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ターン制ストラテジーの方程式を 4 人のチームで再構築した RESEARCH and DESTROY の特徴

Brian Crecente
日本の東京を拠点とする Implausible Industries は、2013 年に世界から集まった経験豊富な 4 人のゲーム デベロッパーによって設立されました。
チーム メンバーは日本でも有数のスタジオと連携し、PC およびコンソール向けに 10 作品以上のさまざまな Unreal Engine 完成タイトルに携わってきました。Implausible Industries の設立以前にも、メンバーは DriverFatal FrameFIFANo More Heroes など、有名な数多くのゲーム シリーズに携わっています。
RESEARCH and DESTROY は、Implausible Industries の初めてのオリジナル タイトルとなります。
RESEARCH and DESTROY は、ターン制ストラテジーと三人称視点シューターをうまく融合し、3 人の科学者になってプレイする作品です。1950 年代の深夜の SF 映画から抜け出てきたような科学者が、 Scooby-DooDexter’s Laboratory などのカートゥーンに登場するようなたくさんの超自然的モンスターと戦いを繰り広げます。問題を解決しやすくするため、科学者たちはおかしな武器を多数装備し、開発したりアップグレードしたりしていきます。

このターン制アクション ゲーム (オンラインおよびローカルの協力プレイに対応) は、東京を本拠地とする 4 人の開発チームが、数十年にわたる Unreal Engine の経験を活かして作り上げました。Implausible Industries は、開発中だったゲームを 2017 年の Tokyo Indie Fest とその後の BitSummit に出品しました。BitSummit では非常に貴重なプレイヤーによるフィードバックを受け、Popular Selection Award を受賞しています。

このような楽しいゲームの元となったジャンルの融合方法、アート スタイル、開発手法などについて、チームから話を聞きました。最も重要なポイントとして、タイトルの構想を練って形にしていくうえでどれほど Unreal Engine とスプレッドシートが重要だったかについても全容をうかがえました。
 
Chris Willacy 氏:ゲーム デベロッパー歴は 23 年です。英国、オーストラリア、中国、日本で AAA からインディーまで、あらゆるスタジオで働いてきました。夏はビーチが好きで、冬は山が好きです。愛する家族と、愛するネコの Monty がいます。
Daniel Markiewicz 氏:私もゲーム デベロッパーで、たくさんの役割を担っています。一部は慣れていますが、ほとんどは苦労しています。
Kees Gajentaan 氏:そして、私がアーティストです。はじめまして!
あなたは Unreal Engine を使用してすばやくプロトタイプを作成し、トップクラスの品質のゲームを開発した印象的な経験について、ウェブサイトで書かれていますね。Unreal Engine を使用することで、どのようにそれを実現できたか説明していただけますか?

Daniel Markiewicz 氏:これまでこういったインタビューですでに出た話かどうかはわかりませんが、Unreal Engine にはほとんどすべてが揃っていると思うんです。おそらく、このプロジェクトを開始したときにはいくつか足りないものもありました (当時の マーケットプレイス が今みたいになっていればよかったのですが!)。しかし、3D ゲームを作成するなら、Unreal Engine は、実用的なプロトタイプを数週間で作成可能な充実したツールボックスです。また、作成する内容によっては数日で完成するでしょう。

特に ブループリント を使用すれば、新しいゲームプレイ機能のプロトタイプ作成は簡単です。非常に便利なサンプル プロジェクトが含まれているので、もし付属していなければシステムを理解するのが難しい内容でも簡単に把握できるようになっています。Shooter Game は、私にとって究極のカンニング ペーパーでした。
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RESEARCH and DESTROY のアプローチとして、ターン制ストラテジーとリアルタイムのシューティングを融合する決め手になったのは何ですか?

Markiewicz 氏:簡単に説明すると、私たちは元々、「X-COM を縦方向の協力プレイにしたもの」を作りたいと思っていました。しかし、 (技術用語を使用すると) 友達のターンが終わるのを待つのはつまらない、ということになったんです。プロトタイプとして、同時に「目的地をクリックすると移動し、ターゲットをクリックすると撃つ」コントロールを備えたバージョンを作成しましたが、キャラクターがパスを交差したり、互いにぶつかり合ったりして最終的に非常に煩雑になりました。結局、「アクション ポイント」、「ターン」などは、1 回のターンでキャラクターがアクションを行う時間の長さを抽象化したものにすぎないと気づき、その中間に介在するものをなくし、プレイヤーに三人称視点シューターのコントロールを直接提供しようと試みました。これによって、すでに構想のあった非常に戦略的なゲームプレイからはかなり離れてしまいましたが、驚くほど戦術的な独自の作品ができあがりました。

RESEARCH and DESTROY のストーリーや、主人公のキャラクター、敵には 1950 年代の雰囲気が強く表されています。チープなサイエンス フィクションとホラーの時代は、ゲーム設計やアートのアプローチにどのような影響を与えていますか?

Kees Gajentaan 氏RAD の設定は、最初のラフなプロトタイプを作成した後にブレインストーミングで生まれたものですが、それ (超自然的生物と戦う超人的科学者の少人数チーム) が決まると、影響を与える要素の多くは自然に出てきました。

少人数のカラフルなキャラクターがチームになって古典的なモンスターをやっつけるというのは、 Scooby-Doo など、多くの Hanna-Barbera による当時のカートゥーンをすでに想起させものだったのです。科学者を主人公にするというアイデアは、 X-COM への私たちの愛好心によって生まれました。プレイヤーには、かっこいい武器やガジェットを開発し、戦いと縦方向の移動の両方をユニークで楽しいものにしてもらいたかったのです。

リアルでなく、シリアスでもないスタイルにすれば、非常に独創的でクレイジーな作品を作れることはわかっていました。プレイヤーは、ロケット ブーツや、Propellor という持ち運び可能なトランポリン、Max Plank (ホバーボード)、近距離のテレポーテーションが可能なその他複数の装備を使用し、より高い場所に行くことができます。また、カートゥーンと同様に、環境内にある日よけなどのオブジェクトで跳ねることもできます。

武器もカートゥーンに出てきそうなものが多く、プレイヤーは、超自然的な敵を粘着力のあるロケットで空中に打ち上げたり、ハイパーキューブを使用して飛ばしたり、グランド ピアノを別の次元から持ってきて敵の上から落としたりすることができます。

また、大陸全体で多数の異なるミッションを出入りするのに乗り物のようなものが必要でした。当時のカートゥーンやテレビのキャラクターのように、この作品のチームの主人公も、とてもかっこいい車で移動させたいと思い、そこで科学者の空飛ぶ RADvan が生まれたのです。

ごく簡単にまとめるなら、ゲームの設計や、面白いものを作りたいという思いは、アート デザインに非常に大きな影響を及ぼしています。そもそも私たちは、 Scooby-DooDexter’s Lab の影響を受けたゲームを作ろうとして始めたわけではありませんでした。しかし、これらのカートゥーンの要素の多くは、ゲームが必要としている要素にぴったりと当てはまったのです。
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ゲームを Tokyo Indie Fest と Bitsummit に出品している間にプレイヤーへの調査を行われていたようですが、こういったプレイ後の調査で判明した内容は、ゲームの進化にどのような影響を及ぼしましたか?

Chris Willacy 氏:2 つのイベントでのフィードバックは、全体としてポジティブなものだったので、基本的な方針をなくしたり作り直したりする必要はありませんでしたが、すぐに修正しなければならないことが明らかな問題がいくつかありました。たとえば、武器の初期バージョンの 1 つに Test Tube Launcher というものがありますが、これは 非常に 破壊力のある爆発を起こす一方でリロードに時間がかかりました。また、Alt-Fire モードでは状況に応じてシールドになります。爆発モードでは仲間を攻撃してしまうことがあまりに多く、シールド モードはすぐに使われなくなってしまうことを確認しました。同様の問題は、多数ありました。骨組みは作ったものの、仕上げはまだ粗かったのです。明らかにまだ対応が必要でした。

新しいプレイヤーにゲームを試してもらうたびに、新しいことが学べます。ある程度、自分を信じることは必要ですが、ほとんどの場合はそこから離れて、新しいプレイヤーの行動の理由を理解しなければなりません。プライドをなくすような努力が必要なので、1 ~ 2 回、あるいは 3 回目でも受け入れがたいことがあるかもしれません。しかし、こういった新しい観点は不可欠です。そんな観点がなければ、経験と一握りの人々の感覚を頼りにゲームを作成するだけで終わっていたことでしょう。そうなれば、非常に悲惨なことです。

最終的に、こうしたフィードバックによって私たちは正しい道を進んでいることを確認できましたが、プレイヤーがゲームを進めやすくするための補助的なシステムがまだ必要でした。その道のりは簡単ではありませんでしたが、こういった多数の問題を解決していく能力は豊富でした。

Gajentaan 氏:ゲームを出品し、実際に体験してもらうことで重要なことを 1 つ学びました。時間の仕組みがユニークなため、直接説明すると多くの時間がかかってしまったのです。そこで、イベントの後ですぐにスタンドアローンのチュートリアル ミッションを作成しました。デモ版でも完全版でも、それ以来メイン メニューから常にアクセス可能になっています。自宅にゲームがあって、訪ねてきた友達とローカルの協力プレイをしたい場合があるとしましょう。友達にこのチュートリアルを数分プレイしてもらえば、ゲームの仕組みを完全に理解してもらえます。

Markiewicz 氏:不意に仲間を攻撃してしまうと誰もが例外なくそれを面白がっていたので、人間というものの恐ろしさも学ぶことができました。
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RAD の直接コントロールするというアプローチは、どのような方法によってストラテジー マップ全体で実現したのですか?

Gajentaan 氏:ゲームの一部分となっているストラテジー マップの仕組みは、ターン制のアクション ミッションとうまく合うものとなっています。ミッションと同様にプレイヤーは時間を管理する必要がありますが、動かないかぎり時間は一時停止されます。

Markiewicz 氏:プレイヤーは、ワールド マップの移動、防御の構築、研究を同時に行います。しばらくこれを行っていると、超自然的モンスターの群れにターンが移ります。モンスターは自身の領域を構築し、場合によっては侵入してくるでしょう。そして次はまたプレイヤーのターンです。元々は 4 人でプレイするゲームを計画していたので、プレイヤーに飽きずにプレイし続けてもらうためにこのようなアプローチが必要でした。今思えば、2 人でプレイするゲームになるとわかっていれば、この部分はかなり違った内容になっていたことでしょう。リアルタイムの要素はそれほど重要でないと思うからです。しかし最終的に、リアルタイムかつターン制というゲームの考え方を貫きながら、仲間とともに装備を充実させ、次のミッションを選択する場所としてマップは適切なものになりました。

ゲームのカラフルなアート演出は、コミックからそのまま出てきたのかと思うほどですが、どうしてこのようなアプローチを取ろうと決めたのですか?また、そのように決めるうえで、Unreal Engine はどのように役立ちましたか?

Gajentaan 氏
:このように決めたのには、アーティスティックな面と、実際的な面があります。

最初から、ゲームは大規模になることがわかっていました。一方で、私たちのチームは非常に小規模です。そのため、アセットの作成に時間がかからないアートのスタイルを見出す必要があったのです。また、制作時にテクスチャの予算について後から悩むのを避けて、さまざまなレベルでアセットを何度も再利用したいと思っていました。

私は長年、ユニークなカートゥーンのようなデザインのゲームを作りたいと思っていました。アート スタイルの開発を始めて、カートゥーンの色付けとゲームの色付けの方法は異なると気づきました。通常、3D ゲームでは背景オブジェクトは「リアルに」色付けし、ゲーム内のライティングによって照明を加えます。しかし、カートゥーンでは当然、必要な色で色を塗ります。たとえば、ディズニーの アラジン なら、昼間のシーンの通りや建物はサーモン色やオレンジ色に塗られ、夜のシーンでは青色や紫色で塗られています。

そのため、使用するテクスチャが少なくてすむシェーダーを開発し、パラメータを使用してカラーを決められるようにしました。また、シェーダーはシーン内でも法線マップでもディレクショナル ライトの角度に基づいてセルシェーディング エフェクトを生み出すため、オブジェクトに対してメイン カラー、ハイライト カラー、およびシェード カラーとして正確なカラーを選択することができました。

これによって多くの可能性が生まれました。必要なタイミングでいつでもカラーを変更できるようになり、テクスチャのカラーに縛られることがなくなったのです。マテリアル パラメータ コレクションとライティング シナリオを活用することにより、昼間のシーンを 1 つのカラーのセットで色付けし、夜のシーンではそれを完全に変化させることができました。さらなるメリットとして、平均的なプレイヤーには「オレンジ色の岩」が「紫色の岩」として見えるため、オブジェクトが再利用されていることをある程度隠すことができます。また、プレイヤーはゲームの特定の領域を再度訪れるため、昼と夜で異なるカラーの枠組みを利用することで、多様性が加わったものとして認識してもらうことができました。

パラメータに基づくカラーリングの手法は、キャラクターにも適用しています。ゲーム内のゾンビのスキンにはランダムなスキン トーンとクロス カラーを適用しています。また、プレイヤーは超人的科学者のチームを完全にカスタマイズできます。
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RESEARCH and DESTROY に Unreal Engine を利用する決め手となったのは何ですか?

Willacy 氏:この 3 人で、合わせて 30 年~ 40 年あまりをさまざまな Unreal Engine の経験に費やしてきたので、Unreal Engine の利用を議論しないはずもありませんでした。利用するという決定は当然の流れと考えています。Unreal Engine の専門知識を他のスタジオに提供することで、ここ 6 年間で RESEARCH and DESTROY の資金ができ、あらゆるプロジェクトに携わることでさらに知識を身に付けています。制作の初期に完了した内容については、新しい手法やより良い手法を知ったことで開発期間中に 1 ~ 2 回やり直したものもあります。

Unreal Engine をゲームに利用するうえで魅力となる特別な要素はありましたか?

Markiewicz 氏:クロスプラットフォームの機能を備えていることです。この機能は「昼間の仕事」でクライアントのプロジェクトをサポートする際にいつも利用していたものです。

Willacy 氏:「時期」と「理由」さえ把握することができれば、さまざまなルールで行う日々の算術演算の処理も、その「方法」は Unreal Engine に任せることができると気づきました。私は数学があまり得意ではないので、これは非常に大きなことです。

Gajentaan 氏:Unreal Engine は、アーティストにとってすばらしいツールです。ソース アセットは比較的小規模でシンプルにも関わらず、コンテンツにバラエティを加える方法は常に豊富です。

克服した設計上の課題の中で、紹介していただけるものはありますか?

Willacy 氏:設計上の課題のほとんどは、小規模なチームが控えめな予算で、野心にあふれたタイトルを作ろうとしているために生まれていると思います。

私にとって最も大きかった設計上の課題は、たくさんある武器やガジェット、ゲームプレイのアクション要素を、すべてうまくまとめ上げることでした。設計の一部として、多数のゲームプレイが突然発生することがありましたが、これは予期しない形で武器やガジェットが相互作用のようなものを起こすことによるものでした。

2 つの Fire モードを備えた 9 個の武器があり、武器 1 個につき 8 個のアップグレードの組み合わせがあります。さらにそれぞれ 2 個のアップグレードが可能な 9 つのガジェットも存在し、それらが互いに異なる影響を及ぼします。この数の多さには頭が痛くなりました。ありがたいことに、これを自分だけで解決する必要はありませんでした。他のメンバーは優れた設計センスを持っており、チームが小規模なおかげでアイデアを出し合い、ワークフローを滞らせることなく協力して進めることができました。

具体的な例としては、戦いのデータを外部のスプレッドシートに一元化しました。レベル設計を担当しているのは私だけだったので、敵のスポーン システムを記述し、具体的な戦いに利用できる形で、すぐにイテレーションに活用できるものが必要だったのです。スプレッドシートと Unreal Engine のデータ インポート システムを活用することで、戦いのロードが多すぎたり少なすぎたりする問題をすばやく視覚化できたのです。グラフにし、UE4 の読み取り可能なリンクの配列にし、インポート前に検証したりすることができました。これにより、プロジェクト全体で、数週間、あるいは数か月分の作業を省略することができました。
データ主導のアプローチを取るなら UE4 が非常に優れており、多くの時間を節約できます。

他の例を挙げると、私はチームのオーディオ担当なのですが、バックグラウンド ミュージックを作成するほど膨大な時間はありませんでした。そのため、ターンやコントロールしているキャラクター、ゲームプレイ イベントなどによって変化するダイナミックなシステムを思いついたのです。これには最初は UE の Time Synth を使用していましたが、その後 Quartz を使用するようになりました。Quartz は私がこれまでずっと待ち望んでいた機能です。頭の中で思いを巡らしていたものを作ることができましたが、どういうわけか 15 年もの間実現はできていなかったので、これは本当に嬉しいことでした。できれば、今後のプロジェクトでもさらに利用してみたいと思っています。

Markiewicz 氏:このゲームの中核的要素となっているのは、キャラクターの時間がなくなると、動かなくなってしまうことです。走っているときでも、飛んでいるときでも、落ちているときでも、キルされて体がぐにゃぐにゃしている最中でもこれは変わりません。キャラクターは行動を停止しなければなりませんが、すぐに再開できます。これが最終的に、予想していたよりも大きな課題になりました。オンラインのマルチプレイヤーではなおさらのことです。

たとえば、オオカミ人間を爆発で空中に打ち上げたとします。「どうしてそんなひどいことを。ひとり親で 2 人の子どもがいるオオカミ人間になんてことをするんだ?」と思っている間に、オオカミ人間は空中で動きを止め、すべてラグドール物理によって決定される姿勢を取ります。プレイ中はキャラクターが多くなることがあり、爆発もたくさん起きます。そのため、ラグドール物理で動きを止めたキャラクターだらけになる可能性もあるのです。

システムを実装した当初、ネットワーク経由でそれらを同期することはまったく私たちのカードにありませんでした。私はいくつかのアプローチを試してみたのですが、まったくうまくいくことはなく、ネットワークの状態が悪いとこれは特に顕著でした。ほとんどのゲームに当てはまることですが、キャラクターがキルされるとラグドール物理はそこに突然適用されます。その点で、これはほとんどの場合表面的なことです。 

このゲームではさらに時間を取って、爆発の最中で動きを止めているオオカミ人間に対し、ヘッドショットを狙うこともできるのです (やっぱりひどいことをしますね)。最終的にこの問題は、すべての武器のヒット検出の権限をクライアント側に与えることで解決しました。つまり、仕組みとしては、ヒットの有無をクライアントが判定し、それをサーバーに知らせます。ヒットの有無をサーバーが判定する通常のパターンとは異なります。もしこれが勝敗を競い合うゲームであれば、チートのためのワームを多数増やす可能性につながってしまいますが、それに関してはあまり心配していません。ここで最も重要なのは、クライアント側のプレイヤーが空中で止まっている敵の頭部に狙いを定めたのなら、ホスト側ではわずかにその頭部の位置が異なっていたとしても、必ずヒットしなければならないということです。それによってホスト側のプレイヤーに多少の違和感を感じられることがあってもかまいません。シューティングを行っているプレイヤーの体験の方を優先しているからです。
画像提供:Implausible Industries
ゲーム開発では PlayStation 5 と Xbox Series X/S のどのような機能を利用しましたか?また、それは制作する上でどのように役立ちましたか?

Markiewicz 氏:開発時には、どのような設計を形にするにも新しいコンソールが届くのが遅すぎました。とはいうものの、PS5 のアダプティブ トリガーのサポートをいくつか追加しました。また、アクティビティ カードが追加されたことで、多彩さを少し加えると同時にプレイヤーをうまく誘導する、さらなる手段が得られました。XSX/S ではプレイヤー向けの明確な新機能は利用しませんでしたが、最近の SDK の追加機能をいくつか活用したところ、作業が非常に容易になりました。もちろん、新しいコンソールに合わせた設定の調整もさらに行っています。UE4 の デバイス プロファイル を利用したところ、この作業が非常に簡単になりました。

PC および Nintendo Switch という 2 つのプラットフォームで 2 世代向けのゲームを開発する際、どのような課題がありましたか?また、それらをどのように克服しましたか?

Markiewicz 氏:ビジュアル デザインのおかげで、メモリ プロファイルをかなりスマートなものにすることができました。またグラフィック ハードウェアも、リアルで写実的な世界観のゲームなどと比べるとそれほど必要になりません。そのため、マルチプラットフォームへの対応 (またはその維持) での課題は以前よりも少なくなりました。ただ、Nintendo Switch は、やはりメモリ、CPU、GPU の点でボトルネックになってしまいました。Animation Budgeting プラグイン を使用し、敵のターンでは CPU パフォーマンスを合理的な性能に抑えました。そして Nintendo Switch ではダイナミック シャドウを無効にし、視覚的なリアルさやフレームレートの一貫性を維持するという、苦渋の決断を下しました。

新しい世代では、ネットワークに関する問題も発生しました。特に PS5 では、フレンド セッションの検索を自分たちで実装する必要がありました。同様に、Nintendo Switch におけるシステムレベルのフレンド招待は比較的最近の追加機能なので、調査を行って手動で実装しなければなりませんでした。幸いにも UE4 の Online Subsystem アーキテクチャは一貫性のある実装ができ、読み取りも簡単でした。そのため、ほとんどはソニーと任天堂のドキュメントを読み、既存のものを真似すれば済みました。UE4 (や UE5) プロジェクトを今すぐ始めるという人でも、こういった問題で悩むことはないでしょう。さらに、 Epic Online Services もありますしね!

Gajentaan 氏:長年経験を積んできましたが、これほどたくさんのプラットフォーム (PC、PS4、PS5、Xbox One、Xbox Series X、Switch) で同時にゲームの開発をしたことはありませんでした。当然、持ち運ぶ場合でもドックに接続する場合でもゲームをプレイできる必要があるため、Switch についてはほぼ 2 つのプラットフォームと言えるでしょう。さらに、これらの一部のプラットフォームにはそれぞれのバリエーションがあるため、ベース モデルに加えて Xbox One X、PS4 Pro、Xbox Series S に合わせてゲームのチューニングを行い、可能な限り優れた体験を作り出す必要がありました。こうして最終的に、分割画面での協力型プレイをゲームでサポートすることになりました。

幸いなことに UE4 には膨大なスケーラビリティ パラメータが用意されており、これを設定することでコンテンツのチューニングを行い、可能性のある各シナリオに対してレンダリング出力を行いました。これらのシナリオを私は分割画面と呼んでいますが、それはほとんどの場合で全画面とは異なる設定が必要となるためです。

問題にうまく対処できるようにこれらのパラメータや値をスプレッドシートで追跡し続けたことで、プラットフォームやシナリオを相互に比較して違いを把握できるようになりました。当然、各パラメータの役割や、ビジュアルとパフォーマンスに及ぼす影響については調査しました。

複数のプラットフォームにおいて、GPU での処理が少し重い場合には ダイナミック解像度 を利用しました。よりローエンドのハードウェアでは、Quality Switch ノードを使用してマテリアルを簡素化し、必須でない詳細なメッシュやパーティクルは詳細モードを利用して非表示にしました。LOD 距離、シャドウ、ポストプロセス品質、フォリッジ密度、画面解像度などを含む多数の項目を、各シナリオに合わせて最適になるようにスケーリングしました。
Image courtesy of Implausible Industries
次世代のハードウェアや Unreal Engine の長期的な可能性について、最も期待することは何ですか?

Willacy 氏:個人的には、 UE5MetaSounds を利用できることを楽しみにしています。オーディオを作るのが好きなので、皆さんにはぜひ RESEARCH and DESTROY のオーディオを体験していただきたいと思います。MetaSounds があれば、ゲームプレイにうまくマッチする、さらにマニアックなオーディオが作れそうです。

ハードウェアについては、ゲーム作成に必要な作業を忙しくしなくてすむ日が来ることを願うばかりです。UE5 の新機能の一部と足並みを揃えて進化する新しいハードウェアが出てくれば、その最初の一歩を踏み出せるのではないかと思っています。

Markiewicz 氏Nanite を最新のコンソール (や PC) と組み合わせるとロード時間が高速になるので、ゲームプレイでのそのスケールの可能性 (およびそこからのダイナミックな変化) には本当に期待しています。

貴重なお話をありがとうございました。Implausible Industries や RESEARCH and DESTROY の詳細はどこで確認できるでしょうか?

Implausible Industries の詳細については、 http://implausibleindustries.com/ を、また、 RESEARCH and DESTROY の詳細については、 https://rad-official.com/ をご覧ください。
 

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