UE5-powered video game ‘Clair Obscur: Expedition 33’.

インタビュー

2025年3月27日

「Clair Obscur: Expedition 33」開発秘話

Clair Obscur: Expedition 33

Lumen

MetaHuman

MetaSound

Nanite

Sandfall Interactive

ゲーム

ブループリント

Sandfall Interactive は、2020年にフランスで設立されました。PC およびコンソール向けの高品質なゲームを手がける独立系ゲーム スタジオです。物語性の強い体験を重視し、フランス文化に着想を得た美しいファンタジー世界で、魅力的なキャラクターたちによる印象的なストーリーを届けることを目指しています。チームは Unreal Engine 5 をはじめとする最新鋭の技術を駆使し、技術的な限界への挑戦にも力を注いでいます。
フランスに拠点を置く Sandfall Interactive の才能ある少人数の開発チームは、注目のタイトル「Clair Obscur: Expedition 33」のリリースを目前に控えています。開発はこの 5 年間にわたって続けられており、「人気ジャンルであるターン制 RPG において革新を起こす」という、明確で独自のビジョンのもと、記憶に残る唯一無二の体験を届けることに全力を注いできました。 

目標を実現するために、彼らが選んだのは Unreal Engine でした。チームの規模を問わず力を発揮できる、豊富な機能と実用的なツール群が決め手となりました。先日、私たちは Sandfall Interactive の共同創設者でありリード プログラマーでもある Tom Guillermin 氏にインタビューを行い、ブループリント、MetaHuman、MetaSounds、World Partition、Lumen、Nanite といった UE5 の機能がプロジェクトにどのような影響を与えたのか、詳しく話を聞きました。
お時間をいただきありがとうございます。「Clair Obscur: Expedition 33」は本当に魅力的ですね。ゲームのストーリーと、核となるゲームプレイ体験について詳しく教えていただけますか?
 
Sandfall Interactive 共同創設者兼リード プログラマー Tom Guillermin 氏:インタビューにお招きいただき、ありがとうございます。本作の物語は、フランスのベル エポックに着想を得たファンタジー世界を舞台に展開します。この世界では、年に一度、女画家「ペイントレス」が目を覚まし、モノリスに呪われた数字を描きます。その数字と同じ年齢の人々は、瞬く間に煙となって消えてしまうのです。彼女が初めて現れたのは 67 年前。それ以来、描かれる数字は年々減っていき、物語の始まりでは「33」が刻まれます。
 
プレイヤーは、Gustave 率いる探検隊の一員となり、ペイントレスが引き起こす死の連鎖を断ち切るべく、壮大な冒険へと旅立ちます。
 
本作のゲームプレイは、反応型のターン制 RPG です。プレイヤーは戦闘を通じて攻撃スキルや魔法を習得しつつ、敵の攻撃をリアルタイムで回避、受け流し、反撃することが求められます。こうした仕組みにより、あらゆる戦闘がよりダイナミックで没入感のあるものとなり、従来のジャンルを一歩進化させた体験を味わえます。
 

「Clair Obscur: Expedition 33」の世界観は、フランスの歴史の中でも特にベル エポックから強く影響を受けているそうですね。その時代を物語のテーマに選んだ理由や、興味を持たれたきっかけについて教えていただけますか?
 
Guillermin 氏:この時代は、特に私たちが作っているようなターン制 RPG ではあまり描かれることのないテーマです。フランスにとっては、国の発展や文化の面で非常に重要な歴史の転換期でもありました。だからこそ私たちは、プレイヤーの皆さんにその時代を、これまでにない形でリアルに体感してほしいと考えたのです。 

このゲームが影響を受けた、ビデオ ゲームや映画、文学などの作品があれば、ぜひ教えていただけますか?
 
Guillermin 氏:私たちが創り上げた世界には、さまざまなインスピレーションが反映されています。たとえば、ビジュアル面においてはアール デコ運動に特に大きな影響を受けています。こうしたスタイルは、「Dishonored」や「BioShock」といった他のゲームにも見られます。しかし、「Expedition 33」ではアール デコとファンタジーを融合させることで、少し違ったテイストに仕上がっていると思います。
 
さらに、ベル エポック時代の華やかな建築や芸術が、世界観にいっそうの生命力を吹き込み、他にはない世界観を生み出す、大きな要素となっています。
 
多くのファンは、「ペルソナ」や「ファイナル ファンタジー」、「Lost Odyssey」といった JRPG との共通点を感じるかもしれません。実際、それらの作品のいくつかは、「Sekiro」のようなアクション ゲームと同様に、私たちの戦闘システムに大きな影響を与えています。従来のターン制バトルに、タイミング重視のカウンターや受け流しといった反応的な要素を組み合わせるという点で、参考にした部分が多くあります。
 
ストーリー面では、フランスの小説「La Horde du Contrevent」からも影響を受けています。この作品は、過酷な世界を旅する探検家たちを描いたファンタジー小説で、私たちのゲームもそこから着想を得て、未知の世界へと踏み出す者たちの物語を形づくっていきました。
 
こうした数々の影響が、私たちの初期ビジョンを形づくる土台となり、プレイヤーの記憶に強く残る、唯一無二のゲーム体験を実現するための礎となりました。
A chic character in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
「Clair Obscur」とはどういう意味なのでしょうか?また、この言葉がゲームとどのように関係しているのか、教えていただけますか?
 
Guillermin 氏:「Clair Obscur」とは、17 世紀から 18 世紀にかけてフランスで人気を博した、芸術と文化の潮流を指します。本作の芸術的な方向性に強い影響を与えているだけでなく、作品全体の世界観そのものにも深く結びついています。
 
タイトルには物語の核心に関わる意味が込められており、ファンの皆さん自身にその意味を発見してもらえることを楽しみにしています。
 

本作は全体的に成熟したダーク ファンタジーの雰囲気が感じられますが、キャラクター同士のやり取りや環境の探索など、軽やかな場面も描かれています。 こうしたトーンのバランスを取るのは、やはり難しかったのでしょうか?
 
Guillermin 氏:私たちがこのゲームを作るうえでインスピレーションを受けたのは、自分たちが子どもの頃に夢中になった JRPG です。シリアスなストーリーの中に、キャラクターたちの明るい一面や、ほっとできる場所が共存している。そのような要素こそ、当時の JRPG で特に好きだった部分です。
 
感情的に重いストーリーを描く場合、その緊張感を一時的に和らげるために、明るく軽やかな瞬間を挟むことがとても大切です。キャラクターやプレイヤーが、物語に戻る前に一息つけるような、ちょっとした休憩の時間になります。このバランスを取るのは決して簡単ではありませんが、Monoco や Esquie のような個性的なキャラクターによって、それをうまく実現できたと思っています。  
彼らは人間ではなく、大陸に暮らす存在で、人間のキャラクターたちとはまったく異なる人生経験を持っています。だからこそ、物語にユニークな視点や、どこか風変わりなユーモアを加えてくれます。きっとファンの皆さんも、彼らに出会い、彼らの性格やちょっとした癖を知っていくことを楽しみにしてくれていると思います。
 

プロジェクトを立ち上げた当初、どのゲーム エンジンを使うか検討されたと思います。そのときの判断プロセスはどのようなものでしたか?そして、最終的に Unreal Engine を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?
 
Guillermin 氏:最初のプロジェクトでどのゲーム エンジンを使うかを決める際に大事なのは、「そのエンジンのワークフローが、自分たちが作りたいコンテンツとどれだけフィットするか」という点です。
 
Sandfall Interactive の成り立ち自体が、まさにその好例です。「Expedition 33」のクリエイティブ ディレクターである Guillaume Broche は、「ある特定の物語を形にしたい」という強い思いを抱えており、当初は自宅の寝室でいくつかのゲーム エンジンを試していました。彼が Unreal に惹かれたのは、シーケンサーやアニメーション システム、当時のカスケードなどのツールを使えば、意味のあるコンテンツを素早く作り出すことができたからです。さらに、Unreal に深く統合されているブループリント ビジュアル スクリプティングを活用することで、プログラマー以外の人間でも簡単にロジックを組み込めるという点も、大きな魅力でした。
 
当時は、Unreal のエコシステム全体も大きな支えとなっていました。多くのプラグインやアセット、さらにテンプレート プロジェクトも利用可能で、さまざまなアイデアを試すための優れた出発点となっていました。
 
その後すぐにプロジェクトの開発を始めましたが、Unreal を選んだことが本当に大きな助けになりました。当時、チームは私たち 2 人だけでした。Guillaume にはプログラミングの経験がなかったものの、私たちはブループリントを使いながら、ゲームのコア ロジックを実装し、同じ機能にもスムーズに協力して取り組むことができました。
 
その後、François がチームに加わり、私たちは Sandfall Interactive を設立しました。そこからチームも少しずつ成長していきました。すると今度は、Unreal エコシステムの「周辺」にあるさまざまな要素が、より重要になってきました。たとえば、私たちのチームが今も毎日使っている Unreal Game Sync のようなツールや、エンジン本体、そして Epic がそれを中心に開発した各種ツールのソース コードにアクセスできる点は、大きなメリットでした。
A UI menu in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
「Clair Obscur: Expedition 33」の体験の中心には、リアルタイム メカニクスを取り入れたユニークなターン制バトルがあります。 こうした戦闘システムを開発するうえで、どのような課題に直面しましたか?また、ゲームプレイとして「これだ!」と思える手応えを、どのようにして確かめていったのでしょうか?
 
Guillermin 氏:プロジェクトの初期段階で、Guillaume と私は、反応性の高いターン制バトルのプロトタイプをいくつか試作しました。攻撃には、呪文発動時のクイック タイム イベントやフリー エイム メカニクスといったリアルタイム操作を取り入れ、防御側では、回避や受け流しによるシステムを組み合わせています。まだ基本的なプロトタイプの段階でも、これはターン制に新しい風を吹き込めるものだと感じていました。とくに回避や受け流しのタイミングといったリアルタイム要素のバランス調整には、かなり試行錯誤を重ねました。その結果、今ではベストな状態に仕上がっていると思います (受け流しを連続で成功させたあとに反撃を決められた瞬間が、何より気持ちの良いものになっていると思います)。
 
かなり初期の頃、バトル システムを紹介するために特別に作ったデモを使って、チーム全員で初めてプレイテストを行ったときのことを、今でもよく覚えています。メンバーが順番にコントローラーを手に取り、ボスを倒そうと挑戦しては、失敗すると次の人に渡す、そのようなやり取りを繰り返していました。あのとき、私たちははっきりと実感しました。すべてが噛み合い始めていて、まさに「このゲームを象徴するもの」が形になりつつあると。
 
私たちが最終的にたどり着いたスタイルでは、リアルタイム操作が得意なプレイヤーは、より大きなリスクを取って積極的に攻めることができます。一方で、そうでないプレイヤーも、特定のアイテムや戦略を使ってしっかり対抗できるようになっています。
Combat in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
戦闘中の演出では、敵とのやり取りに映像的な多様性を加える「映画のようなカメラワーク」が使われていますよね。この仕組みは、どのように開発、実装されていったのでしょうか?
 
Guillermin 氏:戦闘中のアニメーションやカメラワーク、VFX には、とにかく高い完成度を追求したいという強い想いがありました。たとえプレイヤーがメニューを開いて操作しているときでも、画面上では常に何かしらの動きがあり、世界が生きていると感じられるようにしています。
 
これらの要素をオーサリングする際には、最大限の自由度を確保するために Unreal のシーケンサーを活用しました。すべてのスキルを小さなシネマティックとして扱い、その中でバトル アクタを動的にバインドすることで、チームは印象的なショットを自由に作り込めるようになったのです。
 
ターン制バトルのゲームを作っているため、戦闘エリアは基本的にこちらで制御された環境になります。ただし、私たちのシステムでは、レベル デザイナーが敵の配置などをケースバイケースで柔軟に調整できるようになっています。その中で特に苦労したのが、レベル シーケンスに動的な動きを組み込むことでした。たとえば、敵がどの位置からでもチームのキャラクターに向かってジャンプできるようにする、といった演出です。このような仕組みを実現するために、アクタの一部プロパティをシーケンサーに公開し、専用のトラック上でキーフレームを使って制御しています。それにより、ゲームプレイの動きがどのように展開するかを、アート的な観点から緻密に調整できるようになっています。
Spell casting in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
発売前の段階で見られるゲームプレイの奥深さやクオリティの高さからは、これが Sandfall Interactive のデビュー作だとは思えないほどです。現在の開発チームの規模はどれくらいでしょうか?また、Unreal Engine は、このゲームで目指したビジョンの実現にどう貢献してくれましたか?
 
Guillermin 氏:コア チームの人数は 30 人未満で、主にモンペリエのオフィス (約 25 人) と、パリにある小規模な拠点 (5 人) に分かれて活動しています。
 
ゲームプレイ機能の充実ぶりやコンテンツのボリュームを考えると、私たちのチームはかなり小規模だと言えるでしょう。それでも、チームには驚くほど才能あふれるメンバーがそろっています。多くのメンバーにとって本作が初めての本格的な制作ですが、Unreal Engine のおかげで、数年前には私たちのような規模のチームでは到底実現できなかったようなビジョンを形にすることができました。
 
さらに幸運だったのは、私たちの開発スケジュールが、Unreal Engine 5 のリリースとちょうど重なったことです。UE5 は、数々の革新的なレンダリング機能を備えていて、私たちにとってまさに「ゲーム チェンジャー」と言える存在でした。
 
先ほどブループリントについても触れましたが、ゲームプレイ開発の面でも、ブループリントはこのプロジェクトの鍵となりました。C++ を全員が扱えるわけではない小規模なチームであっても、ブループリントのおかげで、スピーディに多くの機能やコンテンツを形にすることができました。 

私が唯一のプログラマーだった時期は、数年間にわたりました。チームのプログラマーが 4 人に増えるまでは、ずっとひとりで担当していました。その頃は、「できる限りブループリント ビジュアル スクリプティングを活用する」というのが私たちの方針でした。ブループリントを使えば、プログラマー以外のメンバーでもゲーム ロジックを理解し、自分の手で試行錯誤したり、既存の機能に改良を加えたりすることができる。そのような自由度の高さが、開発のスピードにもアイデアの広がりにもつながっていたと思います。 

私たちのような小規模なチームにとって、「コードが書けないから関われない」という壁をなくし、チーム全員がプロジェクトの大部分にアクセスできる環境を作ることは、とても大切なことでした。もちろん、制作やレビューのプロセスではそれなりの苦労もありました。しかし、そうした取り組みの積み重ねが、今のゲームプレイの深みにつながっていると実感しています。
 

「Clair Obscur: Expedition 33」は、目を奪われるような美しさと、心に残る幻想的な世界観が印象的です。このアート スタイルは、開発初期から明確に定まっていたのでしょうか?それとも、制作を進める中で徐々に進化していったのでしょうか?
 
Guillermin 氏:アート ディレクターの Nicholas Maxson-Francombe が、Guillaume と長い時間をかけて協力しながら、アート スタイルの方向性をすり合わせていき、やがて今のかたちへと進化させていきました。本作の物語はフランスのファンタジー世界を舞台にしているので、私たちにとって特別な意味を持つ、他にはないビジュアルをデザインできることがとても嬉しかったです。
 
Nicholas がよく「自分がカッコいいと思うものを描くのが、自分のデザイン プロセスだ」と言っていたのを覚えています。彼は Guillaume とともに、いくつかのコアとなるアイデアから出発し、そこを起点にスタイルを磨き上げていきました。そして、ふたりならではの独自のやり方でアート スタイルを作り上げてきたことが、今のビジュアル表現につながっているのだと思います。
A character in action in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
「Clair Obscur: Expedition 33」に登場するキャラクターたちは、とても魅力的で印象的ですね。 彼らをよりリアルに、説得力のある存在として描くために、UE の特定の機能やツールを活用された部分はありますか?
 
Guillermin 氏:Unreal Engine 5 がリリースされてすぐに、私たちはキャラクター制作のパイプライン全体を MetaHuman に移行しました。シネマティック シーンでは、MetaHuman Animator を使って処理されたフェイシャル モーション キャプチャを含む、パフォーマンス全体をモーション キャプチャとして収録しています。また、アニメーション ブループリントも活用して、たとえば目の細かな動きを加えたり、戦闘中に仲間が攻撃されたときに自然と視線を向けたりするなど、キャラクターがより「生きている」と感じられるような繊細な演出をたくさん加えています。
 
リード キャラクター アーティストの Alan と、VFX アーティストの Léo は、キャラクターのマスター マテリアルに、汚れや血、汗、涙などの状態を動的にコントロールできるシステムを組み込みました。これによって、物語の重要な場面が、プレイヤーにとってより印象的で強いインパクトを持つようになりました。キャラクターたちは未知の領域へと踏み込んでいくため、「ある時点では顔や衣服に泥がついているはずだ」と考えました。また、戦闘中に体力が大きく削られたときには、血の表現を使うことで、その瞬間の緊迫感を視覚的に伝えられるようにしています。
 

プレイヤーがワールド マップを自由に探索できるという点が、多くの人にとって大きな魅力となっています。この探索要素を作り上げるうえで、技術的または創造的な面で、特に苦労されたことはありますか?
 
Guillermin 氏:ワールド マップ自体が、いわば小さなオープン ワールドになっているため、このタイプのレベルを作るには、Unreal Engine が提供している多くのツールを駆使する必要がありました。中でも World Partition の活用は欠かせませんでした。グリッド サイズや読み込み範囲の調整は、最初の重要なステップとなりました。さらにテクニカル アーティストの Alexandre が、メモリ使用を抑えつつ、遠景までしっかり描画できるように、このレベル専用の HLOD 生成を設定してくれました。特にコンテンツ量の多いレベルでは、ローエンドのハードウェアやコンソールで快適に動作させるために、こうした工夫がとても重要です。
 
このレベルでは、プレイヤーは Esquie (岩が大好きな、乗ることもできるフレンドリーな風船の生き物) と一緒に移動することができます。そして特に、Esquie に乗ってワールド マップを自由に飛び回り、好きな場所に着陸できるという要素があったことで、ナビゲーションに関して新たな課題がいくつも生まれました。そこで私たちは、Esquie のサイズに合わせて特別に調整されたセカンダリ NavMesh を用意し、さらにカスタマイズ可能なコリジョン形状を生成する専用ツールを開発しました。これにより、空中から地上へのスムーズかつ一貫した遷移を実現することができました。
A stunning landscape in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
感情に訴えかけるサウンドトラックや、戦闘中の迫力あるサウンド デザインも、このゲームの大きな魅力のひとつですね。 こうした印象的なオーディオ体験の開発や実装にあたって、MetaSounds はどのような役割を果たしたのでしょうか?
 
Guillermin 氏:「Expedition 33」のサウンドは、すべて Unreal Engine のオーディオ パイプライン上で処理されています。オーディオ チームは、MetaSounds、Submix アーキテクチャ、オーディオ モジュレーションなど、利用可能なすべてのツールを積極的に活用し、それぞれが持つ新しい表現の可能性を、しっかりと取り入れていきました。さらに、新たなオーディオ機能がリリースされたタイミングで、すぐにエンジンをアップデートするよう強く提案してくれたほど、彼らは常に最新技術に前向きでした。
 
もっともわかりやすい例のひとつが、インタラクティブ ミュージック システムです。本作では、ほぼ常に音楽が流れており、このシステムがオーディオ体験の土台を支えています。この仕組みは、ゲームプレイ プログラマーの Florian が構築した、ブループリント駆動のミュージック マネージャーによって実現されています。探索、戦闘、シネマティック、メニュー、会話といった各ゲームプレイの状況ごとに、それぞれ専用の音楽コンテキストを持たせて管理しています。この各コンテキストは、いわば「1 度に 1 曲だけを再生できるプレイリストのスロット」のようなイメージです。別の状況 (つまり、別のプレイリストのスロット) に切り替える必要がある場合には、現在のトラックと新しいトラックのあいだのトランジションが自然なものとなるようにしています。
 
ここで活躍するのが MetaSounds です。各トラックはプリセットをもとに構築されており、ミュージック マネージャーから送られてくるトリガーによって再生が制御されます。  作成したプリセットの数は限られていますが、すべて同じアーキテクチャ上で構成されています。したがって、膨大な数のトラックに対しても、まとめて修正やアップデートを適用することができました。そして、このシステムの核となるのが「プレイリスト」です。プレイリストでは、トラック内のセグメントを直線的に再生したり、ランダムに切り替えたり、ループや非ループを切り替えたりと、柔軟な再生方法を設定できます。これらの仕組みが、インタラクティブな音楽体験を作り出すための基盤となっています。
 
各プレイリストには 2 つの再生デッキが含まれており、たとえばイントロとアウトロを重ねることで、トラック同士を滑らかにつなぐことができます。これらのプレイリストは、プリセットの中でブロックのように組み合わせることができるため、たとえばイントロのあとにランダムな 3 セグメントを続けるなど、より複雑で動きのある構成も自由に作ることができます。
 
あるプレイリストから別のプレイリストへ切り替える際の移行は、各セクションの終了タイミングで自動的に行うこともできますし、次の「パルス (楽曲の拍にあたるタイミング)」でトランジションが発生するように制御することも可能です。この「パルス」は、Wave ファイルに埋め込まれたマーカーを元に算出され、トラックごとにカスタムのパルス グリッドを設定できます。特に、作曲家がトラック内でリズム シグネチャを頻繁に変更するようなケース (たとえば Lorien のような曲) では、この仕組みが非常に役立ちます。
 
さらに Unreal では、マルチチャンネルのオーディオ ファイルを扱えるため、ひとつの音楽セグメントにつき、最大 4 種類の異なるミックスを同時に走らせることができます。それらのミックスはリアルタイムで完全に同期されていて、シーンに応じてスムーズに切り替えることができます。
Characters converse in ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
開発を進めるなかで、Unreal Engine 5 の機能の中で「これはすごい!」とチームが特に感動したものはありましたか?
 
Guillermin 氏:正直、ほとんどすべてですね。中でも、Lumen と Nanite という新しいレンダリング機能は、レベルやアセットの制作方法に大きな変化をもたらし、結果として、よりクオリティの高いものを効率的に作れるようになりました。 

中でも Lumen は、私たちにとってまさに「ゲーム チェンジャー」でした。新しいアイデアを思いついたら、すぐに試して、すぐに結果を確認できる。そのような繰り返しの試行が、とても簡単になりました。私たちのゲームでは、各ランドスケープを絵画のように描き出すことを意識していて、構図、シャドウ、ハイライトなどの要素を組み合わせて、プレイヤーの視線をどこへ導くかを丁寧に設計しています。その意味でも「ライティング」は極めて重要でした。リアルタイム グローバル イルミネーションが使えるようになったことで、シーン全体のライティングを、より創造的かつ効率的に扱えるようになったと感じています。
 
さらに私たちは、キャラクター制作のパイプラインに MetaHumans を全面的に導入しました。これによって、リアルな人間のキャラクターを表現できるようになり、モーション キャプチャと組み合わせることで、身体や顔の演技にもより豊かな表情を持たせることができました。 

UE5 には、バーチャル テクスチャやバーチャル シャドウ マップ、PSO 事前キャッシュなど、他にも数多くのレンダリング機能と最適化手法が用意されており、私たちはそれらを幅広く活用しました。こうした機能の数々が、最終的にこのプロジェクトを無事に完走させるうえで、大きな支えとなってくれました。
 
Niagara は、本作のビジュアル アイデンティティを形づくるうえでも、非常に重要な役割を担いました。私たちのゲームは「Chroma」と呼ばれる独自の魔法を軸にした RPG なので、特に映画のような演出が入るシーンや戦闘中のアクションでは、VFX はその世界観を表現するために欠かせない要素です。 

当社の VFX アーティストである Léo は、UE5 に切り替える前、まだ Niagara が実験的機能だった UE4 の時代から、すでに Niagara をメインで使っていました。Niagara は、本作のような激しい呪文の演出はもちろん、涙のような繊細でシネマティックな要素まで、幅広い表現に対応できるツールです。新しいエフェクトを生み出すため、私たちは今も常に、新しい機能を探して試しています。
 

開発を進めるなかで、Unreal Engine のオンライン ドキュメントや学習リソース、その他エコシステムのツールなどを活用される場面はありましたか?
 
Guillermin 氏:もちろん、システムを理解してガイドに沿って進めるために、オンライン ドキュメントの読み込みにはかなりの時間をかけました。それに加えて、チームの多くのメンバーは、特にテクニカル アートや最適化、ベスト プラクティスといった分野に関して、Epic のストリームのアーカイブや Unreal Fest の講演動画を楽しみながら見ていたと思います。その時々で話題になっている技術やトピックが多く取り上げられており、私たち自身の開発にも重なる部分が多く、非常に参考になっています。
 
Unreal Developer Network (UDN) も、私たちにとって非常に心強い存在でした。現在のプログラミング チームはわずか 4 人という小規模体制ですが、特定のエンジンの課題について、必要であれば Epic のスタッフから直接サポートが受けられるとわかっていたので、常に「いざというときのセーフティ ネットがある」という安心感を持って、プロジェクトに集中することができました。
 
私たちが活用していたもう 1 つの大きな情報源が、GitHub 上で入手できるソース コードです。変更内容を確認したり、特定のファイルの履歴を追ったりできるのは、まだリリースされていないエンジンのバージョンから修正を取り込む際に、何度も助けになりました。
A scene from ‘Clair Obscur: Expedition 33’.
Clair Obscur: Expedition 33 © 2025 Sandfall Interactive.
これからデビュー作を手がける新しいスタジオが、どのエンジンを使うべきか検討しているとしたら、どのようなアドバイスをされますか?
 
Guillermin 氏:最初のプロジェクトで使うゲーム エンジンを選ぶときは、まず「自分たちがどのようなコンテンツを作りたいのか」をはっきりさせることが大事だと思います。そのうえで、それぞれのエンジンでそのコンテンツがどう作れるのか、ちゃんと調べて比べてみてください。
 
小規模なチームの場合は、選んだエンジンをじっくり理解し、それを可能な限り活用し切る意識が大切です。無理にエンジンのパラダイムから外れた処理を強行しようとすると、かえって負担が大きくなってしまいます。もちろん、革新さを追求することはできます。しかし、エンジンに逆らうのではなく、エンジンと協力しながらものづくりをしていく意識が必要だと思います。私たちはこのプロジェクトに 5 年以上取り組みましたが、Unreal が提供するワークフローにできる限り従うことで、最終的には、自分たちが当初思い描いていた以上の成果を出すことができました。
 
そして最後に忘れてはならないのが、エンジンの「エコシステム」そのものです。付属の学習リソースやサンプル プロジェクト、ドキュメント、そして何より、エンジンを支えるコミュニティやマーケットプレイスの存在は、開発を進めるうえで大きな力になります。こうした要素すべてがそろってこそ、プロジェクトを成功へと導くための土台になると思っています。
 

今日はお時間をいただき、ありがとうございます。 「Clair Obscur: Expedition 33」について、さらに詳しく知りたい場合は、どこをチェックすればよいでしょうか
 
Guillermin 氏:X、TikTok、Instagram、BlueSky の公式ソーシャル チャンネルをフォローしていただくか、Expedition33.com でニュースレターにご登録いただくことで、最新情報を入手できます。

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ダウンロード方法

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