ジョン カーペンター監督は 1982 年に『遊星よりの物体 X (The Thing)』のリメイク版 (『遊星からの物体X』) を制作しますが、興行成績は散々なものでした。しかしその後、何年も経ってから人気が広まり、今では至るところでその名前が聞かれるようになりました。そして今年は、レコードのサウンドトラックや映画を基に作られたボードゲームが発表されるまでになりました。最近では、この『遊星よりの物体 X』の影響を明らかに受けた作品が非常に目立つようになりました。The Void、The Hateful Eight、Black Mountain Side、Almost Human、Blood Glacier - 少し考えただけで次々思い浮かびます。どこかで立ち往生した時に (雪の中だとベストですね)、すぐ横にいる素性を知らない他人を信用していいのか疑心暗鬼になるような要素こそ、『遊星よりの物体 X』の影響を受けている証です。
秘密はパラノイアです。絶望的になった時、他人をどこまで信用できますか?その人達のことをどのくらい知っていますか?対象は関係ないのです。それがコミュニストでもファンダメンタリストでも超保守的な人でも、信用することへの恐怖はとても強く孤立する感情です。
今まで全然面白いと思わなかったことが面白かったという点で、ビデオゲームの Unfortunate Spacemen は自分の考えが間違っていたことに気づかせてくれました。
Unfortunate Spacemen は、マルチプレイヤーのファーストパーソン シューティングゲームです。プレイヤーのうち 1 人だけが姿を変えて潜伏している大食漢のモンスターで、それ以外は全員普通の宇宙飛行士です。極度の疑心暗鬼に陥ることになりますが、これがまた度肝を抜く面白さなのです。
Unfortunate Spacemen を開発中の Sandswept Games のデベロッパー Geoff Keene 氏が、自分の友達を食べてしまうホラー、コメディ、笑いについて語ってくれました。
ゲーム制作を始めたきっかけを教えてください。どなたと開発を始めましたか?
17 歳の時に父 (Richard) と一緒にゲーム開発を始めました。それ以来ゲームを作り続けて、かれこれ 9 年近くになります。その間、スタッフの入れ替わりもありました。ほとんどの時間は 1 人で作業していますが、現在は New Blood Interactive のアーティストと素晴らしい QA スタッフと一緒に取り組んでいます。現在は Unfortunate Spacemen および Darken Crawl というDiablo-esque VR ダンジョン ゲームを制作中です。
Unfortunate Spacemen はどのようなゲームでしょうか?
『遊星よりの物体 X』がベースですが、宇宙が舞台となり、友達がそばにいます。プレイヤーの 1 人が正体を隠して姿を変えて潜伏したモンスターです。そして残りのプレイヤーは姿を変えたモンスターに食べられないように捕獲を試みながら、目的を達成して脱出を目指す不運な宇宙飛行士です。
『遊星よりの物体 X』について一気に思い出しました。まずはここからお聞きします。ホラーはお好きですか?ホラーを使ったら、どのようなゲームにつなげていこうと思いましたか?『遊星よりの物体 X』以外にも、このゲームを開発する上で影響を受けたホラーはありますか?
もちろんです。特にエイリアンが登場するホラーが大好きです。エイリアンの恐怖と宇宙の真っ暗闇から登場するけだものにかかっては、個人的には「何でもあり」という気がします。しかも異様であればあるほど、面白い。汗だく、もがき、苦悶、大失態。これらはすべて Unfortunate Spacemen が影響を受けた要素です。
ついでにお聞きしますが、Unfortunate Spacemen は最初から最後までずっと「怖いはずなのに面白おかしい」状態です。ホラーとコメディの組み合わせは頻繁に見受けられますが、この組み合わせについてはどう思いますか?それをどのように活かしましたか?
Unfortunate Spacemen は、想像を絶するような恐怖との人間の遭遇に、思わず笑ってしまうバカバカしさをトッピングしました。遠い宇宙の未来では、恐らくタコのような手をもつエイリアンの処理を宇宙ステーションのスタッフがルーチーンで行っているかもしれませんね。そのような要素も使いました。「確かにそうだな、Jenkins。君の骨でエイリアンは完全に溶けるだろうな。まあ、一応手袋を持ってきたから、午後 3 時までに処理しておいてくれ。」
『遊星よりの物体 X』の影響の拡大は留まるところを知りませんね。この現象についてどう思いますか?
限られた人達の間だけの人気をインターネットが拡散してくれたのですね。これは実は素晴らしい映画なのです。ぞくぞくするようなミステリー、身も凍るようなサスペンス、そして仲間に対して人間が持っている本来の (または打算的な) パラノイアに焦点を当てています。Unfortunate Spacemen のアピールポイントはここなのです。私は何度かモンスターとなって魔女狩りに成功しましたよ。
隠れた裏切者ゲームは、ほぼボードゲームのサブジャンルと思っています。Unfortunate Spacemen が初めてそのコンセプトをビデオゲームで実現したのでしょうか?それとも、何か影響を与えるような先駆者がいましたか?
このゲームがきっかけで私は Spacemen を作りたいと思うようにさせてくれたゲームはあります。トップダウン型 Starcraft 2 のカスタムマップです。既存ゲームの中で参考にしたのはこれだけでした。この種のゲーム (または mods) をまったくプレイしたことがなかったことを話すと、みんな必ず驚きます。プレイヤーからは「Unfortunate Spacemen は素晴らしい、他のゲームに比べてコンテンツも多く実に奥が深い」というコメントを頂きました。宇宙のモンスターが燭台を使ってダイニングでマスタード大佐を殺すような非常に細かいファーストパーソン シューティングゲームは私が初めて作ったのだと思います。
ゲームのキーとなる特性はパラノイアですが、これを強調するためにどのようにデザインを工夫しましたか?近接チャットの効果はいかがでしたか?
パラノイアはゲームのキーだけではなく、ゲームプレイ アーチの要でもありました。最初はプレイヤーにパラノイアを抱かせるようにゲームをデザインすることは無理だと思っていましたが、問題なくできてしまいました。ゲームの中では普通は赤、空色、ラザニア、マスタードなど、ばらばらの色を使って、正体を非常に厳格に管理します。
モンスターにも正体がありますが、彼はいつでも正体を切り替えて他の誰かになりすますことができます。このトリックがメンバー間に異様な不信感を引き起こします。今話している相手は本物の宇宙飛行士なのか、それとも自分を傷つけるためにこっそり紛れ込れて他人になりすましている偽物なのか真実は分からないからです。
団結した方がモンスターに対して強くなるような工夫をしました (特に危険な爪に変形して攻撃してきた時には)。それとは逆に、目的、パワー武器、モンスターによる他の妨害行為の場合はバラバラにならなければなりません。つまり「友達」が自分の視界から消える (音もなくなる) ので、この友達に次回出会った時、果たして本物なのか、なりすましたモンスターなのか、まったく判断がつかなくなります。
近接チャットは、非常に近くの人しか聞こえないような仕組みになっています。従って、モンスターは他のプレイヤーに知られずに、破壊と混乱の種をまき散らすことができるのです。
死んだプレイヤーは幽霊となってマップを徘徊し、時々光を点滅させてヒントを出してプレイヤーのパラノイア化を食い止めようとします。
カスタム仕様の宇宙ヘルメットですが、なぜか不思議と全部集めなければならない衝動に駆られました。ヘルメットという物体だけではなく、収集したくなる衝動をどのように仕組んだのでしょうか?
YES, CHASE THAT FEELING. BUY ALL THE HELMETS.(感情に逆らわずに、 全部 ヘルメットを買ってしまえ)
ヘルメットの作成とデザインはとても楽しかったです。ヘルメットおよび新しいアートワークは Connor “MadDok” Moran がほとんどやりました。見事な腕前でした。ワクワクして面白い、あるいは単に他とは違うようなデザインを考えました。様々な Si-fi 作品を参考にしたり、機能性の良いもの、かっこいいものなど、いろいろです。多くのサイエンス フィクション ゲームでは、ヘルメットがジオメトリや輝く光になっていると思います。(『Halo Reach』と『Halo 4』のヘルメットを比較すると、その意味が分かります)。アートは申し分ないのですが、なにせ個性に乏しい。Spacemen は個性が命ですから。それぞれのヘルメットに個性を出して、唯一無二の宇宙飛行士にしたかったのです。
もちろんモンスターはプレイヤーのどんなカスタマイズも真似します。
開発ブログを読ませて頂いています。面白い上に奥が深いですよね。開発過程を公にしようと思った理由は何でしょうか?
これ以外の方法は思いつかないです。ゲームをプレイするコミュニティと可能な限り話をしたいと思いませんか。だって私は彼らのためにゲームを作っているのですから。
この場を借りてお伝えしますが、実はスタジオでは毎週末 Discord による「Unfortunate Spacemen コミュニティ ゲーム」が開催されていて、 私も終始参加しています。
Unfortunate Spacemen の開発でアンリアル エンジンはどのように役立ちましたか?思いのほか便利だった点、または難しかった点はありますか?
アンリアル エンジンはこれまで使ったエンジンで最高です。文句のつけようがありません。チームはとにかく対応が素晴らしく、問題点を修正してくれますし、デベロッパー コミュニティに相談すれば必ず答えが見つかります。さらに、Unfortunate Spacemen は 99%ブループリントで作成しました。絶対に無理だと思っていたコードの視覚化への扉が開かれました。
Dev Grant があってこそ実現はできたことはありますか?
アーティスト 2 人分の給料の支払いと賃貸料の支払いです。
それは冗談ですが、Dev Grant は素晴らしいの一言に尽きます。ここまでの間、Unfortunate Spacemen は最小限度の資金で極めて良好に動いています (もちろんさらに上を目指しますが)。Unfortunate Spacemen という、怖いはずなのに思わず笑ってしまうような宇宙で繰り広げられるパラノイア ゲームの制作およびリリースの機会を与えてくれたエピック ゲームズには心から感謝の気持ちを申し上げます。ゲームでは必ず一緒に友達を宇宙に連れて行ってくださいね!
--
Unfortunate Spacemen の詳細は、 開発ブログ をご覧ください。リリース日は確定していませんが、 最新アップデート には、co-op かつ Wave 形式のサバイバル モードが含まれています。Geoff が「自分のことを騙して何としても食べてしまおうと思っている誰かが待ちかまえる環境に歓迎されているとプレイヤー達に感じてもらいたい」と思っているので、モンスターへの挑み方のチュートリアルも準備中です。
--
この一連の記事シリーズはエピックのアンリアル エンジン 4 の寛大なスポンサーシップによって実現しました。毎月、Unreal Dev Grant (アンリアル デブグランツ、開発支援プログラム) の賞金受賞者を紹介します。エピックは我々にインタビュー対象を紹介してくれますが、最終版の記事へのフィードバックや、記事の承認には関っていません。