2016年5月5日

Psyop がユニークな VR 占い体験、Kismet を制作

作成 Daniel Kayser

仮想現実の到来によって創造性の重要度が増しています。デベロッパーやデザイナーらは「インタラクティブ エンターテイメント」の真の意味について全く新たな視点から考えるようになったからです。数百億ドル規模のビデオ ゲーム業界は、非常に人気が高いジャンルがビジュアル面で VR の領域に入ると考えていますが、一部のコンテンツ クリエイターは全く新しい革新的な分野に胸躍らせています。

アンリアル エンジン 4 (UE4) で制作されたユニークな仮想現実の占い体験、Kismet の世界にようこそ! ミステリアスな占い師にちなんで名づけられた Kismet は、タロットや占星術という神秘的な世界にインスパイアされた体験です。VR が存在する前に試みられたものとは全く異なる見事に詳細で、手作り感のあるゴシック スタイルを実現しました。

そのため、Samsung や Supercel といったクライアント向けに印象的なブランド経験を作り出したクリエイティブ デザインの専門家である Psyop が、全く新しいアプローチで歴史のある占いを扱う VR を考えたと知ったとき、その手の内が何であるか知りたくなりました。こうした背景から、Kismet のライター兼ディレクターの David Chontos 氏と連絡をとり、お話を伺いました。このプロジェクトのデザインのビジョン、および UE4 の威力とブループリントのビジュアル スクリプティングの使いやすさが、チームのビジョンを現実のものにするためにいかに役立ったかについて語ってくださいました。

本日はよろしくお願いします! まず、Kismet VR 体験についてご説明いただけますか?

Kismet は仮想の占いマシンです。過去、現在、未来のタロットカードや、日々の占星術を行い、古来のボード ゲームをします。素敵なおもてなし役は Kismet 自身です。魅惑的な機械人形です。

VR 体験としての Kismet のコンセプトはどのように生まれましたか?

子供の頃から占いマシンの虜になっていました。ですから、何年も前に全く別のプロジェクト用にこのキャラクターをデザインしていたのです。主力となる VR 体験のために多くのアイデアを検討し始めた時、このアイデアがユニークなだけでなく、短期の制作期間で達成できるスケールを持つものとして突出していたのです。

カードや星を読み取るタロットと占星術の仕組みに必要な情報をどのように用意したのですか?

両方について多くのリサーチを行い、多様な情報源から関連情報を集めました。幸いなことに、その仕組みは概して普遍的で時に数学的なものでした。各カードは 3 つの位置 (過去、現在、未来) で固有の意味を持ちます。しかし、隣接しているものを考慮に入れる膨大な数の組み合わせもあります。こうしたすべてのものが入念にスプレッド シートに手書きで記述されています。占星術の部分で言及される天文学上のイベント (日食、月食、月の満ち欠け、惑星の通過など) は、何と今後 100 年のためにアルゴリズム的にループされています。

占いの読み取り以外にも、 Kismet には楽しいミニゲームがありますよね。最終作品には何種類のゲームが同梱されますか? それらについてお話いただけますか?

ローンチ向けには『The Royal Game of Ur』のひとつだけです。これは古代メソポタミアのボード ゲームを再現したものです。このゲームのルールは、石版にくさび形文字で描かれていたのが発見されています。

Kismet の内容として、ユーザーがコンテンツに個人的なつながりを感じることが必要です。このような重要な部分にどのように対処しましたか? 誕生日がわかればいいのでしょうか? それとも性格や信念など他のことについても尋ねるのでしょうか?

現時点では、誕生日だけを入力し、Kismet の占い道具や持ち物に囲まれて非常にパーソナルな空間内に存在することで没入感を実現します。Kismet が未来に移動すると、一日の中の時間や気候だけでなく、学習や記憶などの情報をさらに集めるようにします。過去の読み取りや現在の出来事を参照する能力を持つと、つながりを飛躍的に強化することができると思います。

Kismet のコンテンツをアップデートする予定はありますか? 一貫してアップデートされたものを前提に、人々が頻繁にインタラクションしたがる体験になるのではと思いますが。

将来的にユーザー体験を深める数多くのアップデートを提供しようと思います。追加のミニゲームから、詳細な占星術のデータまで Kismet の機能を増やし続けていきたいと思います。現時点では、新たな日付でログインすると、新しい読み取りが行われます。その後のタロットの読み取りで異なるカードを選ぶと、占星術の読み取りが天体の位置に応じて変化するからです。

Kismet のオーディオとビジュアル表現は実に素晴らしいですね。現在のバージョンに到達するまで、表現スタイルのバリエーションはどれくらいありましたか?

驚くほどわずかです。一度ビジョンが浮かんだら、滅多に変えないんです。初期のデザインとプロトタイピングに多くの時間を費やしました。そのため、制作中に迷いを生じることなく、迅速かつ効率的に作品に取り組むことができました。

この体験は非常に雰囲気があり記憶に残るものですね。Kismet のビジョンを実現するうえでアンリアル エンジンはどのように役立ちましたか?

アンリアル エンジンは非常に高性能であるため、ビジュアル クオリティに妥協する必要は一切ありませんでした。Kismet のシーンを思い描いたら、アンリアル エンジン内で構築することができたのです。簡単に使用できるうえに学習ツールがあったため、我々のチームは Kismet の独特なビジュアル スタイルを VR 向けに作り出すことができました。Kismet は全体としてアンリアルのビジュアル スクリプティング システムであるブループリントで実行されます。

ブループリントのロジックの大部分は、初めてこのシステムを使うユーザーによって記述されました。開発チームのうち 80 % は、このプロジェクトの立ち上げ時にアンリアル エンジンを使った経験がありませんでした。しかし、4 か月以内に自分たちのビジョンを完成させることができました。間違いなく、UE4 を使用しなければこれは不可能だったと思います。

GDC 2016 でエピックはアンリアル エンジンのデベロッパー向けに VR エディタを発表しました。VR 内で VR 体験を作成し、編集する機能は、将来のデザイン プロセスにどのような影響を及ぼすと思いますか?

我々は皆、VR 内でワールドを作成し編集することにわくわくしています。VR 内でのシーンのレイアウト、ライティング、シェーディングの可能性は、外観の開発プロセスをスムーズなものにし、ピンポイントで詳細に焦点をあてることができるようになるでしょう。

Kismet の制作過程を通して、解決することができた興味深い技術的またはクリエイティブ面での課題はありますか?

Kismet には、一瞬で背景を完全に変える機能があります。ずっと以下のようなことを自分たちに問いかけ続けました。新しいシーンをプレイヤーをあっと驚かせるような速さで表示することができるだろうか? スクリーンをロードする間、待たせたくなかったのです。

アンリアル エンジンのサブ レベルのツールを使うことで、これを実現しました。背景間の遷移は瞬時に起こります。ロードの間、長時間待つことなく複数の背景を見ることができることで、Kismet が魔法のように感じられます。

Kismet を利用できるプラットフォームと、このプロジェクトについての詳細を知りたい場合、どうしたらよいか教えていただけますか?

Kismet は現在 Oculus と Vive で利用できます。秋のローンチ以降、 Playstation VR にも対応予定です。

Kismet の将来はどんなものでしょうか?

そうですね、彼女に尋ねたほうがいいかもしれませんね。VR コミュニティ全般の彼女に対する反応を見て喜ばしく思います。近い将来、もっとレパートリーを増やすつもりです。

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Kismet の詳細情報については、Twitter で @KismetVR をフォローするか、Psyopの公式ウェブサイトを、ここからご覧ください。以下で、Kismet の 360 度の動画をご覧いただくこともできます。