映画 Thor の協力精神とサバイバル要素が Tribes of Midgard に与えた影響

Brian Crecente
Norsfell の共同創設者であり、CEO と Minister of Creation を務める Julian Maroda 氏は、 Tribes of Midgard (Gearbox Publishing) で空前のヒットを生み出し、Epic MegaGrant を受賞しました。同作品のアクティブ プレイヤーは、PC、PlayStation 5、PlayStation 4 を総合すると、最初の 1 週間で 50 万人に達しています。これにより Tribes of Midgard は業界から幅広く評価され、Ubisoft Indie Series Winner や、PC Gamer の Best of E3 2021 に選ばれました。コミュニケーションとゲーム デザインの学位を持つ Maroda 氏は、ビデオ ゲームの制作監督が専門であり、これまでに携わったタイトルは多様なプラットフォームで 30 作品を超えます。さらに Norsfell では戦略的ビジョンと企業運営のマネジメントを担っています。また、これまでも Julian は MIGS、IGDA、ComicCon で登壇し、さまざまな業界のリーダーと貴重なアイデアを共有しています。
Diablo のアクション ロールプレイングを Don’t Starve Together のサバイバルと組み合わせ、さらに北欧神話のサウナで蒸しあげたような Tribes of Midgard は、デベロッパーとしては目標達成型のサバイバル ゲームと呼べそうです。プレイヤーは生き残りをかけて戦うだけでなく、コミュニティを形成して取り組む必要があります。舞台はエインヘリャルのコミュニティ、栄光のバイキング ヒーローたちがヴァルハラから帰還し、迫りくる世界の終末ラグナロクを食い止めるのです。

この作品は多くのプレイヤーから愛され、 Ubisoft Indie Series Winner in 2017Best of E3 2021 by PC Gamer を受賞しました。さらに 7 月の発売以降、Steam で好意的に受け入れられ、オープンワールドの鮮やかな色使いと個性的なディテールに対して Screen Rant からも高い評価を獲得しています。

そこで、スタジオが手掛けた最初のゲームについて、そして制作チームがこれほど幅広いジャンルを組み合わせ、個性的で美しく、楽しいバイキング エクスペリエンスに仕上げたアプローチについて、 Norsfell のデベロッパーに直接お伺います。
 

Norsfell の制作チームが結成された経緯と、スタジオの目標、そしてゲーム制作に対するアプローチについて教えてください。

Julian Maroda:私たちは 2013 年に 4 人で Norsfell を設立し、新しいジャンルの創造と人々を結びつけるゲームの制作を目指しています。この精神を Tribes of Midgard にも注ぎ込み、サバイバル、アクション、ローグライトのゲーム要素を組み合わせ、融合することで、これまでなかったジャンルに仕上げました。Norsfell というスタジオ名からも明らかですが、私たちは北欧神話を愛してやまず、これを制作目標と組み合わせることで Tribes of Midgard が生み出されました。
 
どのように Tribes of Midgard を着想したのですか?

Maroda:Tribes of Midgard の構想を開始したのは 2017 年で、当時のゲーム業界から 3 つのトレンドを認識しました。
  • PVP ゲームの台頭で人気が高まった、協力的なゲームプレイ。
  • 人気はあれど、あまりに本格的で取っつきにくいと考えられていた、サバイバル ゲーム。
  • Eponymous シリーズや映画 Thor の人気など、注目され始めたバイキングに関連したコンテンツ。

当スタジオが目指したのは、この 3 つのトレンドと重なるように Tribes of Midgard を進化させ、今まで見たことないようなゲーム ジャンルにまとめ上げることでした。こうしたトレンドが、2021 年に、これほど見事に開花するとは想像していませんでしたが。 
画像提供:Norsfell
ゲーム内で北欧神話を忠実に再現するために、どのような調査を実施しましたか?

Maroda:私を含め、チームの面々は普段からバイキングと北欧神話に夢中なのです。もちろん北欧の古い伝説を読み、たくさん調べましたが、バイキング文化を最初に思い描いた時に浮かんできた要素を大切にしました。超巨大な神々、壮大なストーリーテリング、揺るぎない勇気、そして戦斧、あご髭、九つの世界などです。それをもとに、どれを取り入れるかだけでなく、それぞれの要素をどのように強調すべきかに焦点を当てました。

多くの神話と同じように、北欧神話も口頭伝承によって世代を超えて受け継がれてきました。たき火に集う人々が語ってきたのです。現代でも仲間うちで語らっていると、彼らが記憶する過去の出来事が、誇張されて「ほら話」になっていることは珍しくないでしょう?そんな風に、実物より大きな伝説的ほら話を、このゲームで表現したかったのです。
 
Tribes of Midgard に相応しいのは、どのジャンルでしょうか?

Maroda:Tribes of Midgard では、サバイバル、協力、アクション RPG から、私たちが大好きな要素をすべてブレンドしたので、新しいジャンルとして「目標達成型のサバイバル ゲーム」と呼びたいと思います。これはコミュニティの仲間たちに左右されるマルチプレイヤー サバイバルです。ありがちなサバイバル ゲームとは異なり、 Tribes of Midgard のゲームプレイには「私」という一人称は存在せず、チームは密接なユニットとして繁栄するか、全員が敗北します。 

サバイバルをチーム レベルに移行することで、サバイバル ゲームに求められる要素に、間違いなく多くの課題と変更が発生します。たとえば自分の個人的な目的に執着せず、部族のニーズを自分の目標に替えて、さらにその目標を達成するためには自分の計画を調整しなくてはなりません。つまり、さまざまなタスクを別のプレイヤーに任せ、不可欠なリソースの採集を分担して、世界樹の種ユグドラシルを健康に保つために一緒に戦略を練る必要があります。この種は、居住領域ミズガルズ全体に生命を与える、チーム メンバーの強さの源です。 

もちろんソロでプレイしても「目標達成型のサバイバル」を楽しむことができます。このゲームは、各セッションに参加する人数に基づいて、難易度を自動的に調整するからです。しかし、その場合でも主役はプレイヤーではなく、世界樹の種なのです。
 
画像提供:Norsfell
Tribes of Midgard には、クラフト、探索、リソース収集など、サバイバル ゲームから多くの要素を取り入れられていますが、食べたり、飲んだり、永久に死ぬ要素は含まれていません。サバイバル ジャンルのさまざまな要素を、どのように取捨選択しましたか?

Maroda:Tribes of Midgard では、サバイバル ジャンルに興味を持つプレイヤーにとって受け入れやすいゲームを目指しましたが、妥協できない困難のため、なかなか達成できませんでした。そこで私たちは、サバイバル ゲームの基礎機能を再評価して別のジャンルと組み合わせ、雰囲気を台無しにする平凡な要素を排し、一方で人間の根幹につながるゾクゾクする体験を創り出す機能は残しました。その気持ちの良いバランスを見出すには、ある程度の実験や調整が必要でしたが、私たちはそれを発見したと考えています。
 
こうしたジャンルの融合によって、 Tribes of Midgard の体験は少し違った展開になりました。なにしろ、エインヘリャルはヴァルハラから帰還した栄光のバイキング ヒーローなのですから、喉の渇きや空腹などを「普通の」人間みたいに心配するはずがないでしょう。プレイヤーは最高神オーディンが自ら厳選したヒーローたちなので、死んでも無限に復活できますし、装備だってそのままです。実際、戦斧を失ったバイキング ヒーローなどあり得ませんから。
 
このゲームの焦点は、プレイヤーが生き残ることではなく、世界樹の種ユグドラシルを育て、守ることです。どのようなきっかけで、チームはこのアプローチを着想したのですか?

Maroda:プレイヤーには、自分だけが生き残るよりも、コミュニティの存続に夢中になってほしかったのです。これにより「チーム スポーツ」ができあがり、新規プレイヤーは生死を賭けた戦いに挑む前に、先人に習って状況を把握することができます。さらに、このジャンルに慣れないプレイヤーを初心者のプレッシャーから解放し、失敗から学ぶ余地を与えます。この作品では、最初数回のミッションでサーガ ボスを倒すことなど期待されていないのです。こうした仕様により、 Tribes of Midgard では学ぶべきことがたくさんあります。リソース管理、チーム内で効果的に組み分けする方法、時間や労力の戦略的配分、さらにゲームを進めるに従って異色のコンテンツがアンロックされていきます。つまり試行錯誤するたびに、成功の可能性が高まるのです。
  
それに個人よりチームで敗北する方が、はるかに容易に士気を保てます。チームメイトは助け合うべき存在なのですから! 
画像提供:Norsfell
この作品の最初のシーズンは The Wolf Saga と呼ばれ、異色のボスが登場します。今後のシーズンでは、どのようなゲームプレイやゲーム終盤のバトルを構想していますか?

Maroda:それぞれのサーガを既存のゲームに追加し、さらに新しいボス、クエスト、装備、リワードを、今後も継続的に導入する予定です。つまり、新しいサーガが開始しても、それ以前のコンテンツやボスを引継ぎプレイできます。そのためプレイヤーは、セッション ベースの時間内で、2 体、3 体、4 体、あるいはさらに多くのサーガ ボスを対戦相手に選ぶことができます。プレイヤーは対戦ごとに新しい課題に直面するので、熱心なファンならば 1 度の挑戦ですべてクリアする戦略を立てたくなるはずです。
 
Tribes of Midgard のデザインに影響を与えたゲーム、映画、フィクションなどは他にありますか?

Maroda:スタジオ名からも明らかですが、私たちは北欧神話が大好きです。とても明るくて壮大なのですが、たとえばギリシャ神話やローマ神話と比べると、多くの人は思っているより北欧神話について知りません。西洋文化の多くが北欧の伝統や物語によって形作られているにも関わらずです。例を挙げるなら、英語で表した曜日のうち、その半数以上は北欧の神々に直接由来します。だから私たちは、北欧神話にあまり馴染みがないプレイヤーを、活気があふれ、美しく、そして風変わりな世界に招待したいのです。 
 
ワールドをプロシージャルに構築する際に、どのようなルールを適用しましたか?また、最適な効果を達成するために要した、自動化プロセスと手動調整の割合はどのくらいですか?

Maroda:Midgard のワールドは、ほぼすべてプロシージャルに生成しています。もちろん、ルールもいくつか設定しました。村、虹の橋ビフォスタ、明るい森のバイオームにいる生き物、道の周辺に配置した速く走るための注視点などです。それでも生成に任せたことにより、より寛大で挑戦しがいのあるレイアウトを実現できました。ゲームを毎回個性的に感じさせ、そしてワールドに慣れすぎてプレイヤーを退屈させないために、Unreal Engine の機能は本当に役立ちました。
画像提供:Norsfell
本作品のアート スタイルは、ファンタジー テイストのバックドロップの上に、手書きの味わいとコミックブックのようなセルシェーディングを、魅力的にブレンドしています。さらにメニューやゲームプレイでは、3D アートと 2D アートが見事に融合しています。このアプローチと実装は、どのようにして生まれたのでしょうか?

Maroda:バイキングを題材にした他の作品と比較すると、 Tribes of Midgard は明らかに異なるジャンルに見えます。本作品が明るくカラフルなのに対し、他の作品の仲間キャラクターは、多くの場合ダークでザラザラしています。北欧神話は、超巨大なキャラクターがたくさん登場する、多くの場合は大変陽気な物語です。たとえば神話によると、潮の干満が発生するのは、雷神 Thor がミード酒の一気飲みコンテストで勝った時だと知っていましたか?そこで私たちは、その軽くて気まぐれなスタイルを保ったまま、世界の終末ラグナロクを題材にもっとカラフルな作品を目指したのです。 

従って Tribes of Midgard では「コミックブックのような」手書きの味わいで表現し、これには Unreal Engine で作成できるセルシェーディングとシャドウのハッチングを利用しています。また、この方法によって、マルチプレイヤー ゲームのシナリオを強調することなく、ビジュアルに物語の要素をいくつか織り込むことを目指しました。そして結果的に、目の前に紐解かれた神話をプレイしているような表現になりました。
 
本作品の開発に Unreal Engine を採用したのはなぜですか?また、Unreal Engine はゲーム デザインにどのような影響を与えましたか?

Maroda:Unreal Engine は Tribes of Midgard で実現する表現に、アート スタイル、プロシージャル生成、その間のすべての点で可能性の扉を開きました。私たちは開発の初期段階で何種類かのエンジンを試してみましたが、Unreal Engine ほど調査できる範囲が自由な製品は見つかりませんでした。
 
当初からエンジンを活用するつもりでいた理由には、大きく 2 つあります。
  • 物理の使用:生き物に適用するラグドール物理と、瓶の爆発などによる要素の飛散は、私たちの戦略にとても重要です。実際に Tribes of Midgard はゲームとしてストリームできるように設計されていますし、物理によって予測できない面白い効果を生み出して見る人を惹きつけます。
  • 10 人によるマルチプレイヤー:Tribes of Midgard に必要な、もうひとつの重要な要素は、シングルプレイにもマルチプレイにも対応し、マルチプレイの場合は 2、3 人のフレンドだけでなく、同時に最大 10 人のプレイヤーが同じワールドでプレイできるようにすることです。私たちは Unreal Engine を専用サーバーで運用し、このようなスケーリングとネットワークを実現しました。
画像提供:Norsfell
PS5 の高度なテクノロジを Tribes of Midgard で、どのように活用しましたか?また、それによってゲームのプレイヤーに、どのような効果をもたらしましたか?

Maroda:PS5 の優れた機能の中でも、特に DualSense コントローラーを活用して、 Tribes のエクスペリエンスを強化し、さらにプレイヤーに没入感を与えることを目指しました。
 
そしてアダプティブ トリガーを利用して、戦闘をよりダイナミックかつレスポンシブにできました。たとえば、弓を引いた時の抵抗感や、敵に打撃された時のシールドへの衝撃、さらに走った時の自分の足の感覚を感じられます。また、ハプティック フィードバックは危険の判断にも利用できます。ハプティック フィードバックで地面の振動を表現し、特有の振動 (私たちは「グランブル」と呼んでいます) から巨人の襲来を察知できます。
 
さらに、コントローラーのスピーカーから直接聞こえるアラートで付近のイベントを把握し、その日の時刻によって変化するコントローラのライト バーの色によって時間を追跡できます。
 
こうした機能はただ楽しいだけでなく、ゲームプレイのエクスペリエンスを本質的に高めます。
画像提供:Norsfell
本作品のデザインで導入した特定のゲームプレイやビジュアル要素の中で、特に注目して実現した経緯を紹介したいものはありますか? 

Maroda:開発では協力プレイと単独プレイのバランスに時間をかけ、納得いく状態が完成するまで試行錯誤を繰り返しました。また Tribes of Midgard の制作では、グループを作成して協力プレイする時間やスキルがないプレイヤー向けのオプションなど、あらゆる規模のグループにとって遊びやすいゲームを目指しました。 

たとえば単独プレイのサーガ モードでは、ワールド サイズを自動で縮小し、敵の HP、パワー、略奪、全体の難易度をスケーリングします。プレイヤー グループが迅速に探索できるサイズでデザインされたワールドを、単独プレイで横断するのは適切でないと考えたのです。本作品で目指したのは、プレイヤーにとって挑戦的であり、しかし不可能ではないゲームです。とはいえ、サーガ モードは大人数のパーティでプレイすることを推奨します。それによって、よりカオスで興奮する、最高のゲーム エクスペリエンスを楽しめるでしょう。 

一方、サバイバル モードでは、プレイヤーがワールドの作成時に難易度を設定でき、パーティの人数に応じて簡単にスケーリングできます。こうしたパラメータはパーティの人数に応じて調整されないので、プレイヤーが独自に設定することでリラックスしたゲームや究極の挑戦をプレイできます。サバイバル モードのパラメータをいくつか挙げると、マップ サイズ、世界樹の種ユグドラシルが腐敗する速度、敵の強さ、さらに自分の村の外で死亡してリスポーンされた場合に失うアイテムの種類などがあります。そして難しいゲームを作成するほど、獲得できるシーズン XP が増加します。
 
画像提供:Norsfell
次世代のハードウェアや Unreal Engine の長期的な可能性について、最も期待することは何ですか?

Maroda:Unreal Engine は継続的な向上によってゲーム開発の限界を押し上げています。Unreal が次に実現する機能はなんでしょうか。今後どのように進化するのか、最高にワクワクしています!
 
貴重なお話をありがとうございました。Norsfell や Tribes of Midgard に関する最新情報はどこで入手できますか?

Maroda:TwitterInstagram @tribesofmidgard で Tribes of Midgard を、ぜひフォローしてください。さらに、ウェブサイト www.tribesofmidgard.com も、どうぞご覧ください。Norsfell に関する詳細情報は www.norsfell.com から、ご確認いただけます。

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