Courtesy of Fallen Leaf S.A

Fort Solis、Unreal Engine 5.2 で没入感のある火星が舞台のゲームを制作

Brian Crecente
Fallen Leaf は、リバプールの有名な地区、バルティック トライアングルに拠点を置く新しい独立系ゲーム デベロッパーです。世界トップクラスのスタジオでの数十年にわたる経験を活かして、Fallen Leaf は革新的なテクノロジーと物語に重点を置いたストーリーテリングで新境地を開拓しています。
Fort Solis は、荒れ果てた火星の採掘施設での一夜の物語です。主人公たちの任務は、基地で何が起きたのか、そして基地を運営していた人たちを探すことでしたが、次第に迫り来る大嵐と夜から生き延びるための手段を必死で探す羽目になります。

Epic MegaGrants 獲得時の初期構想は、パンデミックによって生まれた孤立と John Carpenter 氏の傑作ホラー叙事詩「遊星からの物体 X」という、一見するとまったく異なるものから来ています。

Fallen Leaf Studio のチームは、「Netflix で一気見したくなる素晴らしい番組のようなストーリー体験を作り出す」というアイデアを持っていました。
 

チームは Black Drakkar Games と提携することで、初期のアイデア構想から、魅力的なランドスケープの構築、ゲーム内の暗いトンネルや誰もいないオフィス、レベルの共同制作、キャラクターのリギングまで、「Unreal Engine 5.2」を自分たちの作品作りに活用しました。

それにより、「お気に入りのテレビ番組と同じレベルの没入感を提供しながら、プレイヤーが自分のペースで進められるゲームを実現したい」と考えたためです。

今回は Fallen Leaf Studio の開発者の何人かに、Unreal Engine 5.2 の詳しい活用方法と、2 つのスタジオが Fort Solis の開発当初に思い描いていたような体験をゲームで再現するのに Unreal Engine がどのように役立ったのかについて話を伺いました。
Courtesy of Fallen Leaf S.A
Fallen Leaf はスタジオとしてどのようにして結成されたのでしょうか?また、スタジオではどのようなものを目指していますか?

スタジオディレクター James Tinsdale 氏:
Fallen Leaf は、「ストーリー主体のエクスペリエンスを作る」という発想のもと結成されました。私たちは、主に AAA ゲームを中心に制作していました。しかし、TV のストリーミング番組のような、より小規模でディテールにこだわったエクスペリエンスを作りたいという思いもありました。

そうした事情から、「ゲームという形でストーリーに重点を置いたエクスペリエンスを作り、美しく没入感のある舞台設定を中心に据えて説得力のある物語を作り上げる」という目標を設定しました。また、私たちは業界をリードするテクノロジーを使用して、より小さなチームで働きたいとも考えていました。

Fort Solis のアイデアを思い付いたきっかけと、このアイデアをどのように膨らませていったのかを教えてください。

Tinsdale 氏:
Solis の最初のアイデアは、パンデミックの最中に生まれました。パンデミック中は、誰もが家で時間を過ごしたと思います。私も、ほとんどの時間をストリーミング プラットフォームのコンテンツとゲームに費やしていました。両方の世界からインスピレーションを得て、世界をより密接に融合させるというアイデアにより、Fort Solis が現実のものとなりました。

多くのものから影響を受けてゲームを制作しましたが、私は昔から John Carpenter 氏の映画が大好きです。とりわけ「遊星からの物体 X」がお気に入りです。なので、自分の作品は彼の作品から最も大きな影響を受けていると思います。

映画を超えて、彼の作品は現実世界と、誰もが団結している今この瞬間の状況をより反映していると思います。恐ろしい話ですが、彼の映画は私たちがいかに脆弱であるか、そして私たちが住んでいる世界がどれほど厳しいものであるかを教えてくれます。

Black Drackar Games と協力するきっかけは何でしたか?また、Black Drackar Games はゲーム制作でどのようなことを担いましたか?

Tinsdale 氏:
ロード マップ、スクリプト、初期計画を作成した後、個人的なつながりを通じて、Black Drackar に私たちとの共同制作に興味があるかどうかを聞きました。

そして、初期計画、開発方法、ゲームでの目指すべき方向を話し合った結果、BDG が私たちにとって素晴らしいパートナーであることがわかりました。

今やプロジェクトも終盤に差し掛かっていますが、彼ら以上に最適なパートナーはいないと思います。

Fort Solis のバックグラウンド ストーリーと、プレイヤーがゲーム内で行うことについて教えてください。

Tinsdale 氏:
ゲーム全体を通して、Jack が基地に到着するまでにどんな出来事があったのかを示す、多くのマテリアルが配置されています。こうしたマテリアルにより、プレイヤーは遭遇する出来事に対して共感を強めたり、より深い理解を得たり、ゲームプレイの瞬間瞬間を超えたより深いストーリーを展開したりできるようになります。

私たちは、Fort Solis で経験する一夜の出来事と、それまでに基地とその乗組員に起きた出来事を組み合わせることで、プレイヤーに物語の全体像を理解してもらいと思っています。バックストーリーがあると物語を理解しやすくなりますし、ストーリーの全体像を知りたいというユーザーからの希望もありました。そのため、ネタバレのリスクを負ってでも、このようなストーリーに大きく関わるマテリアルを配置するという決定を下しました。
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このゲームは火星を舞台としています。したがって、このゲームは SF 要素の強い遠い未来を舞台にしたものになるのでしょうか?それとも、目にしたり使用したりする技術という点において、より現代に近いものになるのでしょうか?

Tinsdale 氏:
ゲームの舞台は 2080年です。テラフォーミングはおそらく可能な未来ではあるものの、プレイヤーが共感を抱ける程度には現代に近いものにしたいと考えました。すべてが実際に現実にあると感じられるような基地にしたかったのです。そうすることで、キャラクターを論理的に矛盾のない形で配置できるようになるためです。

私たちは、早期の段階でホログラムを使うような近未来的な世界観から、昔からお馴染みの機械がたくさん存在する世界観へと方向性を変えました。この変更により、ゲームの雰囲気がより現実に近いものになり、キャラクターも馴染みやすくなります。このゲームでは火星を舞台にしていますが、どんな設定でも合うようなストーリーだと思います。

このゲームはホラーではなく、心理スリラーだと仰っていました。 ホラーと心理スリラーのバランスを取るために、Unreal Engine をどのように使用しましたか?

Tinsdale 氏:
Unreal Engine には、構想をすぐに落とし込んで拡張できるツールが用意されています。一般的に使用されているツールの場合、通常、社内で開発するには多大な時間とリソースがかかります。しかし Unreal Engine のようなすぐに利用を開始できるプラットフォームの場合、開発をはるかに早く進めることができます。

コンセプトの視覚化、3D での作成、エクスペリエンスのプレイが可能なので、アイデアをより迅速かつ正確にチームに伝えることができます。

ゲームのサスペンス感を構成する、恐怖、孤立感、孤独感を生み出すために、どのような開発ツールを使用しましたか?

Tinsdale 氏:
ほとんどのゲームがそうであるように、ゲームに命を吹き込むにはオーディオと VFX の両方が重要であるということを認識していました。Niagara を使用すると、シーンのトーンと雰囲気を素早くレプリケートできたので、スリラー的な雰囲気を容易に作成できました。

私たちのエクステリアでもっとも良くできているものの 1 つは、発達中の嵐です。この嵐は、ゲームの終わりまでに基地を飲み込みますが、それ自体の変化と移動により、時間の進捗を視覚的に確認しやすくなっています。
派手なジャンプ スケア系ゲームではなく、スリラー的で絶妙な恐怖感のあるゲームを制作したいと考えているゲーム開発者に対して、何かアドバイスはありませんか?

Tinsdale 氏:
私たちは、手探りで多くの実験を行いました。プレイヤーがストーリーに沿って進んでいると理解できるような物事や要素をちりばめ、ストーリー進行がわかるように俳優に演技させることで、プレイヤーに対して没入感のある、キャラクターとともに旅をしている感覚を与えることができました。

Jack の身に起こったことは、プレイヤーも実感できるはずです。こうした要素はスリラー的なものですが、ゲームの初期段階でこれを行うのは非常に難しい場合があります。配置した要素が現れたり、出来事が発生したりするときは、プレイヤーの注意を惹きつける必要があります。プレイヤーのエンゲージメントがなければ、徒労に終わってしまいます。

私からのアドバイスは、ストーリーに合わせて成長するような、共感できるキャラクターを作成することです。そして彼らに、精神や肉体に訴えかけるような試練を与えてください。クライマックスでそうした要素がすべて最高潮に達するようにすれば、それが解決した際、プレイヤーが強く共鳴する重厚なゲーム体験を提供することができます。

ゲームの雰囲気を作り出す上で、ライティングが大きな役割を果たしています。 目指しているものを作るのに、Lumen をどのように活用したのか教えていただけませんか?

アートディレクター Mark Cushley 氏:
Fort Solis では、スリルと没入感、そしてときには閉所恐怖症のような感覚を得られるゲームを制作したいと考えていました。したがって、Lumen の使用に反対する理由はありませんでした。リアルタイムのグローバル イルミネーションと反射のおかげで臨場感がさらに高まるので、プレイヤーはまるで Jack と同じ場にいるような感覚を得られます。Lumen を使用すると、視覚的な利点以外にも新しいワークフローが利用可能となるという利点があります。新しいワークフローにより、時間を節約したり、よりレベルの高いクリエイティビティを発揮したりできます。

現在、Fort Solis では完全に動的なセットアップを使用しています。ゲーム内にあるすべてのライトは動かせるので、ライトマップのベイク処理に何時間も費やしたり、ライトマップ UV を心配したりする必要はありません。ゲーム開発において、動的なライトはまだまだ活躍すると確信していますが、私たちにとってのこの大きな利点は、ライティング シナリオをその場で変更したり、キー シーケンス中に動的に動かしたり、これを反映するように周囲の環境を更新する Lumen でプレイヤーの入力に反応してモーションを細かく調整したりできることにありました。
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NaniteMegascans アセットはどのように活用しましたか?

Cushley 氏:
別の場所のシーンもありますが、ゲームの大部分の時間は Fort Solis 基地の周囲で過ごすことになります。したがって、ゲームにおける火星探査は事前に決まったエリア内で行われます。Megascans と Nanite の使用により、オープンワールドのランドスケープのような何キロも移動する環境を構築する場合よりも、アセットの密度と品質を大きく高めることができました。

コアとなるシネマティックな体験を作り上げる上での鍵となったのはこれらのアセットですが、使用したのは火星の表面だけではありません。ゲーム内のすべてのジオメトリの少なくとも 90% は、Nanite が使用されています。トンネルを歩いていても、広大なオープンエリアに入っても、これまでに見たことのないレベルのワールドと豊かな環境を Fort Solis で体験できるはずです。

ゲーム開発の際、結局 World Partition を使用しましたか? もしそうなら、World Partition はどのくらい便利でしたか?

Cushley 氏:
Fort Solis の開発の非常に早い段階で、できる限り多くの新しいテクノロジーを利用することを決定しました。しかし、このようにしたのは、一般的に考えられる理由からではありません。私たちのチームはとても小規模です。したがって、リソース管理は開発のあらゆるステップの鍵となります。将来的に非推奨になる可能性のあるシステムを使用するのは、合理的ではありません。

なので、Epic が開発に最も時間をかけているものにフォーカスしたいと考えました。つまり、レガシー コードの保持にそれほど苦労を要しない、機能に関するサポートがより強化され、Unreal の新しいバージョンに継続的にアップグレードされるツールです。

World Partition はそのようなシステムの 1 つで、非常に早い段階から使用しています。環境アーティスト チームが抱えている納期はかなり厳しいものであったため、全員が同じレベルで同時に作業できるこのツールは、完全なゲーム チェンジャーでした。Fort Solis では、1 つの大きなマップを使用しています。したがって、アセットの追加、変更、移動のためにそのマップの所有権をリクエストしなければならないとしたら、非常に時間がかかったことでしょう。
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このゲームのキャラクター アニメーションが大きな話題となっています。 コントロール リグを使用してキャラクターに命を吹き込んだとお聞きしました。これについて、詳しく教えていただけませんか?

リード テクニカル アニメーター、Matthew Lake 氏:
私たちは、リアルタイム アプリケーションに コントロール リグ を適用して、スケルトンやプロシージャル アニメーションの操作を行うことにしました。これは加算アニメーションの代わりとしてよく使用されています。ランタイム制御とプレビューを迅速にイテレーションできるためです。

キャラクターの変形を制御するため、コントロール リグ システムは広い範囲で使用しています。Maya 内のスケルトンは、コンストレイント、ボーン制限、直接接続、さまざまな数学演算でセットアップされています。それにより、キャラクターの変形の改善を行ったり、視覚的に正しい状態を作ったりしています。つまり、金属の曲げや伸びを止める追加のジョイントや、手の回転に伴う前腕のねじれ、あるいはカラビナをハーネスに固定するリベットさえも必要となるのです。

通常、これらのジョイントはアニメーションに直接ベイクされ、エンジンでプレイされるだけですが、私たちは、ポスト プロセス ABP を介してコントロール リグ内でキャラクターのリグ セットアップを模倣することにしました。これにより、スケルトンは現在のアニメーション ポーズに基づいてランタイム時に動的に解決されるようになります。これに伴い、パイプラインの柔軟性が非常に高くなりました。アニメーションのファイルが非常に軽くなり、必要となる基礎のスケルトンがより適した状態になるだけでなく、新しいリグ データの追加のためにすべてのアニメーションを再度エクスポートしなくても、キャラクター リグの変更、追加、完全なオーバーホールを行えるようになりました。

また、コントロール リグは、検査オブジェクト システム内など、ABP の他の多くの領域でもアニメーションをプロシージャルに作成するために使用しています。PS5 のジョイスティックまたはジャイロスコープを介したプレイヤーの入力に基づいて、コントロール リグ グラフを介してテレメトリを供給するようにして、オブジェクトが作成されたアニメーションによって駆動されるのではなく、プレイヤーの手の中で回転するようにしました。

このツールキットは、フル ボディ インバース キネマティクス (Full Body Inverse Kinematics: FBIK) システムを通じて現在のアニメーション ポーズをプロシージャルに変更するのにも最適でした。そのため、斜面でボディ ポーズを修正したり、床と適切に位置合わせしたりするのにも広く使用しています。
Fort Solis で「次世代のビジュアルでストーリー重視のゲームを作りたい」というお考えだったと思います。 これはどういう意味ですか?そして、それをどのように達成したいと考えていますか?

Tinsdale 氏:
Fort Solis をプレイするプレイヤーに、まるでお気に入りのテレビ番組の中にいるかのような没入感を感じてもらいたいのですが、このゲームではすぐにそれを実現できるようにしたいと考えました。ゲームによくある気が散る要素を排除し、完全にリアルなビジュアル、没入的なロケーション、魅力的なキャラクターを作成することで、最後にゲームをクリアしてコントローラーを置いたときに、「これまで時間をかけてプレイして心から良かった」と感じられるようなゲームになっていれば、と思います。

皆さんに、私たちのゲームの独特なシネマティック体験を楽しんでもらうのを心待ちにしています。

お話を聞かせいただき、ありがとうございました。 Fort Solis と Fallen Leaf の詳細は、どこで確認できますか?

Tinsdale 氏:
Fallen Leaf は XInstagram で、パブリッシャーの Dear Villagers は XInstagram から確認できます。私も X のアカウントを持っています。

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