本日はありがとうございます。 まず、「MotoGP 25」について教えてください。そして、この長く続くシリーズの最新作で、どのようなことを目指したのかについても教えてください。
主任ゲーム デザイナー Stefano Talarico 氏:こんにちは。このような機会をいただき、ありがとうございます。お話できることを嬉しく思います。「MotoGP 25」の発売に向けた準備は万全で、プレイヤーの皆さんからの反応を聞くのが今から楽しみです。
このシリーズは毎年リリースされるタイトルなので、実際のライダーと同じように、私たちも常に目標に集中し、トップを走り続けなければなりません。今年の主な目標はこれまでと変わらず、「MotoGP」ゲームがファンの皆さんに認知され、愛されてきた理由である、スポーツと中核となるゲーム エクスペリエンスに忠実でありながら、新たな楽しみ方をプレイヤーに提供することです。
もちろん、このスポーツ自体も世界中で成長を続けています。私たちはコア ユーザーを大切にしながら、新たなプレイヤーも歓迎したいと考えています。そのため、ゲームプレイ機能の改良に常に取り組むとともに、アクセシビリティの向上にも継続的に力を入れています。
「MotoGP 25」では、プレイヤーが体験できるマシンやコース、ゲーム モードにおいて、非常に多彩なコンテンツが用意されているようですね。 このゲームがどのような内容を提供しているのか、簡単にご紹介いただけますか?
Talarico 氏:「MotoGP」シリーズは、常にプレイヤーが本物のライダーになったかのような感覚を味わえることを重視してきました。今年は、レース ウィークの終了後にライダーがどのように過ごしているのかを少し体験できるような要素を取り入れたいと考えました。
従来の Moto3、Moto2、MotoGP クラスのバイクに加え、今年はミニバイク、フラット トラック、モタード バイクも収録しています。これらはクイック モード、オンライン、キャリア モードで使用可能です。なお、MotoE クラスのバイクは、今後のアップデートで追加予定です。
登録選手の多くは、オフの時間もトレーニングを欠かさず、さまざまなタイプのバイクで走り込みを行っていることが知られています。そこで私たちは、プレイヤーが新たなバイクに乗って楽しめる「Race Off」イベントを導入しました。2 つの環境と 4 つのサーキットを用意し、MotoGP 本戦とは異なる、純粋なパフォーマンスよりも楽しさやスリルを重視したレース体験を提供しています。さらに、キャリア モード内の「Race Off」イベントは、ライダーたちのトレーニングに着想を得て、プレイヤーがバイクを最大限に乗りこなせるよう設計されています。
没入感のあるシミュレーション エクスペリエンスを求めるプレイヤーにアピールしつつ、アーケードライクなレースのスリルを楽しみたい人にも親しみやすくするために、「MotoGP 25」はどのように設計されていますか?
Talarico 氏:ゲームプレイの面では、「MotoGP 25」はこれまでどおり、シリーズの核となる部分を忠実に守っています。今年は、電子制御設定やタイヤ マネジメントに関するプレイヤーからの要望に応えるべく、ゲームプレイのシミュレーション コアを改良しました。「Pro Experience」は、長年にわたりプレイヤーに親しまれてきた「MotoGP」ならではのゲームプレイを忠実に体験できるように設計されています。
今回は、これまでレーシング ゲームをあまりプレイしてこなかった MotoGP ファンはもちろん、四輪レースに慣れたプレイヤーにも楽しんでもらえるような、新たなゲーム エクスペリエンスを提供したいと考えました。「Arcade Experience」は、すぐに楽しめることを前提に設計されています。複雑な設定や技術的な知識に煩わされることなく、バイクにまたがってすぐに限界までのレースを楽しめます。バイク レースの醍醐味を気軽に味わいたい方にとっては、最適な選択肢となるはずですし、新しいプレイヤーにもきっと気に入っていただけると確信しています。
「Pro Experience」と「Arcade Experience」の両方に、完全にカスタマイズ可能な設定項目が用意されています。したがって、プレイヤーは自分の好みに合わせたプレイスタイルで、最大限に楽しむことができます。
バイクからサーキット環境に至るまで、Unreal Engine 5 によって、開発チームはこれまで以上にリアルなエクスペリエンスをどのように実現できたのでしょうか?
Talarico 氏:Unreal Engine 5 へのアップグレードにより、魅力的な新しいシナリオを構築し、主要な環境全体を見直す機会を得ることができました。コースにも力を入れ、ゲーム全体のライティングを大幅に改善しています。草木は実際の風景に近づけて刷新し、縁石も調整することで、よりスムーズな走行エクスペリエンスを実現しました。
また、昨年のゲームで導入されたテレビ スタジオ風のメイン セットアップも、「MotoGP 25」ではさらに拡張されています。本作は、プレイヤーがまるでこれからレースを始めるかのような高揚感を味わえると同時に、MotoGP 新シーズンの華やかなプレゼンテーションの舞台裏に立っているかのような感覚を与える、動的に変化するバーチャル プロダクション ステージ内で展開されます。
私たちは、今年の作品を世に送り出せることをとても嬉しく思っています。そして、これからも限界に挑み続けることができるという強い自信を持っています。すでに、近い将来に実現したいアイデアもいくつかあります。
ゲームのオーディオには多くの労力が注がれたと伺っています。 リアルなサウンドスケープをどのようにして実現したのか、そしてその過程で MetaSound がどのような役割を果たしたのか、教えていただけますか?
Talarico 氏:「MotoGP 25」では、新しい高性能なシステムで録音された、まったく新しいエンジン サウンドを採用しています。おっしゃるとおり、これは本当に大変な作業でした。一流の機材で収録されたクリアな音源を扱うことができたことで、私たちの作業も効率的になり、最終的なクオリティも大きく向上しました。さらに、エンジン音だけでなく、ゲーム内のあらゆるサウンドがこれまで以上に臨場感を持って響くよう、全体を丁寧に仕上げました。
当社のオーディオ チームは、業務のあらゆる面で素晴らしい成果を上げてくれました。ゲーム内の音楽の流れから、サーキット上でのゲームプレイに至るまで、すべてが豊かで臨場感にあふれ、そしてご指摘のとおりリアルです。その成果を証明しているのが、実際のライダーが「MotoGP 25」のプレビューをプレイし、「まるで本物と同じ音だ」と言ってくれたことです。これ以上に誇らしいことはありません。
Unreal Engine 5 がこのプロジェクトに適していた理由を教えてください。
Talarico 氏:「MotoGP」ゲームも、実際の MotoGP と同じように、毎年限界に挑み続けることで、シリーズ全体が技術的に進化し続けているのです。
目標を達成し、ゲームとしてトップの地位を維持するためには、Unreal Engine 5 への移行が不可欠であると私たちは確信していました。そして先ほど申し上げたように、Unreal Engine 5 がもたらす可能性には大きな期待を寄せています。今年はその一端にようやく触れられたところであり、今後さらに深く掘り下げて、まだ試せていない多くの要素を実験していけることが楽しみでなりません。
開発を進めるなかで、一般的に Unreal Engine 5 の機能の中で「これはすごい!」とチームが特に感動したものはありましたか?
Talarico 氏:「MotoGP 25」で目にするすべてのものを動かすために、私たちは Unreal Engine のあらゆるツールを徹底的に活用しています。ですので、どれか一つを挙げるのは少し難しいかもしれません。ということで、シンプルに、そしてレースらしい観点からお話しします。「MotoGP 25」では、80 種類のプロトタイプ バイクを再現し、ゲーム内では実在する 22 のサーキットでそれらが走行します。これはつまり、膨大な数のスプライン レベルや理想的な走行ライン、トリガー ボックスの設計に取り組むことを意味します。そして、それらすべてをさまざまなバイク カテゴリ、異なるサーキットで再現し、AI ライダーと人間プレイヤーの両方に対応させる必要があります。当社のゲームプレイ デザイナーたちはトラックの隅々まで熟知しています。しかしさらに重要なのは、彼らは Unreal Engine 5 が提供するツールを駆使して、すべてをスムーズに動作させるノウハウを持っているということです。
非常に多くのコンテンツが用意されている中で、Unreal Engine 5 は、チームのコンテンツ開発ワークフローをどのように効率化してくれたのでしょうか?
Talarico 氏:Milestone には約 300 名のスタッフが在籍しており、複数のプロジェクトが常に同時進行しています。そのため、ワークフローやパイプラインの効率化は欠かせません。社内の誰もが、必要なときにどのプロジェクトにも貢献できる体制が整っており、実際にそうしています。これが可能なのは、Unreal Engine 5 を共通の基盤として活用し、さまざまなゲームのリアリティを構築しているからこそです。
コンテンツ量の面で言えば、私たちは多くの作業を外部に委託しているのが実情です。Unreal Engine は今やゲーム開発の標準的なツールであり、私たちのパートナーも、そのワークフローやスケジュールに沿って作業を進めながら、プレイヤーに最高のコンテンツを届けることに慣れています。
ゲーム内のキャラクターやバイクのカスタマイズ機能について、そしてそれを実現するうえで Unreal Engine のどのようなシステムが役立ったのか、教えていただけますか?
Talarico 氏:モタード バイクとフラット トラック バイクの導入により、「MotoGP 25」では、プレイヤー キャラクターのカスタマイズ アイテムとして、オフロード用の新しいヘルメットとゴーグルのセットが追加されました。もちろん、これらのアイテムは、これまでのレーシング ヘルメットと併せて使用できます。そのため、カスタム キャラクターをより個性的に演出することができます。Unreal Engine 5 のおかげで、ヘルメットやカラーリング、装備の細部に至るまで鮮明に描写されており、テクスチャやマテリアルの質感、そして高度なペイント表現が、現実世界さながらの反応を見せてくれます。
「MotoGP 25」では、シリーズ初となるカスタム表彰台エモートという新たなカスタマイズ要素が導入されています。モーション キャプチャ技術を活用して、表彰台で使えるさまざまなセレブレーションを収録し、プレイヤーの没入感をさらに高めています。当社のアニメーション チームと、Unreal Engine 5 が提供するツールのおかげで、現実の動きをゲームに落とし込むプロセスは非常にスムーズに行うことができました。
チームでは、Epic Developer Community を活用されていますか?もしそうであれば、特に役に立ったと感じた分野があれば教えてください。
Talarico 氏:もちろん活用しています。Epic Developer Community は、開発サイクル中に起こるさまざまな状況に応じて、答えを見つけたり、開発に関する知見を共有したりできる、非常に便利なリソースです。プロジェクトに関する具体的な課題にも使いますが、それ以上に、ゲーム開発中に発生する可能性のある大規模な研究開発タスクにも役立てています。
あらかじめ必要な機能やツールがすべて揃っているゲーム エンジンを選ぶことには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
Talarico 氏:Unreal Engine を使うことで、「ゲームで実現したいこと」にしっかりと集中できます。私たちは長年にわたって、エンジンに関する知識と経験を積み重ねています。そして、あらゆる側面を活かして、可能な限り最高のゲームを届けることを目指しています。
業界をリードする Unreal Engine のようなエンジンを使うことで、必要なこととその進め方をすでに理解している新しい人材を採用しやすくなります。一方で、ベテランのスタッフは、UI や物理といった分野で知識をさらに広げながら、新たな可能性に挑戦しつつ、新人を支援することができます。ゲームに応じていくつかのツールをカスタマイズすることもあります。しかし、Unreal Engine のように高度な基盤から開発をスタートできる体制が、本当に不可欠だと感じています。