独自のジャンルを 20 年間にわたり大切に守ってきたニッチなスタジオを考えてみてください。『Sid Meier』 シリーズを手がけた Firaxis Games、それとも『Crusader Kings』のParadox Interactive が思い浮かびますか?『Milan』 を制作した Milestone は思いつかないかもしれませんね。Milestone は、『APEX』 から 『MXGP2』 そして 『Valentino Rossi The Game』 まで、Firaxis がストラテジー ゲームで成功を収めたように、過去 20 年間、レース ゲーム ジャンルに影響を与えてきました。
様々な経験を積んできましたが、Gravel では初の試みが盛り沢山です。Gravel というちょっと変わったタイトル名が作品をよく表しています。Milestone はオフロードであると共に、オープンワールドでもあります。こうした斬新な要素への対応も非常に迅速に行われました。
迅速なストリーミングの必要性
アンリアル エンジン 4 (UE4) では、十分な レベル ストリーミング をサポートしています。考え方としては、プレイヤーが目にするまではマップをロードする必要はないという非常にわかりやすいものです。オープン ワールド全体をメモリに入れておく代わりに、必要に応じてロード、アンロードした方が良い結果が得られます。これは動きが遅い 『Fallout 4』 ではうまくいきますが、秒単位でかなりの距離を移動可能なドライブ ゲームではどうでしょう?
「主な問題はスピードに関わるものであり、広いエリアで多くの場所を更新する必要があります。これはアンリアル エンジンが対応していますが、手を加える必要もありました」と Tagliani 氏。
Milestone のモータースポーツの担当者たちは、エンジンの改造を嫌ったりはしません。エンジンがアンリアル エンジン4 であってもです。エピック ゲームズでは、 アンリアル エンジンのソース コード を公開しています。これにより、基本的なレベルで機能を微調整することができます。
「結局、自分たちが目指していたものを実現することができました。広大なマップを非常に効率的に扱うことができるレベルまで到達したのです。まだ作業は進行中ですが、現時点で非常に良いところまできています」と Tagliani 氏は説明します。
シミュレーションの中心
改良はストリーミングにとどまりませんでした。Milestone のプログラマーたちは、UE4 の物理フレームワークにも大胆に手を加えました。
これは適切な判断に基づいた取組みでした。Milestone では長年にわたり社内技術を用いて作業してきました。力、圧力、サスペンションなどの重要なシミュレーション ファクタを計算するための独自のソリューションを開発してきたからです。Gravel はアーケード スタイルのレース ゲームですが、内部にシミュレーション ゲームの複雑さも備えています。
「20 年間の経験で培ってきたレース ゲームの専門的な知識と同じ感覚を実現するためにシステムを完全に書き換えました。ゼロからバイクの物理のサポートを構築したのです」と Tagliani 氏。
道から外れる
Milestone のスキルは必ずしも移行可能なものばかりではありませんでした。ビークルをオフロードで走らせることで、Gravel チームはトラックのデザインで長年にわたり積み上げてきた専門知識の活用をあきらめざるを得ませんでした。スタジアムやラリークロスのサーキット以外に、オープン マップ レースや Capture the Flag (旗取り) もサポートしています。イベント中にプレイヤーが突然、別の道に進むことができます。車両が特定のアングルでコーナーにやってきたり、そもそもコーナーに来ることに頼らなくても良くなりました。ルートを扱う方法が完全に変わりました。
「主な問題は、広大なエリアで、真っ直ぐな道やシンプルなトラックではなく、沢山のものを制御し続けなければならないということです。これにより、デザイナーがトラック作成を管理する方法が確実に変わりました」とシニア R&D デベロッパーの Alexandre Lebertre 氏は語ります。
デザインはアンリアル エンジン エディタから始まったわけではありません。まず、Google Earth を使いました。レースやオープン ドライブのためのエキゾチックなロケーションを探していましたが、たいてい現実の場所が期待に応えてくれるものでした。海外で休暇を過ごした後や、ネイチャー ドキュメンタリーを見た後にインスピレーションがわくこともあります。その結果、アラスカにたどり着きました。
そこから、3D テレイン ジェネレータ ツールである World Machine を使って実際の地形の衛星の地形データを抽出し、トラック開発の早い段階で地形を使いました。
「結局、手動で背景を描画すると、多くの人工的なものを過剰に使用するリスクがあります。しかも、その場所が持つ現実味が失われてしまいます」とリード プログラマーの Nicolas Tagliani 氏は言います。
「いい場所が見つかったら、そこから構築を開始します。現実味が増して、そこにいるという感覚が得られます」と同氏。既にあるものから構築すると、最初から意味があるものになります。
World Machine で生成されたマップは、グリッド レイアウトを使って UE4 にインポートされます。グリッドを使うと、プレイヤーが運転する間、背景をどのように分けるか、ストリーミングするかを判断するのに役立ちます。
「プロトタイピング フェーズであらゆる機能を統合するのは難しいことでした。最終的には、とてもうまくいきましたけどね」と Tagliani 氏は当時を振り返りました。
Gravel は PC 向けにリリース予定です。
編集注記: PCGamesN は、長く続いている Making It in Unreal シリーズのためにアンリアル エンジンで制作された素晴らしいゲームを選んでそのデベロッパーにインタビューしています。エピック ゲームズは編集プロセスに関与していません。