社会に渦巻く感情を形にしたらどんなものになるか考えたことがありますか? 多くの人々にとって社会的交流は予想のつかないダンスのようなものです。人々はリアルタイムで独自の意見を様々な激しさで交わして幅広い会話をし、互いに反応を示し合うからです。
社会の感情を形にするというコンセプトが最近現実のものになりました。アーティストと技術者の一団が、特定のイベントに関する社会的感情に息を吹き込んだのです。
Vimeo にアップした Silent Studios 制作の MTV CHOREOGRAPHIKA のメイキング
その成果は Choreographika として形になりました。これは #MTVEMA (MTV ヨーロッパ ミュージック アワード) についての会話を解釈しデジタル ダンスとインタラクティブな芸術作品にするプロジェクトです。これを通して Twitter のキーワード、アーティストのメンションや感情が現実の映像と動きに変換されました。
Choreographika についてさらに知るために、この芸術作品の制作に関わった Silent、 No Ghost、Friends Electric の皆さんにお会いしてお話を伺いました (以下、敬称略)。
Q:Choreographika のコンセプトはどのように生まれましたか?
Nathan Prince (Creative Director @ Silent): Sunshine X というエージェンシーが MTV EMA が行われる週末にロッテルダムで開催される MTV の展示の監督を務めていました。設置、展示を依頼する 10 名のアーティストの一人として Silent にアプローチしてきました。
我々の仕事は、MTV EMA に関するオンラインの Twitter の膨大な会話を見て、その雰囲気と興奮を伝えることです。反応を示すには、スカルプチャーからサウンド インスタレーションまで何でもありで、何か進歩的で野心的なものを作る裁量が与えられました。
熱狂的なツイートの世界に対して反応はリアルタイムで動的なものでなければならないことは独自にわかっていました。会話が現実世界に影響を与えるようにしたかったんです。
これはデータを視覚化するプロジェクトになりましたが、反応をまとめることで人間の感情をグローバル規模で考える機会になりました。我々にとって重要だったのは感情を持つ人間が対象だったことであり、ダンスが最もエキサイティングで表現豊かな反応のように思いました。ダンスは国境を越える世界共通の言語であり、年齢、信条、文化の違いを乗り越える力があります。こうしてアイデアが生まれました。#MTVEMA の会話とファンの感情を解釈し踊るキャラクターで表現します。このキャラクターはリアルタイムで動的に反応します。ハッシュタグの変化量、感情的なキーワード、感傷、アーティストのメンションなど何にでも反応します。
Q:このプロジェクトのチームの規模と作業時間を教えてください。
Tom Flavelle (Designer @ No Ghost): メンバーは以下のアーティストと技術者です。
- Silent (Creative Direction and Audio) = Nathan Prince, Liam Paton, Andy Theakstone, Sarah Kelly / Lucy Ridley dancer/choreographer
- Friends Electric (Production) = Alex Webster, Dom Thompson-Talbot, Orlaith Turner
- No Ghost (Development) = Tom Flavelle, Jack Straw, Lawrence Bennett, Luke Gibbard
プロジェクトの着想から完成まで 5 週間かかりました。作業にはデザイン、オリジナル音楽、モーション キャプチャーと開発が含まれます。
Q:プロジェクトのビジョンを現実化するために直面した最大の課題は?
Jack Straw (Developer @ No Ghost): 締切が厳しかったため、制作のあらゆる要素に関して平行して作業を進める必要がありました。プレレンダリングされたループを使っていたらプロジェクト実現は不可能だったと思いますが、リアルタイムであったため更新した要素を迅速に統合することができました。ライブ データという予測不可能なものを使うことも課題でした。例えば、ジャスティン ビーバーはデータ上、予想外の問題を生じました。他のアーティストの 10 倍も発言していたからです。つまり、ダンサーは絶えずジャスティン ビーバーの踊りをすることになり、少し減らさざるを得ませんでした。
Q:このプロジェクトにアンリアル エンジン 4 ( UE4 ) を選んだ理由は?
Tom Flavelle: このプロジェクトではアンリアル エンジンは当然の選択です。この作品は 9x42” LED 画面に表示されます。そのため、できるだけ高い解像度で出力しつつも近くで見たときに視覚的鮮明さを維持する必要がありました。最終的に、4K 解像度で 60fps で実行するように設定されました。我々は映像とアニメーション分野のバックグラウンドがあります。ですから高品質なライティングがとても重要でした。
同梱された C++ API は Twitter からライブで集めたメトリックス データをエンジンそのものにストリーミングするのに役立ちました。
モーション キャプチャを使ってアンリアル エンジンでキャラクターを動かす体験は、リアルタイムで Twitter に入ってくるメンションの割合に応じてダンスの強度を変えることを伝えるのにも役立ちました。
Q:制作プロセスを通じて特に役立った UE4 の機能はありますか?
Tom Flavelle: アンリアル エンジンの新しいシーケンサーは、短時間で多くのカメラのアニメートを可能にしたパワフルなツールです。通常は 3D パッケージでカメラをオーサリングして取り込みますが、UE4 の既存のすべてのカメラリグを使えば必要な制御はすべてエンジン内にあります。ショット毎にすべてのポスト FX を評価し調整できるということは、ビジュアル面で最終的にビジュアルに磨きをかける際に非常に便利です。
Q:Choreographika の作業によってデータの視覚化に関して他にアイデアが浮かびましたか?
Nathan Prince: もちろんです! データでストーリー テリングするという考えが気に入っています。一般的に我々はツイートやソーシャル ネットワークの熱狂的な世界よりも意味がある深いつながりを求めていると私は感じています。ですから、オンラインの世界をとらえて別の意義深いやり方で表現できれば、刺激的で色々考えさせられるものを作れると思います。
Tom Flavelle: ‘Twitch plays Pokemon’ (Twitch 視聴者のコメントで操作するポケモン、大勢が同時参加してプレイした) 現象が起きたとき、インタラクティブな方法でどのようにコミュニティを夢中にさせることができるかを考えていました。このアイデアは心の片隅に残り、こうした分野で多くのプロジェクトに関わりたいと思いました。アンリアル エンジンはデータの視覚化について未開拓な大きな可能性を秘めています。将来的に、世界中のオーディエンスのインタラクションの可能性をさらに模索したいと思います。
Q:このプロジェクトの詳細を知るにはどうしたら良いですか?
Nathan Prince: このプロジェクトに関わったチームの詳細については、 We Are Silent、 No Ghost、 および Friends Electric の各公式ウェブサイトをご覧ください。