反重量レースゲームを作成するにあたって物理ミドルウェアは反重力を扱うために作られてはいないことが懸念されます。レースのトラックはゲームでは瞬時に通りすぎてしまうので、何キロメートルもの長さが必要になります。また速度の問題もあります。
R8 Games は Formula Fusion の開発において、こうした様々な問題を解決してきました。
適した物理を自社開発する
「アンリアル エンジン 4 は、Formula Fusion のように好きな速度で移動できるようなレースゲームを作るようなビルドにはなっていません」と語るのは R8 のゲームデザイナー Carlton Gaunt 氏です。
心が折れそうになった物理の課題
現在の物理ソリューションやミドルウェアは、現実世界の力と動きをレプリケートすることが目的ですが、それはまさに R8 が避けたいことでした。反重力のビークルに現実世界を適用すると、この上なくつまらないものになってしまうからです。
「反重力レース ゲームを作るなら、リアルにはしない。それが鉄則です」と Executive Producer の John Purdie 氏は言います。「コーナーを自然に曲がろうすれば、ふわっと浮く感じがあります。つまり、完全に物理に頼ることなんてできないのです。」
そう考えると映画の視覚効果とも少し似ています。ディレクターは「現実世界のようにしたい」と言っては「いや、そういう意味じゃない」と繰りかえしますよね。」
ありがたいことにアンリアル エンジン 4 はオープンソースなので、R8 は自社の Post-Newtonian mechanics を実装することができました。クラフトと武器のインタラクション方法を定義するコリジョンはエンジン、そして Formula Fusion 内部は完全に独自の物理で行います。
「独自に開発した物理エンジンなら、完璧に使いこなすことができる上に、まったくリアルでないものを作り出せるんです」と Gaunt 氏は話しました。
トラックを作成する
Formula Fusion のトラックの作成は、スケールが大きすぎて厄介なプロセスでした。R8 はまず背骨とも言える、スラローム、シケイン、S 字カーブ、ターンとジャンプの組み合わせを埋め込んだカーブから着手しました。
ひたすら試す、そして面白いものをエンジンで動かしてみる。その繰り返しです。
「希望するラップタイムも実現できると思っていました。この時点では速度のことは考えていません。トラックというシンプルな考えが実現可能かどうかが重要です。」
レベル デザイナーは R8 のアートリードと主要なアート アセットの配置をあれこれ試します。この時点ではバックグラウンド背景はむきだしのブロックのみで、完成版 Formula Fusion のようにネオンが溢れた豪華さなど想像できません。次にチームは ‘赤いルート’をビルドします。視覚が付いていない、ほぼ完成状態のトラックです。白い背景の上に赤い道を作ります。
「この段階で初めて速度について考えます」「どこにもぶつけないように、どうにか扱います。」と Gaunt 氏は説明。街の高層ビルの間を泳ぐクジラの Rapture まで潜水球が初めて下がった場面をBioshock プレイヤーなら覚えているかもしれません。クジラはがオンスクリーンになるのは束の間と開発者は知っていたので、Irrational のアートチームは可能な限り基本的な方法でレンダリングしました。ところが、意図するエフェクトを表現する時間は十分にありました。
このクジラそのものではありませんが、ぼんやり通り過ぎてしまうと分かっているから細かい作業はそれほどしなくてよいというアセットが R8 にもありました。
「直観的にならずに終わることもあります」「直線を長くすれば、プレイヤーは開始点の周囲にあるアセットはほとんど見ないと考えます。本当はそこがターンを終えた場所なので、速度を落としてアセットを見なければならないのに。」
チームは、プレイヤーが速度を落とさなければならない最も危険なコーナーに豪華なアセットを用意しておきました。
「特に複雑なターンのまわりにトラックを作れば、プレイヤーはそこで多くの時間を費やしますから」「このような個所に、特注の背景アセットを活用します。」と Gaunt 氏は言います。
トラック開発 2 週目には、チームおよび最も早いキック スターター支持者によるテストの実施前に、強化パッドと武器ピックアップを配置してプレイヤーがトラックを使えるようにしました。
そこからようやく、従来の制作パイプラインを使用します。最終アセットがデザインされ、空がビルドされ、背景が追加されました。さらに、Formula Fusion を特徴づける輝かしいパレットにトラックを配置します。
「そして美しいトラックの完成です」
スピード感を出すために
Formula Fusion で重要なことは、忠実なレース シミュレーションでは表せないスピード感の高まりです。R8 は、ウィングとハーフ スポイラーに覆われた空気力学クラフトから、高速で通りすぎるバックグラウンドまで、あらゆるところでこの感覚を強化しようとしました。
「速度は、背景の視覚をヒントにして得られることが多いという結論になりました」と Gaunt 氏は打ち明けます。「しましま模様のトラック テクスチャは、高速で通りすぎる感覚を与えます。」
中盤のトラックに登場する街灯、ポール、フェンスのようなオブジェクトはすべて瞬時に通り過ぎることで、その移動速度に臨場感を出してくれます。
「速度によってわずかに変形させるカメラシステムもあり、モーション ブラーのような視覚効果を使ってさらに強化しました」
ペダルに足を載せると、カメラが後ろに下がりながらズームインします。
「そして何よりもフィルム エフェクトです。フィルム エフェクトは視野角を歪められます。Formula Fusion では、レースカーとパイロットの大きさはだいたい同じままですが、バックグラウンドの背景がわずかに包みこむ感じになっているので、一層早く通り過ぎているように見えるのです。」
「そこがこのゲームの重要な点なので、オーディオやビジュアルにとどまらず、ゲームのあらゆる場面に取り入れるようにしました。」と Gaunt 氏は説明しました。
Formula Fusion は現在 Steam Early Access からアクセス可能です。アンリアル エンジン 4 は現在無料です。
編集注記PCGamesN は、長く続いている Making It in Unreal シリーズのためにアンリアル エンジンで制作された素晴らしいゲームを選んでそのデベロッパーにインタビューしています。エピック ゲームズは編集プロセスに関与していません。