『The Medium』、次世代テクノロジーによって二重世界のホラーを実現

Brian Crecente |
2020年9月3日
The Medium』は、感じ方の二重性を検証する次世代型心理ホラーゲームです。このゲームは 2012年に初めてアナウンスされましたが、デベロッパーの Bloober Team が追求しているゲーム経験を実現できるテクノロジーは、今年になってようやく使える目処がついたのです。
 

このゲームは、Xbox Series X のタイトルとして今年 5月に再度アナウンスされました。リリースは今年後半の予定です。プレイヤーは、Marianne という、霊界に移行できる霊能者になります。このサードパーソン ゲームでは、その霊界への移行能力を使って、Marianne が難問を解けるようになります。そして、この能力は、ゲームの強力な映像に寄与しているのです。

私たちは Bloober Team のリード ゲーム デザイナーを務める Wojciech Piejko 氏にインタビューを行いました。テーマは、スタジオの 10年に及ぶゲーム開発の歴史について、さらに、どのようなインスピレーションを得てこのような新たな経験を制作するようになったのか、さらに、次世代テクノロジーと Unreal Engine がいかにしてコンセプトをデジタル的なリアリティに昇華させたのかです。
Bloober Team の活動はおよそ 10 年に及びますが、ホラーゲームを制作するようになったのは、5 年前からですね。開発の中心をホラーゲームにシフトするようになったのは、どのようなことからでしょうか?

Wojciech Piejko 氏 (Bloober Team のリード ゲーム デザイナー): もう覚えていない人もいるでしょうけど、私たちは PS4 でひどいゲームを作ったことがありました。『Basement Craw』というゲームでした。そこで、私たちは、その誤りを修正して、このゲームを購入した全プレイヤーに修正版ゲーム『BRAWL』を配布しました。これがターニングポイントとなりました。チームで何をすべきか、努力の対象を何に変えるべきか、考えるようになったのです。私たちは、一緒にやってみたいことに注力すべきだという決断を下しました。ゲームを作るだけでは満足できず、感情を刺激し、物語を語りたかったのです。ホラーはその願いにぴったりだと意見の一致をみました。

私たちは、ホラー映画に目がありません。ゲームだけではなく、ホラー映画おたくなのです。私たちはオリジナルのホラーを作ろうとしました。そして、そうすることによって、自信がもてました。私たちの最初の心理ホラーゲームは、『Layers of Fear』です。このゲームでは今日現在で 500 万人がプレイしています。そのおかげで、私たちのチームは、著名で経験のあるチームとして目されるようになりました。

Bloober Team の最新の 4 作品は、どれも、特定のテーマまたはホラーのスタイルがもたされていますね。『Layers of Fear』では、犠牲がテーマです。『Observer』は、ボディーホラー。そして『Blair Witch』は、PTSD です。では、『The Medium』で中心となっているテーマは何でしょうか?

Piejko 氏: Bloober Team では、心理ホラー ゲームを専門に制作していますが、人々を震え上がらせているだけではありません。特定の主題に取り組んでいるのです。『The Medium』は、「視点によって感じ方はどのように変化するか」です。 

見かけどおりのものは存在しません。あらゆるものには、見かけと違った側面があります。ゲームでは、霊能者として 2 つの世界で活動するため、より広い視野をもつことになります。同時に 2 つの視点をもつと言ってもよいでしょう。そうすると、単純で客観的な真実などないことが、よりはっきりとわかります。

ストーリーや舞台装置、キャラクターは、テーマにどのように関わっているのでしょうか?

Piejko 氏: あらゆるものが二重性を考慮して作られています。たとえば、2 つの世界、2 つの異なるアートスタイル、2 つのバージョンの Marianne (主人公)、2 人の作曲家が関わっています。ストーリーそのものも、常にプレイヤーの知覚に挑むように作られています。廃墟となったリゾート地に何が起こったのか、新たな手がかりと情報が投入されるのです。
『The Medium』のデザインに影響を与えたホラー作品はありますか?

Piejko 氏: Bloober Team のほとんどのメンバーは、『サイレントヒル』シリーズから影響を受けていると思います。私が最も好きなホラーゲームは『サイレントヒル 2』です。ストーリー、雰囲気、音楽が素晴らしいです。さらに言えば、私たちが制作したあらゆるゲームでとった手法は、『サイレントヒル 2』から刺激を受けています。『サイレントヒル 2』では、キャラクターやプレイヤーが裁かれないからです。このゲームをプレイし終わると、プレイヤーは皆ジェイムスが行ったことを知っていますが、ゲームによって彼が裁かれるようなことはありません。 ― それはプレイヤーに任されています。究極的には、ゲームによって私たちは私たち自身のこと (私たちがジェイムスについてどう感じているのか) がわかるのです。このように、私たちが大きく影響を受けた作品には、間違いなく『サイレントヒル』があります。他にも『九怨』、『SIREN』、『バイオハザード』といった日本のホラーゲームからもインスパイアされています。影響を受けた映画について言えば、『シャイニング』(ホテルと心理的な手法により)、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2 つの現実とノスタルジックな感覚により)、『ウィッチ』(ジャンプスケアがあるものの、素晴らしいストーリー、芸術的なアートスタイルと雰囲気により)『チェルノブイリ』TV シリーズ (極上の恐怖感と東欧の環境、素晴らしいビジュアルのアート スタイルにより) となります。

おまけ: 私のイマジネーションを刺激したり、『The Medium』をデザイン中に聴いていた音楽は、The Haxan Cloak、Lingua Ignota、Chelsea Wolfe、山岡 晃の音楽です。『The Medium』の霊的世界のサウンドトラックを作曲したのは山岡 晃です。

『The Medium』は、Bloober Team の最初の次世代ゲームですね。このゲームに大きな変化もたらした技術的進歩とは何でしょうか?そして、それによって何がもたらされたのでしょうか?

Piejko 氏: このゲームは 4K であり、レイトレーシングに対応し、単一のシームレスとシネマティックな経験を実現できるように SSD が使われます。しかし、私の意見を言わせてもらえば、『The Medium』で最も進歩的でユニークな機能は、2 つの世界を同時にレンダリングして表示できる機能です。このような機能は、ハードウェアの力を大いに必要とします。現世代のプラットフォームならば『The Medium』を実現するのは困難であったことでしょう。もちろん、ゲームをスケールダウンすることはできるでしょうが、そうなったら同じゲームとは言えないはずです。
ジャンルとしてのホラーは、映画でもビデオゲームでも、しばしばライティングにかなり依存して、雰囲気を醸し出し、恐怖を演出します。『The Medium』では、レイトレーシングや 4K 解像度などのテクノロジーがどのように使われているのでしょうか?

Piejko 氏: 私見では、ホラーの最高の友達はテクノロジーではありません。なぜなら、もっとも怖いことは、プレイヤーの頭の中で発生しているからです。もちろん、ライティングは役立ちます。しかし、それでも暗闇を棲家とし、そこに潜むものを想像するほうが、見てしまうよりも怖いものです。少しだけ粒子のエフェクトを付け加えると、黒い部分が動き始めます。想像力が働きだし、「いけない!何かいるかも?!」となるわけです。もちろんその点では私は HDR を大いに好みます (黒は最後に黒くなります!)。『エイリアン』の第 1 作のことを考えてみてください。この映画は、最後にエイリアンが出てくると、そこで想像力がストップしてしまい、映画自体の怖さは薄れてしまいます。

『The Medium』では、どのようなテクニックを使って、プレイヤーの没入感を高め維持したのでしょうか?

Piejko 氏: 御存知のとおりこのゲームは 2 つの世界を舞台としています。だから、すべてのデザインは、この 2 つの世界に対応できるように決められています。ゲームのメカニズムも、難問も、モンスターとのエンカウントでさえ 2 つの世界の間を流動するようにデザインされています。プレイヤーは、しばしば、一つの世界で何かを得るために、もう一つの世界で何かをしなければなりません。その逆もあります。半固定されたカメラアングルがゲームで使われていますが、これは映画的な経験をもたらすためだけに行われているわけではありません。プレイヤーが両方の世界に同時に集中できるようにしているのです。もちろん、このゲームは 2 つの世界が同時進行するだけではありません。 ― 私たちはプレイヤーを驚かせる必要があります。だから、時にはノーマルの世界のみになったり、時には霊的世界になったり、ある時には、同時に 2 世界になったりします。

『The Medium』は 2 種類の異なるサウンドトラックをフィーチャーしていますね。Bloober Team の Arkadiusz Reikowski 氏によるものと、『サイレントヒル』の作曲者である山岡 晃氏によるものです。これらの対決的なサウンドトラックは、どのようにして使われることによって、ゲームのテーマと芸術性は高められたのでしょうか?

Piejko 氏: と言いますか、『The Medium』には 1 種類のサウンドトラックしかなくて、2 人の天才的な作曲家が担当していると考えるべきでしょう。山岡 晃さんは、霊的世界の音楽の大半を作曲しています。Reikowski さんは、ノーマル世界の音楽を主に担当しています。このゲームの二重性を強固なものにしておくためには、最適な組み合わせなのです。もちろん、二人は協力して仕事をしているので、音楽もブレンドすることがあります (ゲームではアダプティブ ミュージックが使われています)。彼らはお互いに影響を与えています。ゲームで 2 つの世界が影響しあっているのと同じようにです。
Xbox Series X と Unreal Engine によって提供された新たなテクノロジースイートにより、どのようなゲームプレイが可能になったのでしょうか?

Piejko 氏: 繰り返しになりますが、私たちにとって最も重要なものは、ハードウェアのパワーです。2 つの世界を同時にレンダリングすることができるのですから。ゲームをこのように開発できるようになってとてもワクワクしています。

では、次世代ハードウェアと Unreal Engine が長期的にもたらす可能性の中で、あなたとチームの皆さんはどのようなことに最も期待していますか?

Piejko 氏: 新たなハードウェアを使うと、グラフィックスが改善されるだけではありません。旧世代のテクノロジーなら不可能だったユニークで突拍子もないゲームのアイデアが生まれるかもしれません。テクノロジーはドアにすぎません。適切な人たちに開かれると、魔法が起きます。
『The Medium』のデザインの中で、特に、強調しておきたいゲームプレイ要素やビジュアル要素があれば、ぜひ教えてください。

Piejko 氏: このゲームでは 2 つの世界にまたがるという機能が最もユニークであり、最大の難関だと思います。半固定のカメラ アングルを使って、プレイヤーが両世界に集中できるようにしているというお話を先程しましたね。まだ他にも工夫していることがあります。それぞれの世界には完全に異なったカラースキームがアート ディレクターによって設定されているのです。たとえば、ノーマルの世界はおよそ青系統になっています (東欧の雰囲気を出すためです)。Marianne は、赤いセーターを着ています。これならカメラのアングルが変わってもすぐ目につきますね。霊的世界の赤味がかった環境の中では、Marianne の白い髪が同様の役割を果たします。それから、Zdzisław Beksiński (ズジスワフ ベクシンスキー) について触れておきたいと思います。ゲームの霊的世界は、彼の絵画によってインスパイアされたものです。Zdzisław Beksiński は、ディストピアを描くポーランド人のシュールレアリストです。特にその絵画で知られています。残念なことに、彼は数年前に悲劇的な最期を遂げたのですが、その絵画は多大なインスピレーションを私たちに与えてくれました。

彼のアートは ― 特に、私たちが影響を受けた期間の作品は ― 不安、陰鬱、シュールという言葉でのみ言い表せるものです。その絵画ではたいてい、死と腐敗のシーンが克明に描かれており、しばしば骸骨や死体、それと同じくらい枯れた風景が描かれています。私たちの霊的世界にぴったりです。死人たちが居付き、敵意と悲しみに満ちた世界にマッチするのです。皆さんもぜひ Beksiński の絵画をご覧になってみてください。

ポーランド人のデベロッパーとして、私たちは、自身の文化を誇りに思い、ゲームという手段でこの文化を世界に広めようとしています。私たちの多くのゲーム (『The Medium』を含めて) がポーランドを舞台としており、ポーランドの建築やアートがフィーチャーされているのは、そのためです。

インタビューを受けてくださり、ありがとうございました。Bloober Team と『The Medium』についてもっと知るにはどうしたらよいでしょうか?

Piejko 氏: Blooberteam.comTheMediumGame.com を訪れてみてください。今回はお招きいただき、ありがとうございました!

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