S.O.N では、プレイヤーは、無職の頑固な父親、Robert Alderson となります。Robert はアルコールの力を借りて過去を振り払い、すべてを忘れようとします。プレイヤーは、Robert の息子である Jay を助け出すという使命を課せられます。Jay は自宅から「South of Nowhere」として知られる謎めいた森へと連れ去られてしまいました。Robert は息子の失踪劇を解決しながら、その過程で自分の本性とも向き合っていきます。
今回は、RedG Studios の創業者、Jordan Davenport 氏をお迎えして、このプロジェクトについてお話を伺いました。初めてゲームを開発するデベロッパーが直面する恐怖や、初めてのゲームを世界に公開することに伴う良いことと悪いことについて聞きました。
RedG は新しいスタジオですね。インディー デベロッパーとして開発を始めることにしたモチベーションについて教えていただけますか?
RedG Studios は元々、私が 1 人で始めました。2016 年後半から 2017 年 12 月半ばまでは 1 人で、そこで現在のリード プログラマー、Sterling Zubel が参加しました。人々の心に残るビデオ ゲームを作るという夢を持って RedG を始めました。人々とつながり、人生を共に歩んで発展していくゲームです。ありきたりな答えではありませんが、その 2 つのことは私がゲーム開発を始めるうえで大きな意味を持っていました。それらは、時代やコンソールの世代を問わず、常に重要なことだからです。
たとえば The Last of Us、メタルギアソリッド、アンチャーテッド、ゴッド・オブ・ウォーのようなゲームは、ゲーム自体を離れたところでも人々の人生に影響を与えてきました。これらのゲームが作り出したキャラクターは、とてもよく作られているため、単なるキャラクターを越えて、プレイヤー自身と関連付けられるものになっています。ゲームをプレイしている人物が、ネイサン・ドレイク、クレイトス、スネーク、ジョエルなど、実際にキャラクターであるかのように感じさせるということです。それらのゲームは、グラフィックスや環境のビジュアルも優れています。ビジュアルが優れているということはストーリーを良いものにするために重要であるのかもしれません。しかし私の個人的な考えとしては、メイン キャラクターにどれだけの物語を持たせることができるか、良いことでも悪いことでも、共感できるような背景を与えることができるか、ということこそが重要なのだと思います。私たちがゲーム開発に真剣に取り組むことにした目的は、プレイした人々の心に数十年残り続けるようなゲームを作ることです。
S.O.N は PS4 向けにまもなく発売されますが、このゲームのことをご存知ない方も多いと思います。ゲームを紹介していただけますか?
もちろんです。S.O.N は一人称視点のホラー ゲームです。プレイヤーはゲームのなかで Robert Alderson になります。Robert は苦悩を抱えた父親であり、日常的にアルコールの力を借りて過去を振り払い、しばしば妻子を顧みません。プレイヤーは Robert と旅に出て、ペンシルバニアにある森、ClarenCaster に向かいます。そこは世界で最も悪名高い森林地帯であり、地域の住民は畏怖の念を込めて「South Of Nowhere」と呼んでいます。Robert がそのようなひどい場所に向かうのは、息子の Jay を救うためです。Jay は恐るべき何者かによって自宅からその森へと連れ去られてしまいました。
その理由は明らかではありませんが、ゲームが進むにつれて、プレイヤーは、一見誘拐のようなその事件の背後にあるものを見付け出していきます。South Of Nowhere では、大人から子どもまで、2016 年に 600 人以上が行方不明になりました。プレイヤーは、森のなかにある洞窟、Caves of Stacy も探検します。古い言い伝えによれば、そこは洞窟ではなく、地上での人生を裏返した別世界、別次元であり、良い意味でも悪い意味でも、人生に何かをもたらして一変させてしまうと言われています。
プレイヤーは Robert について詳しく知ることができるのでしょうか?彼には贖罪を果たす機会が与えられるのですか?
ゲーム全体を通じて、プレイヤーは Robert の人となりを知っていきます。なぜそのような行動を取るのか、何が行動のきっかけとなるのか、何が彼を彼たらしめているのか……。また、「悪い父親」のレッテルを貼られるに至った、彼の人生と家庭生活について多くを知ることにもなります。贖罪については、ゲーム自体に語らせることにしましょう。ゲームを通じてプレイヤーはさまざまなことを見聞きしていきます。ゲームが終わったときには、Robert が良い父親であったのか悪い父親であったのか、プレイヤー自身で結論を出せるようになるでしょう。それは私たちの最終的な目標でもあります。ストーリーに耳を傾け、Robert の行動を目にしてきたプレイヤーの心の内で、Robert が迎える結末が彼にふさわしいものであるかどうかを判断してもらいたいと思っています。
S.O.N の開発を開始した時点で、チームには Unreal Engine 4 の経験がどのくらいあったのですか?Unreal Engine によって新しいチームでの初めてのゲーム開発がやりやすくなったということはありましたか?
Sterling が参加した時点で、2 人合わせて 3 か月くらいの経験しかありませんでした。Sterling は以前は主に Unity を使っていて、Unreal Engine を使ってみたいと考えていました。私にとって最大の課題となったのは、単純にエンジンの全体を学ぶことでした。未知のものに初めて挑むという経験です。
Unreal Engine を起動してインターフェイスを見た時点で、ひどく不安になって、少しくじけそうにもなりました。画面には数え切れないほどのものが表示されていて、それがなんだかさっぱりわからないという状態でした。それから本を 1 冊読んで、YouTube でビデオをいくつか観ました。Unreal Engine について説明するオンラインのビデオに Epic Games Launcher からアクセスできることがわかり、それを観てずいぶん理解できるようになりました。その時点ではビデオはあまりたくさんはありませんでしたが、それでも概要をつかむには十分でした。YouTube でも Unreal Engine について教えてくれるビデオを観たのですが、よくわかっている人が話をしているものだったので、これから始めようという人間にとっては話が早く進みすぎていました。Epic Games は、ボタンの機能、エンジンが今のようになった理由、ブループリントの仕組みから、こまごまとしたところまで、時間をかけて説明してくれていました。それらのビデオのおかげで、Sterling と私は理解を深めることができました。多くの人が Unreal Engine を少し見ただけでショックを受けてしまいますが、時間をかけて Epic Games によるビデオを観れば大丈夫でしょう。
開発期間を通じて、Unreal Engine 4 のスイートのなかで、最も役立ったツールは何ですか?
私に言わせれば、プロセス全体を通じて最も役立ったツールは、いろいろなものをシンプルにドラッグ アンド ドロップできたり、サイズ変更、移動、回転できたりすることでした。とても基本的なことで、アマチュアっぽい答えですが、レベル デザイナーである私にとってどれほどシンプルであったかはとても語り尽くせません。たとえば、場所を指定するために特定の座標を入力する必要はなく、クリックすればあとは Unreal Engine 4 がやってくれるのです。そのような作業を必要とするプロップが数百万とあったので、とても助かりました。Unreal Engine について学び始めたときは、私は位置を決めるために XYZ の座標を入力していました。実際はただ移動ツールを使えばよかったのですが。そのように、大きく時間を節約できるツールです。シンプルで、初心者にとって便利だと思います。
ホラー ゲームでは、プレイヤーをゲームに没入させるために暗闇が非常に重要です。しかし、ガイドになる光がいくらかないと、プレイヤーは遠くまで進むことはできません。闇と光の要素をどうやって S.O.N に取り入れたのですか?
闇は恐怖をかき立てます。見えないところでは、何が待ち受けているのか、何に見られているのか、何にあとを尾けられているのかと、人は恐れを抱きます。ただし、本当にプレイヤーを怖がらせることができるのは、作り出された雰囲気だと思います。何かが起こりそうで何かがそこにいそうだが、実際にはそこにいない。そのように信じさせるのは雰囲気です。
おっしゃるとおり、ライティングは重要でしたが、ホラーでは光の色も同じくらい重要な役割を持っていると思います。S.O.N では、プレイヤーに懐中電灯を与えるのではなく、ライティングを戦略的に配置して、洞窟中に置かれた物体に対する光のオンオフを切り換えるようにしました。そうすることで、まるで物体が「さあ、こっちへおいで」と言っているようにしました。何かが起きるだろうか、それとも起きないだろうか。光があるところとそうでないところに出くわすたびに、プレイヤーにそう考えて欲しかったのです。こうすることが心理操作に影響し、楽しく入り込めるホラーを実現できるのだと思います。S.O.N では、通路でプレイヤーから遠く離れたところにライトを置くことで、闇を活用しました。また、室内を照らすためのものも取り入れましたが、10 ドルのランプだからということで、照らせる範囲は限定的にしました。
初めてのゲームを市場に送り出すのは大変なことでしょう。その過程で多くのことを学ばれたかと思います。これから同じような道のりを歩み始めるデベロッパーに向けて、アドバイスをいただけますか?また、Unreal Engine 4 の学習を始める方向けのアドバイスもいただけますか?
何よりもまず、短距離走ではなくマラソンのようなものになるということを理解してください。特別なものを作り出すには、多くの時間、熱意、犠牲が必要です。その最初の精神的な障壁を乗り越えたら、次の (おそらく最大の) 課題は、希望を失わないようにすることです。初めてのゲームを開発する期間中ずっと、モチベーションを保ち、インスピレーションを得て、なぜ、誰のためにやっていることなのかを忘れないようにしてください。どういうことかというと、たとえば、ゲームの一場面のクールなスクリーンショットをソーシャルメディアに投稿したが何の反応もなかったとき、落ち込まないようにする、ということです。初めてのトレーラーに対するオンラインのコメントが不評だったとしても、それにとらわれないでください。悩んで手を止めてはいけません。あなたのゲームは、多くの人に愛され、おそらく多くの人に嫌われるでしょう。それはそういうものです。
私自身、自分たちが本当に特別なものを作っていると心から信じていたのに、大企業や世間の人たちが誰も気にかけてくれていないように感じられて、とても悩んだことがありました。感情を害するようなコメントを読んで、自分が何をしているのかわからなくなったこともありました。そのように悩まないでください。私の場合は、しばらく経ってから、自分がゲームを作ることを楽しんでさえいればいいのだと気付きました。自分が信じていないものを作ってはいけません。ほかの人にもそのことはすぐにわかってしまいます。情熱を注いだ仕事は必ず注目されます。自分がそのゲームに熱くなっていれば、ほかの人たちもついてきてくれます。みなさんにもきっとできるはずです。とにかく諦めないことです。困難が訪れたときは、一方の足をもう一方の足の前に出し、進み続けてください。
最後に、ひたすら学び続けてください。そうすることで、文字通り人生が変わるでしょう。Epic が提供するビデオを観ましょう。より優れたデベロッパーになることができます。ゲームの開発について、レベル デザインからプログラミングまで、できるかぎりのことを学びましょう。1 つのことしかできないようにはならないでください。できれば全体を、そうでなければ手のおよぶ範囲を身に付けてください。Epic が提供するビデオはどれも貴重で役に立つものです。ぜひそれを活用してください。
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