2016年8月26日

太陽系外への入植ゲーム Aven Colony

作成 Brian Rowe

「街づくり」というと、せわしない通りと鉄筋高層ビルが立ち並ぶ 21 世紀のメトロポリスをイメージしがちですが、Aven Colony は違います。このゲームでは、太陽系外の惑星への人類初の入植のために危険を冒して宇宙を冒険するパイオニアとなります。

そしてリーダーとして、生き延びるだけでなく繁栄につながるように、人々に必要なインフラ整備を一任されます。未知のこの惑星では、長めの昼と夜が短い季節となります。地面からは有毒ガスが吹き出し、うっかりしていると「The Creep」と呼ばれる感染症にすべてやられてしまいます。まさに、言うは行うより易しです。

さらに難しい課題は、市民の幸福度を維持することです。どのように人々の暮らしを支えますか?仕事、娯楽、お店、その他のサービスを十分に与えますか?市民のためにどのような法整備が必要でしょうか。そう、この地の未来はすべて、あなたの手にかかっているのです。

Aven Colony ほどのスケールを手掛けた Mothership Entertainment が、たった 4 人のチームなのは驚きです。Aven Colony の機能、範囲の管理方法、およびアンリアル エンジン 4 を選んだ理由について、デザイナー兼ゼネラル マネージャの Paul Tozour 氏にお話を聞きました。

街づくりゲームはこのところ急に人気再浮上中で、昔のタイトルにもファンができています。この現象についてどう思いますか?

PT:長い間、誰も SimCity と競いたくなかったのだと思います。「街」はどれも似たようなゲーム メカニクスで作られた近代的な町であり、800 パウンドのゴリラとサシで勝負しても仕方ない、と偏見を持ってしまったのではないでしょうか。

でも PC ゲームは進化し続けています。私はこのジャンルに大きな可能性があると感じています。街づくりは必ずしも近代の設定とは限りません。中世の街、サイファイの街、街にはいろいろな種類があります。さらに、SimCityCities:Skylines のような大規模ゲームと、RimWorldBanishedPlanetbase のような小規模シミュレーション ゲームの中間あたりをとって、サバイバルとマイクロマネジメント寄りに軸を寄せてみました。

Aven Colony では、プレイヤーが太陽系外の惑星で人類初の入植地を構築します。新たな環境での入植にあたり、プレイヤーはどのような困難に遭遇しますか?

PT: 入植するワールド (Aven Prime という) は酸素が薄いので、市民を生存させるにはコロニーを常に完全密封状態にします。さらに、雷嵐、破片の嵐、塵旋風が起こり、Aven Prime のあちらこちらの地熱溝から致命的な毒ガスが噴出しています。

技術的には太陽系外はガス惑星の周りの月なので、このワールドでは昼と夜の周期が長く、昼には各季節が訪れますが、夜は冬となり食物が育ちにくくなり、太陽光パネルからの電力供給も減ります。

さらに、巨大なサンドワーム、疫病胞子、The Creep として知られるエイリアンの伝染病は、街づくりにおける火事のように、建物に広がって浸食するメカニズムとして機能します。気をつけないと、建物はあっという間に、巨大な忌まわしい触毛で一杯になってしまいます。コロニーの生産性を急激に下げる要因になります。

市民を管理するために、プレイヤーはどのような決断をして、どのようなツールを使うのでしょうか?

PT: ほとんどのサイファイ ゲームは、未知の惑星のワールドで独りぼっちで生き延びます。Aven Colony にもそのような要素は含まれていますが、小さなコロニーを大きな栄えた街にして、宇宙空間で人類が文明を築くしっかりした拠点にしようとする感情の高まりをプレイヤーに与えたかったのです。つまり、小さなコロニーから大都市にスケールアップできるゲームにする必要がありました。

プレイヤーに強いることで大都市への拡大が難しくなるようなことはやめて、市民は自分達でその日ベースで選択ができるようにしました。ゲームの大部分は、特定のニーズを満たすために建てる構造物の種類、アップグレードの時期、展開の速さ、壊れ始めた建物の修理時期、周回中のコロニー船から引き受ける入植者数の決定にしました。

さらには、取引契約を締結するか、仕事の空状況、研究する技術、耕作する穀物、製造する飲食物やその他の項目、市民のための社会政策、市民が消費してよい食べ物とエンハンサーの種類まで決定します。

市民は幸せを感じないと、それを訴えてきます!モラルに関する要因はたくさんあります。食料供給が低かったり、空気が汚れていたり、失業率が高いなど心配ごとについて、市民をクリックした時に直接訴えてきます。コロニーが大きくなればその環境を生き抜くことが楽になりますが、現実の街と同じく人々の幸せの維持が難しくなります。

人々は本当に不幸に感じると、コロニー中に立って、ホログラフィックの抗議カードを振りながら、こう叫びます:

「我々に必要なものは?」
「仕事だ!」
「いつ必要か?」
「今!!!」

コロニーが地獄と化し、市民が激怒しているのを見ることは、意外にも Aven Colony の楽しい一面でもあります。

太陽系外の惑星であること以外に、Aven Colony が他の街づくり管理シミュレーションと明らかに差別化に成功している特性はなんでしょうか?

PT: 斬新的なコロニーを構築した点でしょうか。建築物はすべて「nanites」という金属のナノ キューブで出来ており、空を飛ぶ建築ドローンで建てられています。街を警備し秩序を維持する警備ドローンや、The Creep から人々を守る衛星ドローンなど、様々な種類を使用します。

コロニーを完全密封して清潔な空気を保つこと、電気の受給と伝播の処理て、太陽系以外の環境での市民の挑戦の管理、これらすべてがゲームを非常にユニークにしていると思います。

他の街づくりゲームとはまったく違う感覚なので、SimCity や Cities:Skylines と同じ感覚でプレイすると、市民はあっという間に死んでしまうでしょう。

Aven Colony は、街づくりから環境 、市民のための食選びまですべてを包括しているので、複雑なインタラクションだらけだと思うのですが、新しいアイデアのプロトタイピングと実装のプロセスに影響はしないのでしょうか。

PT: ビジョンをしっかり持ち続け、全体にフィットする機能だけをゲームに追加し、その状況に合わせた価値が確実に追加されるように、そこは徹底して貫きました。

サイファイっぽい響きの恰好いいゲームを求めて、ゲームデザインの仕組みを理解せずに、作るのは簡単ですが、すぐにだめになります。「こないだ読んだサイエンスフィクションがとても面白かった。自分達のゲームにこれをクローンしようじゃないか!」という流れは、私達のリスク管理の法則に当てはまりません。それに、他のゲームをクローンするなんて、まったく興味がありませんでした。

宇宙ゲームでは、機能が増えてゲームが拡大しすぎて管理できなくなるミスが頻繁に見受けられます。プロシージャルな惑星やクリーチャーなどで宇宙空間の広大さを埋めようとしますが、空間が大きすぎてゲームデザインをほとんど拡散できないままになります。最初にしっかりしたゲーム メカニクスの基盤を作らないで、素晴らしいサイエンス フィクションを作ろうとします。

私達もそのようにして、銀河全体の惑星に入植する大規模ゲームをビルドしていたら、非常に簡単だっただろう思います。でも、そうしなくて良かったです。私達のアプローチはむしろ逆でした。ゲーム範囲が小さい時に管理を徹底して、それを徐々に面白く、重点を絞って洗練させることで、ここまで範囲を広げました。

これからベータ版を公開するところです。もちろん今後に向けた調整課題は山盛りだと思いますし、ゲームをさらに改善し、出荷前にどの機能が一番いいのかコミュニティと相談するのを楽しみにしてます。

これまでアンリアル エンジン 4 を採用したことはありますか? Aven Colony の作成に UE4 を選んだ理由をお聞かせください。

PT:2001 年の Thief:Deadly Shadows でアンリアル エンジン 3 を使いましたが、3 と 4 のソースコードを見てみると、アンリアル エンジン 4 は内外とも全く別物です。

この業界にかれこれ 20 年以上いますが、プロ意識を非常に高く保ち続けなければならないと感じます。エンジニアならば、メモリ割り当てを完全に制御し、使っている言語が人工的な速度バリアを私に要求せずに、金属までコード全体を適宜最適化できるということを知る必要があります。

C++ は優れたデバッグ、プロファイル、統計分析ツールにアクセスしながら、すべてのことができる唯一の言語です。

私はテキスト ベースのスクリプト処理言語に対しては、かなりのアンチ派です。スクリプト処理自体はほとんどのゲームで通常必要なのですが、スクリプト処理にテキストを使うとたいがいミスしますし、適切なデバッグとツール支援なしにデザイナーに基本的に必要な量のプログラミング言語を与えることで、自ら骨抜きにする傾向のあるチームが多いです。

ブループリントのビジュアル システムは、見事な組み合わせの剛健なスクリプト処理サポートを、型安全かつ驚くべきシンプルさで管理します。しかも、C++ から無制限に拡張が可能です。

私にとってこれは理想の組み合わせでした。とてもパワフルで、型安全、使いやすいビジュアル スクリプト処理言語にはデバッガーまでビルトインされています。C++ もフル対応で、C++ から簡単にブループリントへ拡張可能、そして必要な機能を追加することができます。

ブループリントはどんな言語よりも速くコードを開発できますし、C++ はどんな言語よりも速く実行するコードを書くことができます。つまり、最速のコード化、もしくは最速のコードのいずれかを得ることができるわけです。2 つのワールドのベストな部分がシームレスに統合されています。C++/ ブループリントの組み合わせがどれほど完璧か、またどれほど自分達の助けになったのかを十分お伝えすることができません。

アンリアル エンジン 4 のパワーがなければ、我々のような小規模なチームではあのような大規模なゲームを作ることは無理だったでしょう。

Aven Colony の構造についてお聞きします。何がきっかけで、この斬新なデザインを思いついたのでしょうか。

PT: 開発を開始した 2013 年後半に、伝説的なサイファイ アーティスト Stephan Martiniere 氏と出会ったことが運の月でした。彼がコロニー構造体のいろいろな初期デザインを請け負ってくれたお陰で、その後の調整が非常に速やかにいきました。

小さな、荒涼としたコロニーから徐々に手を入れて、洒落た魅力的なサイファイ シティにしていくという概念をサポートしながら、近代の視点から認識できる構造体の作成が一番大変な作業でした。

実用的なデザインを組み合わせました。最初は太陽光パネル、エネルギー バッテリー、ストレージ デポなどのアーリーゲームかつ簡素なレベルの構造体を使い、コロニーが発展するにつれて、植物、高層ビル、病院、ショッピングセンター、娯楽施設など。高度なデザインでは大きなコロニーでよくみられるような洒落たデザインを使いました。

開発チームの中心メンバーは何名ですか?アンリアル エンジン 4 でどのように連携を支援していますか?

PT: たったの 4 名です。とても小さいチームです。このスケールの街づくりゲームだと、20 名から 60 名体制が普通です。IT とサポート兼任のエンジニアが 1 名、建築物担当のアーティストが 1 名、テレインから UI、キャラクターまですべてを担当するアーティストが 1 名、そして私がゲーム デザイン、制作、事業開発に付随するエンジニア的な作業を受け持っています。

人数がとても少ないので、作業範囲の管理の手腕はお手の物ですし、リスク管理にはかなり敏感です。この 2 年半の間、小さな、フォーカスした、とても洗練されたシミュレーション ゲームに重点を定めてきました。しっかりした基盤作りから始めて、アルファからパブリック ベータへ移る時に、慎重に拡張しました。

アンリアル エンジン 4 はその点で非常に便利でした。 ブループリントの新機能を使うと、プロトタイプと実験がすぐにできました。ソース コントロール (我々の場合は Perforce) とのリンクがスムーズなので、作業が円滑に行えましたし、うまくいかない時には問題の追跡に役立ちました。ビルトインされているプロファイリング ツールは、パフォーマンスの向上に非常に役立ちました。私達が開発を開始した当時 Unreal Motion Graphics (UMG) はまだありませんでしたが、最も人気が出てきた時に、ユーザーインターフェース全体を徐々に UMG に移行しました。そしてインターフェースに集中するゲームで素早くイタレートする場合にとても役立ちました。 

開発中にアンリアル エンジン コミュニティに参加してみていかがでしたか? 

PT: アンリアル エンジン コミュニティは素晴らしいので 2013 年から参加していますが、AnswerHub やフォーラムがこうして大きくなって嬉しく思います。UE4 フォーラム、もしくは直接 reddit でもたくさんの回答を頂きました。今夏オースティンで開催された UE4 デベロッパー向けイベントで我々のゲームのアーリーデモも実施して、大変よい反応を得ることができたので、少し自信がわいてきました。

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Aven Colony の PC 版は 2017 年にリリースされます。 是非 AvenColony.com、Twitter で @MothershipTeam、または Facebook をチェックしてみてください。