冷戦が未来で再び勃発!Vertical Robot 制作の VR ゲーム『Red Matter』
2018年5月16日

冷戦が未来で再び勃発!Vertical Robot 制作の VR ゲーム『Red Matter』

作成 Shawn Petraschuk

Vertical Robot から間もなく VR ゲーム 『Red Matter』がリリースされますが、そのインスピレーションの源泉は一目瞭然です。本記事の読者の中で冷戦を身近に感じる人は数少ないと思います。いたとしても「そういえば祖父母がそんな話をしていた」という程度でしょう。アメリカおよび同盟国と旧ソビエト連邦との間で政治的緊張が高まったその時代が、遥か彼方にある土星の衛星「 Rhea」を舞台にした未来設定 SF ゲームの出発点です。

家庭用ゲームとしてまだ始まったばかりにもかかわらず、VR はわずか数年足らずの間に着実な進歩を見せています。そしてその裏にはアンリアル エンジン 4 の大きな活躍があります。『Red Matter』 (2018 年 5 月 24 日にリリース予定) は、パズルを解明する強力な構造と説得力のあるナラティブを後ろ盾に非常に詳細な VR 空間への入口として注目を浴びています。Vertical Robot はマドリードを拠点とするスタジオで、チームメンバーは『Castlevania:Lords Of Shadow saga』、『Spec Ops:The Line』、『Deadlight』 を始めとする数多くのゲームで高い評価受けたゲーム業界のベテラン勢ばかりです。2 作目となる本作は、高い品質の体験を作り上げたいというチームの意図がよく表れている作品です。

今後 コンシューマー分野における VR の確実な飛躍を考えると、Vertical Robot のような VR に夢中のデベロッパーの活躍に大いに期待して良いと言えるでしょう。プロジェクトと VR に対するチームのビジョンを知るために、Vertical Robot で Design Director を務める Tatiana Delgado 氏に『Red Matter』そして彼らの最高傑作の制作にアンリアル エンジン 4 が果たした役割についてお話を伺いました。 
 

Vertical Robot は比較的新しいスタジオですが、メンバーはベテラン勢ばかりですね。みなさんが一緒にインディー スタジオとしてゲーム制作をするようになったきっかけを教えてください。 
 
我々は過去に別の職場で一緒に働いていた仲間なんです。たまたま数か所で一緒だったケースもあります。お互いをとてもよく知っているので、チームとして非常にうまくいくと思いました。ゲーム業界も長くなり、「自分達のもの」と呼べる新しい何かを作りたい、そして、新たな課題に挑戦したい、と痛烈に感じるようになりました。Oculus が登場すると、ずっと待ち望んでいたゴーサインが出たかの如く VR 開発というエキサイティングな冒険の中に真っ逆さまに飛び込みました。プラットフォームの芸術性、技術性、創造性の限界を押し広げつつ VR に価値を追加するような品質のゲームを絶対に作ろうと思いました。 
 
我々は非常に小さいスタジオですが、各メンバーが豊富な経験を積んでいるお陰で、意思決定はかなりスムーズですし作業にもすぐに着手できます。ちなみに『Red Matter』はたったの 8 名で作りました。 

『Red Matter』 は 2 作目のゲームです。またもや VR ゲームということですが、Vertical Robot はなぜ VR 体験の開発に情熱を注ぐのでしょうか?VR 専門スタジオを目指していますか? 
 
VR という新しい媒体用のコンテンツを作ることは素晴らしい冒険なのです。新しく生まれた技術に最初から携わっていれば、技術が確立した時に有利な場所から前進することができます。そのころには、ひたすら戦った経験から学んでいるからです。少なくとも今現在の我々の意図は VR 開発に集中することです。 

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最初のゲームである『Daedalus』は Samsung VR 向けであり、『Red Matter』は Oculus Rift 向けになりました。この変更で飛躍的に処理力が高い環境になったと、言ってもよいと思います。今回のプロジェクトは大幅にスケールアップしましたが、『Daedalus』での開発経験がどのように役立ちましたか? 
 
それが面白いことに、実は『Red Matter』が最初のプロジェクトだったのです。ところが範囲が大きすぎたため資金援助が必要になりました。資金援助を探すことで開発を頓挫させたくなかったのです。そこで、『Red Matter』の移動手段のプロトタイプとして着手した部分から『Daedalus』を作りました。結果として、この経験のお陰で VR ゲームの制作サイクルをひと通り体験し、VR に対する貴重な市場洞察力を培うことができました。『Daedalus』もアンリアル エンジンを使ったので、エンジンの VR ツールおよび可能性をテストすることができました。とてもためになりました。プレイヤーと評論家の両方から好評だったことにかなり満足しています。 

『Red Matter』はディストピアな冷戦という独特の SF 設定のゲームですが、インスピレーションを得た実際のアメリカとロシアの冷戦にはどのくらい似ているのでしょうか?具体的な事件を使ったりしているのでしょうか? 
 
ある程度は実際の冷戦もベースにしていますが、我々は歴史から離れて完全に空想の 2 つのファクションを使ってディストピアなファンタジーを作りたいと思いました。そうすることで、プレイヤーを驚かせるキャラクターとプロットの操作と作成が可能になるのです。 
 
『Papers, Please』のように、歴史的かつ視覚的なリファレンスを使ってプレイヤーに馴染みのある設定にしましたが、そこから先の宇宙は従来とは違う設定にしました。Volgravia は景観の美しさやイデオロギーの談話要素は旧ソビエトと共通点がありますが、実際のところ何も関連性のない架空の国家です。USSR と Volgravia はちょうど Game of Thrones と中世ヨーロッパのような関係と考えると良いでしょう。 
 
我々は何と Volgravia 語も創りました。ゲームの中核となる構造のひとつにスキャナーを使ってテキストを解読するためにスキャナーを使う必要があるので、その楽しみをロシア人プレイヤーから取り上げたくなかったのです。Volgravia 語は見た感じロシア語やキリル文字っぽいですが、まったく関連はありません。 
 
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『Red Matter』 はどのようにして生まれましたか?冷戦をテーマにしたゲームは非常に珍しいと思います。 

作りたいのは SF ゲームでしたが SF は飽きるほどプレイされています。我々はインディーとして他とは違う何かを作りたいと思いました。ソ連の宇宙開発競争のポスターを見てはっとしました。特別で、とてもユニークなものを感じた我々は冷戦関連の話の虜になりました。そして、自分達のニッチ分野はこれかもしれないと思ったのです。 
 
ざっくり言うと、仮想現実は生まれたばかり、アンリアル エンジンは年長者です。アンリアル エンジンは 3D や 2D 向けの開発のように VR にも直観的に使用することができましたか? 

全体的に非常に直観的でした。我々は過去に別のプロジェクトで独自のエンジンを使って作業をするチャンスや必要がありました。従って特定のニーズに合わせて独自のツールをよく開発していました。アンリアル エンジン 4 には自分達で作るとした場合もそうするであろう方法(または非常に近い方法)で機能が実装されていることが多く、とても直観的に使用することができました。VR ライブラリの実装と機能の公開方法も例外ではありません。 

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『Red Matter』の開発中、アンリアル エンジン 4 のツールの中で特に便利だったものはありますか?理由も教えてください。 

チームの中にはアンリアル エンジンを 10 年以上も使い続けているメンバーもいます。何年もかけて、エピックは素晴らしいツールをアンリアルの貯蔵庫に追加してきました。新しい Proxy LOD System がアンリアル 4.19 に追加されました。まだ実験的機能ではありますが、ロースペックのマシンで『Red Matter』を効率的に動かすために背景の最適化およびドローコール総数の削減に非常に有用であることが実証されています。同様に、スタティックメッシュ ビューアに組み込まれたポリゴン削減ツールとライトマップ パッカーのお陰で、アーティストは骨の折れる繰り返し作業量が減って時間を節約できるようになりました。
 
実際の移動であろうと、テレポーテーションによる移動であろうと、VR の開発で問題になるのは移動です。やはり『Red Matter』の場合も移動は問題でしたか?そうであれば、どのように解決しましたか? 
 
予想通り移動手段は難関でした。小規模チームで可能な限り幅広いオプションを提供することに決めました。幸運なことに、我々のチームにはほとんど乗り物酔いをしない人から途端に酔ってしまう人まで幅広いタイプがいたので、できるだけ多くのオプションを提供することが重要だと理解しました。『Red Matter』では 3 種類の移動手段が利用できます。目まいを起こしやすい人用のテレポーテーション、移動をゲーム ワールドに統合するためのダッシュ、加速とブレーキを手動で制御しながら事前定義されたジャンプ軌跡で飛ぶジェットパックです。滑らかな移動システムも開発中です。ローンチには間に合いませんがアップデートで利用可能になります。

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直観的な制御も VR の難題のひとつです。制御に苦労するゲームがこれほど多い中、ユーザーにとって非常にシンプルな制御スキームにしたということですが、詳しく説明してください。 
 
プレゼンス、非物質的な世界で物理的に「存在する」という感覚、は仮想現実では極めて重要です。『Red Matter』の場合、ゲームの中に Oculus Touch コントローラーを視覚的に表示するだけなく、コントロール スキームを直観的にすることでプレイヤーの存在を改善しようと思いました。プレイヤーが物理的に意識するのは現実世界で手に持っているコントローラーです。そこでコントローラーを仮想世界とのインタラクションに使う実際のツールとして使用することに決めました。スティックを使ってツールを切り替え、トリガーを引いて操作する、とても簡単です。シームレスにゲームのフィクションに繋がることで、両方の要素は仮想世界にも存在します。例えばカギ爪がそうです。プレイヤーはオブジェクトを掴み、ダイヤルを回し、片方の手から別の手にごく自然にオブジェクトを渡すことができます。ビデオゲームの経験がまったくない年配の方々にもプレイテストを行いましたが、問題なく制御することができました。 
 
今日はありがとうございました!Vertical Robot と Red Matter の情報は入手するにはどこをみればよいのでしょうか? 
 
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