Soundfall は、Unreal Engine 4 に基づいて制作された、活気に満ちた素晴らしいゲームです。UE4 というゲームエンジンに関わってきた経験を生かして、Drastic は、プレイヤーの音楽を取り込んで、冒険のためのサウンドトラックとテンポとして設定できるハイテンポなアクションゲームを作りました。ベースのビートと心地よいガンプレイをシンクロさせることは、簡単なことではありません。Drastic はその調整のためにかなりの苦労を強いられました。
Soundfall は、2018年8月7日にリリースされ、すぐに好評を得ました。人々の興味を引き、Drastic 自身でさえこのように高く評価されることは予測できないくらいでした。(PAX West や EGLX などにおける) さまざまな露出を経て、Fig でクラウドファンディングを開始したところ、24 時間以内に目標額に達しました。開発できる時間が格段に増えたため、チームは高い目標に切り替えました。
今回、Drastic Games を構成する二人のうちの一人、Julian Trutmann 氏から話を聞くことができました。インディー系としてやっていくことの危険性、好きなものを作ることへの情熱、Unreal Engine のパワーについて語っていただきました。 Drastic Games は、Epic Games 出身の 2 人からなる小さなスタジオですが、どのようなことがきっかけとなって、インディー系開発者としてやっていくことになったのでしょうか?
Epic に在籍していたときに、私たちは幸運にも Fortnite や Paragon といったいくつかのプロジェクトで、小規模な初期チームに参加することができました。そのようなチームで私たちは、何回も感動させられることになります。こじんまりとしていながらも、才能にあふれ、協調的で、よく集中できたチームが短期間に達成できるものに圧倒されたのです。このような経験によって、自分たち自身のチームができたら、どのようなことが出来るだろうかと考えるようになりました。そして、小規模チームによるゲーム開発の可能性を広げようと思うようになったのです。
Soundfall は、アクション/アドベンチャーとリズムゲームがミックスされたハイテンポのゲームです。このようなゲームは、今までに見たことがありません。どのようにして、アイデアを得たのですか?
最初の計画では、6 ヶ月後に実行できるようなシンプルなコンセプトを元にして、ブレインストーミングおよびゲームジャムを行うつもりでした。もちろん、その計画は変更になりましたが。
いくつかアイデアは温めていて、その中には、シンプルなリズムゲームとか IKARUGA/グラディウス 的なスペース シューティング ゲームのアイデアもありました。当時は、Audioshield をプレイしたばかりだったので、プロシージャルなリズムゲームのアイデアも色あせてはいませんでした。音楽的な要素は心に残っていて、シューティング要素もツインスティックものへと進化を遂げました。このようになったのは、多様な要素が考えられたため、もしかすると開発することになるかもしれないさまざまなプロジェクトのために開発したシステムを利用できたためです。さて、以上のような要素を生かして、ゲームジャムを週末に行ってみました。はたして、これらを組み合わせて面白いものができるでしょうか?結果は、予測をはるかに超えたものができました。
私たちは、きわめて大きな可能性を秘めたものを手にしたことに気がつきました。小さなプロジェクトでその芽を無駄にしてはいけません。最終的には Soundfall となるこのゲームは、このゲームジャムがきっかけだったのです。

Epic に在籍していたのですから、当然、Unreal Engine のことは非常に深く理解されているでしょうね。そこで、そのような豊富な経験をもって Soundfall を作成したときに、どのようなことが最大のアドバンテージとなりましたか?
Soundfall のリスキーなプレイ要素にも勇気をもって取り組むことができたのは、Unreal Engine に関わった長い経験があったからこそです。オーディオ分析がそのよい例です。エンジンの内側も外側も知っていることがなかったなら、そのような要素を取り入れることを検討すらしなかったかもしれません。また、他の似たようなインディー系のゲームではあまり見られない他の機能、たとえばオンライン協力プレイなどに取り組む自信もエンジンを理解しているからこそ得ることができたのです。
Soundfall の多くの部分を見てきたわけではありませんが、これまで目にしたところ、とても魅力的なゲームだと思います。このように、活発な世界に生命を吹き込むためには、Unreal Engine 4 のツールのうちで最も重要なものは何でしょうか?
一番のツールというものはありません。Unreal Engine 4 が私たちにとってこれほど強力であるのは、そのさまざまなシステムが複数の要素をもっているからです。どうしても一つ挙げなければならないのでしたら、それは Blueprints ということになるでしょう。およそ、Soundfall で音楽に対して反応するものは、一つの Blueprint なのです。その Blueprint によって、パーティクルやマテリアル、アニメーションといった他のシステムの組み合わせが制御されています。究極的には、これらのツールが一体となって、生き生きとした世界ができています。

アクションゲームの戦闘システムとリズムを合わせるときに、最も難しかったことは何でしょうか?
Soundfall は、どのような歌にも対応できるように設計されていたため、オーディオ分析を働かせること ―特に、ビート (拍) 検出を運用すること ― が、まず大きな問題となりました。最初は、オーディオ分析ツールを自分たちで開発するのに時間を費やしていたのですが、その後、Essentia というオーディオ分析ライブラリを見つけたので、それを組み込んで、ビート検出機能を大きく改善できるようになりました。同時に、プロシージャルなダンジョンや戦利品のために使っている歌に関するその他のデータについても改善することができました。
ゲームのすべてのアクションを「秒」で考えることを止めて、「拍」で考えるようにすることが、技術およびデザインに関わるもう一つの大きな問題でした。私たちは、通常、アクションの開始と終了を拍に合わせたいのですが、その場合、秒と拍を簡単に一定の割合として変換することはできません。たとえば、「1 拍」遅れに相当するミリ秒数は、それが、ちょうど前の拍のところにいたのか、次の拍への中間点にいたのかによって異なるからです!このことは、テンポの変化のことも考慮した場合、さらに複雑になります。
ゲームプレイに限って言えば、アニメーションや機能、ビヘイビアツリーのほとんどすべてが、拍に対応するように作成されなければなりませんでした。パンチを効かせる部分や、ゲームプレイに関連する部分は、正確に拍に合わせる必要があり、BPM やテンポが変化しても安定して機能するようにしなければなりませんでした。

リズムゲームで非常に大きな部分を占めるのは、当然のことながら音楽ですね。トラックは自分たちで作成したのでしょうか?Soundfall でサウンドを生き生きとしたものにするためには、どのような創作上のプロセスが必要だったのでしょうか?
Soundfall の音を造形するためには、オーディオ エンジニアの Jens Kiilstofte と密接な連携をとりました。Jens は、このゲームのすべての特異なアートの他にも、トレーラーのキラートラックを担当しています。
音楽ということで言えば、Soundfall はさまざまな種類の音楽に対応できるようにしたかったのです。チーム内でさえ、音楽の好みは多様です。おそらく、Soundfall の楽しみのうち半分くらいは、色々な歌にゲームがどのように反応するのか見ることにあると思います。
サウンド エフェクトについては、メロディックであることとインパクトがあることのバランスをとることが難しいです。武器 ― たとえば、Melody の剣やビートブラスター銃など ― は、あまりにも旋律的な場合、満足感を与えないことが多いのです。裏を返すと、従来型のビデオゲームの剣とか銃のサウンドは、音楽との相乗効果がそれほどないのです。あるいは、そのようなサウンドによってワールドに雰囲気がより醸し出されるようになることはあまりないのです。

リズムを使ったゲームプレイ全般に生じる問題については先ほどお話しましたが、それに加えて、パフォーマンスの問題があります!私たちにとってはこれが際立って重要なのです。従来から、リズムゲームとツインスティックのゲームでは、常に速くスムーズなアクションがプレイヤーから望まれるからです。よくあるゲームでは、ワールド内のほとんどの物は動きませんが、Soundfall では、ワールド内にあるほぼあらゆるアクタがアニメートし、音楽に合わせて動きます。それでも救いはあります。トップダウン カメラによって、一度に視界に入ることになる動くアクタの数をそこそこ制限できるのです。そのため、どのアクタをティックさせ、アニメートさせ、どのアクタに「拍」のイベントを送るかうまく決めることができます。
ゲームの 1 フレーム内で重い操作がたくさん生じると、そのフレームは時間がかかり、プレイヤーはカクつきを感じることになります。通常のゲーム開発では、しばしば、負荷の高いタスクを複数のフレームに分散させて、できるだけこのような問題を抑止します。しかし、残念ながら Soundfall ではこのような対策はとれません。ほとんどの大きなアクションがビートに合わせて実行されるようにしているので、結局のところ、多くの高価な操作のインスタンスを多数同時に生じるようにしなければならないのです!もしも、プレイヤーが非常に重要なアクションを実行すると思われるときに各拍でカクついていたら、このゲームをプレイすることは基本的に無理です。カクつきが生じないようにするためには、どのくらい拍に合わせなければならないか、どの操作を拍に合わせないようにすることができるのか、うまく調整する必要がありました。
Soundfall はリリースまでかなり長い工程が控えているようですので、今後も開発に長い時間を要すると言って差し支えないと思います。そこで、Unreal Engine 4 を使うと、どのように複雑な開発プロセスを合理化し時間を短縮できるのか教えてください。
まず、Unreal Engine 4 を使うと、ゲームの最初のプロトタイプを実にすばやく動かすことができるようになります。これこそ大変な合理化です。「リズムとトップダウン アクションをミックスすると本当に面白くなるのだろうか?」といった疑問にすばやく答えることができるのは、開発進めるかどうか決断する際には欠かせない機能です。私たちが必要としていた複雑なシステムが、Unreal ではすぐさま使えます。たとえば、物理、ネットワーキング、ナビメッシュといったシステムがそうなのですが、他にも多数挙げられます。Blueprint とビヘイビアツリーによって、ゲームプレイのイテレーションは依然として高速です。また、それらのおかげで、音楽に反応する新たなアクタも簡単に作成できます。

経験に基づいてお答えいただきたいのですが、Unreal Engine 4 を学び始めたばかりの、野心あるデベロッパーたちにアドバイスをお願いできますか?
簡単なことから始めましょう。一度に一つのシステムを学びましょう。既存のサンプルを改造しながら学ぶのがよいと思います。すでに存在している簡単なゲーム ― たとえば、80 年代のアーケードゲームなど ― を自分で作ってみるのも非常に有効な学習方法ですね。システムと技術が一体となって機能する様子をだれでも理解できるようになります。けっして、100 人がプレイするシューティング ゲームとか、MMO などにいきなり入っていかないようにしてください!
Drastic Games と Soundfall に関する最新情報を見逃さないようにするには、どこに行けばよいでしょうか?
Soundfall についての情報は、www.soundfallgame.com でチェックできます。また、ニュースレターの購読申し込みもここでできます。
私たちは現在、Fig でクラウドファンディングによる資金調達を行っています。Fig では、支援の約束や投資を行うことによって、開発に関わったり、私たちの将来の成功を共有することができます!
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