背景とレベルデザインが飛躍的に進歩した『Q.U.B.E.2』の制作ストーリー
2018年2月7日

背景とレベルデザインが飛躍的に進歩した『Q.U.B.E.2』の制作ストーリー

作成 Harry Corr

はじめに

みなさん、こんにちは。Harry Corr と申します。私はイギリスのToxic Games スタジオでアート ディレクター兼レベル デザイナーをしています。間もなく、パズル アドベンチャーゲームの続編『Q.U.B.E.2』がリリースされます。アンリアル エンジン 4 を使って我々がどのようにこのマルチプラットフォーム ゲームの開発を進めたのか、紹介させて頂きます。

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自然の要素を背景に取り入れた Q.U.B.E.2 のオアシスのワンシーン


今回私はディレクターとなり、制作の全ステージでアンリアルを使用するという、両方とも初めての経験をしました。Q.U.B.E.2 のアート チームは、私自身と有能な若手アーティストである Connor Stanley の 2 人だけでした。そんな小さなチームですから、処理しなければならない膨大な数のエレメントを前に完全に心が折れてしまうことも多々ありました。想像できますよね。レベル デザイン、ライティング、マテリアル、パーティクル、セットピース、ゲームプレイ、パフォーマンス、UI など、ゲームには幅広い機能が要求され、我々の経験など足元にも及びませんでした。ところが、アンリアルの素晴らしいデザインのインターフェースとユーザーフレンドリーなツールの助けを借りて、最終的に我々はすべてを克服することができました。 

さらに、アンリアルはオンラインで大量のコンテンツを無料で提供してくれるので、開発作業をしながらエンジンを学習するという「Baptism by Fire (初めての試練)」 的なアプローチも問題なくスムーズに行うことができました。しかもオンライン コミュニティからの熱心なサポートや貴重な情報提供のお陰で、ツールの学習はトントン拍子で進みました。自分以外のクリエイター達とオンラインで多くの作品や技術を共有し、プロセスについて彼らと実際に意見を交わすことができるのは素晴らしいと思います。普段考えもしなかったアイデアの多くは、このような状況から生み出されるのだと思います。

アート ディレクション

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ライティングと反射を用いて表現した工場内の廊下。

我々は開発の早い段階で、前作のミニマルな景観とキューブ構造をキープするという重要な決定をしました。とにかく新しくすればいいという考えだけでは、前作のファンの方々の気持ちを踏みにじることになります。そこでアンリアル エンジン 4 が前作を超えるビジュアルスタイルを創出するための重要な立役者となってくれました。我々がエンジンの中で注目したのは、卓越したライティング機能とマテリアル機能でした。これらのエレメントを使って前作のアートスタイルをさらに進化させました。

少人数のアートチームでは背景のビルドに 5ー7 時間かかるため、ユニークなアセットを絶対最小数に抑え、各部屋のジオメトリを有機的で特殊な雰囲気にする作業に専念しました。John Harris 氏や Nicolas Bouvier 氏といったサイファイ アーティスト達の美しい形とライティング設計からインスパイアされ、ゲームの舞台となるタワー形状の QUBE 構造体を有機的な建築スタイルにしました。このアプローチは、ユニークで興味を感じてもらえる部屋づくりにも使いました。ユニークなアセットをそれほど使わずにすべての部屋が作成できたので、とても満足しています。

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続編では背景が変化に富んでいる

Q.U.B.E.2 では、前作には登場しなかった場所も用意しました。まったく新しい背景アセットを追加しなくても視覚的に別のエリアだと感じてもらえるように、その部屋専用のマテリアル、色パレット、そしてライティング形式を使いました。その結果、エリアごとに特有の雰囲気が備わり、そのエリアでプレイヤーに抱いてもらいたい感情も強調することができました。たとえば、ゲームを開始した直後のプレイヤーには、自分が置かれている状況と背景に対して、不安、戸惑い、興味を感じてもらいたいです。そのような気持ちを引き出す方法として、すべての部屋の背景には寒色のメタル マテリアルを適用し赤いスポットライトをポッツリと照らして、背景の大部分が影になるようにしました。 

プレイヤーがゲームの仕組みとナラティブにそろそろ慣れてきたら、次は背景がかなり明るいエリアを用意します。この背景は、プレイヤーが前向きな気持ちになるように、きれいな白いキューブでビルドされ、暖かい太陽の光で照らされた広大なオープンスペースで構成されています。実はこの両方のエリアは同一のアセットで作成されているのですが、プレイヤーにとってはまったく別のエリアのように感じます。

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上:寒色のメタル マテリアルで表現した工場内の背景

下:きれいな白いキューブで表現しているミニマルな背景
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背景の作成方法は非常に直観的です。パズルデザイナーの Dave Hall が、直線だけでつないだ、何も入っていない四角い部屋の中にパズルを設定していきます。レベル内にパズルを作成したら、その部屋を使ってパズル ゲームプレイ エレメントの周りを再ビルドしていきます。ただし、これだけでは素晴らしいゲームとしては合格点が出ない場合もあります。一番重要なことは、もちろんプレイヤーの体験です。パズルだけでも十分難しいのに、部屋のつくりを複雑にするなど無駄に問題を追加すれば、プレイヤーは空間の移動だけで大変です。部屋の照明についても注意が必要です。強く照らしすぎると、パズル要素全体が見づらくなってしまいます。そこで我々は、きれいに見えるものと実際プレイして面白いもののバランスを取るようにしました。

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基本となったデザインと最終的にできあがった背景

 

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すべてのゲーム背景の構築に使用したモジュールキット

ゲームで使用した背景はすべてモジュラーセットの構成要素で構築しました。表面のでこぼこ感を表現するために、異なるレベルでキューブを押し出して、それぞれの構成要素を 2 パターン作成しました。ゼロからパズル ルームを作る場合、まず最初にホワイトボックスを使います。シンプルな箱を使ってレベルのジオメトリを再ビルドし、その後高速のライティング パスを行います。楽しくプレイできるようになるまで、このステージをイタレートします。楽しめる段階になったら、その箱をモジュラーキットの構成要素に置き換えます。残念ながら、我々のチームにはこれらのパーツを自動配置してくれるツール プログラマがいないので、我々はすべて手作業で行う必要がありました。かなり時間はかかりましたが、結果的にはそれだけの価値がありました。すべての要素が整ったところで、「ドレス アセット」 (ライト パネル、サンド ビルドアップ、フォリッジなど) を追加し、あとはライティング パスでレベルを完成させます。

アンリアルのマーケットプレイスは、始めのうちは「そんなに便利なのかな」と疑っていたものの、実際はとても便利でした。特にパーティクルについては、私も Connor も作成経験が少なかったので、マーケットプレイスがまさに救世主となりました。たとえば、Polysplendor の 『Pyro Particle Texture Pack v1』 や Tharlevfx の 『VFX Weather Pack』 を使って、自分達のゲームで使う炎とライティングのエフェクトにつなげることができました。ストアからアセットを購入した場合、通常は自分のニーズに合わせた動作をするように修正が必要となりますが、質の高いアセットを入手できるので、結果的に開発時間を大幅に減らすことができました。

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『Q.U.B.E.2』で使用した油と炎のメカニズム

こうして懸命な作業、学習、不屈の努力を続けた結果、我々全員が誇りに思えるような素晴らしいゲームが完成しました。アンリアル以外のエンジンでは実現できなかったと思います。アンリアルの品質、使いやすさ、ツールのパワーのお陰で、我々チームは楽しく遊べるパズル アドベンチャー ゲームのビルドに集中することができたのですから。

最後まで記事を読んでくださりありがとうございました。公式ゲームプレイ トレイラーでは、今年予定されている   PC、PlayStation 4、Xbox One 向けのリリースを紹介しています。詳細は弊社のウェブサイトをご覧ください。