher Manson 著)   の本と  『Antichamber』  というビデオゲームは同じようにミステリアスな部分を扱った作品の例として挙げられます。他には思い浮かびませんが、 Xing:The Land Beyond の最初の場面を見たとき、説明し難い何かを感じました。

多くの Unreal Dev Grant 受賞者と同じように、John Torkington 氏、 Koriel Kruer 氏、James Steininger 氏は大学で出会いました。Xing の制作はカリフォルニア州、オレンジ カウンティにある Chapman University で、ゲーム デザイン クラスの Unreal Dev Kit を使ったレベル デザインの課題として始まりました。あるデザイン コンペで 2 位に入賞後、彼らは White Lotus Interactive を立ち上げ、ある本格的なゲームの Mod 制作を始めました。

Xing  は、生と死の間の世界、一種の死後の世界を舞台にしています。自分が何者であるか、何故そこにいるのか、謎解きをするゲームです。小さいパズルでは、目の前に現れる霊的存在の情報を得て、それを助けて旅を続けられるようにします。テーマに沿って、背景にはスピリチュアル的なものや幻想的雰囲気が漂います。『Myst』のように、信仰や神話に関わる馴染みの要素があるものの、幻想的で未知の世界も広がります。多くの神像や祭壇がある神聖な場所もあります。ミステリーがそこかしこにあります。パズルという意味でも、また儀式的な意味でも謎がいっぱいです。

Xing  の PC 版がリリース予定であり、近々 VR にも対応します。今回、Koriel Kruer 氏がお時間を割いて、Xing について語ってくださいました。

 

 

Xing  は大学のプロジェクトがきっかけで始まったんですよね。当時このゲームはどんな感じでしたか?

現在の姿とはだいぶ違うものでした。プレイテストを通して新しいスキル セットを習得し、絶え間なく学び、グラフィックの品質、最適化、ナラティブ、パズルの難しさの調整などのイタレーションを続けました。

Kickstarter キャンペーンの成功も大きな助けになりましたよね。経済面での支え以外にゲーム制作に影響を及ぼしましたか? つまり、キャンペーンがなければ知り得なかった人々の期待など、何か学んだことはありますか?  

Kickstarter を通して多くのことを学びました。ゲームの購買層をより明確に把握するとともに、この種のゲームの需要があることもわかりました。支援者がゲームに何を求めているかもわかりました。その結果、何を制作するのが重要か、何を維持すべきかがわかりました。

私から見て、『Myst』 が  Xing  に及ぼした影響は大きいと思うのですが。『Myst』の魅力について、そこからどのようにインスピレーションを得たかをお話いただけますか?

最初に『Myst』の美麗なグラフィック、考えさせられるパズルとナラティブに惹きつけられました。こうしたものを自分たちの作品でも表現したかったんです。背景と雰囲気は我々にとって重要なものであり、プレイヤーとのコミュニケーション手段に使いました。例えば、ナラティブやパズルといったゲームの側面にプレイヤーの目を向けさせ、旅路を視覚的に導きます。

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他のゲームやメディアでインスピレーションを受けたものがありますか?

もちろん、沢山あります。簡単に言うと、Xing は、『Portal』、『Myst』、『ゼルダの伝説』シリーズなどのゲームから直接インスピレーションを受けています。ご興味があれば、具体的な内容について、我々 3 名がこのリンクの 記事 で詳細に回答しています。

 Xing  ではスピリチュアルなものに重点を置いているのも興味深いですね。それはどこからきたのか、また何を伝えようとしているのかお話いただけますか?

そういったことは、ゲームのプレイ後にご自分で感じていただくことだと思います。

なるほど。ゲームの空間もスピリチュアルなものに重点を置くとことを反映していますね。3D 空間でこれを表現するためにどのようにデザインしましたか?

いい質問ですね。スピリチュアルなものは確かに  Xing  の一部であり、背景の多くはそれを念頭にデザインしました。ゲームは死後の世界を舞台にしているため、世界中に伝わる神話、物語、宗教を参考に、独自の死後の世界を作り出しました。様々な信仰の考え方を調べて新たな視点を見出すのは大変興味深いことです。こうしたことがインスピレーションになり、伝えたいナラティブを生み出す情報になるからです。

ゲーム制作に UE4 を選んだ理由を教えてください。

最初は UDK を使って作業を始めました。このプロジェクトに着手したときに学校のコンピュータに UDK が入っていたからです。それから、次のようないくつかの理由から UE4 に切り替えました。

  • エピック ゲームズの大ファンで、アンリアル エンジンは自分たちが求める機能とビジュアルを実現するうえで優れていた
  • 時代に乗り遅れないように、また真に美しい体験を作りたかった
  • UE4 の UI は、 UDK よりも使いやすかった
  • VR デバイスに十分に対応するために、VR サポートを絶えず更新し続ける最新のエンジンに切り替える必要があった
  • 現在は無料で利用可能になった!

 

UE3 から UE4 への移行は大変でしたか?

そうですね。この件についてはこの ブログ記事 で詳しく回答しています。

この記事の投稿からかなり時間が経っていますが、要点は変わりありません。最新のグラフィックスに乗り遅れないようにするとともに、最新の VR ヘッドセットを使って実行できるようにすることが必要です。

UE4 で探索 / パズル ゲームを制作するのは、いかがでしたか? 特定の問題が発生したり、解決したりしましたか?

UE4 は非常に堅牢であり、あらゆるタイプのゲームに対応しています。ビルトインの First Person の制御はすぐに使えるもので、自分たちが思い描いたプレイヤーのタイプを作ることができるように調整を加えました。

例えば、プレイヤーに武器を与える代わりに、オブジェクトを手に取り運び、新しい場所に置いたり、投げる機能を与えました。プログラミングの観点から、物理銃の初期のバージョンでは、他の Unreal Tournament の武器と同じコードの一部を使ってオブジェクトをピックアップしていました。

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UE4 に移行したとき、プログラミングのタスクはブループリントを使うことで簡単になりました。ブループリントは、ノード ベースのビジュアル コード環境であり、メカニクスやインタラクションを必要とするオブジェクトを簡単に作成できるように開発されました。ブループリントを使うことでゲームプレイ機能を迅速にイタレーションしテストできるようになりました。例えば、炎のシステムを作る場合、様々なパーティクル、ライティング、サウンドのコンポーネントを視覚的に 3D に配置してから、こうした個々の構成要素からブループリント コンポーネントを作っていきます。このような構成要素は他のオブジェクトの一部になることができます。炎のコンポーネントを持つオブジェクトが海のブループリントにタッチすると、海は親オブジェクトをバイパスし、炎のコンポーネントと直接やりとりし、消火します。他の言語のオブジェクト指向プログラミングと似ていると思われるかもしれませんが、ブループリントはノード ベースのビジュアル環境を特徴としています。これはアーティストやデザイナーにとって理解しやすいものです (プログラミングしながら 3D 空間でコンポーネントの調整も可能)。

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レベル デザイナーも必要があればブループリントを使って調整し、ツールを非常に簡単かつ迅速に作ることができます。簡単に使用できるツールの例としてトーチがあります。スライダーやカラー ホイールを使って色や明るさを変更できます。即時に編集可能なテキスト付きのオブジェクトもあります。

既存のブループリントには豊富なゲーム メカニクスが組み込まれています。ロコモーション アニメーションやロジックを備えたキャラクターやビークルなどがあります。レベルのロード、システムの保存、ユーザー インターフェースの作成など大規模システムに重点を置く場合にアンリアル エンジンで困難にぶつかることがあります。こうしたタイプのシステムを作る機能は確かに存在するのです。コミュニティでは沢山のチュートリアルが用意されており、独自のサンプル リソースを共有しています。

編集注記: この一連の記事シリーズはエピックのアンリアル エンジン 4 の寛大なスポンサーシップによって実現しました。毎月、Unreal Dev Grant (アンリアル デブグランツ、開発支援プログラム) の賞金受賞者を紹介します。エピックは我々にインタビュー対象を紹介してくれますが、最終版の記事へのフィードバックや、記事の承認には関っていません。