Image courtesy of One More Level

最高に美しく最高にクールなサイバーパンク ゲーム『Ghostrunner』

Epic Games Content Producer Jimmy Thang
One More Level は、ポーランド クラクフに本拠を置くインディー系スタジオです。設立は 2014年。以来、成長を重ね、手掛けてきた作品には、『Deadlings』、『God’s Trigger』、『Ghostrunner』 (最新作) があります。チームは、主にポーランド出身の約 30 人のメンバーから構成されています。そのほとんどは、パンデミックによりリモートワークしています。
Ghostrunner』は、ポーランドに位置するスタジオ One More Level によって開発されました。世界滅亡後を舞台とするゲームの中で、最もクールなものの一つです。このアクション プラットフォーム ゲームは、スピードを重視し、魅力的なハードコア ゲームプレイが特徴です。ゲーム内のあらゆる存在は、一撃で死にます。これはプレイヤー自身も例外ではありません。生き延びるためには、壁を走ったり、空中をダッシュしたりできる能力という武器を常に携えて移動することが重要です。このゲームには、非常に多彩で危険な敵が登場します。敵にはそれぞれ弱点と強みがあるため、レベルを移動すること自体にパズルのような独特の難しさがあります。Hooked Gamers のレビューには、「行われていることすべてにおいて大いに成功を収めているゲームはなかなか見つからない。だれもが絶対にチェックすべきゲームに仕上がっている」とあります。

およそ 30 人で構成されているコアチームによって開発されたにもかかわらず、One More Level が初めて Unreal Engine による開発を行ったということもあり、『Ghostrunner』は、AAA クオリティのビジュアルとともに、レイトレーシングのサポートによって支えられている美しいネオン サイバーパンクの美学を実現できました。このタイトルが次世代コンソールにも登場することにともなって、私たちは、One More Level のナラティブ デザイナー/ライターの Jan Gąsior 氏と、リード 3D アーティストの Damian Tłuczkiewicz 氏にインタビューを試みました。販売されているゲームの中でも抜きん出て素晴らしいゲームの一つであるこのタイトルをどのように開発したか尋ねてみたのです。
『Ghostrunner』の元となったインスピレーションについて教えてください。チームが、近接の戦闘を中心にしたファーストパーソンのプラットフォーマーを制作するようになったのはなぜでしょうか?
 
ナラティブ デザイナー兼ライターの Jan Gąsior 氏:
ある意味、One More Level にとってこのゲームは、論理的に次なるステップとなりました。前回制作したゲーム『God’s Trigger』では、一撃必殺のメカニズムが非常に重視されていました。また、プレイヤーがミスから学べるようにもなっていました。このやり方は、トップダウンの視点からはうまく機能しましたが、ファーストパーソンに導入するとなると、複雑性とニュアンスがさらに加わることになりました。それによって、私たちのレベル デザイナーにとってまったく新たな次元の可能性が開かれたのです。
 
多くのスタジオは、幅広い層のユーザーにとって魅力あるゲームを作ろうとしますが、あなたのチームは、試行錯誤的なメカニズムを取り入れることによって、熱烈なゲーマーに照準を合わせた難易度の高いタイトルを目指しました。このようなやり方は、なぜ、『Ghostrunner』にとって正しいアプローチとなったのでしょうか?
 
Gąsior 氏:
私たちは、インディー系スタジオです。ですから、業界大手と競争してはならない分野があります。しかし、私たちにとって幸運なことに、創造性とイノベーションは、予算だけに依存するものではありません。私が今言おうとしていることは、幅広いユーザー層にアピールしたい小規模なデベロッパーにとって、ゲームの独自性を追求することが進むべき道だ、ということです。ただし、これには代償がともないます。すなわち、独特なシステムをデザインしている場合、学習曲線が関わってくることになるからです。ところが、みんながみんな、時間と努力を惜しげなく投入して、ゲームの奇抜な面によってそのゲームが価値あるものになっていると分かるわけではありません。私たちも、もしかしたらゲームが難しすぎるのではないかとか、もう少し難易度を下げてもっと多くのユーザーにとってマイルドなものにしたほうがいいかもしれないと考えたことがありました。結局私たちは、当初の核となる原則にこだわりました。そのほうがよかったと私は思います。もしも、新たなユーザーがレベルを踏破するために途方もない回数の試行錯誤を繰り返すことがないのであれば、『Ghostrunner』は現在の姿にはならなかったことでしょう。高い難易度が全体的な基調となっているのであれば、切迫感を出すこともできます。さらに言えば、私たちのチームの大半のメンバーは、難しいゲームが好きなのです。自分たちがプレイしたいゲームを作ることが、ゲーム デベロッパーであることの最大の役得だと思います。

スピード感のあるパルクール プラットフォーミングは、このゲームの大きな特徴の一つですね。たとえば、プレイヤーは、壁沿いに素早く走ったり、スライディングしたり、ダッシュしたり、空中ストレイフしたりできます。この移動システムを完成させるためには、かなりのイテレーションが必要となったのでしょうか?
 
Gąsior 氏:
完成したゲームに見られる中核的なメカニズムの大半は、制作開始時に私たちが組み立てた一番最初のプロトタイプにすでにありました。この移動システムをどのような感じのものにするかということについては、さしたる議論はありませんでした。構想は明確だったのです。とは言うものの、「悪魔は細部に宿る」を地で行くようなことになります。スムーズな動きと正確な制御との完全なバランスを見つけるためには、ものすごい苦労をしました。ただし、ほとんどの場合、無限とも思えるほどの微調整と、初期システムの調整というプロセスをたどることになったのであって、数週間毎にご破算にして最初から全部やり直しということではありませんでした。
『Ghostrunner』は、その制約のない、パズルのような戦闘によってプレイヤーが実験を行いたくなり、そのことで称賛を受けていますね。どのようにして、これは実現したのでしょうか?
 
Gąsior 氏:
レベル デザイナーたちが多大な努力を払って、さまざまなアプローチが可能となる戦闘エンカウントを作ってくれたのです。重要なことは、人々のプレイを観察し、行動パターンを分析することです。プレイの仕方は人によって少しずつ異なります。そのスタイルの違いは、スキルのレベルだけではなく、微妙な好み、タイミング、それと、プレイヤー自身がしばしば気がつかないパターン全般に関わります。ゲームの特定の部分を多くの人々がプレイするのを観察すると、プレイヤーたちが最も取りそうなルートが分かるようになります。その知識を生かすと、エンカウント全体のバランスをとることができるようになります。つまり、エンカウントにバラエティをもたせ、特定のアプローチだけが飛び抜けて使われないようにできるのです。
 
ゲーム内のレベルはどれも巧妙にできていて、新たな戦闘メカニズムが導入されています。プレイヤーが滑ることができるレールや、スローモーションのパワーアップ、破壊すべき敵のシールド ジェネレーターが追加されています。『Ghostrunner』のレベル デザインについて詳しく教えてもらえますか?
 
Gąsior 氏:
一番大切なことは、プレイヤーを動かし続けることでした。動きやすさは、『Ghostrunner』がもたらす経験において核となるものです。このゲームのあらゆる要素にとって、それを強化することが不可欠なのです。したがって、レベルはわかりやすく、移動しやすくするとともに、どのようなエンカウントが生じたときにもプレイヤーの自由度が損なわれないようにします。基本的な戦闘システムを補強するこれら特別な動きの大半は、可動性をさらに強化するものであり、レベル デザインのほとんどでは、これらの強化を利用することによって、プレイヤーをさらに高くジャンプさせたり、もっと速く走らせたり、操作の限界を試させたりするシナリオが仕込まれています。

レベル デザインにはもう一つ興味深い側面があります。それは、戦闘/プラットフォーミング/パズル間におけるバランスです。これらの成分の比率は適正であること、という話は随分とされますが、結局のところ、これらの成分が楽しい気晴らしとして現れ、新鮮で魅力のあるうちだけ継続させるようにするということに尽きます。
 
ゲームの中には、強さや弱みが異なるさまざまなタイプの敵が出てきますね。これはどのような考え方でデザインしたのでしょうか?
 
Gąsior 氏:
この場合、一貫性と予測可能性という言葉がキーワードとなります。『Ghostrunner』と同じくらいテンポの速いゲームでは、常時多数のアクションが進行しています。したがって、敵がつねに予測どおりに行動させるということが、きめ細かくデザインされた戦闘エンカウントをカオスにしない重要な方法ということになります。完璧な狙いをもつ敵が、実際には、プレイヤーの有利になるというのは、このような理由があるのです。『Ghostrunner』の中で発生する戦闘というパズルのピースがどれも一貫性をもつかぎり、プレイヤーは最終的にそのパズルを解くことができます。もちろん、初めてのプレイヤーは何回も死ぬのが普通です。しかし、それもデザインのうちなのです。プレイヤーは幸運だけでクリアできるのではなく、試行錯誤と学習が必要となります。

ゲームの流れについて考えれば、敵のデザインも重要なファクターとなります。ほとんどの場合、敵を見るだけで、あるいは敵が攻撃するのを一度目にするだけで、その敵がどのようなことをしてくるのかはっきり分かります。Enforcer という敵が巨大なエネルギー シールドを構えていると、正面攻撃は効きません。そのことは、対決しなくてもはっきりと分かります。攻撃するチャンスを待つ必要がある極端に緻密な攻撃パターンや攻撃手順をとれば、プレイヤーの勢いは削がれ、動きが止まります。プレイヤーが対決する敵の圧倒的大多数に反撃するためには、可能な限り素早く接近するか、裏をかくことが最善であるのは、そのような理由によります。
開発チームの規模はどのくらいですか?また、『Ghostrunner』を制作するためにどのくらいの時間を要しましたか?
 
Gąsior 氏:
中心となる One More Level のチームは、約 30 人からなります。プロジェクトの規模が大きくなり、より野心的になるにつれて、『Ghostrunner』の制作中に途中参加した人たちもいます。Slipgate Ironworks からの助けもありました。また、3D Realms からはメンタリングも受けました。ですから、『Ghostrunner』の最終版制作に参加した人たちを正確にカウントするのはそれほど簡単ではないです。

次に作るゲームのアイデアが最初に生まれたのは、『God's Trigger』の開発が終了するころでした。心に描いていたメカニズムを示すラフなプロトタイプが作られたのが 2018年の後半でした。それから間もなく、将来『Ghostrunner』となるもののさまざまな要素に取り組むチームのメンバーが増えていきました。全体のプロセスが最初から最後まで要した時間はおよそ 2年と言ってもよいでしょう。
 
『Ghostrunner』は、One More Level にとって初めての Unreal Engine によるゲームですが、Unreal Engine へ移行してどうでしたか?また、Unreal Engine がこのタイトルによく適合したのはなぜでしょうか?
 
(リード 3D アーティスト) Damian Tłuczkiewicz 氏:
Unreal Engine は、私たちがそれまで使っていたエンジンに比べると、堅牢性が格段に上です。また、全体的なパフォーマンスも優秀で、ビジュアル スクリプティングや素晴らしい VFX、シェーダー ツールが提供されているため、アーティストやデザイナーたちが短期間のうちに複雑なシステムを作成できるようになりました。技術的な観点から言うと、ポリゴン数が以前に比べて遥かに増えました。
 
One More Level は比較的小さなサイズのスタジオですが、それにもかかわらず、AAA クオリティの SF サイバーパンクのビジュアルを実現しています。素晴らしいライティング、美しい水のエフェクト、生活感のある環境などが際立っています。このような限界を打ち破るような見事なグラフィックスを達成できたのはどうしてでしょうか?
 
Tłuczkiewicz 氏:
ビジュアルとゲームの構造について考え始めたのは、何と、最初のプレイ可能なセクションが完成する前のことでした。私たちは、かなり早い段階で、ビジュアル用テンプレートと舞台装置を作成することができたため、背景の設定に慣れるようになるとともに、制作過程の後半では、舞台装置の配置とライティングにどのように取り組むかという問題にもうまく対応できるようになったのです。
ゲームでは、レイトレーシング エフェクトがいくつかサポートされていて、それが素晴らしいネオンライトショーとして結実していますね。レイトレーシングをゲームに組み込むために必要となった作業について詳しく教えてもらえますか?
 
Tłuczkiewicz 氏:
私たちは、レイトレーシングされた反射やシャドウ、アンビエント オクルージョンをサポートしています。これらのエフェクトは、すべて、Unreal Engine の各バージョンを使うとより簡単に実現できるようになりました。メジャーなレンダリング機能を改変することはありませんでしたが、統合されている機能を微調整することに注力して、パフォーマンス対クオリティの比率を最高のものにしました。同時に、従来型のレンダリング パイプラインによる機能についても、可能なかぎり見栄えがよくなるようにしました。
 
以前にも、チームが Unreal Engine の堅牢なグラフィックス機能の多くを利用していると言ってましたが、いくつか気に入っているものを教えていただけますか?
 
Tłuczkiewicz 氏:
『Ghostrunner』のために選択した背景セットのせいで、ツールボックスの中で一番重要なビジュアル機能は、何と言っても、Volumetric Fog です。これはレベルのいたるところに見られますよ。この機能は、象徴的でどんよりとした雰囲気を作り出すのに役立ち、『ブレードランナー』的な趣がもたらされます。さらにもう一つ気に入っている機能をあげると、それは、RTX レイトレーシングを使わずに見栄えのよい反射とハイライトを作るために利用した、複雑な Reflection Environment のレンダリング機能です。

最後に、Unreal のライティングシステムではリアルな物理単位で輝度や温度などを定義できます。適切に設定された物理的に正確なマテリアルと組み合わせることで、他の多くのエンジンと比べて、はるかに直感的なワークフローで自然な結果を実現できます。
 
『Ghostrunner』が次世代コンソールにも登場することになると最近発表がありましたが、ユーザーとしては、どのような点が強化されると期待してよいでしょうか?
 
Gąsior 氏:
詳しいことを発表するのは時期尚早なのですが、私たちは必ずや Slipgate Ironworks (移植版を制作することになる) と密接に連携をとり、ゲームをできる限り見栄えよく、スムーズにプレイできるようにするつもりです。 
次世代プラットフォームで最も期待していることは何でしょうか?

Gąsior 氏:
新たな世代が登場すると、必ず機能的な飛躍がもたらされ、ゲーム制作にとっての標準というものが引き上げられることになります。つまり、デベロッパーにとっては より大きなパワーが利用できるということになります。このことは、私たちにとって例外なく良い知らせです。制作中は、しばしばパフォーマンスと美麗なビジュアルのバランスを取ることを余儀なくされます。テクノロジーが進歩するたびに、このようなジレンマを解消することに私たちは近づいているのです。
 
今日はインタビューに時間をとってくださり、ありがとうございました。『Ghostrunner』についてもっと詳しく情報はどこで得ることができるでしょうか?
 
Gąsior 氏:
『Ghostrunner』のためのソーシャル メディア チャンネルの FacebookTwitterInstagramをご覧になってください。また、大規模な (しかも成長中の) コミュニティが『Ghostrunner』の Discord サーバーに集っています。このゲームについて知るにはぴったりの場所です。さまざまな世代のプレイヤーたちと意見を交換するとともに、デベロッパーとしての私たちともチャットしてみてください。

    Unreal Engine を今すぐ入手しましょう!

    世界で最もオープンで先進的な制作ツールが入手可能です。 
    Unreal Engine では、あらゆる機能と完全なソースコードがアクセス可能な状態で入手できるため、すぐに使い始めることができます。