Courtesy of Earthshine Games

Kingdoms Reborn のゲーム開発者による発見と都市建設の旅

Brian Crecente
Earthshine Games の創業者兼 CEO である Ittinop Dumnernchanvanit、通称 Pun 氏は、MIT からの博士号と AR/VR エンジニアリングでの専門的な経験という輝かしい経歴を持ちます。Kingdoms Reborn の早期アクセス版がリリースされた後で追加のチーム メンバーを迎え入れるまで、彼は個人開発者でした。
ちょっとした不満がきっかけで何が生まれるかわかりません。7 年前の Ittinop Dumnernchanvanit、通称 Pun 氏は、MIT で原子力の理工学博士号を目指して勉強している学生でした。Pun 氏はまた、SimCity のような都市建設ゲームの大ファンでもありましたが、このジャンルは停滞していて、そこにチャンスがあると感じていました。

自分でゲームを作ればいいじゃないか

Pun 氏にはゲーム開発経験がなく、博士課程も 2 年残っていましたが、Unreal Engine の助けを借りながら、都市建設ゲームをゼロから開発することに自由時間のすべてを費やし始めました。

幸いなことに、Pun 氏にとって都市建設ゲームの開発は、そういうゲームをプレイするのと同じぐらい楽しいことでした。4 年後に博士号を取得し、(家族や友人や同僚の反対にもかかわらず) 専門分野の職を離れる決断をした Pun 氏は、ゲームのリリースに成功したばかりか、そのゲームは文句なしのヒット作になりました。

Kingdoms Reborn は、早期アクセス版が Steam でこれまでに 30 万本も売れ、平均で 90 パーセントの好意的レビューを獲得しました。

その後の数年で、メンバーを増やした Earthshine Games のチームは、 Kingdoms Reborn を拡張して新たな勢力やプレイ方法を追加するだけでなく、オンラインでの協力プレイや競争プレイのような、より画期的な機能の導入に力を入れています。

弊社では Pun 氏に取材して、氏の個人開発者としての経歴や、氏や氏のゲームにとってなぜ Unreal Engine が正しい選択だったのか、そして、Kingdoms Reborn の早期アクセス版が、どのようにしてこのゲームの長期的な開発にとっての分岐点となったのかを伺いました。
 

Earthshine Games はどのように設立され、なぜ都市建設ゲームの開発を決めたのですか?

Dumnernchanvanit 氏:Earthshine Games も Kingdoms Reborn も、私の個人的な都市建設ゲームへの情熱から生まれました。私の旅は、7 年前、MIT の原子力理工学の博士課程の最後の 2 年の間に始まりました。その頃の私は、自由時間の多くをゲームに費やしていて、断然お気に入りのジャンルが都市建設ゲームだったのです。当時のゲーム市場には、都市建設ゲームはほとんどありませんでした。都市建設ゲームや RTS の市場はどちらも縮小していました。SimCity のような大ヒットゲームですら、下火になっていました。有力な都市建設ゲームがないせいで、私はこのジャンルでプレイするゲームが足りないと感じていました。

このような状況から、私は自分ならではのチャンスを発見しました。私が自分でインディーズ ゲームを開発したらどうだろう? 市場をより深く理解するために、市場データを調べてグラフにしてみたところ、その中に注目すべきグラフが 1 つありました。都市建設ゲームのジャンルに関して、Steam のレビューと販売本数を比較したところ、極端な相関を発見したのです。好評のレビューが 80 パーセントを超えるゲームに失敗作はなく、90 パーセント以上のゲームは極端な成功を収めていました。このことは、すばらしいゲームを開発できれば、販売数も付いてくることを示しています。当時は都市建設ゲームの数があまりに少なかったので、プレイヤーは宣伝にかかわらずあらゆる都市建設ゲームを試していました。そして Steam ではレビュー好評価のゲームの露出が増えるようになっています。ですから、私がすばらしいゲームを開発しさえすれば、それ以外のことはうまくいくはずです。

私の研究がゲーム開発とは何の関係もないことを考えると、当時このアイデアは無謀にも見えました。にもかかわらず、私はゲームのプロトタイプ開発に手を染め始めて、それがゲームをプレイするのと同じように、驚くほど楽しいことに気付いたのです。やがて私は、ゲームのプロトタイプ開発に自由時間のすべてを費やすようになっていました。1 番驚いたことは、アートやデザインからプログラミングに至るまでの過程から、私がいかに多くのことを学びそれを楽しんだかということです。当時の私は、Kingdoms Reborn の前身となるスペース コロニー建設ゲームを開発していて、それにかなり自信を持っていました。

手っ取り早く 2 年後の話に移りましょう。私は博士課程を修了して、AR/VR 部門の職に就きました。仕事は充実していましたが、自由時間に開発していたゲームについて、本格的に取り組んだらどうなるだろう、と考えてしまうことはどうしても止められませんでした。
Courtesy of Earthshine Games
結局、私は 2 年後に AR/VR の仕事を離れて、ゲームを Steam 向けに拡張することに集中することにしました。この決断は、みんな (家族、友人、同僚など) から反対されました。でも私は、どれほど非常識だと思われようとやらなくてはならないし、さもないと、年を取って家族に対する責任が増えたときに、あのときやっておけばと後悔するであろうと感じました。ですから、私は思い切って飛び出したのです。

でもそれは実際には、生易しいことではありませんでした。アマチュアのプロトタイプを市場で売り物になる製品にするために必要な作業の量は、膨大でした。ゲームを長い目で見て成功に導くために受け入れなくてはならない、難しい決断もいくつか迫られました。たとえば、SF 的な建物のデザインには (特に現実世界の参考資料がないため) 時間がかかり、スペース コロニー建設ゲームは成功率が低いというデータもあったため、私はスペース コロニーのテーマから、より地に足の着いた中世から産業化時代のテーマに移行することにしました。自分で作成した古い 3D モデルはすべて放棄しましたし、ゲーム デザインやプログラミングに対する私自身の理解が深まるに伴って、ゲーム システムの多くも再構築しなくてはならない羽目になりました。

Kingdoms Reborn のフルタイムでの開発はあっという間に、週 80 ~ 90 時間働かねばならない危機的状況に追い込まれました。もしこのプロジェクトに対する深い情熱と愛がなかったら、このような過酷な労働時間の 1 年を切り抜けることはできなかったでしょう。でも、そのような過酷な労働も、2020 年の 11 月に Steam でゲームがリリースされて、レビュー スコア 90 パーセントを獲得し、たった 2 か月であっという間に販売数 10 万本に達したときに、すべて報われました。

それ以来、弊社では Kingdoms Reborn のチームを拡大して、才能ある多くのアーティストやデザイナーやマーケターを受け入れました。このようなチームと一緒に働けることを私はとても誇りに思っています。私たちはみんな将来に夢を持っていて、プレイヤーの皆さんの記憶に残るゲーム体験を実現することを楽しみにしています。
Courtesy of Earthshine Games
シングル プレイヤーのゲームに集中しがちな都市建設ゲームというジャンルに、マルチプレイヤーの協力プレイや競争プレイを導入することを決めた、経緯と理由を教えてください。

Dumnernchanvanit 氏:私が都市建設ゲームをプレイするときは、いつも当時のガールフレンドだった、今の妻と一緒でした。都市建設ゲームのプレイは、ゲームに浸りながら、二人で一緒に充実した時間を過ごす方法を提供してくれました。でも、都市建設ゲームの多くにはマルチプレイヤー機能がないので、私と彼女はゲーム世界の中で直接協力したり競争したりすることはできなくて、別々の PC で隣り合わせになってプレイするしかありませんでした。私たちは都市建設ゲームをプレイするたびに、二人の都市が同じ世界の中に共存して互いに交流できるようなゲームを求めていることに気付きました。だからこそ、そのような機能を取り入れることを最優先にしたのです。でも、その作業に深入りしていくうちに、市民をシミュレーションする都市建設ゲームの多くが、マルチプレイヤーをサポートしていない理由がわかってきました。これは難しい課題なのです。でも今考えても、十分挑戦する価値のある課題だったと信じています。弊社のゲームは、他の多くのゲームにはないユニークなマルチプレイヤー機能のおかげで、リリース後 2 年以上たった今でも、都市建設ゲーム市場の中で突出しています。

Kingdoms Reborn の早期アクセス版の公開によってこれまでにどのようなことを学びましたか?それはその後のゲームの開発にどのような影響がありましたか?

Dumnernchanvanit 氏:
ゲームの早期アクセス版を公開することは、プレイヤーからのフィードバックを受けながら、チームを拡大するための資金を生み出すためのすばらしい戦略です。でも、早期アクセス版の公開には欠点もあります。頻繁な変更は、重要なゲームプレイ要素を変えることによって、プレイヤーのゲームに対する認識にも影響を与えることになります。そのため、変更の実装は慎重に進める必要があるので、Discord 上で内輪のコミュニティだけに限定して公開されているときに比べると、開発のスピードがある程度遅くなります。早期アクセス版の公開がゲームの開発にもたらす影響は、トータルで見れば良い影響の方が多く、Kingdoms Reborn を最高のゲームにするのに役立ったと確信しています。
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このゲームに戦争要素を導入することになったきっかけは何ですか?また、それによってゲームのプレイのされ方はどう変わったのでしょうか。

Dumnernchanvanit 氏:
開発初期の頃に、試しにプレイヤーがコントロールできる RTS スタイルの部隊を追加してみたことがありました。その段階で、多くのプレイヤーは都市建設のコア ループには満足していました。でも、RTS スタイルの部隊を追加すると、多くのプレイヤーは、戦闘に勝とうが負けようが気が散ってしまって、都市建設をやめてしまうことになると気付きました。

ですから、この機能は削除されることになり、リリースされた早期アクセス版には戦争要素はまったく入っていなかったのです。

リリース後に、コミュニティからは戦争要素を導入してほしいという注文を頻繁に受けました。繁栄する都市を使って強力な帝国を築くという夢は、無視するには魅力的すぎたようです。コミュニティからのフィードバックを受け入れた私は、今度はより単純な形で再び戦闘メカニクスを導入するテストを始めました。私が次に試したのは、Civilization シリーズと同じように、各軍隊が特定の地方を支配するという方式でした。でもこの方式も複雑すぎて、RTS スタイルの部隊と同じ問題に直面することになりました。結局のところ、戦闘は現在のような単純な UI に落ち着きました。

このゲームでは早期アクセス版の公開以降に、大幅な更新やパッチの配布が行われましたね。そのことにより、御社やそのファン層にとってどのような課題が生まれましたか?

Dumnernchanvanit 氏:
弊社ではゲーム開発の際にコミュニティを注視しています。このやり方に伴う問題は、弊社のゲームをいろんな理由で評価してくれているコミュニティ メンバーの多様な好みに応じることに関係しています。万人を満足させるデザインを決めることは非常に難しいことですが、弊社ではいつも最善を尽くしています。このような努力の結果として、コミュニティからのフィードバックに基づいて、ゲームの機能やバランスを頻繁に変更したり、特定の機能を丸ごと削除しなくてはならないことすらよくあります。
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御社では最近 Land of the Rising Sun というアップデートをリリースして、このゲームの増え続ける勢力図に新たな勢力を加えましたね。公開中のゲームにまったく新しい勢力を追加するのはどのぐらい難しかったですか?

Dumnernchanvanit 氏:
新しい勢力を追加する作業の大部分は、その勢力のためのまったく新しい 3D モデル セットの作成にあります。このためには実質的に、元のゲーム用のあらゆるモデルをゼロから作り直す必要があります。多くの勢力を作るという決断は開発初期に行われたので、3D モデル作成の過程も効率化されることになりました (建物用の 2D コンセプト アートの作成という作業すら完全に省略することにしました)。このようなワークフローの効率化にもかかわらず、新しい 3D モデルのセットの作成には、弊社の 3D アーティストのチーム 5 人がかりでも、半年近くかかることがあります。

新しい勢力のデザインや取り込みの作業自体は特別に難しいものではありませんが、弊社では、新しい勢力を含む大規模なパッチをリリースするたびに、新しいメカニクスを導入し、デザインやバランス調整をやり直し、多くの要素をリファクタリングすることが多いのです。

インタビューにお時間を割いていただき、ありがとうございました。Kingdoms Reborn や Earthshine についてもっと知りたい方はどこを見ればよいですか?

Dumnernchanvanit 氏:
私たちが一番活発に活動しているのは Discord ですが、Twitter 上で私たちのアカウントに言及していただいてもかまいません。 

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