画像提供:1C Entertainment

King’s Bounty II 、30 年の時を経て原点回帰を果たす

Brian Crecente
Nikolay Baryshnikov 氏は、1C Entertainment の CEO です。Baryshnikov 氏にはビデオ ゲーム業界で 20 年以上の経験があります。1999 年に 1C グループに入社した当初はインターナショナル マーケティングを担当するマネージャーとして勤務しました。その後、インターナショナル セールスおよびマーケティング担当部長を経て 2009 年にゲーム部門の責任者となりました。Men of WarKing's BountyIL-2 SturmovikRig’n’Roll をはじめとする、多数のゲームの制作、プロダクション、プロモーションに携わってきました。
第 1 作となる King’s Bounty は、1990 年にリリースされたロールプレイング ゲームの名作でした。Jon Van Caneghem 氏によって設計され、New World Computing によって公開された古いコンピュータ ゲームで、その後のターン制戦術 RPG の基礎となる設計上の形成要素を多数生み出しました。Van Caneghem 氏は、この King’s Bounty で使用したフレームワークを、 Heroes of Might and Magic シリーズでも活用しました。

しかしながら、約 20 年後に 2 作目の King’s Bounty のゲームがリリースされるまで、本作直系の続編はリリースされませんでした。代わりにリリースされた King’s Bounty: The Legend は、King’s Bounty の精神的続編として独自のタイトル シリーズで、2007 ~ 2014 年にかけてヒットしました。

そして今年になってようやく、今やクラシックとなった 1 作目の正式な続編がリリースされることになりました。King’s Bounty II のデベロッパーである 1C Entertainment は、影響力のあった第 1 作の設計を単に引き継ぐのではなく、ゲームのアプローチを拡張することで、より現代的な観点や冒険の舞台としてオープン ワールドのランドスケープを盛り込んでいます。

1C Entertainment の CEO である Nikolay Baryshnikov 氏に、30 年前の作品への回帰を後押しした設計上の決定、1C Entertainment が実現を目指していること、さらにこの壮大な戦術ロール プレイング ゲームを制作する際に着想を得た要素などについて伺いました。
 

1C Entertainment はビデオ ゲーム制作に長年にわたる豊富な実績があり、リリースした作品は 100 を超えていますね。King’s Bounty II の制作に取り組んだのはどのようなチームなのでしょうか?また、メンバーのバックグラウンドについて教えていただけますか?

Nikolay Baryshnikov 氏King's Bounty II を担当したのは、このプロジェクトのために新たに結成したチームです。初期からのメンバーは 3 人だけ (私、プロデューサー、プロジェクトのメイン ナレーター) ですが、中核となるメンバーは人数が増えていき 80 人になりました。メンバーは誰もが優秀なスペシャリストで、このようなチームを組織することができ、またこのチームで今後さらにすばらしいゲームを作れることを大変嬉しく思っています。

第 1 作の King’s Bounty が MS-DOS、Commodore、Amiga でリリースされてから 30 年が経ちましたが、続編の制作に至った理由をお聞かせください。

Baryshnikov 氏:1 作目の King’s Bounty は、1 ジャンルを打ち立てた独自のゲームであると考えています。Heroes of Might and Magic などのターン制戦術ゲームの元になった作品です。King’s Bounty は、現代のゲーム業界を支える柱の 1 つと言えるものであり、この最初のゲームがなければ、現在私たちを楽しませてくれる数々のゲームが存在していなかったかもしれません。続編は常に作りたいと思っていたので、このゲームは私たちにとってシリーズ全体の新たな一歩となるでしょう。

2008 年にリリースされ、長期にわたるタイトル シリーズとなった精神的続編 King’s Bounty: The Legend の続編ではなく、King’s Bounty 直系の続編を制作することになった理由をお聞かせください。

Baryshnikov 氏:良い質問ですね。今後のゲームについて社内で集まって検討した際に、現在のプレイヤーのリクエストを反映する、より成熟した製品を制作したいということになりました。さらに重要な点として、1990 年にクリエイターが制作した最初のシリーズの原点に戻りたいと考えたのです。King’s Bounty: The Legend や、この作品から数々の続編が生み出されたことは本当に嬉しいことです。私自身、最新作 Dark Side のスタンドアロン インストールなどにも携わりました。しかし、Katauri Interactive によって制作されたゲームは、先ほど質問で指摘いただいたように King’s Bounty 直系の続編ではありませんでした。精神的続編ではなく、King’s Bounty の完全な続編を作ろうという話になり、1 作目にはなかったユーモアなどの要素を盛り込みました。

King's Bounty のクリエイターが制作した Heroes of Might and Magic シリーズを思い浮かべていただくと、実際、ユーモアは一切含まれていません。そこで、クリエイターがこのシリーズに盛り込んだアイデアへと戻る必要があると考え、1 作目への回帰を決断したのです。King's Bounty II では、約 1 年もの間プロトタイプの作成を続け、やっとのことで最終バージョンが完成しました。最初からゲームに盛り込まれていた要素もあれば、バランスを考慮して取り除かなければならない要素もありました。
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前作の King’s Bounty のゲームから、この続編へと引き継いだ要素はありますか?

Baryshnikov 氏:King’s Bounty II には、これまでのゲームとストーリー上のつながりはありませんが、このシリーズと他のゲームに関連するさまざまな内容や隠れた要素が含まれています。プレイヤーが注意深くノストリア王国を探索すれば、そういった内容や要素のほとんどを、それほど困難なく見つけることができるでしょう。たとえば、1 作目のマキシマス王の生涯や大戦に関するストーリーをゲーム内で調べることができます。ゲームプレイに関しては、より多くのつながりがあります。たとえば、戦いは戦術的なターン制のままですし、3 人の主人公には、それぞれにストーリー、背景、独自のスキルなどがあります。

このゲームで追求しているのは、どのようなタイプのファンタジーでしょうか?

Baryshnikov 氏:古典的なハイ ファンタジーです。King’s Bounty II は、壮大なファンタジー作品である『ロード・オブ・ザ・リング』や『ネバーエンディング・ストーリー』、そして同じジャンルのその他の製品から着想を得ています。明るく、中世を彷彿とさせる一方で、より高度で、洗練されたものとなり、以前のゲームよりもシリアスな雰囲気を醸し出す作品となっています。『ロード・オブ・ザ・リング』をはじめとするファンタジー作品では、暗闇や影、特殊なライティング、およびいつどのようなことでも起こり得る美しく独自の環境を壮大なファンタジーに躊躇なく組み合わせています。当初は、もっとおとぎ話のようなゲームを作ろうと考えていましたが、それでは展開したいメイン ストーリーにうまく合わなかったのです。そこで、その代わりに、ゲーマーの皆さんにもっと壮大な作品を見ていただきたいと思いました。別のより複雑なトピックを盛り込みながら、12 ~ 16 歳以上のレーティングの範囲に収まる作品を目指し、暗い内容や暴力は排除しました。
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1 作目およびそれ以降のゲームで採用されていたサイド ビューおよびアイソメトリック ビューから移行し、戦闘を以外はすべてサードパーソンの視点にした理由を教えてください。

Baryshnikov 氏:実を言うと、 King’s Bounty II のプロトタイプ作成を始めた際、最初のバージョンは完全にアイソメトリック ビューとサイド ビューで、King's Bounty: The Legend と同様でした。その後、この古典的な形式に何か斬新な要素を取り入れる必要があると認識しました。この視点を活用することで、プレイヤーは主人公に対して親近感を深め、2 つのジャンル (古典的なサードパーソン RPG とターン制戦術) を融合させることができます。これによってその他大勢のキャラクターとは一線を画し、さまざまなオーディエンスにアピールしつつも、当初持っていた DNA を忠実に継承したいと考えたのです。

プレイヤーはゲームの冒頭でキャラクターを選択できるようになりましたが、それはどのように決まったのでしょうか?

Baryshnikov 氏:ごく初期の時点で、ゲームにはそれぞれのバックグラウンドや世界に対する考えを持った主人公を何人か設定することに決めていました。当初、主人公は 6 人でしたが、それが 4 人になり、最終的には 3 人になりました。アイヴァー (戦士)、カタリナ (魔導士)、エリザ (パラディン) です。これによって、主人公の人間性を表現する機会を得ることができました。それぞれが最初のスキルや特性を持っています。たとえば、アイヴァーは力と秩序を重視し、カタリナは策略と無秩序を重視し、エリザは、秩序と策略を重視します。

しかし、プレイヤーはキャラクターをどのように育成させるかを選択することもできます。あらかじめ決められた道筋に従わなければならないわけではありません。ゲーム内の 4 つの理想が、相互に依存することはありません。たとえば、特定の状況では、アイヴァーが保護すると誓った貧しい農民を見捨て、確実に死に追いやる選択をすることがあるかもしれません。それは実世界も同じです。選択した主人公の親和性によっていくつかの制限があります。たとえば、アンデッド モンスターは秩序の命令の下ではペナルティを課されます。また、主人公はゲーム内での選択が不適切であると思えば、プレイヤーの意図にかかわらず、それを完全に拒否してしまうことがあります。一部の装備にも、特定の親和性が必要です。
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1 作目の King’s Bounty のリリース後、ゲーム開発やゲーム ジャンルは 30 年あまりの間に大きく変化しました。このゲームに大きく影響を受けた Might and Magic がリリースされたこともその 1 つでしょう。この続編において、1 作目のコンセプトをそのまま継承する部分と、新しく試すゲームプレイ要素をどのように決定されましたか?

Baryshnikov 氏:King's Bounty II での最大の目標は、ロシア国内でこれまでにない大規模な AA プロジェクトを制作する、ということでした。簡単ではありませんが、やり遂げなければなりませんでした。新しい観点からこのシリーズを捉えて進化させ、ターン制ゲームに対する私たちのビジョンを共有できればと思ったのです。それに加えて、ストーリーの内容をより充実させて、難しい戦闘を組み込みました。自分の軍隊を運営したり、市民のために鶏を見つけるなど、楽しさを追求しています。プレイヤーには飽きずに楽しんでもらい、複雑なワールドで繰り広げられるおとぎ話の中にいるような気持ちになってほしいと思っています。King's Bounty II が、飽きずにプレイし続けていただけるような作品になっていれば幸いです。環境間を移動するための新たな手法も、新鮮なエクスペリエンスを提供する要素ですが、プレイヤーにはこの独特のゲームプレイを最も楽しんでいただきたと考えています。
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ゲームにオープンワールドの要素を加えることになったのは、どのような理由からですか?

Baryshnikov 氏:それに関してはシンプルです。次の一歩を踏み出し、シリーズに新しい要素が加わったことを示す必要があったからです。小規模なワールドも悪くありませんが、先ほど言われたように、1 作目の King’s Bounty のリリース後、ゲーム開発やゲーム ジャンルは 30 年の間に大きく変化しました。ユーザーはさらなる自由を求めているため、私たちはそれを実現しようと取り組んでいます。

ただし、その一方でこのゲームのワールドは、 The Elder Scrolls V: Skyrim などのゲームのように、完全なオープン ワールドではありません。King’s Bounty II のワールドは、 FableDragon Age: OriginsKingdoms of Amalur: Reckoning などのゲームに近いものとなっています。プレイヤーは謎と秘密に満ちた広大なロケーションを探索できますが、プロットや戦闘の方にわずかながらより重点を置いています。

そのようにさまざまな要素を盛り込み、活発な環境を実現するうえで、Unreal Engine はどのように役立ちましたか?

Baryshnikov 氏:提供開始当初から、Unreal Engine は、すべてのデベロッパー (アマチュアにもプロにも) 極めて利用しやすいものでした。また、ロシアでは、ほとんどのデベロッパーがこのエンジンを利用し、それぞれがすばらしいワールドを作成しています。Unreal Engine には、1C Entertainment にとって非常に役立つ機能がたくさん搭載されています。シーケンサー は、 King's Bounty II でシネマティックなエクスペリエンスを実現するうえで本当に役立ちました。また、 ブループリント はなくてはならないものです。ブループリントによって、デザイン チームはレベル デザイン、武器およびアーマーのバリエーション、各種ゲームプレイ システムのプロトタイプを迅速に作成することができました。このような実績が作れたことを本当に誇りに思います。Unreal Engine は迅速なプロトタイプ作成にぴったりです。さらに、デベロッパーなら誰もが Unreal Engine が「一番習熟しやすい」と言うのではないでしょうか。すばらしい結果が実現し、ワークフローに最適なツールも用意されています。

ゲームに 3D の戦場を作る際は、どのように作業を進めたのでしょうか?また、外観を作るうえで克服しなければならない課題はありましたか?

Baryshnikov 氏:開発を開始した当初は、戦術面を充実させると同時に、プレイヤーにもっと自由度を提供したいと考えていました。そのため、戦闘アリーナは完全な 3D にし、戦術的な機会 (視線、高さによるダメージ ボーナスなど) を増やすことをチームで決定しました。たとえば、高い壁があって、敵の戦士を倒そうとするアーチャーの視線を遮っているとしましょう。そのような場合でも、軍隊やその他のオブジェクトはアリーナ内で通常の表示が行われ、カメラが任意の方向に移動できる必要がありました。

課題はありましたが、テストに時間をかけることでうまく克服しました。もちろん、情報収集については実際のゲームに勝るものはないので、リリースされた今は受信データ分析をしてチューニングを検証しています。これは継続的なプロセスであり、当たり前のことですが、私たちが行う微調整は、ユーザーの希望とデータに基づいて行われます。
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冒険、戦術的戦闘、主人公の管理という形で、ゲームを分割するようにゲームのバランスを調整された理由を教えてください。開発の初期段階で、本作に占める戦闘は約 30% のみであるとチームは言及していました。

Baryshnikov 氏:まず最初に申し上げますが、これらの数値は過去のものです。このことについて私が初めて言及したのは 2 年前のプロジェクトの発表があったときですが、その後変更されていきました。今では、さまざまなアリーナやユニットによる、多くの戦闘があります。ただし、あるシンプルな理由から、数量の点では以前のゲームよりも小規模になりました。その理由とはすなわち、量より質を重視しなければならない、ということです。

たとえば、300 回の戦闘を行ってみて、ある時点でプレイヤーの主な戦略は変わらないと思い始めたとします。そうなると、お気に入りのユニット、魔法、スキルなどを身に付けては、どんどん戦闘を行うことを繰り返します。もちろん、なかにはアクションを繰り返すことを好むプレイヤーもいるでしょう。ですが、たくさんのファンの皆さんから、戦闘をエンドレスに行うのには疲れたし、ストーリーをもっと充実させてほしい、といったフィードバックをいただいていました。そこで、長所と短所のバランスを調整し、ストーリーを重視しつつ戦闘の数が十分なゲームを作ることに決定したのです。

King’s Bounty II を Nintendo Switch でリリースするにあたっては、どのような課題がありましたか?

Baryshnikov 氏:簡単にいうと、多数の課題がありました。Nintendo Switch は大好きですが、このハードウェアは他のプラットフォームと異なっています。リリースの対象となるプラットフォームの 1 つに Nintendo Switch を加えることができるのは非常に嬉しいことでしたが、4 つのプラットフォームで同時にゲームを実行できるようにするのは簡単ではないので、ゲームを移植して最適化するのは非常に困難でした。これは、できる、できないということではなく、時間の問題でした。そこで、これほど大規模なワールドをこの携帯型のコンソールで実行できるように、多大な労力をかけてチームで作業し、テクスチャや特定のエフェクトなどを調整しました。最終版のゲームはうまく仕上がり、他のプラットフォームと同じコンテンツになったので、ユーザーの皆さんに楽しんでいただければと思っています。
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次世代のハードウェアや Unreal Engine の長期的な可能性について、最も期待することはどのようなことでしょうか?

Baryshnikov 氏:それでは遠慮なく、私の期待を全部言わせていただきます。「Unreal Engine 5 初公開」で公開された数々の可能性や、ライブアクション ボリューム ステージに関するイノベーション、そして MetaHuman Creator はどれもすべて私たちにとって驚くほど優れたものでした。これらを精査して、1C Entertainment の次のタイトルに利用できるかどうかを確かめたいと思っています。ただ、私たちの場合はまだ少し先の話になります。当スタジオでは、しばらくの間は King’s Bounty II に全力で取り組む予定です。

1C Entertainment や King’s Bounty II の詳細については、どこで確認できますか?

Baryshnikov 氏:King’s Bounty II の詳細については、 公式 Web サイト でご確認いただけます。また、 TwitterFacebookVKInstagram をぜひフォローしてください。また当スタジオの 公式 Web サイト にも情報を掲載しています。

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