2017年8月29日

『HALON』 に見るアンリアルの活用例

作成 Brian J. Pohl, Media and Entertainment Solutions Engineer

プレビズというコンセプトは、そこまで新しいわけではありません。ウォルト ディズニーはシンプルなストーリーボードを活用した出始めた頃のテクニックを使いましたし、ライカはアニメーション制作の合理化にうまく利用しました。1990 年代半ばから 2000 年の初めにかけて、VFX のパイオニア ジョージ ルーカスがディズニーのやり方に習ってプレビズをライブ アクション映画と視覚効果制作に採用したことで、使い方の幅が広がりました。ルーカスと彼の CG アーティスト チームは SGI と汎用の PC / Mac ツールを導入して、当時の技術レベルを可能な限り引き上げました。その結果、プレビズは進化した今の形に生まれ変わったのです。

そして今、ルーカスに続いてもう 1 歩技術レベルを上げようとしているのが、 HALON Entertainment のチームです。アンリアル エンジンをプレビズ パイプラインに統合することで、HALON チームは、もっと巧みに、インタラクティブで忠実度の高いプレビズを目指しています。これまでそのような処理には Maya や 3ds Max といった 3D アプリケーションを使うのが一般的でしたが、映画制作ではランドスケープの要求と創造性への期待が変化しています。 『猿の惑星:聖戦記』の プレビズ / ポストビズ スーパーバイザーである AJ Briones 氏 は、大容量のデータセットと  複雑な画像を直観的に処理できる次世代ツールが必要でした。

AJ Briones 氏、そしてリード アーティストの Casey Pyke 氏 に、 『猿の惑星:聖戦記』のプレビズ / ポストビズ工程でアンリアル エンジンの活躍ぶりについてお聞きしました。

『猿の惑星:聖戦記』 - プレビズ (Halon Entertainment 制作) (提供:Vimeo).

Q:アンリアル エンジンをプレビズにどのように使いましたか?

AJ - アンリアル エンジンを使うとプレビズの忠実度とクオリティを一気に上げることができるという長所があります。我々はそれをプレビズの基本的なアプローチは変えずにうまく活用する方向を目指しました。我々のプレビズ チームは、とにかく速く正確な作業が求められる効率重視のジェネラリストの集まりです。エンジン プログラマー、FX アーティスト、レンダリング TD など、大規模チームが率いるような専門部隊などいません。そのような中で混乱もなくプレビズ / ポストビズに統合できたことは、まさにアンリアル エンジンのパワーのお陰です。

Casey - アンリアル エンジンは、ディレクターのビジョンをさらに正確に伝えながら、これまでより複雑で密集した背景のレンダリングを可能にする柔軟性があります。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.001-770x433-539d5670c12bb19fa6c04ad403c824e76034e056

Q:シーン レイアウトおよびカメラワークはどこで行いましたか?  

AJ - 背景は Maya と MotionBuilder の両方を混ぜて作成しました。セットを構築およびレイアウトし、Weta Digital とアート部から送られてきたアセットを変換し、Maya を使ってアセットを作成しました。キーフレーム アニメーションにも Maya を使いました。MotionBuilder を使って統合するモーション キャプチャを編集してから、レイアウト作業のために Maya に送りました。その後で、エンジンに全体をエクスポートして、ライティングとエフェクトの作業を行いました。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.003-770x433-3cfdf6753e831a95bcd20045572202d9e8cc0cfb

Q:アンリアルでのデータ操作で苦労した点はどこでしょうか?

AJ - 先ほども申し上げましたが HALON のチームはジェネラリストが集まった小さなチームなので、迅速に処理して量を裁かなければなりませんでした。一番大変だった部分はショーの始まりです。うまく動作して、遅れることなくエンジンの長所を活かすようにパイプラインをセットアップしました。長時間に渡る大がかりなショーだったので、チームのアーティスト全員が自分だけで終始操作が可能な完璧なパイプラインが必要でした。エンジンに詳しい人は誰 1 人いなかったので (私がエンジンを最後に使ったのは 2007 年) 本当に試行錯誤でした。エンジンを使って手動で取得方法が分かったものについては、その処理をコード化し自動化しました。 Matt Reeves 氏 (Director)、Ryan Stafford 氏 (Producer)、FOX はセットアップの時間をたっぷり与えてくれましたし、すべてうまくいくと信じてくれました。心から感謝しています。

Casey - 複数のスケルタル メッシュ アニメーションとカメラをボタンのクリックでエクスポートするツールの開発プロジェクトを開始しました。プロジェクトが進むと、クロス シミュレーションをベイクしアンリアルへインポートする方法が必要になりました。剛体シミュレーションを 1 回限りのスケルタル メッシュ アニメーションへ変換する方法も開発しなければなりませんでした。我々の限られたアンリアルの知識では、とにかくあれこれ調査とテストを繰り返すしかありませんでした。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.004-770x433-5f628938433075587d6099af1b3429b7b6da67f0

Q:複数のカメラでフッテージをキャプチャしたマスターシーンを作成しましたか?それとも従来のシーケンス / ショットタイプのワークフローを使いましたか?

AJ - ほとんどのシーンにはマスターシーンを使いました。兵士達が溝で猿を待ち伏せしているオープニング シーケンス 『Battle on the Hill』を見るとよく分かります。丘でうずくまる兵士達のアニメーション / モーキャップのハイブリッド パスを作り、 Matt Reeves 氏 と一緒に相談しながらすべてのカメラをインタラクティブに配置しました。彼はとても熱心で、カメラの配置だけでなくレンズの選択まで行ってくれました。それらの特別なセットは森の中のとても急な斜面に配置したので、アクションのステージング方法とカメラのブロック方法には細心の注意を払わなければなりませんでした。

このアプローチは大がかりなアクション シーンにも使ったので、複数のカメラを生成することでビルドを利用できたり、いろいろな方法に活かすことができました。

Casey - シーケンス / ショット ワークフローを使用しましたが、マスターシーンで開始して後にショットに分割する方法も頻繁に取り入れました。それはすべて Maya で行いました。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.005-770x433-66dca62890cd6ab873ee3ece1109d69368739e41

Q:プレビズに DCC を使った場合と比較して、キャラクターが大勢必要となるシーンはどのようにアンリアルを使いましたか?

AJ - クロスシーンに関して言えば、この映画ではアンリアルが非常に役立ったシーンが何か所かありました。例えば Elder Ape Sacrificed シーケンスと Avalanche です。群衆のシーンでは限られた数のエキストラを使って、セクションごとに群衆をビルドし、エンジンでそれらを複製しました。

Casey - アンリアルは送り込んだキャラクターをすべて処理してくれます。パフォーマンスヒットも、兵士 50 人をアンリアルへエクスポートして数千人の兵士に複製した時のみでした。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.006-770x433-08b25eed602ecc786336fbfab274774b9fe25e71

Q:エンジン内で忠実度、ライティング、エフェクトを増すことで、ライティングおよび VFX 関連の起こり得る問題に対してディレクターはプレビズでどのように対応しようとしましたか?

AJ - 撮影中のセットの GPS 位置と撮影予定日が分かっている場合は、The Photographer’s Ephemeris (TPE) で調べて、できるだけ正確にライティングを設定し、昼と夜の太陽位置および、撮影日の所定のシーンの光の当たり方が反映されるようにしました。

さらに、実際の撮影においても、爆発シーンが承認されると、そのシーンの配置、時には爆発のタイミングの目安としてプレビズが使用されました。これは予定外のことでしたが、爆発はプレビズに非常に近い結果になりました。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.009-770x433-4bf4209a5ab06296ca90184dad93af5b876947df

Q:インタラクティブ ブロックやディレクターとのライティング セッションにアンリアルを使用しましたか?改訂はどのように行いましたか?

AJ - プレビズは時間との戦いです。いかに量をこなしインタラクティブに作業するかが勝負だったので、ファーストパス ブロックショットのほとんどは Maya プレイブラストでグレイスケースで行われました。これらのショットはすぐにキーフレーム化され、時には静止画としても使いました。ディレクターの目の前でフィードバック用のマテリアルをできるだけ速く取得できるからです。

ディレクターの意図に合ってきたなと感じたところで、モーションキャプチャ、キーフレームを調整したアニメーション、アンリアル エンジン レンダリングをプロセスに導入しました。こうすることで、シーンの構成と目的に対してライティング / テクスチャ / エフェクト / パフォーマンスを別々にフィードバックできるようになりました。

Unreal+Engine%2FblogAssets%2F2017%2FAUGUST+2017%2FHALON+War+for+the+Planet+of+the+Apes+Previs%2F770_Apes3_Previs.008-770x433-49a8e323ae4729c57f0c420bf1ec0d90090c6581

Q:プレビズ / ポストビズにアンリアルを用いて一番良かった点は何でしょうか?

AJ - やはりレンダリングのクオリティでしょう。今までの方法ではこれだけのシネマティックスレベルは絶対に実現できません。アンリアルのお陰で、ショットのアクションもうまく披露できました。また様々な部署やスタジオとアイデアを交換するために使うマテリアルをディレクターに提供できます。

--

今日はいろいろと貴重なお話をありがとうございました。 『猿の惑星:聖戦記』のプレビズ / ポストビズの詳細は、San Diego Comic-Con の こちらのページ でご覧いただけます。