画像提供:Elsewhere Experience

サイコ スリラー作品 Broken Pieces が抱えていた大問題の解決に Epic MegaGrants がどのように役立ったのかをご紹介

Brian Crecente
Mael Vignaux 氏は、Elseware Experience スタジオのテクニカル、オーディオ、およびゼネラル ディレクターです。最初は物理学者を目指していましたが、後に元々情熱を持っていたビデオ ゲーム業界に転向しました。アニメーション短編映画やビデオ ゲームのサウンド デザインで賞を受賞しており、数多くのプロジェクトでプログラマーとしても働いていました。そして 2020 年、ゲーム Broken Pieces の制作を行うため、Benoit Dereau 氏とともに Elseware Experience を共同設立しました。彼らの長年のコラボレーションは、2006 年の MOD 制作から始まります。
Elsewhere Everywhere は、Half-LifeLeft 4 Dead などの MOD 制作からスタートし、その後すぐに建築ビジュアライゼーション、レベル デザイン、VR にまで手を広げました。しかし、スタジオを支えるこの 2 人組が自分たち独自のゲーム、Broken Pieces を制作する準備が整うまでには 10 年を要しました。

近日公開予定のこのサイコスリラー作品では、プレイヤーは時間の流れが止まったフランスの海辺の村を彷徨います。そして、謎めいた場所の背後にある物語の断片をかき集め、時間の流れを再び動かすことを試みます。

今回は、スタジオの誕生秘話、主人公 Elise の設定、Saint Exil での Elise の旅、そして Unreal Engine と Epic MegaGrant がスタジオの思い描いていたことを実現するのにどのように役立ったかについて、Mael Vignaux 氏にお話を伺いました。
 

Elseware Experience はどのように設立されましたか?また、どのようにして最初のインディー ゲームを制作するに至ったのですか?

Elseware Experience マネージング ディレクター Mael Vignaux 氏:
Elseware Experience の背後にあるアイデアは、10 年以上前に Benoit と私 (Mael) が Source Engine 用の MOD を制作し始めたときに生まれました。Half-Life 2 シリーズ用、Left 4 Dead 用に作った 2 つの MOD が広く高い評価を得たので、スケールアップして独自の作品を制作するときが来たと思ったのです。ただ、私が物理学の博士号を取得したいと思っていたことと、Benoit が大きな作品に取り組み始めたこともあり、そこからは少し時間を要しました。Benoit は Arkane Studio にレベル アーキテクトとして参加し、最初の Dishonored に取り組んでいました。
 
初めてのゲームを制作するのは簡単ではありません。ですから、ゲーム制作の開始を決めた後は、経験を積み、経済的に安定できるように、複数のシリアスなゲームとアーキテクチャのビジュアライゼーションに取り組み始めました。

初作のゲームである Broken Pieces の制作を開始したのは最初の MOD がリリースされてから 10 年後でした。そして、パブリッシャーを見つけて実際にプロダクションを開始するまで、さらに 2 年を要しました。

最初は Source Engine で MOD を制作されていました。それにも関わらず、Broken Pieces で Unreal Engine に移行したのはなぜですか?

Vignaux 氏:
これまで複数のゲーム エンジンを使用してきました。しかし、非常にリアルなライティング設定が求められるハイエンドな結果が必要な場合、Unreal Engine 以外選択肢はありませんでした。エンジンには、(ライト ベイクも含む) とても幅広いオプションが用意されているので、私たちのような小さなチームでも最高の結果を得られます。

ArchViz のデモンストレーションのリアルタイム環境で何ができるのかを紹介する Unreal Paris を最初にリリースしたとき、圧倒的にわかりやすく肯定的な評価を得られました。そうしたことから「エンジンを徹底的に使いこなせるようにならないといけない」と思ったのです。
移行はどのように行われましたか?また、この移行は作業プロセスにどのような影響を与えましたか?

Vignaux 氏:
さまざまなエンジンを使っていたので、移行はそれほど難しくありませんでした。多くの規格がエンジンに組み込まれているため、簡単に自分たちのデータを統合できました。ブループリント システムは、速度が要求されるプロトタイピング フェーズで大いに役立ちました。また、ライティングに関しても満足のいく結果がすぐに得られました。結果をリアルタイムで直接確認できるので、Source Engine と比較して、生産性が大幅に向上し、パイプライン全体もスムーズになりました。もし仮に Unreal Engine から Source Engine への移行だった場合、もっと複雑だったでしょうね。

あなたの以前の作品には、素晴らしい建築ビジュアライゼーション作品や VR ゲーム作品があります。それなのに、より伝統的なインディー ゲーム制作に取り組むようになったのはなぜですか?

Vignaux 氏:
完全なスタンドアロンのゲーム体験を提供することが、常に私たちの第一の目標でした。多くの異なるプロジェクトでエンジンを使いこなす方法を学ぶことで、この作業は簡単になりました。ビデオゲームに関する技術が本当に好きなら、学習への障壁が取り除かれさえすれば、ゲームを制作したいという衝動にあらがうのは不可能だと思います。
Broken Pieces のアイデアはどのように思いつきましたか?

Vignaux 氏:
Broken Pieces の背後にあるアイデアの 1 つ (ネタバレはしませんよ) は、主人公 (Elise) が自然に近く、何よりも都会のストレスから離れた新しい生活を始めることにあります。これは、私が大学で勉強した後にたどった道に少し似ています。スタジオをどこかに物理的に設立することを決めたとき、私たちは、利便性 (新しい従業員を簡単に得られる機会、より多くの人物とつながれたりイベントに出席できたりする機会) のある都市にするか、当時 Benoit が住んでいた海に近い場所にするかを選択する必要がありました。つまり、採用がより簡単で他の企業とつながりやすい環境か、より良い生活の質を得られスタジオに参加する人々をより温かく迎えられる環境のどちらを選ぶのか、ということです。

ご想像のとおり、私たちは後者を選びました。そして私は荷物をまとめて引っ越しました。

Broken Pieces のストーリーはここから始まります。Elise は新しい村に到着しますが、(私とは違い) 想像していたとおりには物事がうまくいきませんでした。
Broken Pieces は、どのような映画、本、ビデオ ゲームから影響を受けていますか?

Vignaux 氏:
ここですべてを挙げるのはとても難しいのですが、この作品は映画文化から強い影響を受けています。多くの映画やシリーズで感じられるスリラー的な (奇妙さと疑問に満ちた) 雰囲気を作りたかったのです。ミスリーディングを誘うような物語により、プレイヤーがゲームの主人公と同じ気持ちを持てるようにしていますが、これは LostThe Leftovers などのシリーズから思いつきました。
 
ビデオゲームにおけるカメラを固定するやり方については、サイレントヒルバイオハザードなど、かなりの数のゲームを参考にしました。しかし、ホラー ゲームを作るのが目的ではなかったので、たとえば Alone in the DarkSyberia などのよりアドベンチャー的なゲームも参考にしています。

また、私たちは Half-LifeBioshock の大ファンでもあります。このように、色んなゲームの影響を受けています。

Broken Pieces で達成したいことは何ですか?

Vignaux 氏:
第一に、私たち自身が楽しく遊べるゲームを作りたいと思っていました。自分たちで作らない限り、なかなか見つからないようなゲームですね。制作中、このゲームは他のゲームと簡単には比較できないと感じていました。だから、究極的にはそういったゲームを本当に作りたかったのだと思います。また、このゲームには豊富なバックストーリーがあるので、将来はストーリーを分岐させた別のゲームをいくつか制作することも検討しています。

Broken Pieces について、その物語とそれを最もよく表すゲームプレイの両方の観点から、説明していただけますか?

Vignaux 氏:
Broken Pieces はナラティブ スリラーで、固定カメラ、パズル、戦闘を特徴としています。詳しく言うと長くなります。

簡単に言うと、プレイヤーはカセットプレーヤーを手にしながら、何かが隠されている奇妙なフランスの町を彷徨います。これ以上言うとネタバレが怖いので、この辺にしておきますが。
Broken Pieces は、視覚的に魅力的かつ印象的な雰囲気と、リッチな世界観があります。そうした雰囲気や世界観を作るのに、Unreal Engine はどのような点で役立ちましたか?

Vignaux 氏:
答えは簡単です。ライティングですね。Unreal は、オブジェクトに対するライティングがとても自然です。半現実的な雰囲気のゲームを制作する場合、このエンジンが一番です。もちろん、ライティングはこのエンジンの優れた点の一つに過ぎませんが、まずプレイヤーが気付くことでもあるので、非常に重要です。システム全体も非常に堅牢で、エンジンで用意されているすべての要素 (ポストプロセス、アンチエイリアス、トーンマッパを含む) を組み合わせると、ゲーム制作において、とても良いスタートを切れます。創造性を失うことなく作業できます。

ゲームでは Quixel Megascans をどのように利用しましたか?

Vignaux 氏:
シーンでプレイヤーの目を引き付けるようなディテールが必要となる場面や非常に大きなメッシュが必要な場面で、いくつか Quixel アセットを使用しました。2013 年世代のコンソールでゲームを実行する必要があることを考えると、それらのアセットを慎重に使用したり、一部を複数回再利用したりする必要がありましたが、最終的には、こうした状況でもうまくいきました。

ゲームの戦闘システムの仕組みと、それが他のゲームの戦闘とどのように違うのかを教えてください。

Vignaux 氏:
戦闘システムは、ゲーム内で統合するのがとても大変です。ゲームに固定カメラを導入する際は、プレイヤーのエイムに頼れなくなるのが主な課題の 1 つとなります。角度が変化したり視点が時々ねじれたりして、プレイヤーが敵に正しく照準を合わせる際に直感に反した操作を行うことになるからです。熟練を要するのでストレスを感じることになります。したがって、素早く操作しにくいという欠点の克服と、キャラクターを戦場のどこに配置するのかという問題を基本にしたいと考えていました。そのため、敵を押しのけて攻撃をかわすための多くのツールを作成しました。これにより、システムは、プレイヤーの意思決定能力に頼るダンスのようなものになりました。そして、こうした形の方が私たちが制作している種類のゲームにより適しているようでした。

より落ち着いて集中して操作したいプレイヤー向けには、より簡単な操作が可能な異なる難易度も用意しています。
ゲームの天候の影響と、それによって地域が変化するシステムが面白いと感じました。この仕組みと、天候がゲームプレイにどのような影響を与えるのかを教えてください。

Vignaux 氏:
優先課題の 1 つとして、プレイヤーに対して「自分が実際にゲームの世界にいるんだ」という感覚を与えたいと思っていました。そして、天候を変化させるより、没入感をさらに得られるにはどうしたら良いのかを考えました。

ゲーム内では、風が強いと、要素が動いたり風車が動作したりします。雪が降ると、水が凍り、濃くて先がよく見えない霧が発生します。こうした変化により、謎解きはよりユニークなパズルになり、環境内における見え方もたびたび変化することになります。

これらの機能は外にいるときはいつでも切り替えられます。

Elseware Experience は、Broken Pieces で Epic MegaGrant を獲得しています。これは、スタジオとゲームの開発にどのような影響を与えましたか?

Vignaux 氏:
興味深い質問ですね。ほとんどのインディー スタジオと同様、私たちもパブリッシャーとの契約に役立つデモを制作するため、多くの自己資金を投入していました。しかし、ゲームの性質上 (半現実的な世界観)、アニメーションが現実的な問題となりました。良いものを制作するための資金的余裕がなかったのです。アニメーションは目立つ部分なので、大きな問題でした。静かでシリアスな雰囲気のゲームの場合、アニメーションが存在せず、何かでそれを代用している場合、全体的な品質が下がってしまうと思いました。スタジオにとって最も苦しい時期に MegaGrant を獲得できました。それにより、モーション キャプチャ セッションが可能になり、ゲーム内の動きの改善とシネマティックスの導入につながりました。モーション キャプチャを用いると、プレイヤーのゲーム内での感覚は大きく変わります。MegaGrant 獲得の 2 か月後、パブリッシャーと契約を結ぶこともできました。
Unreal Engine 5 で最も印象的なことは何ですか?また、それが将来のゲーム デザインにどのような影響を与える可能性がありますか?

Vignaux 氏:
最初に印象的だと思ったのは、ライティング システムです。グローバル イルミネーションをリアルタイムで正確に表現することは非常に困難でした。UE5 のライティング システムは、真のゲーム チェンジャーだと思います。ベイクしたライティングのような結果を、すぐに確認することができるのです。
 
より実用的なことに関しては、チームとしては新しいコラボレーション機能に本当に期待しています。小さなことかもしれませんが、UE5 の実行時のヘッダー ファイルのソース コンパイルと、エンジン内の個々のアセットのバージョン管理にはとても驚きました。

これら 2 つの追加機能により、作業の共有が容易になり、プロトタイプの作成が高速化されることは間違いないでしょう。つまり、更に良いゲームを作れるようになるということです。

Broken Pieces についてのお話を聞かせていただき、ありがとうございました。ゲームや Elseware Experience についての詳細はどこで確認できますか?

Vignaux 氏:
いろいろなご質問をいただき、ありがとうございました。また、Epic のすばらしいエンジンと Epic MegaGrant のおかげで、私たち開発者の生活が楽になりました。その点も大変ありがたく感じています。

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