Pete Samuels 氏は 1997 年からゲーム業界で指導者的な役割を担ってきました — 最初は Psygnosis で、次に Electronic Arts European Studio で、シニア開発ディレクターとして数々の大作に携わってきました。2007 年、Pete 氏は兄弟の Joe 氏とともに Supermassive Games を設立しました。Supermassive の CEO として、Pete 氏はスタジオの成長過程を他のディレクターたちのサポートを受けながら導き、複数の作品に独自に取り組む先見性のある世界的に知られるゲーム開発チームへと成長させました。
2015 年ごろ、 Supermassive Games は突然ひらめきました。その年にリリースした Until Dawn と、(BAFTA を獲得したことは言うまでもなく) インタラクティブ ストーリーテリングに対する多くの肯定的な反応がスタジオの方向性を変え、さらにはそのアイデンティティを見つけるきっかけとなりました。
2019 年、スタジオはThe Dark Pictures Anthology を発表しました。これはさまざまなホラー ジャンルを取り上げた 8 つのゲームで構成されるインタラクティブなストーリーテリング サバイバル ビデオ ゲーム シリーズです。このアンソロジーの第 1 弾は Man of Medan で、プレイヤーは幽霊船に送り込まれます。2020 年の Little Hope では、プレイヤーはゴーストタウンに送り込まれます。そして今年リリースされる House of Ashes では、プレイヤーは 2003 年のイラク戦争中に地中のメソポタミア寺院に閉じ込められることになります。
私たちは Supermassive Games の CEO である Pete Samuels 氏に企業の進化について、あの恐ろしい傑作をどのように作り出したのか、そしてアンソロジーが第 1 シーズンのフィナーレであるThe Devil Within へと進んでいく中でどのような位置にあるのか、などを伺いました。
Supermassive のゲーム デベロッパーとしての 13 年の歴史を見てみると、2015 年にリリースされた Until Dawn とそれに対する圧倒的な肯定反応がスタジオとその後の作品に大きな影響を与えたように思えます。スタジオが初期に LittleBigPlanet や Killzone などのタイトルに取り組んでいたころから、現在の 8 部構成の物語主導のホラー アンソロジーに全力をつぎ込む状況へと進化したことについて、どう思われますか?
Supermassive Games の CEO、Pete Samuels 氏:今年で設立から 13 年が経ちますが、そのうちの半分はスタジオとしての本当のアイデンティティを見つけ出すことに費やした気がします。振り返ってみると、 Until Dawn が私たちにとってのターニングポイントだったことは明白です。それまではさまざまな種類の仕事をいくつもこなしていましたが、今みんなに典型的な Supermassive Games のゲームだと認識されるようなものの多くは、それほど重要視していませんでした。Until Dawn を制作する機会によって私たちがどのようになれるか、将来のために何に力を注げばいいかについて気付くことができました。それはホラーだけではなく興味深いストーリーテリング、映画のような表現、そしてプレイヤーの行動に強く影響される物語もです。Until Dawn のリリース後、のちに Dark Pictures Anthology となるアイディアについて話し始めました。私たちはマルチプレイヤーの短編ホラーという概念にとても興奮しました。Until Dawn 以降いくつものゲームをリリースし、その中には VR タイトルもいくつか含まれていますが、今ではストーリーテリングこそが私たちのスタジオとしての特徴となりました。この先何年もかけてこれらの物語を語り、これらのゲームを制作できることを楽しみにしています。
Image courtesy of Supermassive Games
Until Dawn、The Inpatient 、および Shattered State はすべてインタラクティブで映画のようなストーリーテリングの形式を帯びていました。それぞれのゲームは、スタジオがこのような形式のビデオ ゲームを制作する際にどのように役立ちましたか?また、それが Dark Pictures Anthology を制作する決定にどのように影響しましたか?
Samuels 氏:私たちは行うことすべてのことから学び、行うことを常に改善し、磨きをかけるようにしています。先ほどの 3 つのタイトルは特に同じ DNA を持っていますが、物語を語るために使用されている技術やプレイヤーの関与の仕方はまったく異なり、それらはまったく別の視点からもプレイされます。それぞれは独自の方法で、今日私たちのチームが使っているストーリーテリングのメカニズムを開発するのに役立ちました。私たちは視点、プラットフォーム、およびテーマが優れたインタラクティブ ストーリーテリングの基本的原則を変えないということを学びました。そのため、新しいゲーム メカニズムを導入したり、エクスペリエンスを提供するために別の技術を使用したりすることは素晴らしい新たな機会であり、歓迎すべき課題だと考えています。
Image courtesy of Supermassive Games
Man of Medan はこのアンソロジー シリーズの第 1 作ですが、プレイヤーの道徳観念に焦点を置き、何かを決定するときに頭で考えるか心に従うかを選択する必要があります。このような設計はどのようにして決めたのですか?
Samuels 氏:The Dark Pictures における選択のメカニズムは、ゲーム内で行われた決断はすべて結果につながっていることを常に思い出させるように設計されています。とても大きく大胆で目立つように表示されるインターフェースは、立ち止まって「正しいと思うことに基づく決断と、戦略的にみんなが生き残るための最善と考えることに基づく決断のどちらが良いのだろうか?」と考えさせるための合図です。
アンソロジーの 2 作目となる Little Hope ではゲームが少し操作しやすくなり、応答時間も少し長くなったことで、より幅広いプレイヤーが対象となったように思えます。その点について、 House of Ashes はどのように計画されていますか?難易度については Little Hope で最適なポイントを見つけましたか?それとも、まだ見極めている最中ですか?
Samuels 氏:私たちの哲学は固定のものを決めないということです。今までも何も決まっているものはありません。しかし、いくつものゲームを作っていく中で、ゲームのファンが最も気に入っているものを保護することと、私たちに届く改善に対する要望の中で最も多いものに対処することについては重要視しています。すべてのものを全員にとって完璧なものにできると思うことは現実的ではありません。人はそれぞれ異なり、ゲームをプレイする方法やその楽しみ方の好みも異なるからです。House of Ashes のチームは、プレイヤーが望む方法でゲームをプレイできるように設定するための最善策に工夫を凝らしました。その時もファンからのフィードバックに目を通し、将来を見据えてそれらのシステムやインターフェースを開発するかどうか、またどのように開発するかを確認します。
Man of Medan は幽霊船では定番の物語、 Little Hope はゴーストタウンでの物語、そして House of Ashes は眠れる悪を目覚めさせる物語のようです。どのようにしてアンソロジーのホラー テーマを決めているのですか?また、全作品を通して何か大きなテーマがあるのでしょうか?
Samuels 氏:最初に、5 年くらい前になると思いますが、 アンソロジー の最初の 2 つのシーズンを構成する 8 つのゲームについて、テーマと大まかなストーリーを決めました。長い時間をかけてホラーとして認識されている 39 個あるサブジャンルの映画や TV、および小説におけるストーリーの特性を研究し、それらをいくつか混ぜ合わせたストーリーに対して独創的な「もしも」のシナリオを考案しました。ご想像のとおり、私たちは興味深く、そして非常に奇妙なものを思いつき、それを最も探究するのが面白くなりそうだと感じた 8 つのテーマに絞り込みました。ストーリーは、それぞれが独自のストーリーとなっています。すでにリリースされている作品をプレイしていないと今後の作品を理解し、楽しむことができないということはありません。とはいえ、すべては同じ宇宙に設定されています。その証拠として各ゲームに登場するイースター エッグは、それまでのストーリーとその後のストーリーの両方を参照しているため、並行しているプロット ラインがあることがわかります。それ以上は話せません。
Image courtesy of Supermassive Games
最初のアンソロジーの作品は Silent Hill、The Crucible、The Witch や都市伝説など、さまざまな種類の作品からインスピレーションを得たものでしたが、 House of Ashes はどこからインスピレーションを得たのでしょうか?
Samuels 氏:最初のインスピレーションは先ほどお話したプロセスの中から、そして神話、科学、歴史、キャラクターの観点からひらめいた興味深い可能性から浮かんできました。そこからは典型的ですが、これらの現実世界の事実から、さらに遠い歴史、古代文明や信仰、キャラクターの特定の組み合わせが表す可能性について深く研究するようになりました。ビジュアル的、映画的、そして物語的にゲーム ディレクターは The Descent や Aliens などの映画、そして H.P.Lovecraft のような作家の文学作品から影響を受け、不穏な環境や非常にリアルな脅威を作成しました。
Samuels 氏:キュレーターの元のコンセプトは The Crypt Keeper や Orson Wells、Rod Serling などの典型的なホラー番組のホストに基づいています。ただし、これらのホストとは違い、キュレーターは物語の一部となっています。彼のストーリーも進化しています。証拠もありますよ、 Man of Medan と Little Hope を比べると違いがわかります。今後さらにプレイヤーのストーリーに「関与」することで進化し、それをシーズン 1 のフィナーレである The Devil in Me でお見せします。
Image courtesy of Supermassive Games
このアンソロジーのゲームでは、マルチプレイヤーに対して興味深い、まるで映画のようなアプローチがあります。そのアイデアはどのように発展し、変化していったのですか?House of Ashes ではどのようなタイプのマルチプレイヤーが用意されるのでしょうか?
Samuels 氏:マルチプレイヤーは、最初にThe Dark Pictures を計画した時に話し合った要素の 1 つでした。オンラインの場合も実際に同じ場所にいる場合も、ストーリーを共有することは人びとが好むことであり、それをプレイヤーに体験してもらいたかったのです。House of Ashes では、Shared Story (オンラインの 2 プレイヤー モード) と Movie Night (最大 5 プレイヤーの協力モード) の 2 種類のマルチプレイヤー モードを用意する予定です。最も楽しみにしていることは、これらのエクスペリエンスを提供するためのシステムやメカニズムの変更ではなく、ストーリーごとにそれらを異なる方法で使用することにより、通常のゲームでは体験できないような新しいプレイヤーやキャラクターの動きを作成することです。
どうして難易度設定をシリーズで初めて House of Ashes に含めようと思ったのですか?また、それがプレイにどのように影響しますか?
Samuels 氏:この決断は、完全に Man of Medan と Little Hope の両方から受けたフィードバックに基づくものです。また、それらのゲームをプレイする人びとが本当に望んでいるものが妥協点ではないということを認識したからです。ゲームを楽しんでプレイする人びとが望む難易度の幅は非常に広いため、ある難易度のレベルは一部のプレイヤーにとっての「ベスト」でしかありません。プレイヤーが設定を選べるようになり、好きな方法でプレイすることができます。これにより、全員にとってより良いゲーム体験になることを願っています。
Samuels 氏:カメラを使用して緊張感を保つ方法は何通りもあります。 House of Ashes では常に 360 度ビューですが、これは Little Hope でそのシステムを使用した雰囲気の作り方を試したと思います。Little Hope では半々、一部は固定角度で一部は 360 度でした。これはゲームごとに達成させたいものが異なることによる制作的な選択です。
Image courtesy of Supermassive Games
Little Hope のボリュメトリック フォグから Man of Medan の厳しい日差しと夜の差まで、アンソロジーではライティングが重要な役割を果たしています。House of Ashes にとってライティングはどれほど重要で、どのように使用してエクスペリエンスを向上させる予定ですか?
Samuels 氏:雰囲気を作成する際に重要となる要素はたくさんありますが、ライティングは確実に、カメラやサウンドとともにその重要な要素の 1 つです。明るさと暗さのバランスは私たちが作るゲームでは非常に重要です。少なくとも見えるものと同じくらいに見えないもの、あるいはよく見えないものが恐ろしいのです。これまでのアンソロジーの各ゲームでは、 Little Hope の深い霧から Man of Medan の暗い片隅まで、まったく異なる強調を使用していますが、それらはすべて私たちが作成したワールドにプレイヤーを没頭させるという目的のためにあります。House of Ashes も同じです。